元サラリーマンの植物ウォッチング第7弾。写真はクリックすると大きくなります
多摩ニュータウン植物記Part7
トサノクロムヨウラン・1~開花

さて同属の開花しないクロムヨウランと開花するトサノクロムヨウランについて前ブログPart5で説明したが、復習のためにもう一度掲載しておこう。
2018年(平成30年)1月神戸大学大学院理学研究科は、それまで図鑑などで取り上げられていた開花するクロムヨウランはトサノクロムヨウランであり、宮崎県、高知県、和歌山県などの限られた地域に分布する本当のクロムヨウランは固い蕾のまま開花せず自家受粉で結実するという特殊な生態であることを明らかにした。
もともとクロムヨウランは1931年(昭和6年)に本田正次氏が和歌山県西牟婁郡岩田町で採取し発表した種で『花ハ正開セズ、花被ハ相接シテ円筒状ヲナス』と説明している。トサノクロムヨウランは全国的に分布しているが、高知県では花を咲かせない本当のクロムヨウランのほうが普通に見られるのが話をややこしくしている。
1981年(昭和56年)に高知大学の故澤進一郎助教授が、高知市で採取した開花するほうの種をトサノクロムヨウランとして発表したが、この発表と前後して複数の図鑑で開花する種をクロムヨウランとして紹介した。そこでクロムヨウランは開花するものだという認識が一般に広まり、澤氏の見解は数十年間埋もれていた。私が持っている図鑑でもクロムヨウランはしっかり開花している。
神戸大学の研究グループは『①クロムヨウラン自体は開花しない種に名付けられた』『②高知市で採取されたトサノクロムヨウランは他の地域に分布している開花する種と形態的差異が無い』として、澤氏の見解が正しいと結論付けた。
菌従属栄養植物は光合成を放棄してキノコやカビの菌糸を根に取り込みそれらから養分を得て生きているが、クロムヨウランは光の届かない暗い林床に生育するためハチやチョウなど訪れる昆虫も無く、そのため開花することまで放棄してエネルギー消費を最小限にしていったようだ。
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