高尾山の山頂付近に生育している「ウバメガシ(姥目樫)」。ブナ科コナラ属の常緑高木で関東地方南部~九州までの太平洋側に分布している。カシの名前は“堅し木”の意味でウバメは芽吹きの色が新緑ではなく茶褐色になることに由来している。雌雄同株で4~5月に雌雄の花を咲かせる。写真は雄花序で長さ2.5~3センチ。ひとつの花は直径2~3ミリで雄蕊は4~5本ある。
マツ科ヒマラヤスギ属の「ヒマラヤスギ(喜馬拉耶杉)」。ヒマラヤ山脈原産の常緑高木で日本には明治時代に渡来した。雌雄同株で10~11月に雄花序と雌花序を付け果実は翌年の秋に熟す。雄花序は良く目立つが雌花序は樹齢30年を超えないと付けないようだ。更に高い枝に多く付くので間近で見る機会は少ない。また低い枝に付いても上手く育たず途中で枯死するものが多い。ここでは低い枝で上手く受粉し若い果実に成長していた。計ってみると長さは3.5センチで幅は1.7センチだった。
ヒノキ科(←スギ科)コウヨウザン属の「コウヨウザン(広葉杉)」。中国南部原産の常緑高木で日本には江戸時代以前に渡来したとされており寺社や庭園などに植栽された。雌雄同株で早春に枝先に数個の頭状花序を出す。これまで花期や果実は観察していたが、雌花が結実し果実が稔るまでの途中経過が観察できていなかった。写真は褐色の雄花の残骸を取り除いたもので中から緑色の塊が現れた。おそらくこれが若い果実なのだろう。雄花序の中には開花後に枯れたものも多くあり褐色の残骸を取り除いても何も出てこなかった。
ヒノキ科ヒノキ属の「サワラ(椹)」。日本固有の常緑高木で北海道~本州、四国に分布している。スギ花粉が終わる頃にヒノキやサワラが開花して花粉を飛ばすので長い期間花粉症に悩まされる方が多い。私はスギ花粉症でヒノキ花粉にはさほど反応しないが、ベランダの手すりや自動車に黄色い粉が付くので洗濯物や布団を乾かすのにはかなり気を使う。
写真は雌花を拡大したもので花の中に丸い受粉孔が数個見える。花径は3~4ミリなので受粉孔の直径はわずか0.3~0.4ミリ。ここから受粉滴が浸み出し花粉を受けて果実が稔る。じっと見ていると顔に見えてきた。この顔とは初対面だ。
小仏川沿いの特別養護老人ホームの入口に聳えている「カゴノキ(鹿子の木)」。クスノキ科ハマビワ属の常緑高木で関東地方以西の暖地の常緑樹林に生育している。樹皮が剥がれてまだら模様になる様子を鹿の子に見立てて名付けられている。雌雄異株で8~9月に葉腋に小さな淡黄色の花を咲かせ果実は翌年の秋に赤く熟す。写真は若い果実で直径3~4ミリ。先端には雌蕊の柱頭が残っている。
ヒノキ科ヒノキ属の「ヒノキ(檜)」。福島県以南の山地に分布している常緑高木で雌雄同株。4月頃、枝先に雌雄の花を咲かせる。スギと同様にヒノキも花粉症の元凶でスギ花粉の飛散が終わる頃にヒノキ花粉が飛び始める。写真は雌花で直径4~5ミリ。
樹木の葉や幹から放出される香りはフィトンチッド (phytoncide)と呼ばれ樹木が傷ついた際に放出される。これは殺菌効果があり身を守る防御成分でフィトン(phyton)は植物を意味しチッド(cide)は殺すという意味の造語になる。ヒノキは樹々の中でもフィトンチッドの含有率が高くヒノキチオール(Hinokitiol)と呼ばれる。またヒノキは建築材料としても優れておりヒノキが使われている奈良の法隆寺は築後1000年を超える世界最古の木造建築になる。
ヒノキ科ヒノキ属の「サワラ(椹)」。東北地方~九州の山地に分布する常緑高木で日本固有種。雌雄異花で4月に枝先に雌花と雄花を咲かせる。写真は雌花で直径3~4ミリ。ヒノキよりも少し小さい。材はヒノキよりも柔らかく建築構造材には向かないが曲げ物、風呂桶などに利用される。その名前は材が“さわらか(柔らか)な木”という意味の“サワラギ”が転訛したと考えられている。
マメ科アカシア属の「フサアカシア(房あかしあ)」。オーストラリア原産の常緑高木で18世紀にヨーロッパに持ち込まれた。葉の様子は同属のギンヨウアカシアに良く似ている。写真の右側がフサアカシアの葉で長さは3センチほど。羽片は30~35対確認できる。左側がギンヨウアカシアで長さは2センチほど。羽片は15~20対でフサアカシアより少ない。ちなみにフサアカシアもギンヨウアカシアもミモザと呼ばれるがミモザはそもそもオジギソウ属のことで誤用されたものが一般的になっている。
町田街道を自転車で走っていて見掛けた民家の「ナガバアカシア(長葉あかしあ)」。マメ科アカシア属の常緑高木でオーストラリア原産。ギンヨウアカシアやフサアカシアは細かい羽状複葉になるのに対して本種の葉は長さ5~6センチで互生している。葉は大きくなると20センチにもなるようだ。
マツブサ科(←シキミ科)シキミ属の常緑小高木で花や果実だけでなく茎や根にも毒がある。その昔、土葬をしていた時代には墓地が犬や小動物に荒らされるのを防ぐために植えられ今でも寺や墓地で見ることが多い。早春に直径3~3.5センチの花を葉腋に多数咲かせる。シキミに含まれる有毒成分はアニサチン(anisatin)やイリシン(irisin)で誤食すると嘔吐、下痢、痙攣などを引き起こすことがある。
インフルエンザ治療薬“タミフル”の原料のひとつに“シキミ酸”と呼ばれる有機化合物がある。これはシキミから見出されたことで名付けられたがほとんどの植物で見られるという。現在タミフルに使われるシキミ酸はトウシキミの果実(=八角)から抽出されているようだ。