小下沢林道の沢沿いに群生している「フタバアオイ(双葉葵・二葉葵)」。ウマノスズクサ科カンアオイ属の多年草で日本固有種。福島県以南の山地に分布している。4月頃に新葉が展開すると同時に葉腋に下向きの小さな花を咲かせる。茎は地上を這い横に拡がり葉は卵心形で先端は尖る。
毎年5月15日には京都市の賀茂御祖神社(下鴨神社)と賀茂別雷神社(上賀茂神社)で“葵祭”が行われる。平安時代より国家的な行事として行われてきた歴史があり、庶民の祭りである祇園祭に対して葵祭は貴族の祭りだったようだ。古代より賀茂神社の神紋としてこのフタバアオイが使われており、徳川家の家紋の“三つ葉葵”もフタバアオイに由来していると言われている。
裏高尾“小下沢”で見られる「ツルネコノメソウ(蔓猫の目草)」。ユキノシタ科ネコノメソウ属の多年草で近畿地方以北の山地に分布し沢沿いの湿った岩肌などに生育している。3~4月に直径5ミリほどの淡黄色の花を咲かせ花後に匍匐茎を四方に伸ばす。写真は果実が弾け杯状になり種子が零れている様子。杯の直径は3ミリほどで種子は直径0.2~0.3ミリ。やはり花を見たら果実や種子まで確認しておきたい。
奥高尾の登山道脇に咲いている「ナツトウダイ(夏燈台)」。トウダイグサ科トウダイグサ属の多年草で、夏の名があるが花期は4~5月。草丈は50~80センチになりクワガタムシの角のような4つの腺体の中心に雄花がある。雌花は受粉すると柄を伸ばし腺体の外側に膨らんできた子房を垂らす。
キンポウゲ科オキナグサ属の「オキナグサ(翁草)」。本州~九州の山地の陽当たりの良い場所に生育する多年草で4~5月に茎頂に暗赤紫色の花をひとつ咲かせる。花後に白く長い冠毛がある果実を白髪の老人に見立てて名付けられている。
裏高尾“小下沢”の道端で咲いている「オウギカズラ(扇葛)」。シソ科キランソウ属の多年草で沢沿いの林縁などに生育している。蔓性ではないが根元から走出枝(ランナー)を出して扇のように拡がることから名付けられている。4~5月に長さ1~1.5センチの淡紫色の唇弁花を咲かせる。上唇は2裂し下唇は3裂している。
大栗川“宮田橋”付近の遊歩道に咲いている「ハナヤエムグラ(花八重葎)」。アカネ科ハナヤエムグラ属の一年草でヨーロッパ原産。1961年に千葉県で帰化が確認されその後北海道~本州、四国に拡がっている。花径は3ミリほどで花冠は4裂している。雑草だがなかなか美しい。
鑓水の“絹の道”で見られる「ギンリョウソウ(銀竜草)」。ツツジ科(←ギンリョウソウ科・イチヤクソウ科)ギンリョウソウ属の多年性菌従属栄養植物で葉緑素を持たず外生菌根菌(他の植物の根と共生するカビの一種)を分解して栄養供給を受けている。ギンリョウソウが透明感のある白銀色に見えるのは、鱗片状になった葉や花の器官が薄く細胞が無着色のため、その透き間の空気が光を乱反射させているため。ユリやヤマボウシの花などの白色とは全く異なる。
奥高尾“逆沢作業道”で見られる「ユキヤブケマン(雪藪華鬘)」。ケシ科(←エンゴサク科)キケマン属の越年草で、全体が紫色になるムラサキケマンに対し本種は花の先端まで白くなる。先端に淡く紫色が残っていたのでシロヤブケマンと判断していたが、コメントを頂きユキヤブケマンに訂正した。草丈は20~50センチで4~6月に茎の上部に長さ2センチほどの花を多数咲かせる。
下柚木“永林禅寺”の墓所で見掛けた「ハラン(葉蘭)」。もしやと思って葉の基部を掻き分け落ち葉を除去すると予想通り花が現れた。ハランはキジカクシ科(←スズラン科・ユリ科)ハラン属の常緑多年草で3~5月に直径2.5~3センチの花を葉の根元の地面スレスレに咲かせる。花被片は8枚でキノコに擬態しておりポリネーターのキノコバエを誘引している。花の構造は複雑で外側に淡黄色の花被片があり中央の紫色の部分が雌蕊の柱頭になる。その下の花柱の周囲に雄蕊があり花粉を出す。キノコバエは花被片と柱頭の透き間から侵入し雄蕊の花粉を付けて脱出する。
奥高尾“日影林道”の沢沿いに生育している「タチガシワ(立柏)」。キョウチクトウ科(←ガガイモ科)カモメヅル属の多年草で日本固有種。本州や四国の山地の林内に生育し草丈は20~30センチ。4~6月に茎の先端に淡黄紫色の花を多数付ける。花後に葉は大きくなり同属のツルガシワに似ているが茎が直立するので名付けられている。