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ひとりごと

三流オーディオ

2006年06月05日 | 三流オーディオ
 私は三流オーディオを楽しんでいる。何故三流なのかというと、もちろん一流でも二流でも無いからである。たぶん一流というのは金も時間も惜しまずにそれに注ぎ込めるような人で、二流というのは金も時間も惜しいのだが何とか工面して最も高級な機器よりも一段下でもいいから心意気だけは一流を目指しているような葛藤を胸の内に秘めているような人だと思っている。

 では、私のいう三流というのは何かというと。普段は何でも音さえ出ていれば何も気にしない人で、音楽のジャンルだってジャニーズだろうがフュージョンだろうがクラシックだろうがその日の気分で何でも聴いてしまうようなお気楽さをもっているひとである。一流や二流の人は世間一般の最高峰と言われている評価を基準にして自らのオーディオライフを築いているのだが三流の私は最高峰の機器の名前さえ知らない。だいたい一流のオーディオ機器が鳴っている音を聴いたことさえない。

 2年前のことになるが、中古屋さんで有名なハード・オフというお店の中を見て回っているとき気になる機器が目に入った。それはTEAC製オートリバース3ヘッドのカセットテープレコーダである。値札には「再生しません。1,500円」と書いてあったと記憶している。この頃にはオーディオ・レコーダとしてはMD(Mini Disk)が標準になっている時代で、いまさらカセット・テープは無いだろうという時代である。しかしながら、なぜかこれが無性に気になってしまったので1,500円は少々高いなと思いながらも購入してしまったのである。

 型番は「R-888X」、帰ってインターネットで検索してみると、何と当時の価格が99,800円。高!。兄貴分にはR-999Xというのがあって1984年製でこちらはTEACの最高の粋を集めた物で、価格は149,000円って、たかがテープレコーダにこの値段。R-888Xのほうはグレードをちょっと下げたお手ごろ価格の設定、ってそれでも99,800円は高過ぎますって。

 さて、「再生しません」のこの機器の現状をチェックしてみました。その昔録った適当なカセットテープを入れて再生ボタンを押してみます。回りません。でも何か音がしています。断っておきますがこの時はアンプには接続していないので再生された音では決してありません。なにやら機器の内部からウーンウーン唸るような音が聞こえます。最初からわかっていることではありますが、分解して何が起きているのか確かめなくてはなりません。

 筐体を開けたままで同じように再生ボタンを押してみます。左右のキャプスタン・ドラムにかけてあるゴムの平ベルトが一瞬回ろうとするものの回りません。キャプスタンが回らなければテープを走行させることはできないので、どうやらこれが原因のようです。で、ドラムを手で回してみます。んっ、回りません。何かと思って調べたところ平ゴムベルトがドラムに接触している部分全体にわたって溶けて固着しています。取り敢えず固着したゴムベルトをはぎ取って両ドラムが回るようにする。ベルトは多少延びているものの切れてはいないので取り敢えずは使えそうである。

 元通りにして再び再生ボタンを押してみる。ガーン、回らない。相変わらずウーンウーン唸る音が聞こえている。モータか?モータをよく見てみると樹脂部分に熔けた跡がある。前オーナは回らないデッキを何度も回そうとして遂にはモータを熱で破壊してしまったようである。新しい部品を入手しなければ修理不可能なことがこの時点で判明する。万事休す。

 インターネットでTEACのサイトにアクセスしてみた。調べてみると部品の注文は在庫があればメールを使ってできるようである。支払いは代引きとのこと。早速消耗品のゴムベルト一式と問題のモータを注文した。幸いにも在庫があり送ってもらうことになった。よく憶えていないが3,600円くらいかかったと思う。TEACは会社自体が存続しているので本当に助かった。これがアカイやアイワといった今は無き会社だったら部品の調達は新品ではまず無理だろう。

 さて、新品の部品が手に入ったので早速修理して試聴してみた。そして驚いた。音が全然違うのである。むかし録ったテープは何度か繰り返し聴いているのでどんな音がするかは記憶に残っているのであるが、この時聴いた音は記憶に無い音だったのである。もの凄くいい音を鳴らしてみせてくれたのである。特に高音の伸びにはすばらしいものがある。音域全体に透明感があるのである。これにはぶったまげた。直ぐに昔から使っているミニコンポのプレーヤで同じテープをかけてみた。コイツからは、なにやらこもったようなくすんだ音がしている。同じテープなのにこんなに音が違うとは思ってもみなかった。というか、カセットテープがこんなにいい音を出せるとは思ってもみなかった。更に言うならぼろいデッキでもいい音は残せていたのにも驚いた。再生能力が及ばなかっただけなのだ。このとき初めて99,800円の価格の意味がわかった。因みに音出しに使ったアンプは同じ物を使ったと言うことを付記しておく。

 このようにして私は三流オーディオの世界に落ちていってしまったのである。三流オーディオマニアはほんの思いつきで天啓があった時のみ動きを始めるのでやはり二流とも違うのである。この他にも三流オーディオの話はいくつかあるので暇な時にでも書いて見ようと思う。どれも貧乏くさい、しょぼくれたはなしだが。

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