DALAI_KUMA

いかに楽しく人生を過ごすか、これが生きるうえで、もっとも大切なことです。ただし、人に迷惑をかけないこと。

湖の鎮魂歌(50)

2013-08-24 20:54:43 | ButsuButsu


何とまあ、17年目なのだそうだ。

びわ湖で無人ソーラーボート大会を開催した年の数だ。

2平方メートルの太陽光電池を駆動源として、GPSとジャイロコンパスを使って無人ボートを走らす。

この競技会を思いついたのは、私がまだ琵琶湖研究所にいた頃だ。

ここ2年間は、立命館大学を中心とした遊湖の会が優勝している。

当然、今回も大本命だ。

学生たちも大いに盛り上がっている。

今日は、天気予報では雨だと言っていた。

しかし、秋雨前線の裏側となった知内浜は、時折薄日がさす天気となっていた。

「できる、できる」

遠くからの参加者を迎えて、私たちは大いにやる気になっていた。

なんと言っても東大チームには、今回、スウェーデン工科大学のメンバーが助っ人として参加していた。

負けるわけには行かない。

立命館大学チームも、過去最多の14名が参加している。

2番手の出艇だったが、トラブルが発生した。

ラダーサーボが壊れたのだ。

学生たちが大急ぎで交換する。

10時20分出発のはずが、すでに11時近くとなっていた。

でも、それからのチームワークがすごかった。

修理が終わった。

湖面に浮かべたクルーレスソーラーボートが音もなく滑走していく。



雨上がりの曇り空のせいで、速度は快晴時の4割くらいだろうか。

懸命に、先行するボートを追いかける。

結局、3時間の制限速度では完走することが出来なかった。

ただ東大のボートがリタイアしたおかげで、本日は暫定一位となった。

やったね。

明日は、ミスのないようにしたいものだ。

今回は、伴走船に魚探を取り付けた。

先月モンゴルに持参したものと同じ機械だ。



ほとんど魚がいない。

見た目の判断だが、魚の数はフブスグル湖の10の1もいないのではないだろうか。

びわ湖から魚が消える日が近づいているのかもしれない。

皆が他人のせいにすることが大好きな日本人に、本当にびわ湖を守ろうとする気持ちがあるのだろうか。

うれしい気持ちと、悲しい気持ちが混じりあった今日の競技会だった。

明日は、よい日でありますように。

思わず祈りたくなるような気分で宿へと向かった。

8月23日(金)のつぶやき

2013-08-24 04:56:18 | 物語

湖の鎮魂歌(49)

2013-08-23 16:58:16 | ButsuButsu


ある新聞から琵琶湖の活断層に関する記事を書いてくれと頼まれた。

湖の中の断層についてまとめたものとしては、1990年に書かれた植村・太井子の論文がある。

地理学評論に書かれたこの論文では、西岸湖底断層系、南岸湖底断層系、東岸湖底断層系の3つに分類している。

ユニブームとエアーガンの測定結果を用いた診断で、現段階では質や量ともに最も信頼できるデータだと言える。

ネットで調べると、「活断層とは、最近まで活動しており、将来も活動する可能性のある断層である」と定義されている。

最近というのは、数十万年以降を指すらしい。

その意味では、40万年の歴史を誇る現琵琶湖は十分にその資格がある。

東西からの圧力によって沈降している湖なので、琵琶湖の断層はすべて逆断層に分類される。

私が自律型潜水ロボット「淡探(たんたん)」を用いて撮影した湖底映像の中に、断層を示唆するものがある。

文頭に示した図中の赤丸(A点)と青丸(B点)がそれにあたる。

A点で撮影された映像は、奇妙な形をしている。



まるで人が作ったようにきれいなブロックが並んでいる。

ひとつの段の高さが30cmほどだろう。

2010年12月18日に発見した。

この場所の水深は88.31mで、水温8.14℃、溶存酸素濃度12.1mg/L、電気伝導度130.67μm/cm、pH7.13であった。

植村・太井子が示している断層系の場所とは異なっているので、最近になって形成されたものなのかも知れない。

1976年に実施された国土地理院の測量と、2001年に行った私の計測結果の両方が正しいとすると、琵琶湖の深い場所における水深は過去25年間で30cmほど深くなっている。

なんとなく整合性がありそうな話である。

B点では、高さ数メートルにわたるきれいな断層面が見える。



おそらく見ている手前がずり落ちたのだろう。

2008年11月20日に撮影されたものだ。

水深は57.08mで、水温7.88℃、溶存酸素濃度4.34mg/L、電気伝導度135.2μm/cm、pH7.06であった。

これは南岸湖底断層系の近くに存在する。

そう言えば、英国の歴史家であるLisa Jardine教授 (1944-)の文章に次のような一節があったことを思い出した。

It is a basic requirement of scientific method that a tentative explanation has to be tested against observation of the natural world.

From the very beginning scientists have been suspicious whenever the data fit the hoped-for results too closely.

もっと予算と機会があれば、琵琶湖の底で起こっているこれらの興味深い現象を解明できるのだが。

そう思って、懸命にファンド申請書のマス目を埋めている今日この頃である。

びわ湖観察クルージングへの参加者募集

2013-08-23 10:42:03 | ButsuButsu


無料の企画です。

特定非営利活動法人びわ湖トラストと平和堂財団は、下記の予定で親子体験学習「びわ湖観察クルージング」を開催します。

ぜひご参加いただきますようご案内申し上げます。



1.日時:   平成25年(2013年) 9月7日(土曜日)

午前9時30分 大津市浜大津港にて受付

午前9時45分 ~ 午後4時30分 びわ湖観察クルージング

2.場所:   びわ湖

3.人数:   親子20組(先着順)、子供は小学生3年生以上で必ず父兄同伴のこと

4.参加費: 無料

5.プログラム (当日の天候によって若干の変更があることもあります)

午前09時45分  出港
水中ロボット開発の話 (川村貞夫 立命館大学教授)

午前11時00分  近江舞子寄港
水中ロボットによる湖底観察・透明度板工作

午後00時30分 出港
昼食

午後01時15分 沖の白石
北湖透明度の測定

午後02時00分 沖島寄港

午後03時00分 出港
びわ湖のふしぎな話 (熊谷道夫 日本陸水学会会長)
               南湖透明度の測定

午後04時15分 浜大津帰港
記念写真

午後04時30分 解散

6.申し込み びわ湖トラストホームページから入力 (http://www.biwako-trust.com/)

当日の持ち物についてもホームページを参照してください。

7.共催 特定非営利活動法人びわ湖トラスト、平和堂財団

8月22日(木)のつぶやき

2013-08-23 04:57:21 | 物語

ブダペストから(5)

2013-08-23 00:02:01 | ButsuButsu


タクシーの運転手が言っていたように、週末のブダペストはうだるような暑さだった。

気温はすでに、40度を超えているだろう。

日本を発てば冷涼な東欧で過ごせるという私の思惑は、見事に裏切られていた。

それでも、ひたすら王宮の丘を登っていた。

流れ出る汗が、手に持ったハンカチをぬらしていた。

目指していたのは国立美術館だった。

特に意味はないのだが、海外へ来たときに仕事の合間を縫って美術館を訪ねることにしていた。

時々、思いもかけない作品と出会うことがある。



チケット売り場で、印象派の特別展があることを聞いた。

見逃す手はない。

Impressionist artworks from three collections together in one grand-scale exhibition. From the end of June, masterpieces from the collections of the Israel Museum in Jerusalem, the Hungarian National Gallery, and the Museum of Fine Arts, Budapest will be on display in the Hungarian National Gallery. Visitors will have an opportunity to view paintings by French Impressionist and Post-Impressionist artists alongside outstanding works by the most important Hungarian painters of the period.

Our exhibition presents an exceptional and unique opportunity to see the paintings of such outstanding artists of French Impressionism and Post-Impressionism, such as Pissarro, Monet, Degas, Renoir, or Cézanne, Gauguin, and Van Gogh alongside works by their Hungarian contemporaries. The best known paintings of Pál Szinyei Merse, Károly Ferenczy, János Vaszary, Adolf Fényes, László Mednyánszky, and József Rippl-Rónai have never before been seen in such a rich international context.



驚いたのはゴッホの作品だった。

ポピーの赤が、こんなに鮮烈だったとは知らなかった。

ひまわりで有名な画家だが、その比ではない何かがあった。

しばらく凍り付いてしまった。

この赤い色は、尋常ではない。



そう言えば、昨夜、黒柳徹子がテレビで語っていた。

彼女の舞台を観に来た渥美清が、「元気いっぱいやればいいんだ」と励ましたという。

もちろん、懸命な努力の上での激励である。

創造は力だと思う。

文章でも、絵画でも、音楽でも、力のない表現は人の心を打たない。

それは生命力と言ってもよい気がする。

いやー、参った。

暑い坂道を登ってきた甲斐が会った。

とにかく、ゴッホはポピーがいい。

湖の鎮魂歌(48)

2013-08-21 18:08:32 | ButsuButsu


帰国してから少しずつデータの解析を行っている。

ぼんやりとした形だが、全容が見えてきた。

水深30m付近に大小の魚影が集まっている。

おそらくこの水深に餌となる物質が流出しているのだろう。

150cmあまりの体長を持った魚も検出されているが、複数の魚が重なっているのかもしれない。

もしそうでないとしたら、巨大なタイメン(イトウ)を捉えているのかもしれない。



通常は河川に生息していると言われているが、湖にいても不思議はないだろう。

では、水深30m付近に栄養を供給している源は何だろうか。

想像して見るからに興味深い。

私は、溶解した凍土から溶存有機物が供給され、バクテリアから動物プランクトンへの栄養フローがあるのではないかと思っている。

以前解析したようにこの湖の水位が上昇しており、その供給量の多くが地下水の増加であった。

栄養塩の収支が合うのか、未解明な点も多い。

フライを持参したチャーリーは、次回はルアーを持って来ると誓っていた。



まあ、急ぐことはないだろう。

この地の人々は、誰もここまで来て魚を釣ろうとは思っていないだろうから。

湖面はあくまで碧く、水中で起こっている生き物の物語を語ろうとはしない。

好日とはこのようなひと時を指すのであろうか。



温暖化が進み、より多くの凍土が溶解したら、フブスグル湖に群れる魚はもっと多くなるのだろうか。

それともっと大きな変化をもたらすのだろうか。

地球と海の縮図を、この湖に垣間見た気がする。

8月20日(火)のつぶやき

2013-08-21 05:07:17 | 物語

湖の鎮魂歌(47)

2013-08-20 18:33:44 | ButsuButsu


7月20日(土)

いよいよ出発の時が来た。

昨夜見た夜空は、特に美しかった。

もう少ししたら、満月になるだろう。

日本で見ても、モンゴルで見ても、同じ月に変わりはないのだが、なぜか近くに見える。

初めてチャーリーが参加したツアーだったが、お互いに有意義だったと思う。

コンクリートのジャングルとは異なった、生の自然と触れていると、なんだか自分までも浄化した気になる。



今回は、リカルド(リチャード)がとても頑張ってくれた。

びわ湖をはるかに凌ぐ漁獲生産が期待できる湖だということが分かったが、あまり開発してほしくないと思う。

異邦人の無責任な発言かもしれないが、それに見合う価値がこの湖にはあるのだ。

その思いを、この地の若い人たちに知ってほしい。



自然を壊すのは簡単なことだ。

しかし、元に戻すことはできない。

特に、北緯52度標高1500mの僻地に位置するこの湖は、びわ湖の10倍もの図体をしながら、とても壊れやすのだ。

バヤルタイ(さようなら)、フブスグルノール(フブスグル湖)。

来年、再びこの地を訪れたいと思う。

こうして私はゆっくりと年を取っていくのだろう。

それもいいことだ。

湖の鎮魂歌(46)

2013-08-19 21:38:35 | ButsuButsu


フブスグル湖の湖面は、ところどころでコバルトブルーに輝く。

透明度が高いのと、白い砂浜が広がるからだ。

深い水域ではダークブルーとなる。

冷涼な気温が心地よい。

夏にこの地へ避暑に来ることは、あながちありえない話ではない。

今、日本海の表面水温(SST)が上昇している。

27℃の水温ラインに注目して欲しい。

2011年8月18日には、27℃の等水温線は佐賀県まで達していた。



2012年8月18日には、新潟県まで到達している。



2013年8月18日、つまり昨日には、青森県まで達している。



それだけ日本海に熱が貯まっている。

このことがいろいろな現象を日本に引き起こす。

琵琶湖でも貯熱効果が周辺の気温に大きな影響を与える。

フブスグル湖だけは変わらないで欲しいと思っているのだが、どうやらここにも魔の手が近づいているようだ。


8月18日(日)のつぶやき

2013-08-19 04:57:59 | 物語

ブダペストから(4)

2013-08-18 11:58:32 | ButsuButsu


国際陸水学会における最大のテーマは、地球温暖化の影響評価だった。

ヨーロッパの湖でも、1980年代後半に発生した湖でのレジームシフトが報告されていた。

琵琶湖でもこの頃に急激な変化が起こっている。

このことを指摘したとき、そんなことはないと強行に主張した生物学者がいた。

実際には私が言ったとおり、1990年以降、急激な変化が起こっている。



おそらく世界全体に影響があったのだと思われる。

このような変化を的確に認識するためには、それなりに精度の高い監視が必要だろう。

生物のデータは、サンプリングが困難であることから、精度の低い情報が多い。

今年の夏は暑い。

日本だけでなく、中国、ヨーロッパ、アメリカなど、北半球では猛暑が続いている。

すでに閾値を超えている可能性がある。

注意が必要だろう。

と言っても、今、世界のどの国も気候変化に対応できる余裕がない。

もちろん政府や自治体にも出来ることはあるのだが、すべての施策がピントをはずしているようだ。

結局は、一人一人が対策を考えざるを得ない。

生活様式を変えることも、真剣に考えるべきだろう。

琵琶湖で言うならば、現在の漁業は壊滅的な影響を受ける可能性が高い。

早めに別の産業振興を考えたほうがよい。

8月16日(金)のつぶやき

2013-08-17 05:00:51 | 物語