帰国してから少しずつデータの解析を行っている。
ぼんやりとした形だが、全容が見えてきた。
水深30m付近に大小の魚影が集まっている。
おそらくこの水深に餌となる物質が流出しているのだろう。
150cmあまりの体長を持った魚も検出されているが、複数の魚が重なっているのかもしれない。
もしそうでないとしたら、巨大なタイメン(イトウ)を捉えているのかもしれない。
通常は河川に生息していると言われているが、湖にいても不思議はないだろう。
では、水深30m付近に栄養を供給している源は何だろうか。
想像して見るからに興味深い。
私は、溶解した凍土から溶存有機物が供給され、バクテリアから動物プランクトンへの栄養フローがあるのではないかと思っている。
以前解析したようにこの湖の水位が上昇しており、その供給量の多くが地下水の増加であった。
栄養塩の収支が合うのか、未解明な点も多い。
フライを持参したチャーリーは、次回はルアーを持って来ると誓っていた。
まあ、急ぐことはないだろう。
この地の人々は、誰もここまで来て魚を釣ろうとは思っていないだろうから。
湖面はあくまで碧く、水中で起こっている生き物の物語を語ろうとはしない。
好日とはこのようなひと時を指すのであろうか。
温暖化が進み、より多くの凍土が溶解したら、フブスグル湖に群れる魚はもっと多くなるのだろうか。
それともっと大きな変化をもたらすのだろうか。
地球と海の縮図を、この湖に垣間見た気がする。
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