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田端到&ビンゴ本郷の実験創作プロジェクト

三谷幸喜「コンフィダント」「オデッサ」

2024-05-11 21:23:47 | エンタメ
●三谷幸喜さん脚本・演出の2007年の舞台『コンフィダント・絆』をWOWOWで鑑賞。
 とても良かった。後述の『オデッサ』を先に見たため、やっぱ舞台をテレビで見ちゃいけないんだなと期待を下げて鑑賞したら、こっちは素晴らしかった。
 才能はあるけど人付き合いの下手な人間と、才能はないけど人に好かれる人間の対比のようなことをよく考えてきただけに、自分好みの芝居だったのもある。

 19世紀のパリ。まだ売れる前の若手画家4人と、そのモデルの女性ルイーズの物語。4人は共同でアトリエを借りている。
 才能はあるのに自分を信じられず、精神的にも繊細すぎるゴッホ/生瀬勝久。
 絵が売れ始め、4人でいると優越感にひたれるが、自分の才能の限界を知っているスーラ/中井貴一。
 才能はないが人に好かれ、面倒見の良いシュフネッケル/相島一之。
 ゴッホ寄り、でも明るさのあるゴーギャン/寺脇康文。

 それぞれの信頼、嫉妬、猜疑心が絡み合いながら、進行していく。4人に請われてモデルをするルイーズ役の堀内敬子さんも良かった。舞台映像なんだけど、役者さんのアップも多く、ちゃんとテレビ向きに編集されていた。かなりのカメラの台数が使われていると思われる。

 ゴッホは生前、絵が一枚しか売れなかったエピソードで知られる。そりゃ耳も切りたくなるだろう。仲間がもっと正当に彼を評価していたら、どうなっていたのか。
 才能があり、実績もぶっちぎりなのに、不遜さが何ひとつ感じられない三谷幸喜さんの精神構造も不思議だ。「ミタニに敗れ去った者たち」みたいな芝居、できないかな。

●三谷幸喜の密室劇「オデッサ」をテレビ鑑賞。出演は、柿澤勇人、宮澤エマ、迫田孝也。
 登場人物3人だけの会話劇という、三谷演劇の原点回帰のような芝居だったけど(私はサンシャインボーイズを30年以上前から見ている)、内容はアンジャッシュのすれ違いコントを100分間、見せられたような気分。終盤のどんでん返しは鮮やかだったけど、そこに至るまでが少々退屈だった。

 言語の違いによるディスコミュニケーションの滑稽さと、ひとつの嘘から広がっていく虚と実のあやふやさ、個人のルーツを形作るのは国か言葉か、みたいな話? 途中からぼんやり見てたから、よくわかってないかも。一番ためになったのは、ドックアンドチャイナ。

 とはいえ、舞台というのはライヴ感を味わいながら現場で集中して観劇するのと、テレビで引きの画面を見るのでは全然印象も違うし、ぼんやり見た者がこんな感想を書いちゃいかんのだろう。
 あの設定で100分持たせてしまうところは、すごい。
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