空色野原

空の下 野原にねころんで つぶやく

猫の郵便屋さん

2008-07-11 13:14:38 | 動物
 熊本県天草市に手紙を運ぶネコがいる。首輪に手紙をぶら下げ、かわいがってくれる近所の2軒を行き来し、もう20通ほど「配達」した。朝出した手紙はその日に届くことが多く、時には1、2時間で着く「速達」になることもある。ネコの郵便屋さんのおかげで、飼い主同士の交流も始まった。

 ネコは天草市倉岳町棚底のアルバイト山本光広さん(69)方で3年ほど前に生まれた雄の雑種で、名前は「たま」。生後半年で姿を消したが、昨年秋に帰ってきた。手入れされ、毛並みがきれいだったため、妻の幸子さん(68)が「どなたかこのネコを飼っているんですか」と書いた紙をたたみ、首輪にくくりつけた。数日後、首輪に「大人の方ですか。字がきれいですから」との返事を下げてきた。

 ネコの首に袋をぶら下げ、何度か手紙をやりとりしたところ、相手は近所に住む県立苓明(れいめい)高校1年生の魚本奈実さん(15)=当時は中学3年生=とわかった。

 魚本さん方では一昨年夏、家の前にいたネコに祖母のツヤ子さん(74)が気づき、餌をやったらそのまま居ついた。魚本家では「小豆のようにかわいい」と「あずきち」と呼び、奈実さんと姉の英里さん(17)=同高3年=が風呂に入れ、ブラシをかけ、添い寝をしてかわいがった。

 2軒の飼い主を二つの名前で行き来するネコが運ぶ手紙は「きょうは元気でしたよ」などとネコの話題が中心。幸子さんが首輪にリボンをつけて送り出すと、奈実さんが「首飾りをありがとうございます」と返事をよこす。高校受験を控えた奈実さんが「高校で一生懸命勉強したい」と抱負を書いてきたこともあった。

 2軒の距離は200メートルほどだが、ネコを見た近所の人の話では、犬を飼っている家を避け、塀の上や農道を大回りして500メートルほど歩いて往復しているらしい。

 奈実さんは勉強や部活動で忙しいが「これからもあずきちのことを手紙に書いていきたい」と言い、幸子さんも「せっかくネコを通じて知り合ったので、やりとりはできるだけ続けたい」と話した。(佐藤幸徳 08.7.3朝日新聞)

写真:全日写連梅戸吉伸さん撮影