himikoの護国日記

長年の各種自虐史洗脳工作から目覚めた一人の愛国者の日記。
日本をおかしな反日勢力から守り、真の独立国にしたいです。

【転載】余命3年時事日記 2355 ら神奈川弁護士会②

2018年02月04日 | 在日韓国・朝鮮人
神奈川県弁護士会
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横浜市及び川崎市に対し、学校法人朝鮮学園に対する、補助金予算の執行停止 及び予算の減額の措置を見直すことを求める会長声明
2015年06月12日更新
神奈川県は、2013年2月、朝鮮民主主義人民共和国(以下「北朝鮮」という。)の核実験を理由として、学校法人神奈川朝鮮学園(以下「学園」という。)が運営する県内5校の朝鮮学校への運営費補助金を打ち切った。これをきっかけに、横浜市及び川崎市は、既に2013年度予算に計上されていた学園が経営する学校や保護者への補助金支給を凍結した。
 横浜市は2013年10月に「横浜私立外国人学校補助金交付要綱」を改訂し、「国際情勢を鑑み、補助金を交付することが、前条第1項に規定する趣旨(国際交流の増進及び私学教育の進行を図る)に反すると市長が認めた外国人学校にあっては、補助の対象としない」との条項(以下「条項」という)を追加し、2014年度も学園への補助金を予算計上したものの、同条項を根拠に執行しなかった。同市は2015年度予算にも、学園に対する補助金を計上しているが、執行される見通しは立っていない。
 一方川崎市は、2014年度以降、従前の教材費、教員の研修費・授業料等に関する補助金は予算計上せず、新たに「外国人学校児童等健康・安全事業補助金」と「外国人学校児童等多文化共生・地域交流補助金」の支給を始めているが、補助金全体の金額は従前の補助金の額に比べて3分の1以下に減少している。
このような両市の対応の原因が、日本と北朝鮮の国際関係の悪化にあることは明らかである。しかし両市の対応は、国際関係には何らの責任のない学園に通う子どもや保護者に経済的負担をかけるばかりではなく、日本の社会の中で自分たちが疎外されているという精神的な傷を負わせている。こうした事態は、憲法26条が保障する子どもの教育を受ける権利にも影響を及ぼしかねず、わが国が1994年に批准している子どもの権利条約28条及び29条が保障する、教育における機会平等、財政的援助並びに文化的アイデンティティの尊重にも違反するものである。
 2014年8月28日に開催された国連人種差別撤廃委員会の会議で採択された「日本の第7回~9回定期報告に関する調査最終見解」において、「委員会は以下の状況を含む締約国の法規定及び政府活動によって、締約国における韓国・朝鮮系の子どもたちの教育を受ける権利が疎外されていることを懸念する。a)朝鮮学校が高等学校就学支援金対象から除外されていること、b)自治体による朝鮮学校向け財産支援の割り当ての継続的縮小あるいは差し止め(第2条及び第5条)」「委員会は締約国がその立場を見直し、自治体による朝鮮学校への資金提供を再開させ…ることを推奨する」との指摘がなされている。この指摘は尊重されなければならない。
 神奈川県は、学園の児童・生徒に対するしわ寄せが及んでいる状況を見直し、平成26年度から補助金に代わるものとして、外国人学校生等支援事業を開始し、学園に通学する児童・生徒に対しても同事業に基づく外国人学校児童・生徒学費軽減制度事業補助金の支給を実施している。
 以上から当会は、横浜市に対しては凍結されている学園に対する補助金予算の執行を求めるとともに、川崎市に対しては、学園及び保護者に対し従前支給されていたのと同額程度の補助金の支給を求める。
2015(平成27)年6月11日
横浜弁護士会  会長 竹森 裕子

調停委員・司法委員および人権擁護委員についての実質的な国籍要件に関する意見書
2015年07月09日更新
趣 旨
1. 当会は、最高裁判所が、「弁護士となる資格を有する者、民事もしくは家事の紛争の解決に有用な専門的知識を有する者または社会生活の上で豊富な経験知識を有する者で、人格識見の高い年齢四十年以上七十年未満の者」であれば、日本国籍の有無にかかわらず、等しく民事調停委員及び家事調停委員に任命することを求める。
また、司法委員についても、最高裁判所に対し、日本国籍を有することを選任要件とする取扱を速やかに変更し、日本国籍の有無にかかわらず、適任者を選任する扱いとするよう求める。
2. 人権擁護委員については、人権擁護委員法6条は、憲法14条に違反するので、国会においてただちに見直すことを求める。
理 由
1. 人権としての「公務就任権」
当会には、外国人(日本国籍を有しない者を指す。以下同じ。)の会員で、調停委員・司法委員に相応しい人格識見を有しながら、これまでの最高裁判所の運用からして、調停委員・司法委員に任命されることはないと予測される会員がいる。また、人権擁護委員としても適任でありながら、外国人の会員であるため、市町村議会の議員の選挙権を有しておらず、法律上、人権擁護委員への就任が認められない会員がいる。
このような取扱いは、弁護士だけでなく、一般の市民であっても同じであり、調停委員・司法委員あるいは人権擁護委員に適任であったとしても、外国人であれば、これらの委員への就任は認められていない。
そもそも、憲法14条は法の下の平等をうたい、また、マクリーン事件最高裁大法廷判決(最大判昭和53年10月4日)でも、「憲法第3章の諸規定による基本的人権の保障は権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきである」とされている。
「公務就任権」は、職業選択の自由(憲法22条1項)の一つであり、また個人がその能力・個性等を発揮しつつ社会において活動するなど自己実現の面においても極めて重要であり人格権(憲法13条)としての側面も有している。したがって、「公務就任権」は原則として、外国人にもその保障が及ぶと解すべきであり、日本国籍を有しないことを理由として不合理な区別を行うことは、法の下の平等に反し、許されない。もっとも、国民主権の原理により、一定の公務については、外国人の公務就任権が制限されることもあると解される。
この点、最高裁判所は、国民主権の原理に基づき、国及び普通地方公共団体による統治のあり方については日本国の統治者としての国民が最終的な責任を負うべきものであること(憲法1条、15条1項参照)に照らし、「住民の権利義務を直接形成し、その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い、若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い、又はこれらに参画することを職務とするもの」(以下「公権力行使等公務」という。)に、外国人が就任することは、日本の法体系の想定するところではないという判断を示している(最大判平成17年1月26日)。
この判決については、日本弁護士会連合会も、2009年3月18日に「外国籍調停委員・司法委員の採用を求める意見書」を公表し、「広範な範囲の公務員について、その具体的職務内容を問題とすることなく公権力行使等公務員として当然に外国人の就任を拒絶することを認めるものであり不当である」と意見を述べているところであり、その内容について疑問がないわけではない。その点についてはここでは措き、以下では、上記最高裁の平成17年大法廷判決に基づき、公務の内容が「公権力行使等公務」にあたるかどうかを基準に、外国人が、調停委員・司法委員および人権擁護委員へ就任することが制限されていることについて、憲法14条に反するかどうかを判断する。
なお、これらの委員のほかにもさまざまな公務について、外国人がそれに就任することが制限されているが、本意見書においては、弁護士会が推薦に関わっているこれらの委員に絞って、検討し、意見を述べることとする。
2.  調停委員・司法委員について i.  法律等の規定について
民事調停委員及び家事調停委員規則(以下「調停委員規則」という。)1条は、調停委員の採用について、「民事調停委員及び家事調停委員は、弁護士となる資格を有する者又は社会生活の上で豊富な知識経験を有する者で、人格識見の高い年齢四十年以上七十年未満の者の中から、最高裁判所が任命する。ただし、特に必要がある場合においては、年齢四十年以上七十年未満であることを要しない。」と定めている。また、同2条では、欠格事由を定めているが、ここでも国籍等を欠格事由とする規定はない。
また、司法委員については、司法委員規則1条においてその選任要件について「良識のある者その他適当と認められる者であること」と定めがあるだけである。同規則2条では、欠格事由を定めているが、ここでも国籍等を欠格事由とする規定はない。
すなわち、法律にも、調停委員規則・司法委員規則にも、民事調停委員・家事調停委員及び司法委員について、国籍を要求する条項はない。
ii.  現在の運用
 現在、各弁護士会は、地方裁判所・家庭裁判所の推薦依頼に基づいて、調停委員候補を推薦し、各家庭裁判所又は地方裁判所より調停委員候補を最高裁判所に上申し、その上申を受けて最高裁判所が任命する扱いがなされている。司法委員については、各地方裁判所からの推薦依頼を受けて、各弁護士会が司法委員候補を推薦し、各地方裁判所が任命する扱いになっている。
そして、これまで兵庫県弁護士会・仙台弁護士会・東京弁護士会・大阪弁護士会等が外国籍の会員を調停委員ないし司法委員の候補者として推薦したところ、調停委員については最高裁に上申しない等の回答が各地方乃至家庭裁判所からなされ、あるいは司法委員については地方裁判所からその採用が拒否されている。
iii.  最高裁判所の考え方
これを受けて、日弁連が、最高裁にその理由を照会したところ、最高裁判所事務総局人事局任用課は、2008年10月14日付で、「照会事項について、最高裁判所として回答することは差し控えたいが、事務部門の取扱は以下のとおりである。」として、法令等の明文上の根拠規定はないとしながらも、「公権力の行使に当たる行為を行い、もしくは重要な施策に関する決定を行い、又はこれらに参画することを職務とする公務員には、日本国籍を有する者が就任することが想定されていると考えられるところ、調停委員・司法委員はこれらの公務員に該当するため、その就任のためには日本国籍を必要と考えている。」との回答があった。
iv.  検討
 調停制度の目的は、市民の間の民事もしくは家事の紛争を、当事者の話し合いおよび合意に基づき、裁判手続に至る前に解決することにある。
その中にあって、市民の調停委員の本質的役割は、専門的知識もしくは社会生活の上での豊富な知識経験を活かして、当事者双方の話し合いの中で、助言や斡旋、解決案の提示を行い、合意を促して、当事者の互譲による紛争解決を支援することにある。
このような職務の内容に鑑みれば、調停委員の職務は、「公権力行使等公務」にあたるということはできないというべきである。
 確かに、調停調書は確定判決と同一の効力を有するが、それは「調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したとき」(民事調停法16条、家事事件手続法268条)であり、当事者間の合意による紛争解決の意思が尊重されるのであり、当事者の合意が得られない場合には調停は不成立となる。また、調停に代わる決定(民事調停法17条)ないし調停に代わる審判(家事事件手続法284条)もあるが、調停委員は意見を聞かれるだけであり、あくまで決定ないし審判は裁判所が行うこととされている。したがって、これらのことを理由に調停委員が「公権力行使等公務」にあたるということも適当でない。
また、司法委員に関しては、裁判所が必要と認めるときに、和解の補助をしたり、事件について意見を述べたりすることが認められるにすぎず、その職務の内容は純然たる裁判官の補助機能にすぎず、やはり、「公権力行使等公務」には当たらない。
とするならば、外国人であることを理由に調停委員・司法委員への採用を認めない最高裁判所の運用は、法の下の平等を定めた憲法14条に違反する。
さらに、何ら法律等の規定もないのにかかる運用をしているのは、法治主義にも反するというべきである。
なお、最高裁判所は、1974年(昭和49年)から1988年(昭和63年)までの間、日本国籍を有しない台湾籍の大阪弁護士会会員を西淀川簡易裁判所民事調停委員に任命し、定年退職時には大阪地方裁判所所長より表彰を受けたという実例が存在しており、かかる事実は、外国人の弁護士が調停委員となって何ら不都合がないことを如実に示している。
なお、国連の人種差別撤廃委員会は、2010年3月9日第3ないし第6回の日本政府報告書の審査の総括所見において、日本国籍を有しない者を家庭裁判所の調停委員から排除する日本政府の立場に懸念を表明し、さらに2014年8月28日には、第7ないし第9回の日本政府報告書の審査の総括所見において、かかる日本政府の立場に改めて懸念を表明している。
3.  人権擁護委員について  i.  使命・職務
 人権擁護委員は、人権擁護委員法第2条により、その使命は、「国民の基本的人権が侵犯されることのないように監視し、若し、これが侵犯された場合には、その救済のため、すみやかに適切な処置を採るとともに、常に自由人権思想の普及高揚に努めること」とされている。そしてその職務は、同法11条により、「①自由人権思想に関する啓蒙及び宣伝をなすこと②民間における人権擁護運動の助長に努めること ③人権侵犯事件につきその救済のため、調査及び情報の収集をなし、法務大臣への報告、関係機関への勧告等適切な処置を講ずること ④貧困者に対し訴訟援助その他その人権擁護のため適切な救済方法を講ずること ⑤その他人権の擁護に努めること」とされている。
ii.  選任
 人権擁護委員は、市町村長が、その市町村の議会の議員の選挙権を有する住民で人格識見高く、広く社会の実情に通じ、人権擁護について理解のある社会実業家、教育者、報道新聞の業務に携わる者等及び弁護士会その他婦人、労働者、青年等の団体であって直接間接に人権の擁護を目的とし、又はこれを支持する団体の構成員の中から、その市町村議会の意見を聞いて委員候補者を法務大臣に推薦をし、さらに都道府県弁護士会及び同人権擁護委員連合会の意見を聴いた上で、その適任か不適任かを決め、適任者を委員に委嘱して、選任される(人権擁護委員法6条)。
iii.  検討
 上記人権擁護委員の職務の内容を検討するに、①②④⑤は、その性質上明らかに「公権力行使等公務」とはいいがたいが、③についても、そこでいう適切な処置は具体的に以下のように講じられることからして、その職務の内容は、「公権力行使等公務」にはあたらない。
すなわち、人権侵犯事件において、人権擁護委員は、調査が終了次第、遅滞なく口頭又は文書で法務局長又は地方法務局長に結果を通報し、処理について協議し、その後、法務局長又は地方法務局長等が、委員の調査結果を基に被害者の救済のため、事案に応じた適切な処置を執ることとされている。このことからすれば、人権侵犯事件について、適切な処理を執る権限を有しているのは、法務局長または地方法務局長等であって、個人としての人権擁護委員ではない。人権擁護委員はあくまで法務局長又は地方法務局長の職務を補佐するにすぎないものである。さらに、人権擁護委員は、法務大臣の指揮監督にも服する(人権擁護委員法14条)こととされており、その意味でも、その枠内で公務に従事するにすぎないのである。
これらのことからするならば、人権擁護委員の職務は、「公権力行使等公務」には当たらないというべきであり、その職務への就任に日本国籍を要件とすることは、合理的な理由のない差別であり、憲法14条に違反するというべきである。
4.  結論
 日本には現在多くの外国人が生活しており、グローバル化が進む中、多民族・多文化共生社会の形成が不可欠である。多民族・多文化共生社会の形成にとって、できるだけ広く外国人にも公務就任の機会を保障することも重要である。
また、我が国に暮らす外国人の中には、在日コリアンなど、サンフランシスコ平和条約の発効に伴う通達によって日本国籍を失ったまま日本での生活を余儀なくされた旧植民地出身者及びその子孫などの特別永住者も多数存在する。これらの人々にとっては、いまや日本こそがその生活の基盤であり、日本人とかわらない生活実態を持っており、歴史的な経緯等に鑑みても、日本国籍を有しないというだけで、調停委員・司法委員及び人権擁護委員の公務に就任することが一切認められないということは、合理的な理由がないというべきである。
また、外国人であるというだけで、これまで社会のさまざまな分野で十分な経験を積み、高い能力、識見等を有しながら、それを調停委員、司法委員、人権擁護委員という仕事において発揮するチャンスを奪われているのは、社会にとっても有用な人材を登用できないという意味で大変大きな損失である。
さらには、調停制度の利用者には多くの外国人が含まれていることからも、外国人の調停委員が採用される意味合いは大きく、また、現在地域社会において多くの外国人が生活している実態に鑑みれば、その地域社会において外国人が人権擁護委員として活動する意義も大きい。
これらの理由から、当会は、意見書の趣旨のとおり実現することを求める。以上
2015(平成27)年7月8日
横浜弁護士会      会長 竹森 裕子 

会長声明・決議・意見書(2017年度)
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死刑執行に抗議する会長声明
2018年01月26日更新
昨年12月19日、東京拘置所において、2名の死刑が執行された。
死刑は国家が人間のかけがえのない命を奪う制度であり、人間の尊厳を軽視する非人道的なものであるとして、多くの国ですでに廃止ないしその執行が停止されている。2016年12月末日現在、法律上または事実上の死刑廃止国は141か国に及び世界の3分の2以上を占めている。しかも、実際に死刑を執行した国はさらに少なく、2016年の死刑執行国は日本を含め23か国のみである。
 2016年12月の国連総会は、加盟国193か国中117か国の賛成により、死刑存置国に対する死刑執行停止を求める決議を採択した。当会でも、これまで、死刑執行の度に抗議する会長声明等を発出してきたところである。日弁連も、2016年10月7日に開催された第59回人権大会において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、その中で2020年までに死刑制度を廃止すること等を国に求めた。
また、今回死刑が執行された2名はいずれも弁護人がついて再審請求中であり、そのうち1名は、犯行時19歳の少年であったが、これらはいずれも看過できないことがらである。まず、再審請求中にもかかわらず死刑を執行することは、再審という裁判を受ける権利を政府が奪うことであり、極めて問題である。この点、2014年7月24日に国際人権(自由権)規約委員会も、同規約の実施状況に関する第6回日本政府報告書に対する総括所見において、再審請求には死刑の執行停止効を持たせるべきであると勧告している。次に、少年は、成育環境の影響を受けやすく、本人にのみ全責任を負わせることは酷である。この点、国連総会で採択されている少年司法運営に関する国連最低基準規則(いわゆる北京ルールズ)は、「少年とは各国の法制度の下において、犯罪について成人とは違った仕方で取り扱われている児童又は若者をいう」と規定し、「死刑は少年が行ったいかなる犯罪についてもこれを科してはならない」としているところである。
さらに、今日、死刑をめぐる多くの情報が公開されておらず、その中で死刑が執行され続けていることは、民主主義の社会において大きな問題であるといわなければならない。 当会は、改めて、今回の死刑執行に強く抗議するとともに、政府が死刑の廃止に向けて、広く情報を開示し、全社会的な議論と検討を開始すること、そしてその間すべての死刑執行を停止することを強く求めるものである。
2018(平成30)年1月25日
神奈川県弁護士会   会長 延命 政之

当会の多数の会員に対する懲戒請求についての会長談話
2017年12月26日更新
今般,特定の団体が,神奈川県弁護士会所属弁護士全員を懲戒することを求める書面を,約1,000名からとりまとめ,神奈川県弁護士会に送付しました。
しかしながら,これらの書面は,日本弁護士連合会が会長声明を発したことを理由とするもので,弁護士法に基づき個々の弁護士の非行を糾す弁護士懲戒制度にはそぐわないものです。
このため,神奈川県弁護士会は,これらの書面を,この声明に対する反対のご意見としては承りますが,懲戒請求としては受理しないことといたしました。
 弁護士は,弁護士法第1条に基づき,基本的人権を擁護し,社会正義を実現することを使命としており,訴訟や提言等を行うことで,ときには国家権力と対峙しなければなりません。もし国家権力が弁護士に対する懲戒権限を有すると,このような活動が萎縮し,基本的人権の擁護がままならなくなるおそれがあります。このため,弁護士会には自治権が認められ,弁護士に対する懲戒権限は,弁護士会が有しているのです。
 市民のみなさまにおかれましては,このような弁護士懲戒制度の趣旨をご理解下さるようお願い申し上げます。また,神奈川県弁護士会といたしましては,懲戒権限を引き続き適正に行使する所存です。
2017(平成29)年12月26日
神奈川県弁護士会    会長 延命 政之

犯罪被害者のプライバシー尊重を求める会長談話
2017年11月17日更新
なぜ、犯罪の被害に遭うと、被害者や遺族はその意に反して実名や顔写真をさらされなければならないのか。
 私たち神奈川県弁護士会は、2015(平成27)年3月26日に、犯罪被害者のプライバシー尊重を求める会長声明を発表し、これまでこの問題について考え続けてきました。
 今年の10月、神奈川県座間市内の住宅で9名のご遺体が発見されるという事件が起きました。ご遺体全員の身元が判明した今月10日未明からは、新聞やテレビで被害者の名前や写真が流され続けています。
 警察が報道機関に被害者氏名等を発表する際、ご遺族が顔写真の公表や実名報道をやめてほしいと申し入れていても、未だにそのような報道は行われている状況です。
 報道する側にも理由があるのでしょう。犠牲者の痛みを共有するためとか、社会全体で事件について考えるために、実名であることが必要だと言う方もいます。私たちとしても、「報道の自由」や「取材の自由」の重要性を否定しているわけではありません。
しかし、そこには、犯罪被害者、遺族のプライバシーがなぜ暴力的に奪われるのか、なぜ本人や遺族の同意なしに生活状況を書き立てられ、勝手に写真を使われるのか、なぜ自宅を報道陣に囲まれて帰宅できないような生活を強いられるのかについての答えはありません。
プライバシーの権利とは、自分についての情報を適切にコントロールする権利と理解されています。「知られたくないことは知られない権利」「放っておかれる権利」ともいえます。
 犯罪被害者には、遺族には、プライバシーはないのですか。報道の正義のために、社会全体の理解のために、犯罪被害者、遺族のプライバシーが損なわれることが許されるのでしょうか。
これまでも、過熱した報道によって、遺族の心や、被害者の尊厳が傷つけられてきました。
私たちは、この問題について、もう一度考えてもらいたいです。
神奈川県弁護士会は、報道機関や社会の人たちすべてに、被害者や遺族のプライバシーを尊重するよう求めます。
2017(平成29)年11月17日
神奈川県弁護士会    会長 延命 政之

年年齢を引き下げる民法改正に反対する意見書
2017年11月08日更新
第1 意見の趣旨
成年年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正に反対する。
第2 意見の理由
1 現在、政府は、民法が定める成年年齢について、現行の20歳から18歳に引き下げることを検討している。
しかしながら、民法が定める成年年齢を引き下げることについては、以下のような多数の法的な問題が存する。
2 キャッチセールス、アポイントセールス、連鎖取引販売、過量販売等の消費者被害は、20代前半の若者や高齢者等の判断能力が不十分な層に多発している。
 現行民法では、成年年齢は20歳とされ、20歳未満の未成年者は、契約を締結する際に親権者の同意を要し、これを欠く場合、未成年者取消権を行使することができ、消費者被害に遭った際の救済手段となっているが、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げると、このような救済手段を18歳以上20歳未満の若年者から奪うことになる。
 18歳以上20歳未満の若年者は、卒業前の高校生まで含まれ、大学又は専門学校に進学したとしてもまだ学生であり、社会人として活動している者も、いまだその経験は浅い。親元を離れて進学等のため初めて一人暮らしをする者も多い。それにもかかわらず、未成年者取消権という消費者被害に遭った際の救済手段がないとなると、悪質な業者による格好の標的となることは必定である。
 現状では、義務教育・高等学校教育における消費者教育はいまだ十分といえず、民法の成年年齢を引き下げ、これに伴い18歳以上20歳未満の者が締結する契約を、未成年者取消権や親権者による同意権の対象外とすることは、消費者被害の観点から非常に危険である。
また、18歳以上20歳未満の若年者に対して、過剰与信が行われることも懸念される。
3 仮に民法の成年年齢を引き下げるのであれば、最低限、キャッチセールス、アポイントセールス、連鎖取引販売、過量販売の被害について、消費者契約法及び特定商取引法改正により、若年層保護の手当てをするとともに、割賦販売法、貸金業法を改正の上、若年層に対する与信を厳格化し、若年層の保護を行うことが必要不可欠であるが、現行法上、このような手当はほとんど行われていない。
 即ち、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げるのであれば、若年者保護の観点から、最低限でも、消費者法の分野において、
① 消費者契約法を改正し、判断力、知識、経験等の不足に付け込んで若年者等に契約を締結させた場合に、同契約を取消すことが出来る制度を設けること、
② 特定商取引法を改正し、18歳以上20歳未満の若年者に特定商取引法所定の特定商取引を行う場合には、事業者に、当該若年者の知識、経験財産状況に照らし、不適当でないことの確認を義務付け、かつ同確認を怠った場合の取消制度を設けるとともに、これが訴訟で争われた場合には、同確認を行ったことの立証責任を業者側に負わせること、
③ 特に弊害が予想される、連鎖取引販売について、18歳以上20歳未満の若年者に対する勧誘を禁止すること
④ 貸金業法、割賦販売法を改正し、18歳以上20歳未満の若年者に与信をする場合に、過剰与信にならないよう資力要件と確認要件につき厳格化を図り、これらの要件を欠く与信を行った業者は元本を含めた返還請求ができないこととすることを含めた若年者保護の制度を設けること、等が必要である。このような制度が全くない現行法下で、民法の成年年齢が引き下げられると、若年者に消費者被害が多発することになりかねない。
4 以上のような消費者被害の観点以外にも、離婚の際の養育費について、成年に達したときを支払終期とすることが多かった家庭裁判所の実務に照らせば、民法の成年年齢が引き下げられることによって養育費の支払終期が早まり、いまだ稼働に至らない18歳以上20歳未満の若年者の生活や教育について経済的な悪影響がもたらされることが懸念される。
また、いわゆるブラックバイト問題に対して有効な、労基法58条が定める未成年者に不利な労働契約の解除権も、民法の成年年齢が引き下げられることによって18歳以上20歳未満の若年者が行使できなくなってしまう。
このように、民法の成年年齢の引き下げは、18歳以上20歳未満の若年者の権利擁護の観点から、懸念が大きい。
5 さらに、民法の成年年齢の引き下げは、少年法の適用年齢の引き下げと論理的に直結するものではないが、少年法に関する議論においても、「民法上の『成年者』として親権に服さない者に国が類型的に後見的な介入をするのは過剰な介入ではないか」との意見があること等からすれば、少年法の適用年齢の問題にも事実上大きな影響を及ぼす懸念がある。
6 したがって、民法の成年年齢の引き下げは、民法その他未成年者の保護を図る各法律の趣旨・目的を踏まえた慎重な検討が必要不可欠であり、成年年齢の引き下げによってもたらされるこれらの不利益に対する手当もないまま、成年年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正には反対する。以上2017(平成29)年10月19日
神奈川県弁護士会 会長 延命 政之

当会会員に対する懲戒処分についての会長談話
2017年09月07日更新
本日,当会は,平成29年8月16日付懲戒委員会の議決に基づき,当会の林敏夫会員に対し,業務停止1年6月の懲戒処分を言い渡し,同処分は即日効力を生じました。
 同会員は,弁護士でない懲戒請求者が弁護士法第72条に定める,報酬を得る目的で法律事件に関し法律事務を周旋することを業とする者に該当し,同条で禁止された非弁行為を行っている者であることを認識した上で,その者が依頼者と面談し,委任契約を締結することを認容し,弁護士報酬の金額を含む委任契約の内容についても自由に任せていました。
また,同会員は,懲戒請求者がウェブサイトで集客した相談者の事案について紹介を受け,その事務の処理をすることで,懲戒請求者に対して一定金額の支払いをしていました。
さらに,同会員は,懲戒請求者の依頼に基づき,自らが受任する事件と関係のない住民票や戸籍謄本等の職務上請求を行い,懲戒請求者に対してその対価として1通あたり1万8000円の費用を請求していました。
 報酬を得る目的で法律事件に関し法律事務を周旋すること(非弁行為)は,当事者その他の関係人の利益を損ね,社会生活の公正円滑な営みを妨げ,ひいては法律秩序を害することになるものであり,弁護士法第72条により禁じられているところです。
そして,そのような非弁行為を行う者と提携すること(非弁提携行為)も,非弁行為を助長するものであり,断じて許されるものではありません。
また,住民票や戸籍謄本等の職務上請求は,弁護士としての業務の遂行に必要な場合に限り認められているものであり,弁護士ではない者の依頼に基づき業務外の目的でこれを行うことも言語道断です。
 同会員が行った上記の各行為は,弁護士法第56条第1項に定める「品位を失うべき非行」に該当するものであり,今回の懲戒処分に至ったものであります。
 同会員の各行為は,弁護士の職務に対する市民の皆様の信頼を大きく損なうものであり,極めて遺憾であります。
なお,同会員による非弁提携行為は,弁護士法第27条に違反する違法行為であり,当会としても,これを断じて許すことはできず,厳正な刑事処罰を求めて,同会員及び同会員が所属する「弁護士法人クローザー法律事務所(旧:弁護士法人エレフセリア法律事務所)」について,同法違反(非弁提携行為)容疑で横浜地方検察庁に告発状を提出していることを付言します。
 当会としては,これを機に,不祥事の事前抑制・被害拡大の防止等に,より一層努力する所存です。
2017(平成29)年9月7日
神奈川県弁護士会 会長 延命 政之

死刑執行に抗議する会長声明
2017年08月14日更新
本年7月13日,大阪拘置所及び広島拘置所において死刑確定者各1名に対する死刑が執行された。
 金田法務大臣になって2度目の死刑執行であり,第2次安倍内閣になって合計19名の死刑が執行された。
 日本弁護士連合会は,2015年12月9日,岩城法務大臣に対し「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し,死刑の執行を停止するとともに,死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し,死刑制度に関する検討課題について国民的議論を行うための有識者会議を設置し,死刑制度とその運用に関する情報を公開すること,そのような議論が尽くされるまですべての死刑の執行を停止することを求めた。しかしながら,この間,有識者会議が設置されることもなく,死刑制度とその運用に関する情報公開は全く進んでいない。
 死刑執行については,いまなお多くの情報が非公開とされており,秘密主義との批判を免れない。今回,大阪拘置所で死刑が執行された死刑確定者は,報道によれば,再審請求中であったと言われている。再審請求中であるにもかかわらず,死刑が執行されたことは極めて異例のことであり,その理由についても法務省は明らかにしていない。
また,広島拘置所で死刑が執行された死刑確定者は,控訴を自ら取り下げたことで第1審判決のみで死刑判決が確定しており上級審の判断を得ていない事案であること,被害者が1名の事案であったことなどがどのように検討され,今回の死刑執行に至ったのか一切明らかにされていない。
 我が国においては,四つの死刑確定事件(免田事件,財田川事件,松山事件,島田事件)について再審無罪が確定している。死刑事件ではないが,布川事件,足利事件,東電OL殺人事件等で再審無罪判決が確定している。死刑確定事件である袴田事件については,2014年3月27日静岡地方裁判所が再審開始を決定し,死刑執行と拘置の停止を決定している。これらの事件が示すとおり,刑事裁判には,常にえん罪の可能性があり,ひとたび死刑が執行されてしまえば,取り返しはつかず,その不正義はまさに筆舌に尽くしがたい。
 日本弁護士連合会は,2016年10月に開催された人権擁護大会において「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し,その中で,日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであることを宣言した。
 当会では,これまでも,死刑執行のたびに,死刑の執行を停止し,死刑廃止について全社会的議論を始めることを求める会長声明・談話を発表してきた。
当会は,改めて,今回の死刑執行に抗議するとともに,死刑制度の廃止について全社会的議論を尽くすまでの間死刑の執行を停止するよう重ねて強く要請するものである。
2017(平成29)年8月10日
神奈川県弁護士会会長 延 命 政 之

共謀罪の強行採決に抗議する会長談話
2017年06月15日更新
本日,参議院本会議で,いわゆる「共謀罪」法が可決成立しました。
当会は,本法律が「共謀」という意思の連絡をもって犯罪を成立させることは罪刑法定主義に反すること,意思の連絡自体が捜査対象となるため盗聴・密告等を捜査の端緒とせざるを得ず,思想・良心の自由,表現の自由,通信の秘密及びプライバシー権といった憲法上の権利を侵害することなどから,極めて危険であることを訴えてきました。
かかる憲法違反の法律が,参議院法務委員会での審議も未了のまま委員会決議を省略して本会議での可決が強行されるという異例の手続きで成立したことも含めて,当会は本法律の成立に強く抗議します。
当会は,これからも本法律の廃止に向けて,あらゆる取り組みを強化し続けて行くことを表明します。
2017年(平成29年)6月15日
神奈川県弁護士会 会長 延命 政之

憲法記念日会長談話
2017年05月02日更新
本年5月3日で日本国憲法が施行されて70年になります。
国内外で多くの犠牲者を生んだアジア太平洋戦争への反省を踏まえ、私たちは、基本的人権の尊重、国民主権、平和主義を3つの基本原則とする新しい憲法を制定しました。
 大日本帝国憲法の下では、人権は、臣民としての権利にすぎず、法律の定めによってどのようにも制限されるものでしたが、日本国憲法の下では、私たちは、ひとりひとりかけがえのない個人として尊重され、誰もが生まれながらに侵すことのできない基本的人権を持っているとされています。
しかしながら、この1年を振り返って、とりわけ、この神奈川県においても、川崎で在日コリアンの人々への差別や憎しみをあおるヘイトスピーチデモが行われたり、津久井やまゆり園で19人もの障がい者が殺害されるという痛ましい事件が発生した際に障がい者に対する差別的な言説が行われたり、福島原発事故避難者である子どもへのいじめに対し学校や教育委員会による適切な対応がなされなかったり、小田原で市職員が生活保護受給者を訪問する際に差別的な文言を印刷したジャンパーを着ていたことが発覚したりするなど、少数者の人権が侵害されるさまざまな事件が相次いでいます。
また、国政についてみると、現在国会で審議中の組織犯罪処罰法改正案は、いわゆる共謀罪の創設を含むものですが、内心の自由(思想良心の自由)や表現の自由等を侵害するおそれの極めて高いものです。
 人権を保障するために憲法により国家権力を制限する立憲主義も、危機に瀕しています。
 安全保障関連法をめぐって、昨年11月15日に、南スーダンの国連PKOに派遣されている自衛隊に対し、「駆け付け警護」などの新たな任務が付与されたことから、自衛隊が、政府軍、反政府軍を始めとする武装勢力と戦闘を行うという、憲法第9条の禁止する武力の行使へと発展しかねません。また、本年5月1日から、改正された自衛隊法95条の2に基づき、防衛大臣は自衛隊に対して米海軍の補給艦の武器等防護を命ずるに至りましたが、これは、まさに外国の軍隊のために、現場の自衛官の判断により敵対勢力に対する武器使用を認めるものであって、実質的な集団的自衛権の行使になりかねない、極めて危険なものです。安全保障関連法の適用・運用次第で、この国のあり方や命運が左右されかねない危険な状況があります。
そして、衆議院憲法審査会では憲法を改正し緊急事態条項を盛り込むべきか否かが議論されていますが、緊急事態条項は人権保障と権力の分立を一時的に停止する規定であり、立憲主義を破壊する危険性があり、慎重の上にも慎重な議論が必要です。
 日本国憲法施行70年を迎えるにあたり、神奈川県弁護士会は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士の団体として、こうしたさまざまな問題について、さらにいっそう真摯に取り組み、人権が十分に保障され、憲法が生かされる社会を目指して、努力を重ねていきたいと思います。
2017年(平成29年)5月3日
神奈川県弁護士会 会長 延命 政之

いわゆる「共謀罪」法案の廃案を求める会長声明
2017年04月27日更新
1. 政府は、本年3月21日、いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法一部改正案(以下「本法案」という。)を閣議決定し、衆議院に提出した。
当会は、2016年12月8日付けで「いわゆる共謀罪新法案の国会提出に反対する会長声明」を発しているところであるが、それにもかかわらず本法案が提出されたことは極めて遺憾であり、改めて本法案に対する当会の意見を表明する。
2. 本法案では、①犯罪主体について、従前「組織的犯罪集団」とされていた規定が「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と改められており、また、②対象犯罪を676から277に減じたとされている。
①の「テロリズム集団」の文言は、テロ対策を標榜しつつテロとの関係が明らかでなかった政府原案に対する批判を受けて急遽追加されたものであるが、本法案には「テロリズム集団」の定義規定はない。「組織的犯罪集団」の意義が捜査機関によって恣意的に解釈され、摘発される対象が拡大する危険性が高いという問題点は何ら解消されていない。
すなわち「テロリズム集団」の文言が加わったとしても、処罰範囲の限定にならないことは明白である。
また、②についても、仮に対象犯罪が277に減じられたとしても、組織的犯罪やテロ犯罪と無縁のものも依然として対象とされている。共謀罪は、「行為」を処罰する我が国の刑法の基本原則を否定するものである以上、いかに対象犯罪数を減らそうとも、軽々に認められるものではない。
つまり、本法案は、過去3回も廃案になった共謀罪の問題点が何ら解消されていないのである。
3. 当会が従前指摘していたとおり、構成要件が不明瞭であって罪刑法定主義にも反する本法案は、共謀という意思の連絡自体が犯罪として捜査対象となるために、通信傍受の対象とされた場合監視社会化を招き、憲法の保障する思想・良心の自由、表現の自由、通信の秘密及びプライバシーなどを侵害し、基本的人権の行使に対して深刻な萎縮効果をもたらすおそれがある。
 当会は、本法案の閣議決定および衆議院提出に対して、改めて抗議すると共に、本法案の廃案を求めるものである。
2017(平成29)年4月26日
神奈川県弁護士会 会長 延 命 政 之

会長声明・決議・意見書(2016年度)
ttp://www.kanaben.or.jp/profile/gaiyou/statement/2016/index.html
川崎市に対し多文化共生を推進する人権条例の制定を求める会長声明
2017年03月23日更新
 川崎市の福田紀彦市長は,昨年12月27日に川崎市人権施策推進協議会が出した「ヘイトスピーチ対策に関する提言」を受けて,本年2月27日,川崎市議会第1回定例会において,人権を幅広く守る条例(以下,「本条例」という。)の制定に向けた調査に着手したことを明らかにした。当会としても,本条例制定の動きを全面的に支持するとともに,本条例中に人種差別を禁止し多文化共生を推進する包括的な内容を盛り込むよう強く求めるものである。
 本条例制定の動きの背景には,川崎市内で激しいヘイトスピーチを伴うデモが繰り返され,市民に対して深刻な被害を生じさせているという社会状況がある。また,市による公園使用不許可,裁判所の仮処分決定,法務省人権擁護局の勧告等,関係諸機関の努力にもかかわらず,川崎市内では未だヘイトスピーチ団体が講演会を開く等の動きがあり,インターネット上における特定の個人に向けた誹謗中傷といった人権侵害行為も継続している。日本が1995年に加入した「人種差別撤廃条約」2条1項dによれば,各締約国は,すべての適当な方法により,いかなる個人,集団又は団体による人種差別も禁止し,終了させるものとされている。ヘイトスピーチは人種差別の一形態であり,本条例の制定は,同条約の趣旨に沿うものである。また,地域の実情に応じたヘイトスピーチ解消施策をとるよう自治体に責務を課した「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」5~7条の趣旨に照らしても,本条例によるヘイトスピーチの規制は緊急の課題である。
 本条例制定にあたっては,これまで川崎市が行ってきた多文化共生社会推進の取組みの延長と位置づけ,人種差別を包括的に禁止し,多文化共生社会を推進する基本施策を定めた「人権条例」とすることが望ましい。川崎市は,1996年に川崎市外国人市民代表者会議条例を制定して同会議を設置し,2005年には川崎市多文化共生社会推進指針を策定しており,また,それ以前から外国人高齢者福祉手当及び外国人心身障害者福祉手当の支給,市職員採用の国籍条項の一部撤廃,川崎市在日外国人教育基本方針の制定,市営住宅入居資格の国籍条項撤廃,川崎市外国人市民意識実態調査の実施等,外国人に関する優れた政策を全国に先んじて行ってきた。本条例は,これらの施策を整理一本化し,入居差別,就職差別,その他あらゆる人種差別を禁止するとともに,施策審議と被害者救済を行う第三者機関の設置等を定めた包括的な内容とすることが望ましい。
 前述の人権施策推進協議会の提言においても,制定すべき条例の内容については,「ヘイトスピーチ対策に特化したものではなく」,「ヘイトスピーチ対策も含めた多文化共生,人種差別撤廃などの人権全般にかかるものが想定される」とされている。そこで,ヘイトスピーチ対策は本条例の一部と位置づけた上で,川崎市の社会状況を踏まえ,明確な禁止条項を定めるとともに,(インターネットを含む)被害の実態調査や,ネット上の人権侵害行為に対し継続的に削除要請を行うことのできる組織の創設などのネット対策,被害者に対する適切な相談窓口等を整備するべきである。
 川崎市は,2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催決定などを契機に,ますます海外との交流人口が増え,国際都市としてふさわしい多様性を活かしたまちづくりが求められている。世界から様々な人々を迎え入れるためには,人種や国籍を超えた多様な人々が共生できるまちづくりが急務である。国は未だ人種差別を包括的に禁止する法律を持たないが,川崎市は,この分野の施策で全国をリードしており,条例制定においても,他の自治体をリードし,世界に誇れるまちづくりを目指すべきである。
2017年(平成29年)3月23日
神奈川県弁護士会 会長 三 浦    修

南スーダンにおける国連平和維持活動(PKO)のために派遣 する自衛隊への「駆け付け警護」の新任務等の付与の撤回、 自衛隊の部隊撤収及び安全保障関連法の廃止を求める会長声明
2017年01月13日更新
政府は、2016年11月15日、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に参加する自衛隊の部隊に、2015年9月に制定された安全保障関連法に含まれる改正「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律」(改正PKO法)に基づく新任務である「駆け付け警護」を付与する新たな南スーダン国際平和協力業務実施計画を閣議決定し、併せて「宿営地共同防護」の任務も付与する判断を行った。その結果、南スーダンに派遣された陸上自衛隊第9師団を主力とする自衛隊の部隊は、2016年12月12日以降これらの任務を遂行することが可能となった。
「駆け付け警護」は、PKO等の活動関係者の生命又は身体に対する不測の侵害又は危難が生じ、又は生ずるおそれがある場合に、緊急の要請に対応して行う当該活動関係者の生命及び身体の保護の活動であり、「宿営地共同防護」は、宿営地を共にする他国軍隊の部隊の要員に対し攻撃があった場合に、当該部隊の要員とともに武器を使用して対処する活動である。いずれの活動も戦闘行為に発展するおそれがあり、憲法第9条に抵触する可能性が高いものであって、到底容認することができない。
そもそも、我が国がPKOに参加する際にはPKO参加5原則の要件が堅持されていることが必要である。
しかし、冷戦終結後、PKOの変質に伴い、多くのPKOは住民保護等のために武力の行使を認められた紛争主体と化してしまっており、自衛隊がPKO参加5原則を堅持した状態で活動することは困難である。
とりわけ、南スーダンにおいては、大統領派と前副大統領派との間で、激しい内戦が生じている。2016年2月17日・18日の両日には、南スーダン政府軍兵士らが北部マラカルの国連基地内の避難民保護キャンプを襲撃し、略奪・焼き討ちを行い、国境なき医師団のスタッフ2名を含む18名が死亡し90人以上が負傷する事件が起きている。また、同年7月8日からは首都ジュバ市内でも300名以上が死亡する激しい内戦が勃発し、中国のPKO隊員2名も死亡している。反政府勢力の指導者である前副大統領自身が和平合意は崩壊したと述べ、同年11月1日に公表された国連特別報告書でも停戦合意は崩壊した旨断定されていることからすると、いまやPKO参加5原則のうち少なくとも「紛争当事者間で停戦合意が成立していること」という要件を充たしていないことは明らかである。
かかる状況下で「駆け付け警護」や「宿営地共同防護」の任務を付与することは、自衛隊が、政府軍、反政府軍を始めとする武装勢力と戦闘を行うという、憲法第9条の禁止する武力の行使へと発展する可能性がきわめて高い。そして、自衛隊員が実際に人を殺傷し、又は殺傷される危険が現実のものにもなりかねないのである。
よって、当会は、政府に対し、ただちに、南スーダンPKOに従事する自衛隊の部隊への新任務等の付与を撤回し、PKO参加5原則に従い自衛隊の部隊の撤収を行うことを求めるとともに、改めて改正PKO法を含む安全保障関連法の廃止を求めるものである。
2017(平成29)年1月12日
神 奈 川 県 弁 護 士 会 会 長 三 浦 修

「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁 推進法案」)の成立に反対し廃案を求める会長談話
2016年12月12日更新
本年12月6日,衆議院本会議において,「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)が可決され,同日のうちに参議院に送付された。この法案は,平成25年12月に国会に上程されて廃案となったものが,ごくわずかの修正を加えて平成27年4月に再度,国会に上程されたものであり,その後,長期間にわたって審議のないままであったところ,本年11月30日に突如として内閣委員会での審議が開始され,わずか6時間の審議をしただけで同年12月2日に委員会採決が行われ,その直後に本会議での採決に至ったものである。
 当会は,これまで,平成26年10月9日に一部修正前のカジノ解禁推進法案についてその廃案を求める意見書を,さらに,平成27年7月8日にはこの法案について再度の廃案を求める会長声明をそれぞれ発出した。これらの中で廃案を求める理由として指摘したのは,カジノ解禁について,深刻なギャンブル依存の問題をさらに悪化させる危険性が高いこと,暴力団等の反社会的勢力の資金源となることやマネー・ロンダリングのおそれを排除できないこと,カジノ解禁がもたらす経済的効果に関しても,短期間のプラス面のみが喧伝され,病的ギャンブラーが生み出されること等による生産性の喪失や社会コストの増加については何ら検討されていないこと等である。
しかるに,これらの意見書及び会長声明で指摘した事項については,その後何ら具体的な検討がなされることもなく,また,一般国民のカジノに対する不安・懸念の声にも何ら耳を傾けることなく,このたび,極めて拙速かつ強引なかたちで衆議院での可決に至ったことは,誠に遺憾である。いわゆる5大新聞社(朝日・読売・毎日・日経・産経)も,このような形でカジノ解禁推進法案を成立させようとしていることについて,一致して反対する論調を展開している。
 現在,参議院での審議が行われているが,参議院においても十分な議論を尽くす姿勢のないまま,新聞報道等によれば,本年12月14日閉会予定の臨時国会での成立が目指されているとのことである。当会としては,以上に述べたように,極めて多くの問題点を抱えるカジノ解禁推進法案を,このように短期間で成立させようとしていることについて,断固反対するとともに,ただちに廃案とするよう,求めるものである。
2016(平成28)年12月12日
神奈川県弁護士会 会長 三浦 修

【転載】余命3年時事日記 2354 ら福井県弁護士会①(後半)

2018年02月04日 | 在日韓国・朝鮮人
死刑執行に抗議する会長声明
平成26年8月29日,東京拘置所及び仙台拘置支所において,2名に対する死刑の執行が行われた。これは同年6月26日,大阪拘置所において、1名に対して死刑が執行されたことに続く,谷垣禎一法務大臣(当時)による6度目の死刑執行である。
同大臣による死刑執行は合計で11名に至っており誠に遺憾と言わざるを得ない。
当会は,昨年度も,死刑執行を停止し,死刑に関する情報を広く国民に公開し,全社会的議論を踏まえた上で,その見直しを求めてきたものであり,これにも関わらず死刑執行が行われたことに,強く抗議するものである。
当会としても,平成24年,会内に死刑廃止プロジェクトチームを設置し,死刑に関する議論を広めるべく活動を開始し,平成25年7月には市民参加の下,「死刑を考える日2013」を開催するなど,死刑のない社会を目指した議論を重ねてきた。こうした取組みの中で,えん罪と死刑の関係など,現行の死刑制度に関する様々な問題点が指摘されたところである。
特にえん罪,すなわち誤判の恐れについては,本年3月27日,静岡地方裁判所が,袴田巖氏の第二次再審請求事件について再審を開始し,死刑及び拘置の執行を停止する決定をしたところであり,誤判の危険が改めて明らかになったところである。
国際的に見ても,国連人権(自由権)規約委員会は,本年7月24日,日本政府に対し,死刑の廃止について十分に考慮することや,執行の事前告知,死刑確定者への処遇等をはじめとする制度の改善等を勧告している。死刑廃止が国際的にも大きな潮流であることは明らかである。
日本弁護士連合会においては,死刑のない社会が望ましいことを見据えて,平成23年10月7日,第54回人権擁護大会において「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め,死刑廃止についての全社会的な議論を呼びかける宣言」を採択している。
裁判員制度において市民が死刑判決に関わらざるを得ず,困難な判断を迫られる状況の下で,死刑制度とその運用に関する情報の公開が進まずに公の議論が何ら行われないまま執行だけが繰り返されていることは,到底容認できない。
当会は,今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑執行を停止することと死刑に関する情報を広く国民に公開することを要請し,死刑制度についての全社会的議論を踏まえたうえで,その抜本的な検討及び見直しを重ねて求めるものである。
2014年9月30日
福井弁護士会   会 長 内 上 和 博

集団的自衛権行使容認の閣議決定に強く抗議する会長声明
1 政府は,2014年7月1日,憲法第9条に関する従来の政府解釈を変更し,一定の要件の下に集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行った。
当会は,2014年4月30日付け「集団的自衛権の行使容認に反対する会長 声明」において,集団的自衛権の行使容認は憲法第9条の文言からは導き得ない解釈であることを指摘し,政府がそのような解釈に基づいて権力を行使することは,憲法秩序の破壊であり,基本的人権を保障するため,憲法によって国家権力を制限するという近代立憲主義の否定であって,絶対に許されないことを強く主張した。にもかかわらず,政府が集団的自衛権行使容認に踏み切ったことは,実質的には憲法改正手続によらない第9条の変更で,違憲であり,当会は強くこれに抗議する。
2 今回の閣議決定では,解釈変更の理由について,日本を取り巻く安全保障環境の変化をあげ,「日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し,日本の存立が脅かされ,国民の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に,必要最小限度の実力を行使するのは自衛の措置として憲法上許容されると判断するに至った」と説明している。
しかしながら,憲法第9条が,国際紛争を解決する手段としての武力の行使を永久に放棄していることはその文言上明らかである。したがって,わが国に対する外部からの武力攻撃によって国民の生命や身体が危険にさらされている場合にこれを排除する個別的自衛権の行使は認められるとしても,わが国が直接攻撃されていないにもかかわらず外国に対する武力攻撃を実力をもって阻止する権利である集団的自衛権の行使を容認することは,明らかに憲法解釈の域を超えている。また,現在の安全保障環境が,冷戦時と比較しても,憲法第9条の改正を必要とする程度に悪化しているとの論拠も十分に示されていない。
3 よって,当会は政府に対し,集団的自衛権の行使を容認した今回の閣議決定に強く抗議し,これに基づく関連法令の整備を行わないことを求める。
2014年(平成26年)7月4日
福井弁護士会 会長 内 上 和 博

秘密保護法の採決強行に抗議し,同法の改廃を求める会長声明
1 2013年12月6日,参議院本会議において特定秘密保護法案の採決が強行され,同法が制定された。
当会は,再三にわたる意見書や会長声明の中で (※1),同法案が,国民の知る権利を侵害し,国民主権原理の根幹を脅かし,罪刑法定主義にも抵触し,秘密に関与する関係者のプライバシーを侵害するなど,日本国憲法の基本原理に照らして看過しがたい重大な欠陥をもつものであることを強く訴え,その廃案を求めてきた。日本弁護士連合会も,同様の立場から同法案に強く反対してきた。
当会や日本弁護士連合会のみならず,同法案の提出後,同法案に反対する世論は急速に高まり,報道,研究,映画界等様々な分野から廃案を求める意見が出され,また国際的にも強い危惧が表明されてきた。
2 こうした,重大な憲法上の欠陥をもつ法案が,各界から表明された強い反対や国民多数の廃案ないし慎重審議を求める声を無視して,国会への法案提出からわずか1か月半も経ぬごく短期間のうちに,衆参両議院での相次ぐ強行採決により成立に至ったことは,極めて異例であり,国会の存在意義すら疑わしめる暴挙というほかなく,当会はこれに強く抗議する。
国会審議中になされたいくつかの法案修正によっても,同法のもつ憲法上の欠陥は何ら解消されておらず,公布の日から1年以内に予定される同法の施行により,国民の基本的人権が侵害され,国民主権原理が形骸化し,行政に対する国会や裁判所によるチェック機能が弱まるなどの重大な弊害が生じることが,強く懸念される。
3 よって,当会は,重大な憲法上の欠陥をもつ同法について,その改廃を求めてひきつづき活動する決意である。
あわせて,国民主権原理の機能確保のために不可欠な情報公開制度・公文書管理制度の改正,特定秘密保護法の有無にかかわりなく整備されるべき情報管理の適正化のための制度策定に向け,全力を尽くすことを誓うものである。
2013年(平成25年)12月18日
福井弁護士会 会長 島 田   広
(※1)2012年7月25日付け「秘密保全法制定に反対する会長声明」,2013年9月17日付け「『特定秘密の保護に関する法律案の概要』に対する意見書」,同年11月5日付け「国民の知る権利を侵害する特定秘密保護法案の廃案を求める会長声明」及び同月27日付「特定秘密保護法案の国際原則に照らした徹底審議と廃案を求める会長声明」

行政書士法改正に反対する会長声明
1 日本行政書士会連合会は,行政書士法を改正して,「行政書士が作成することのできる官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求,異議申立,再審査請求等行政庁に対する不服申立について代理すること」を行政書士の業務範囲とすることを求めてそのための運動を推進しており,日本行政書士政治連盟によれば,法案を「何時でも国会に提案できる」状況にあるとされている(同連盟ホームページ会長挨拶)。早ければ次期通常国会にも,前記業務を行政書士の業務範囲とする行政書士法改正案が,議員立法として提出される可能性がある。
しかし,行政書士法改正により行政書士に行政不服申立等の代理業務を認めることには,以下の問題点がある。
2 第1に,そもそも,行政書士の主たる職務は,行政手続の円滑な実施に寄与することを主目的として,行政庁に対する各種許認可関係の書類を作成して提出するというものである。一方,行政不服申立制度は,行政庁の違法又は不当な行政処分を是正し,国民の権利利益を擁護するための制度である。したがって,行政書士がこれまで従事してきた業務の性質及びそこで培われた能力と,国民と行政が鋭く対立する行政不服申立手続における代理人の役割及び求められる能力とが,相当に性質を異にするものであることは明らかであり,行政との対立関係に身を置く経験の乏しい行政書士が,行政不服申立の代理人となることにより,国民の権利利益が損なわれることが強く懸念される。
3 第2に,行政書士試験に行政不服審査法が必須科目になっていることが,行政書士の行政不服申立の代理人としての能力を担保すると主張されているが,誤りである。行政不服申立の代理行為は,その後の行政訴訟の提起も十二分に視野に入れて行うべきものであり,訴訟実務に通暁しない行政書士が,行政不服審査法の知識を有しているからといって,能力が担保されたということは到底できない。これでは,行政機関による人権侵害から国民の権利利益を守ることはできない。
4 第3に,行政不服申立等は,国民と行政庁とが鋭く対立するものであるが,行政庁の懲戒権に服し(行政書士に対する懲戒処分並びに行政書士会に対する監督は都道府県知事が行い,日本行政書士連合会に対する監督は総務大臣が行うものとされている。),当事者の利害対立を前提に資格が構築されていない行政書士が代理行為を行うことにより,国民の権利利益が損なわれることが強く懸念される。
5 第4に,職業倫理の面においても,行政書士会は紛争事件を取り扱うに足る職業倫理規定をもたず,行政書士は紛争事件を取り扱うに足る職業倫理について十分な訓練を受けているとはいえない。すなわち,日本行政書士会連合会が定める行政書士倫理綱領は,「使命に徹し,名誉を守り,国民の信頼に応える」「法令会則を守り,業務に精通し,公正に職務を行う」「相互の融和をはかり,信義に反してはならない」等のごく一般的な内容に過ぎず,その他の行政書士倫理の規定をみても,利益相反等に関する規定等の当事者の利害が鋭く対立する紛争事件を取り扱うことを前提とする規定はなく,この点で利益相反等の職務を行い得ない事件について具体的規定を有する弁護士倫理とは大きく異なっている。これでは,紛争当事者となった国民の権利利益が損なわれるおそれがある。
6 第5に,行政書士に行政不服申立等の代理人にしなければ代理人が不足するものではなく,立法事実を欠く。弁護士は,これまでも,出入国管理及び難民認定法,生活保護法,精神保健及び精神障害者福祉法等に基づく行政手続等の様々な分野で,行政による不当な処分から社会的弱者を救済する実績を上げている。そして,2013年7月1日現在,弁護士数は3万3628人であり,さらに今後も増加している現状からすれば,行政不服申立等の代理人は十分供給されているといってよい。
よって,当会は,行政書士が行政不服申立等の代理人になることについて,強く反対するものである。
2013年(平成25年)12月11日
福井弁護士会 会長 島 田   広

生活保護法改正案の廃案と国民の生活保護受給権の実効的保障を求める会長声明
1 政府は,本年10月15日,「生活保護法の一部を改正する法律案」(以下「新改正案」という。)を閣議決定し,本年11月13日には同法案が参議院で可決され,現在衆議院において審議中である。
2 当会は,本年6月12日,先の通常国会で審議されていた「生活保護法の一部を改正する法律案」(以下「旧改正案」という。)について,「生活保護法改正案の廃案を求める会長声明」を公表し,①違法な「水際作戦」を合法化し,②保護申請に対する一層の萎縮的効果を及ぼすという看過しがたい重大な問題があることから,その廃案を求めた。旧改正案については,批判の高まりの中,与野党協議により一部修正されたものが衆議院で可決されたが,国会の閉会に伴い廃案となった。
3 新改正案は,与野党の修正協議を踏まえ,申請の際に申請書及び添付書類の提出を求める24条について,1項の「保護の開始の申請は…申請書を…提出してしなければならない」との文言を「保護の開始を申請する者は…申請書を…提出しなければならない」との文言に変更し,また,同条1項及び2項に,いずれも,「特別の事情があるときは,この限りでない」とのただし書を加え,申請の意思表示と申請書等の提出を概念的に切り離す形に変更されている。これに対し,扶養義務者への通知及び調査に関する改正案24条8項,28条及び29条については,一切の修正がなされていない。
4 先の通常国会審議における政府答弁等によれば,まず,改正案24条については,従前の運用を変更するものではなく,申請書及び添付書類の提出は従来どおり申請の要件ではないこと,福祉事務所等が申請書を交付しない場合も,ただし書の「特別の事情」に該当すること,給与明細等の添付書類は可能な範囲で提出すればよく,紛失等で添付できない場合も,ただし書の「特別の事情」に該当すること等を,法文上も明確にする趣旨で原案を修正したとされている。
しかしながら,法文の形式的な文言のみからは,修正の趣旨がなお不明確であり,また,従前の運用を変更しないのであればそもそも法文の新設は不要なはずであるから,このままの規定であれば,法文が一人歩きし,申請を要式行為化し厳格化したものであると誤解され,違法な「水際作戦」をこれまで以上に,助長,誘発する可能性が極めて大きい。
5 また,改正案24条8項,28条及び29条については,前記政府答弁において,明らかに扶養が可能な極めて限定的な場合に限る趣旨であると説明されている。しかし,かかる規定の新設により,保護開始申請を行おうとする要保護者が,扶養義務者への通知等により生じる親族間のあつれきやスティグマ(世間から押しつけられた恥や負い目の烙印)を恐れて申請を断念するという萎縮効果を一層強め,申請権を形骸化させることは明らかであり,到底容認できない。前回の会長声明でも指摘したとおり,国連社会権規約委員会が本年5月17日に公表した「日本の第3回定期報告書に関する総括所見」においては,生活保護手続きの簡素化や申請に伴うスティグマの解消のための教育の実施等が勧告されていたのであり,いまわが国に求められているのは,この勧告の趣旨に沿って生活保護を利用しやすくするための制度の改善である。
6 これも前回の会長声明でも指摘したとおり,わが国の生活保護の捕捉率(制度の利用資格のある者のうち現に利用できている者が占める割合)は2割程度とされており,他の先進諸国に比べて異常に低い。
われわれ弁護士は,本来生活保護を受けるべき人が生活保護を受けられず,きわめて困難な生活状況に追いやられている状況にしばしば遭遇し,その度に,日本国憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障すべき国の義務が果たされていないことに,強い憤りを感じてきた。だからこそ,違法な「水際作戦」を助長,誘発するおそれが高く,生活保護申請のスティグマを解消するどころかむしろ強めるような,今回の新改正案を,断じて容認できない。
よって,当会は,改めて新改正案の廃案を求めるとともに,国に対して,国連社会権規約委員会の勧告にしたがって国民の生活保護受給権の実効的保障を行うよう強く求める。また,当会としても,今後,不当な「水際作戦」等によって生活保護申請が排除されることのないよう,生活保護の申請支援によりいっそう強く取り組むことを誓うものである。
2013年(平成25年)11月29日
福井弁護士会 会長 島 田   広

通信傍受の安易な拡大と会話傍受の導入に反対する会長声明
1 法制審議会新時代の刑事司法制度特別分科会では,取調や供述調書に過度に依存した捜査や裁判のあり方の見直しや,取調の可視化(取調の録音・録画)等について検討を行ってきたが,2013年1月29日には「時代に即した新たな刑事司法制度の基本構想」をとりまとめ,その後も検討を重ねて,早ければ年度内にも結論をとりまとめる予定とされ,その後,法案化がなされることが見込まれる。
2 上記「基本構想」及び同分科会での最近の検討状況によれば,「通信傍受の合理化・効率化」として,現在,薬物関連犯罪,銃器関連犯罪や組織的な殺人等の重大な犯罪に限定されている通信傍受の対象犯罪を,通常の殺人,逮捕・監禁等,窃盗・強盗等,さらには「その他重大な犯罪であって,通信傍受が捜査手法として必要かつ有用であると認められるもの」にまで広げることが検討されている。
また,同分科会では,これまで認められていなかった「会話傍受」の導入が検討されており,「①振り込め詐欺の拠点となっている事務所等」「②対立抗争等の場合における暴力団事務所や暴力団幹部の使用車両」「③コントロールド・デリバリーが実施される場合における配送物」を対象に,捜査機関が傍受機器を設置し、犯罪の実行に関連した会話等を傍受することができるようにすることが検討されている。
3 しかしながら,通信傍受は,憲法が保障する通信の秘密を侵害し,ひいては,個人のプライバシーを侵害する捜査手法である。それゆえ,通信傍受が憲法上許容されるのは,「重大な犯罪」について,捜査上「真にやむを得ない」と認められる場合に限られると解すべきである(最高裁判所平成11年12月16日決定参照)。このことを踏まえると,通信傍受の対象犯罪は限定的・謙抑的であるべきであり,通信傍受法施行以降の運用状況についても,慎重な検討が加えられなければならない。専ら捜査上の有用性の観点から,安易に通信傍受の対象犯罪を拡大することは,許されないというべきである。ましてや,対象犯罪について,現行の通信傍受法では厳格な限定列挙がなされにもかかわらず,「その他重大な犯罪であって,通信傍受が捜査手法として必要かつ有用であると認められるもの」などという,およそ限定の効果をもたない規定を法案に盛り込むことは,断じて許されない。
4 また,捜査機関が住居や車両に傍受機器を設置し,会話等を傍受する会話傍受は,通信事業者の立ち会いの下で行われ,必要に応じて傍受の中断や終了が容易にできる通信傍受と異なり,ひとたび傍受機器が設置されるといつでも傍受できる状態が長期にわたり継続することになるし,密室で行われるため,内容的にも時間的にも無制約に傍受がなされるおそれがあり,犯罪と無関係な個人の会話等を傍受される危険性も高い。このように,会話傍受は,捜査機関による権限濫用のおそれも大きく,通信傍受以上に個人のプライバシーを侵害する危険性の高い捜査手法である。
しかも,現在検討されている前記①?③の対象についても,①は,振り込め詐欺の拠点が特定されていながら,なお会話傍受までなされなければ捜査に重大な支障が生じるとは考えがたいし,②は,会話傍受が導入されれば,暴力団関係者は,犯罪に関連する会話は暴力団事務所や暴力団幹部の使用車両以外でするようになることが容易に予想されるし,③も,会話傍受が導入されれば,配送物を受け取った関係者は中身を確認するまでは会話をしなくなると思われ,いずれも会話傍受導入の必要性・有効性に重大な疑問がある。
したがって,会話傍受は,プライバシー侵害の危険性の大きさに照らすと,それでもなお捜査手法として認める必要性があるとは到底認められず,導入することは許されない。
5 1986年に発覚した神奈川県警察による政党幹部宅盗聴事件の経験からも明らかなように,捜査機関が違法な盗聴に及ぶ危険は常に存在し,しかも,そのことはしばしば容易に隠蔽される。最近では,米国国家安全保障局(NSA)による盗聴が組織的かつ長期にわたり実施されていたことが,元職員からの告発により明らかになったが,この事件も,権力がいかに盗聴を濫用しやすいかを,改めて世に示したといえる。同分科会では,通信傍受の対象犯罪の拡大について「テロ関連犯罪」等にも拡大することが検討されているが,折しも,現在国会では秘密保護法が審議中であり,同法が仮に成立すれば,「テロ関連犯罪」に関する捜査情報は秘密指定され,秘密の陰に隠れて違法又は不当な捜査が横行するおそれすら,否定できない。このことを考慮すれば,捜査機関の通信傍受権限を拡大し,さらには,会話傍受というより強力で国民のプライバシー侵害のおそれが大きい捜査手段を捜査機関に与えることには,きわめて慎重であるべきである。
以上の理由から,当会は,通信傍受の安易な拡大と会話傍受の導入に,強く反対する。
2013年(平成25年)11月27日
福井弁護士会 会長 島 田   広

憲法第96条の発議要件緩和に反対する会長声明
憲法第96条は憲法改正発議要件として衆参各議院の総議員の3分の2以上の特別多数の賛成を要すると定めている。近時,この定めを過半数に緩和する旨の主張が複数の政党からなされている。 しかし,このような改正発議要件の緩和は,以下に述べるとおり,立憲主義を著しく軽視し,多数決によっても侵しえない基本的人権の保障を危うくしかねないものであるから,当会はこれに強く反対する。
憲法は,国家権力から基本的人権を守るために定められたものである。そして,たとえ民主的に選ばれた国家権力であっても,権力が濫用されて,基本的人権が損なわれるおそれは否定できないため,憲法は,多数決によっても基本的人権が損なわれないよう,国家権力に縛りをかけている。この考え方が立憲主義であり,具体的には,憲法の最高法規性(憲法第98条),基本的人権の永久・不可侵性(憲法第97条),最高裁判所の違憲立法審査権(憲法第81条)などに現れている。
憲法第96条も,しばしば多数決によって基本的人権が踏みにじられた歴史に鑑み,その時々の多数派によって十分な議論なく基本的人権が損なわれることのないよう,改正手続に厳格な要件を設けたものであり,憲法の最高法規性と立憲主義を支えるものである。すなわち,発議要件を両院の3分の2とした趣旨は、国民に対して発議するにあたっては,改正によって基本的人権が侵害されることのないよう,議会での熟議を尽くして大多数の議員の一致を形成することを求める点にある。にもかかわらず国会の発議を容易にすることは、憲法の安定性を損ない、時の多数派による人権侵害の危険を増大させるばかりか、熟議を通じた十分な情報を与えられないまま国民に判断を押し付けるものであるから、憲法選択という重大な局面における国民の知る権利をも奪うものである。
また、諸外国を見ても、成文憲法の改正には、日本と同様の規定を有する韓国、ルーマニア、アルバニア等の国もあるし、さらに厳しい要件の国もあり(アメリカ合衆国、フィリピン等)、第96条の改正要件が硬性憲法として特別に厳しいものであるとは言えず、比較法的見地からしても、改正要件緩和を正当化する理由は見当たらない。弁護士法第1条により、弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。当会は、弁護士法第1条に基づき、憲法改正手続の発議要件の緩和に対し、立憲主義憲法を破壊し人権を損なうものとして、反対であることを表明する。
2013年(平成25年)10月31日
福井弁護士会会長 島 田  広

「生活保護法の一部を改正する法律案」の廃案を求める会長声明
政府は,本年5月17日,生活保護法の一部を改正する法律案(以下「改正案」という。)を閣議決定した。改正案は,一部修正が加えられた上で,本年6月4日,衆議院本会議において可決され,現在,参議院で審議中である。
改正案は,①生活保護の申請意思を表明した者の申請を認めずに追い返すという違法な運用(いわゆる「水際作戦」)を合法化する,②保護申請に対する一層の萎縮的効果を及ぼす,との2点において,看過しがたい重大な問題がある。
まず,改正案第24条1項は,保護の申請者は,資産及び収入の状況等の事項を記載した申請書を提出しなければならないとし,同条2項は,申請書には保護の要否等の決定に必要な厚生労働省令で定める書類を添付しなければならないとしている。
この点,現行生活保護法は,保護の申請を書面による要式行為とせず,かつ,保護の要否判定に必要な書類の添付を申請の要件としていない。確立した裁判例も,口頭による保護の申請を認めている。しかし,実際には,全国の生活保護の窓口において,保護の申請意思を表明した者に対して申請書を交付しなかったり,保護の要否判定に必要な書類を添付していないとして申請不受理としたりする違法な運用が見受けられる。改正案の内容は,このような違法な運用を追認し合法化するものである。
改正案には,衆議院での審議により,「特別の事情があるとき」は申請書の提出や書類の添付を要件としないこととする修正が加えられたが,そもそも,原則として書面添付を申請の要件とすること自体が不当である。いかなる場合が「特別な事情」に当たるかは行政の判断に委ねざるを得ず,かかる修正により保護の申請権の行使が大幅に制限されるおそれが払拭されたとは,到底いえない。
次に,改正案第24条8項は,保護の実施機関に対し,保護の開始の決定をしようとするときは,原則として,あらかじめ要保護者の扶養義務者に対して厚生労働省令で定める事項を通知することを義務付けている。また,改正案第28条2項は,保護の実施機関が,保護の決定等のため必要があると認めるときは,要保護者の扶養義務者等に対して,報告を求めることができるとしている。さらに,改正案第29条1項は,保護の実施機関等は,過去に生活保護を受けていた者の扶養義務者に関してまで,官公署等に対し,必要な書類の閲覧若しくは資料の提供を求めたり,銀行,信託会社,雇主等に対し報告を求めたりすることができるとしている。
この点,現行法は,扶養義務者の扶養は保護の要件とせず,単に優先関係にあるものとして(現行法4条2項),現に扶養(仕送り等)がなされた場合に収入認定をして,その分保護費を減額するに止めている。しかし,実務においては,あたかも親族の扶養が保護の要件であるかのごとき運用が行われている。そのため,要保護者が,扶養義務者への通知によって生じうる親族間のあつれき等をおそれ,保護の申請を断念することも少なくないのが実情である。
改正案によって,扶養義務者に対する通知が義務化され,保護の実施機関等の調査権限が強化されることになると,要保護者の保護申請に対し,一層の萎縮的効果を及ぼすことは明らかである。
全国的にも,そして福井県においても,生活保護を受けている世帯人員数は増加の一途をたどっている。今回の改正は,増え続ける保護費を抑制する狙いであることは明らかである。しかし,保護費の増大は我が国の総合的なセイフティーネットが脆弱であることに由来するのであって,かかる状況下において保護費の削減のための法改正を拙速に進めるべきではない。
そもそも我が国の生活保護の捕捉率(制度の利用資格のある者のうち現に利用できている者が占める割合)は2割程度に過ぎず,先進国中で異常に低い状況である。仮に今回の改正案が成立し施行されることとなれば,要保護者の生活保護の申請が一層抑制され,生活保護の捕捉率がさらに低下し,自殺・餓死・孤立死等の悲劇を招くおそれがある。
国連社会権規約委員会は,本年5月17日に公表した「日本の第3回定期報告書に関する総括所見」において,「委員会は,…生活保護の申請手続を簡素化し,かつ申請者が尊厳をもって扱われることを確保するための措置をとるよう,締約国に対して求める。委員会はまた,生活保護につきまとうスティグマ(恥の烙印)を解消する目的で,締約国が住民の教育を行なうよう勧告する。」との勧告を行った。
いまわが国に求められているのは,この勧告にしたがって生活保護をより利用しやすくするよう制度の運用を改善することである。しかるに,今回の改正案は,これとは正反対の,現行法上では違法な運用を合法化しようとするものであって,社会権規約の誠実な執行という,わが国の国際法上の重要な義務の履行の観点からも重大な問題がある。
当会は,2012年11月29日,予算編成過程における生活保護基準の引き下げに反対する総会決議をするなど,実質的な生存権保障のために力を尽くしてきたが,改正案は,生存権保障をないがしろにするものであり,到底容認できない。
よって,当会は,改正案の廃案を強く求めるものである。
2013年(平成25年)6月12日
福 井 弁 護 士 会 会 長  島 田 広

秘密保全法制定に反対する会長声明
「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」は,2011年8月8日,秘密保全法制を早急に整備すべきである旨の「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」を発表した。その上で,政府における情報保全に関する検討委員会は,2011年10月7日,次期通常国会への提出に向けて法案化作業を進めることを決定した。政府は今年の3月,いったん通常国会への提出を見送ったものの,法案制定そのものを断念したわけではなく,早ければ次期臨時国会にも提出されるおそれがある。
当該秘密保全法制については,以下に述べるように,国民主権原理から要請される知る権利を侵害するなど,憲法上の諸原理と正面から衝突するものであり,国民の間で議論が十分になされていない状況下で立法化を早急に進めることは,民主主義国家の政府の態度として極めて問題である。
当該秘密保全法制検討のきっかけとなった尖閣諸島沖中国船追突映像流出は国家秘密の流出というべき事案とは到底言えないものであり,立法を必要とする理由を欠くと言わざるを得ない。仮に,秘密とされるべきものがあるとしても,秘密保全のために新たな法制を設ける必要性はなく,国家公務員法等の現行法制でも十分に対応できるものであり,新たな法制化の必要性が何ら示されてはいない。
当該秘密保全法制では,規制の鍵となる「特別秘密」の概念が曖昧かつ広範であり,かつ,何を特別秘密とするかを決めるのが各行政機関に委ねられており,本来国民が知るべき情報が国民の目から隠されてしまう懸念が極めて大きい。また,罰則規定に,このような曖昧な概念が用いられることは,処罰範囲を不明確かつ広範にするものであり,罪刑法定主義等の憲法上の権利と矛盾抵触するおそれがある。
禁止行為として,漏洩行為の独立教唆,扇動行為,共謀行為や,「特定取得行為」と称する秘密探知行為についても独立教唆,扇動行為,共謀行為を処罰しようとしており,単純な取材行為すら処罰対象となりかねず,そこでの禁止行為は曖昧かつ広範であり,この点からも罪刑法定主義等の刑事法上の基本原理と矛盾するものである。現実の場面を考えても,取材及び報道に対する萎縮効果が極めて大きく,国の行政機関,独立行政法人,地方公共団体,一定の場合の民間事業者・大学に対して取材しようとするジャーナリストの取材の自由・報道の自由が侵害されることとなる。
また,大学などの独立行政法人を秘密保全法制の適用対象とすることは,学問・研究活動を国家秘密の対象とするものであり,学問,研究活動の自由を侵害するものである。特に本県との関係では,これまで原子力に関する情報が十分市民に公開されてこなかったことが原子力発電所に関する様々な事故の一因になってきたと考えられるところ,独立行政法人が秘密保全法制の適用対象とされることによって,原子力に関する研究を行う独立行政法人の情報を入手することが更に困難となるおそれがある。
報告書では特別秘密を取り扱う者自体の管理に関して,人的管理の必要性を詳細に論じているが,情報システムの管理に対する無関心やルーズさにこそ問題があることを自覚し,見直すべきであって,人的管理の対象者及びその周辺の人々のプライバシ-を空洞化させるような方向は本末転倒である。人的管理に偏することなく,むしろ作成・取得から廃棄・移管までの各段階において,情報システムの管理の徹底など個別具体的な保全措置を講ずる物的管理と組み合わせることにより対応すべきである。さらにいえば,当該秘密保全法制に関わり起訴された者の裁判手続は,憲法に定められた基本的人権である公開の法廷で裁判を受ける権利や弁護を受ける権利を侵害するおそれがある。
以上の理由から,当会は,当該秘密保全法の制定には反対であり,法案が国会に提出されないよう強く求めるものである。
2012年(平成24年)7月25日
福井弁護士会 会長 和 田  晋 一

全面的国選付添人制度の実現を求める会長声明
当会は,国に対し,国選付添人制度の対象事件を,観護措置決定により少年鑑別所に送致された少年の事件全件にまで拡大するよう,速やかに少年法を改正するよう求める。

1 弁護士は、少年審判手続きにおいて,「付添人」という立場で,事実認定や処分が適正に行われるよう、少年の立場から関与している。
少年は,精神的に未熟であることから取調官に迎合しやすいため,成人より冤罪発生の危険が大きく,適正手続きの観点から弁護士付添人の援助が必要である。
また,少年審判を受ける少年の多くは、生育歴、家庭環境に大きな問題を抱え、信頼できる大人に出会えないまま非行に至っている。とりわけ,少年鑑別所に身体拘束された少年は、大きな問題を抱えている。弁護士付添人は,そのような少年を受容しつつ反省を促し,家庭,学校,職場などに働きかけ少年を取り巻く環境を調整し,少年の更生を手助けする存在として必要である。
弁護士付添人のこうした活動は,再非行の減少につながり,社会的にも意義のあるものである。
2 ところが、2008年における弁護士付添人選任率は,少年鑑別所に身体拘束された少年の約40%に止まっている。成人の刑事裁判では約98%の被告人に弁護人が選任されていることに比べれば、少年に対する法的援助は著しく不十分であると言わざるを得ない。
この原因は,少年に国選付添人が選任される場合が極めて限定されていることにある。すなわち,成人の刑事裁判ではほぼ全ての事件について国選弁護人が選任されるのに対して,少年審判手続で国選付添人が選任されるのは,①殺人や強盗などの重大事件について裁判所の裁量で選任される場合,②被害者傍聴の申し出がなされた場合,③検察官関与決定がなされた場合に限定されているのである。2008年における国選付添人選任率は,少年鑑別所に身体拘束された少年の約4%にすぎない。
また、成人の場合は起訴前・起訴後を通じて国費により弁護人の援助を受ける機会が与えられているのに対し、少年の場合には、被疑者段階においては,被疑者国選弁護制度により弁護士の支援を受けることができるが,家庭裁判所送致後は,極めて限定的な場合にしか国選付添人が付されないという制度に止まっていることから、多くの少年に弁護士付添人が付かないまま審判を受けるという事態が生じている。少年に対する法的援助に対する保障が,成人よりも不十分であるというのは不均衡である。
3 このような状況の下、日本弁護士連合会は,付添人の必要性を自覚し、全ての会員から特別会費を徴収して少年・刑事財政基金を設置し、弁護士費用を賄えない少年に私選付添人の費用を援助する少年保護事件付添援助制度を実施してきた。
また、当会では、2008年5月から、観護措置決定により身体拘束を受けた少年の要望があれば、弁護士が無料で少年と面会して助言を行う当番付添人制度を実施し,当会会員は,これを契機として積極的に少年保護事件付添援助制度を利用し、私選付添人となって精力的・献身的に活動している。
しかし、審判手続きにおける適正手続きを保障し,更生を支援するという法的援助を与えることは,本来国の責務である。我が国が批准した子どもの権利条約37条(d)が「自由を奪われたすべての児童は、・・・弁護人(及び)その他適当な援助を行う者と速やかに接触する権利を有する」と規定しているところである。法的援助を必要とする少年に対し、国費で付添人を付けることができる権利を保障すべきである。弁護士会の財政的負担によって支えられている少年保護事件付添援助制度に頼るべきではない。
4 よって、当会は、政府に対し、国選付添人制度の対象事件を観護措置決定により少年鑑別所に身体拘束された少年の事件全件にまで拡大する少年法改正を速やかに行うよう求めるものである。
2010(平成22)年 5月31日
福 井 弁 護 士 会  会長 井  上  毅

家族法の差別的規定改正の早期実現を求める会長声明
選択的夫婦別姓や婚外子の相続分差別撤廃を内容とする民法,戸籍法等の法改正は,14年前の法制審答申以来,現在に至るも実現していない。法務省は本年2月19日に民法改正案の概要を政府与党の議員に示したとされるが,その後立法化に向けた進展が見られない。
女性の多くが,現実には婚姻後の夫婦の姓の変更を余儀なくされ,職業上も生活上も様々な不利益を被っている。また,通称使用等の方法により社会生活上夫婦が別姓を使用している家庭も少なからず存在するが,法的根拠がないために周囲の理解を得られにくい状況にある。
夫婦別姓について,同制度導入が家族の崩壊につながるとして反対する意見もあるが,夫婦別姓と家族関係の悪化を結びつける実証的根拠は存在しないし,現在議論されているのは選択的夫婦別姓であって国民全体に夫婦別姓を強制するものではない点でも,説得力に欠ける。逆に,先進国では婚姻後の夫婦の同姓を強制しているのは日本のみである。自己のアイデンティティとして婚姻前の氏を使い続けるというライフスタイルの選択は,憲法に照らし,十分に尊重されなければならない。
2009年9月以降に複数の新聞社により実施された調査ではいずれも,選択的夫婦別姓の導入に賛成の者の数は反対の者の数を上回った。夫婦別姓についての国民的理解も進んでおり,制度導入の障害はないといえる。
また,婚外子の相続分差別の撤廃も国際社会の趨勢である。婚外子の相続分差別は,子自身の意思や努力によっていかんともし難い事実をもって差別をするものであり,憲法13条,14条及び24条2項に反することは明らかである。最高裁においても,相続分差別を撤廃すべきであるという意見が何度も述べられている。
さらに,女性にのみに課される再婚禁止期間についても,子の父が誰であるかを確定する困難を避けることがその立法趣旨とされているが,科学技術の発達により父の確定に伴う困難は大きく減り,男女間に差を設けるべき根拠は既に失われている。婚姻年齢の統一も,今や憲法14条から当然に要請されることである。
1993年以来,国連の各種委員会は日本政府に,家族法改正を勧告し続けてきた。とりわけ2009年女性差別撤廃委員会は,家族法改正を最優先課題として指摘し,2年以内の書面による詳細な報告を求め,再度早期改正を行うよう厳しく勧告している。
当会は,今国会において,選択的夫婦別姓の導入をはじめ,家族法の差別的規定の改正が速やかに実現されることを強く求める。
2010年(平成22年)3月29日
福井弁護士会 会長  黛   千 恵 子

取調べの可視化(全過程の録画)の早期実現を求める会長声明
2009(平成21)年5月,裁判員制度がスタートし,市民に開かれた刑事裁判という刑事司法の大きな変革が行われた。しかし,被疑者に対する取調べについては,依然として,警察官・検察官により,取調室という密室において行われ続けており,冤罪を生む危険性は変わらないままである。
近年判明した冤罪事件としては,鹿児島県の選挙違反事件(志布志事件)や,虚偽の自白がなされ,有罪判決を受けるに至った富山県の強姦事件(氷見事件)などが挙げられる。これらは,無実の人間が,いずれも取調室という密室において,警察官あるいは検察官により,虚偽の自白を強要され,耐えきれずに虚偽の自白をしたことにより,起訴され長期間身体拘束を受けた事件であり,氷見事件では,有罪判決が確定し,刑務所で服役までさせられることになった。また,2009(平成21)年6月,1990(平成2)年に栃木県足利市で発生した幼女誘拐殺人事件(足利事件)の再審開始が決定され,現在,再審公判が続けられており,さらに同年12月には,1967(昭和42)年茨城県利根町布川で発生した強盗殺人事件(布川事件)について,最高裁の決定により再審が開始されることが決まったが,これらの事件においても,取調室という密室における取調べにおいて,虚偽の自白を強要され,虚偽の自白がなされるに至り,虚偽の自白が聴取された供述調書が公判において重要な証拠とされ,無期懲役の有罪判決がなされ,長期間の服役を余儀なくされた。
ところで,現在,検察庁・警察は,裁判員裁判対象事件についてのみ,その取調べの一部を録画しているが,取調べの一部を録画したとしても,何ら冤罪の防止にはならないばかりか,冤罪を生み出す危険性すらある。
先に述べた足利事件,布川事件においても,捜査機関が取調べの一部を録音しているが,それらの録音テープは,被疑者が自らの無実を訴えて否認していたものの,取調べに耐えられず自白するに至ってしまった後に,改めてその自白を録音したものであった。そして,布川事件において,裁判所は,それらの録音テープを根拠に,自白が任意になされたものと判断し,自白を有力な証拠として,有罪判決を言い渡した。検察庁・警察において現在行われている取調べの一部録画も,正に被疑者による自白がなされた後,自白の調書が作成され,その内容を確認する部分を録画するものとなっており,取調べの一部を記録したとしても,何ら冤罪の防止とならず、冤罪を生み出す危険性があることは,既に上記の冤罪事件が証明している。
真に冤罪を防止するためには,どういう取調べがなされたのか,どういうやりとりがあって自白がなされたのかを後に確認できる状況にしておくことこそが重要である。そして,そのためには,取調べの全過程を録画すること以外に方法はない。
刑事裁判において最も避けられなければならないことは無実の人を罪に問わないことにある。冤罪を防止するためにも,一刻も早く,取調べの全過程を録画するようにしていかなければならない。
当会は,国会に対して,取調べの全過程の録画を義務づけることの立法化を早急に行うよう求めるものである。
2010(平成22)年1月29日
福井弁護士会 会長 黛  千 恵 子

葛飾ビラ配布事件最高裁判決に関する会長声明
2009(平成21)年12月24日
福井弁護士会 会長 黛 千 恵 子
最高裁判所第二小法廷は、本年11月30日、マンション各戸のドアポストへの政党の政治的意見を記載したビラ等の投函が住居侵入罪に該当するとした東京高等裁判所判決に対する上告を棄却する判決(以下、本判決という)を言い渡した。
本判決は、「表現の自由は、民主主義社会において特に重要な権利として尊重されなければならず」としたものの、「たとえ表現の自由の行使のためとはいっても,そこに本件管理組合の意思に反して立ち入ることは,本件管理組合の管理権を侵害するのみならず,そこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するものといわざるを得ない。」などとして、「本件立入り行為をもって刑法130条前段の罪に問うことは,憲法21条1項に違反するものではない。」とした。
憲法21条1項が保障する表現の自由は、人間の本質的な属性である精神活動を充足するものであるというにとどまらず、民主主義社会が国民の自由な討論と民主的な合意形成によって成立するという意味で、その基盤を構成する重要な権利である。また、本件のようなビラ配布は、経済力に乏しく発言の場を容易に持てない市民が利用可能な数少ない表現手段である。
そうすると、本件のビラ等の投函は、憲法が保障する基本的人権の中でも、いわゆる優越的地位が認められる重要な権利であるから、裁判所は、「憲法の番人」として、表現の自由に対する規制が必要最小限度であるかにつき、厳格に審査しなければならない。このことは、憲法解釈上自明であり、日本弁護士連合会も、本年11月6日に開催した人権擁護大会において「表現の自由を確立する宣言」として採択し確認しているところである。
しかるに、本判決は、前記のとおり、表現の自由とこれと衝突する権利である管理組合の管理権及びマンション住民の私生活の平穏とを並列的に論じ、後者が具体的に侵害されたかを十分に検討することなく結論を導いた。表現の自由が前記の性質を持つ重要な権利であることに鑑みれば、管理組合の管理権に対しては優越的な地位を有するのであるから、その点を含めた慎重な検討が必要であるし、私生活の平穏に対する侵害を問題にするのであれば、その侵害の程度が、表現の自由の権利としての重要性を前提にしながら、さらに受忍限度を超えたと言えるか否かを含めて具体的かつ慎重な検討が必要だと考えられるが、そういった厳格な審査を行ったとは考えにくい。
また、刑事処罰は人権制約の度合いが極めて大きいことから、刑罰権の行使には謙抑性が求められるところ、民事上においてすら、本件のような事案で住民の被告人に対する損害賠償請求が容易に認められるとは考え難く、本判決には上記の謙抑性の観点からも疑問が生じる。
国際人権(自由権)規約委員会は、2008年10月、「政府に対する批判的な内容のビラを私人の郵便受けに配布したことに対して、住居侵入罪もしくは国家公務員法に基づいて、政治活動家や公務員が逮捕され、起訴されたという報告に懸念を有する」旨の表明をし、日本政府に対し、「表現の自由に対するあらゆる不合理な制限を撤廃すべきである」旨勧告した。本判決は、本件逮捕・起訴が国際的に批判される中で、敢えてこれを是認したもので、その問題性は、極めて大きい。複数の新聞報道がその社説等において、本判決が表現活動に対して萎縮的効果をもたらすことを危惧しているが、正鵠を得たものといえよう。
よって、当会は、裁判所に対し、今後ビラ配布を含む表現の自由の重要性に十分配慮し、国際的な批判にも耐えうる厳密な利益衡量に基づく判断を示すよう強く要望する次第である。

死刑執行に関する会長声明
本年4月10日、東京拘置所及び大阪拘置所において2名ずつ、計4名の死刑確定者に対して死刑が執行された。昨年は4月、8月、12月に各3名の死刑確定者に対して死刑が執行され、本年に入っても,本年2月1日に3名の死刑確定者に対して死刑が執行されたばかりである。当会は,本年2月13日に会長声明を発し,死刑制度の存廃について国民的な議論が尽くされるまで死刑の執行を停止するよう要請したが,今回,そのわずか2ヶ月ほどの後に死刑が執行されたものであって、誠に遺憾である。
我が国では、4つの死刑確定事件(免田・財田川・松山・島田各事件)について再審無罪判決が確定し、死刑判決にも誤判が存在したことが明らかとなっているが、このような誤判を生じるに至った制度上、運用上の問題点について、抜本的な改善が図られておらず、誤った死刑の危険性は依然存在する。また、死刑と無期刑の量刑につき、裁判所によって判断の分かれる事例が相次いで出され、死刑についての明確な基準が存在しないことも明らかとなっている。
また,我が国の死刑確定者は、国際人権(自由権)規約、国連決議に違反した状態に置かれ、特に過酷な面会・通信の制限は、死刑確定者の再審請求、恩赦出願をはじめとする権利行使の大きな妨げとなってきた。昨年、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律が施行されるに至り、同法による実務の改善が期待されていたものの、いまだに死刑確定者と再審弁護人との面会に立会いが付されるなど、その権利行使が十全に保障されてきたとは言いがたく、このような状況で直ちに死刑が執行されることには問題がある。
他方,死刑については、死刑廃止条約が1989年12月15日の国連総会で採択され(1991年発効)、1997年4月以降毎年、国連人権委員会(2006年国連人権理事会に改組)は「死刑廃止に関する決議」を行い、その決議の中で日本などの死刑存置国に対して「死刑に直面する者に対する権利保障を遵守するとともに、死刑の完全な廃止を視野に入れ、死刑執行の停止を考慮するよう求める」旨の呼びかけを行った。このような状況の下で、死刑廃止国は着実に増加し、1990年当時の死刑存置国96か国、死刑廃止国80か国(法律で廃止している国と過去10年以上執行していない事実上の廃止国を含む。)に対し、2007年12月24日現在、死刑存置国62か国、死刑廃止国135か国と、死刑廃止が国際的な潮流となっていることは明らかである。
また、昨年5月18日に示された国連の拷問禁止委員会による日本政府報告書に対する最終見解・勧告においては、我が国の死刑制度の問題が端的に示された上で、死刑の執行を速やかに停止するべきことなどが勧告された。
さらに、昨年12月18日には、国連総会本会議において、すべての死刑存置国に対して死刑執行の停止を求める決議が圧倒的多数で採択された。また、上記決議の採択に先立ち、昨年12月7日の我が国における死刑執行に対しては、国連人権高等弁務官から強い遺憾の意が表明されるという異例の事態が生じた。
今、我が国に求められているのは、上記勧告や決議案にどう応えるかも含めて、開かれた継続的な議論を行うことであり、死刑の執行を急ぐことではない。今回の死刑執行は、我が国が批准した条約を尊重せず、国際社会の要請には一切耳を傾けないことを改めて宣言する行為に等しい。
日本弁護士連合会は、2002年11月に発表した「死刑制度問題に関する提言」及び2004年10月に採択された「死刑執行停止法の制定、死刑制度に関する情報の公開及び死刑問題調査会の設置を求める決議」において、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし、また死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)の制定を提唱してきた。また、同連合会は,上記提言及び決議を踏まえ、本年3月13日の理事会において、「死刑制度調査会の設置及び死刑執行の停止に関する法律(案)」(通称「日弁連死刑執行停止法案」)を承認し、引き続き死刑問題に関する取組を続けている。
当会は,改めて政府に対し、被執行者の氏名だけではなく、死刑制度全般に関する情報を更に広く公開することを要請するとともに、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし、死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、重ねて強く要請するものである。
2008年(平成20年)6月 11日
福井弁護士会 会長 朝日宏明

「憲法改正国民投票法案」の慎重審議を求める声明
「日本国憲法の改正手続きに関する法律案」(いわゆる「国民投票法案」)は、4月13日、衆議院本会議で可決され、参議院で審議されている。
憲法改正国民投票は、主権者である国民が、国の最高法規である憲法のあり方について主権者としての意見を表明するものであるから、それにふさわしいものでなければならない。しかし、現在参議院で審議されている与党の「国民投票法案」は、修正されたとはいえ、未だ多くの問題を抱えたままである。
第1に、改正案の発議は、「内容において関連する事項ごと」に区分して行うとされているが、基準が曖昧であり、発議の仕方によっては国民の意思が正確に反映されない危険を有している。国民の意思を尊重するという憲法の趣旨からすれば、むしろ、条文ごとの個別投票が原則とされるべきである。
第2に、憲法改正の発議から国民投票までの期間を60日以後180日以内としており、最短60日で国民投票が行われることになる。しかし、国民投票は、憲法改正という国政の基本に関わる重大な問題について主権者の意思を問うものであるところ、国民が十分に情報の提供を受け、これを理解し、さらに意見交換する機会が保障されなければならない。そのような観点からすると、法案の定める期間は、余りに短すぎると言わざるを得ない。
第3に、公務員及び教育者の「影響力」を利用した国民投票運動を広く禁止しているが、このような曖昧な基準は表現行為に萎縮効果をもたらしかねない。
第4に、メディアにおける有料広告に対する規制のあり方については、財力のない一般市民が意見を表明する権利を実質的に損ねるおそれがあるという重大な問題が存することが否定できず、十分に議論が尽くされたとは言い難い。
第5に、憲法改正案の広報を行う国民投票広報協議会の構成を所属議員の比率によって選任することから、反対意見が公正かつ十分に広報されないおそれがある。
第6に、法案は最低投票率を定める規定を置いていない。そうすると、例えば、投票率が40%だった場合には、投票権者の20%の賛成をもって国の最高法規である憲法の改正が認められることになる。しかし、日本国憲法が憲法改正手続において国民投票を定めている趣旨や憲法改正の重要性に鑑みるなら、最低投票率あるいは最低得票率が定められるべきである。
以上のとおり、現在審議されている国民投票法案には、極めて重大な問題が数多く存する。
よって、参議院においては、慎重に審議されることを強く求める。
2007年(平成19年)4月27日
福 井 弁 護 士 会 会 長  北  川  稔

教育基本法改正法案に反対する再度の会長声明
当会は、本年6月、教育基本法改正法案(以下、改正法案という)について、その改正の必要性が明確ではないこと、さらに改正法案には「愛国心」を強制されるおそれがあることや個人の尊厳が後退する懸念があること、そして国が教育に不当に介入し統制することを可能とするおそれがあることを指摘し、改正法案を今国会で成立させることはあまりに拙速であるとして改正法案に反対する会長声明を出した。
ところが、11月16日、改正法案は衆議院において与党の単独採決により可決されて参議院に送付され、11月22日に参議院教育基本法特別委員会にて審議が開始されている。衆議院の審議においても、教育基本法の改正の必要性は全く明確にはなっていない。又、当会が指摘した改正法案のもつ上記問題点も解消されないままである。それどころか、政府が市民と政府の相互対話の場として開催したタウンミーティングにおいて、質問事項を地元教育委員会に送るなどして教育基本法改正に賛成する「やらせ」発言をさせる等という重大な問題が浮き彫りになった。この「やらせ」発言問題は、政府の意図通りに民意を曲げる可能性を示唆した問題であり、看過できない。
言うまでもなく教育基本法は、教育の憲法という性格をもつ法律であるうえ、教育のもつ重要性に鑑みるならば、その改正の必要性の有無及び改正法案の問題点につき慎重のうえにも慎重な審議がなされる必要性がある。衆議院における審議においてもいまだ改正の必要性についても明確になっておらず、むしろ民意反映という過程において看過できない問題が浮き彫りになった改正法案における与党単独採決は将来に禍根を残すものと言える。
当会は、改正法案を今国会において成立させることにつき再度反対の意を表明する。
2006(平成18)年11月30日
福 井 弁 護 士 会 会 長   山   川  均

教育基本法改正法案に反対する会長声明
1 政府は,本年4月28日,教育基本法改正法案(以下,同法案という)を国会に提出し,同 法案は,同年5月24日衆議院における教育基本法に関する特別委員会において実質審議に入った。政府は,今国会での成立を目指す方針であるとの報道がなされている。当会は,以下の理由により,同法案を今国会で成立させることについて反対である。
2 改正の必要性が明確ではない
現行の教育基本法は(以下,現行法という),教育が軍国主義的国家体制のもとで,戦争のための国民の精神総動員の手段,思想統制の手段として使われた苦い経験を踏まえて1947年(昭和22年)3月に施行された教育における「基本法」である。前文には,「(憲法の)理想の実現は,根本において教育の力にまつべき」「個人の尊厳を重んじ,真理と平和を希求する人間の育成に期する」と規定され準憲法的性格を有すると言われる。よって,そもそも現行法を改正する必要性が存在するのかどうかが吟味されなくてはならない。改正の必要性について,中央教育審議会答申によれば,我が国の教育は現在多くの課題を抱え,危機的な状況に直面しているとして,「青少年が夢や目標をもちにくくなり」「規範意識や道徳心,自立心が低下」「いじめ,不登校,中途退学,学級崩壊」「青少年による凶悪犯罪の増加の懸念」等を上げている。確かに学校現場においては種々の問題を抱えていることは事実であるが,これらの問題が現行法の弊害と言えるのかどうか具体的に全く明らかにされていない。むしろ,当会共催で毎年実施している「子どもの悩み110番」に寄せられる相談を分析すると,偏差値教育に示される過度な競争主義と教育行政による管理統制の強化により,いじめや虐待等の権利侵害に悩む子どもの実態が存在する。これらは,現行法の弊害というよりむしろ,現行法の理念が十分に学校現場で生かされていない結果とも言えるのである。教育は百年の計と言われる重要な問題である。現行法に弊害があり,真に改正が必要であるのかどうかについて,十分な調査,研究,そして国民的議論を要するが,現在の時点で,そのような経緯が全く存在しない。
3 今国会で成立させるのはあまりに拙速である。
教育基本法が準憲法的性格を有する法律にもかかわらず,同法案作成においては,「与党教育基本法に関する協議会」及び2003年(平成15年)6月に設置された「検討会」における約3年にわたる議論が,中間報告以外,全て非公開に進められてきた。この経緯は,手続的にも極めて問題である。教育基本法が今後の教育の在り方を決定する重要な法律であり,しかも,同法案が下記の通り,重大な問題を含むものであることに鑑みれば,各界各層の広範かつ慎重な意見交換と国民的議論が活発になされることが必須である。現時点ではそのような状況にはなっていない。よって,今国会で成立させようとすることはあまりに拙速であって容認できない
4 法案の問題点について
法案には種々の問題点が存在するが,本声明では,明らかに問題と考えられる点を指摘する。
第一 「愛国心」が強要されるおそれがある
改正法案は,「教育の目標」(同法案第2条)を掲げ,そのなかに,「伝統と文化を尊重し,それをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」態度を養うことを含ませている。愛国心については,個々人が持つこと自体は自由であるし,その持ち方についても,持つかどうかについても個人の自由である。つまり愛国心は人間のもつ内心であり,公教育によって上から押しつけるものではない。これを法律で強制する場合には,現行憲法及び現行教育基本法の最も基本的な価値である「個人の尊厳」への介入,「思想良心の自由」(憲法第19条)の侵害となるおそれが強い。なお,「伝統文化の尊重」「我が国と郷土を愛する」など,その定義は不明確であり,国家が一定の価値認識を押しつける危険性が存在すると言わざるを得ない。こうした危険性が杞憂ではないことについては,東京都において,教育委員会の通達に基づき,校長が教員に対し,「日の丸掲揚」「君が代斉唱」時の起立,発声を義務づけ,これに従わない教員を処分するという事態が発生し,本年3月13日には,生徒への起立,斉唱指導を義務づける通達が発せられている状況にあること,さらに,2002年(平成14年)福岡市の小学校6年生の通知票の評価項目に「国を愛する心」の文言が掲げられ,「愛国心」という内心の問題を成績評価を通じて強制しようとした状況にあることを指摘する。「愛国心」の強要のおそれが存在する改正案には賛成できない。
第二 個人の尊厳の後退が懸念される
現行法前文は,「われらは,個人の尊厳を重んじ,真理と平和を希求する人間の育成を期する」とあるが,同法案は,「真理と正義を希求し,公共の精神を尊び,豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期する」に変更している。かつ,現行法1条の教育の目的から「個人の価値をたつとび」という文言を削除した。これは,同法案が「平和」を希求する人間の育成を軽視し,時の政府が考える「公共」を優先して,「個人の価値」を軽視するものではないかとの疑念を抱かせるものである。
さらに,法案は,現行法前文が「普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない」としていたところを,「伝統を承継し,新しい文化の創造を目指す教育を推進する」とした。これは,時の政府が考える「伝統」を押しつける教育になるのではないかとの疑念を抱かせるものである。
第三 国が教育に不当に介入し統制することを可能とするおそれがある
法案は,「教育行政」に関し,現行法10条1項の「国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。」との文言を削除して,「この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものである」とし(同法案第16条1項),その上で,国が「教育に関する施策を総合的に策定し,実施」するものとした(同法案16条2項)。さらに,法案は,政府及び地方公共団体に対し,教育振興基本計画の策定を義務づけている(同法案第17条)。
現行法は教育行政の責務を「諸条件の整備」に限定している(同法案10条2項)。これは,先に述べた通り,戦前における軍国主義的教育への反省にたって規定されたものであるが,同法案は,この規定の趣旨を没却し,行政の責務・権限を飛躍的に拡大させており,時の政府及び地方公共団体によって,教育内容が不当に統制される危険が極めて高い。
以上の観点から当会は,同法案を今国会で成立させることに反対する。同法案を廃案にしたうえで,あらためて,現行法案の改正の要否を含めて,各界,各層の意見交換,国民的議論を踏まえた十分かつ慎重な討議を求めるものである。
2006年(平成18年)6月 2日
福井弁護士会 会 長  山 川   均

「弁護士から警察への依頼者密告制度(ゲートキーパー制度)」に反対する会長声明FATF(金融活動作業部会:マネーロンダリングやテロ資金対策を目的としてOECD加盟国等で構成されている政府間機関)は、2003年6月、マネーロンダリングやテロ資金対策を目的として、従前から対象にしていた金融機関に加えて、新たに弁護士等に対しても、不動産売買等の一定の取引に関し「疑わしい取引」を、FIU(金融情報機関)に報告する義務を課することを勧告した。これを受けて、政府の国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部は、2004年12月、「テロの未然防止に関する行動計画」を策定し、FATF勧告の完全実施を決めた。更に、2005年11月17日、FATF勧告の完全実施のための法整備の一環として、報告先であるFIU(金融情報機関)を、金融庁から警察庁へ移管することを決めた。
そして、政府は、このような警察庁に対する報告義務を課す制度、すなわち弁護士から警察への依頼者密告制度(ゲートキーパー制度)の法律案を、2007年の通常国会に提出することを予定している。
しかし、このような依頼者密告制度は、市民が弁護士の守秘義務のもとで相談することができる権利を侵害し、市民と弁護士の信頼関係を損なうものである。いうまでもなく、弁護士の守秘義務は信頼関係の基礎である。弁護士が秘密を守るとの信頼があるからこそ、市民は安心して弁護士に相談することができる。自分の取引が「疑わしい」との理由で、弁護士から警察へ密告される恐れがあると、市民は安心して相談することができず、適切な助言を受けることもできなくなる。
また、このような依頼者密告制度は、弁護士の国家権力からの独立性を危うくし、弁護士制度の根幹を揺るがすものである。
弁護士は、刑事事件の弁護人など多くの場面で、警察機関とは制度的に対抗する関係にある。その弁護士が、依頼者の取引を「疑わしい」との理由で、警察に密告する義務を負うと、国家権力から独立して市民の権利を擁護するという使命を果たせなくなる。更には、市民の情報やプライバシーまでが警察に密告されることになり、警察機関による監視社会や密告社会を招来する恐れがある。
諸外国においても、各国の弁護士会はこのFATF勧告の法制化に反対している。アメリカでは、ABA(アメリカ法曹協会)が強く反対して、未だに立法化への動きは見られない。カナダでは、一旦は法制化されたが、裁判所による執行差止の仮処分が認められ、弁護士への適用は政府により撤回されている。ベルギーやポーランドでも、弁護士会が裁判所に提訴して争っている。
当会としても、マネーロンダリングやテロ資金対策の必要性を否定するものではない。しかし、このように弁護士の警察庁に対する報告義務を課す制度は、市民が弁護士の守秘義務のもとで相談することができる権利を侵害し、市民と弁護士の信頼関係を損ない、弁護士の国家権力からの独立性を危うくして、弁護士制度の根幹を揺るがすものであり、更には、警察機関による監視社会や密告社会を招来する恐れがある。
よって、当会は、弁護士から警察への依頼者密告制度(ゲートキーパー制度)の法制化に強く反対するものである。
平成18年4月28日
福井弁護士会  会 長  山 川  均

共謀罪新設に反対する会長声明
「共謀罪」の新設を規定する「犯罪の国際化及び組織化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」(以下「法案」という)は,一旦2004年通常国会で廃案とされたにもかかわらず,2005年特別国会に提出され,今通常国会においても与党から「修正案」が提出され,継続審議されている。
この「修正案」では,構成要件としての団体の活動にかっこ書きで制限を加えているが,あくまで団体の「活動」に着目して限定を加えたものであって,必ずしも「団体」がどこまで限定されているかは明らかでない。団体の一部の構成員が一定の犯罪の共謀を行ったことのみをもって,団体に犯罪目的ありと解釈される可能性がある。
また,この「修正案」では,共謀に加えて,「犯罪の実行に資する行為」が要件とされているが,この概念は,犯罪の準備行為よりもはるかに広い概念であり,犯罪の実行にはさしたる影響力を持たない精神的な応援などもこれに含まれる可能性があり,共謀罪の適用場面において,ほとんど歯止めにならない。
既に当会としては,2005年10月に,「法案」にはもともと下記のような問題点を有しているので,「共謀罪」の新設に反対する旨,会長として声明を出したところである。
すなわち,そもそも「共謀罪」の新設は,「国際的な犯罪の防止に関する国際連合条約」(以下「条約」という)を批准するためになされるものと説明されている。そして,条約では,その適用範囲が「性質上越境的なものであり,かつ,組織的な犯罪集団が関与するもの」に限定されている。
ところが,「法案」では,長期4年以上の刑を定めたすべての犯罪について「共謀罪」を新設するため,道路交通法違反など市民生活の隅々にまで及ぶ合計600以上の犯罪類型がその対象とされる。しかも,「法案」の「共謀罪」は,越境性が要件とされていないばかりか,テロや組織犯罪との関連性が乏しい犯罪までが対象とされている。さらに,組織的な犯罪集団の関与も要件とはされていない。これでは,条約批准に伴う国内法整備という範囲を著しく超えたものと言わざるを得ない。
また,これらの結果として,たとえば市民団体がマンション建設に反対して着工現場で座りこみをしたり,労働組合が妥結するまで徹夜も辞さずに団体交渉を続けようと決めるだけで,組織的威力妨害罪や監禁罪の共謀をしたとして処罰されかねない等,市民団体や労働組合,NPO等の活動までもが処罰の対象となるおそれも否定できない。
我が国において,このように広範な共謀罪処罰を必要とする立法事実の存在は到底認められない。
さらに,我が国において,犯罪は,実行行為があって初めて成立し処罰されるのが原則とされており,実行行為のない予備が処罰されるのは極めて例外的である。まして,外形的行為の認められない意思形成段階に過ぎない共謀それ自体は処罰しないというのが我が国の刑法の大原則である。ところが,「法案」では,意思形成段階に過ぎない共謀それ自体を処罰の対象とするものであり,我が国現行刑法の大原則に真っ向から反するものと言わざるを得ない。
加えて,共謀の概念自体が曖昧であることからすれば,「思想及び良心の自由」や「集会,結社及び言論,出版その他一切の表現の自由」等憲法上規定された基本的な人権に対する重大な脅威となるものである。
そして,以上に述べた問題点は,「修正案」でもほとんど解消されてはいない。
よって,当会としては,「共謀罪」を新設する「法案」のみならず「修正案」にも強く反対し,廃案とすべきものであることを再度声明するものである。
2006(平成18)年 4月 25日
福井弁護士会会長  山川 均

【転載】余命3年時事日記 2354 ら福井県弁護士会①(前半)

2018年02月04日 | 在日韓国・朝鮮人
福井弁護士会
ttp://fukuben.or.jp/

会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/chairman-statement
会長 川村 一司
2017年08月31日
死刑制度の廃止を含む刑罰制度の見直しに着手しないまま死刑執行を続けることについて抗議する会長声明
2017年08月18日
いわゆる共謀罪法の制定・施行に抗議する会長声明?自由に考え,議論し,意見表明を行い続けられる社会のために?
2017年08月08日
地方消費者行政の一層の強化を求める会長声明
会長  海 道 宏 実
2017年03月23日
いわゆる「共謀罪法案」の成立に反対する会長声明ー皆さんもいつの間にか捜査や処罰の対象になる世の中に!それでよいのでしょうか?
2016年12月22日
政府に労働時間規制強化により長時間労働を早急に是正することを求める会長声明
2016年11月25日
いわゆる共謀罪新法案の国会提出に反対する会長声明―市民の自由が脅かされ,いつの間にか処罰されてしまう世の中にしないために
2016年11月25日
死刑執行に強く抗議し,改めて死刑執行を停止し,死刑制度の廃止に向けた検討をすべきであることを求める会長声明―犯罪被害者遺族支援とともに刑罰制度の見直しを2016年11月25日
憲法に緊急事態条項を創設することに反対する会長声明―災害対策を口実にするな
2016年04月22日
死刑執行に強く抗議し,死刑執行を停止し,死刑制度について全社会的議論を求める会長声明
2016年04月20日
安全保障関連法の施行に強く抗議するとともにその廃止を求める会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/chairman-statement/page/2
会長 寺田 直樹
2016年03月23日
大津地裁による高浜原発運転差止・仮処分決定に対する会長声明
2016年01月21日
死刑執行に強く抗議し,改めて死刑執行を停止し,死刑制度の廃止についての全社会的議論を求める会長声明
2016年01月20日
司法修習生に対する給付型の経済的支援を求める会長声明
2015年12月28日
高浜原発3,4号機及び大飯原発3,4号機差止仮処分福井地裁決定に対する会長声明
2015年09月28日
安全保障法制改定法案の成立に抗議する会長声明
2015年07月24日
少年法の適用年齢引き下げに反対する会長声明
2015年07月23日
安全保障関連法案の衆議院強行採決に抗議し,同法案の撤回・廃案を強く求める会長声明
2015年07月01日
死刑執行に強く抗議し,改めて死刑執行を停止し,死刑制度の廃止についての全社会的議論を求める会長声明
2015年05月25日
安全保障法制改定法案に反対する会長声明
2015年04月30日
放送の自由の確保を求める会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/chairman-statement/page/3
2015年04月14日
高浜原発3,4号機差止仮処分福井地裁決定に対する会長声明
2015年04月06日
労働時間規制を緩和する「労働基準法等の一部を改正する法律案」の閣議決定に反対する会長声明
会長 内 上 和 博
2015年03月27日
中池見湿地のラムサール条約登録範囲に悪影響を与えないよう北陸新幹線ルートの再検討を求める会長声明
2015年01月29日
商品先物取引法における不招請勧誘禁止緩和に抗議する会長声明
2015年01月19日
内閣府消費者委員会の消費者庁移管について慎重な審議を 求める会長声明
2014年12月18日
福井事件再審請求最高裁決定に対する会長声明
2014年12月01日
秘密保護法の施行に反対し同法の改廃を求める会長声明
2014年09月30日
死刑執行に抗議する会長声明
2014年07月04日
集団的自衛権行使容認の閣議決定に強く抗議する会長声明
2014年05月21日
大飯原発3,4号機差止訴訟福井地裁判決に対する会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/chairman-statement/page/4
2014年04月30日
商品先物取引法下における不招請勧誘禁止緩和に反対する会長声明
2014年04月30日
集団的自衛権の行使容認に反対する会長声明
2014年04月30日
「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する 法律等の一部を改正する法律案」に反対する会長声明
会長 島 田  広
2014年03月14日
過労死等防止基本法の成立を求める会長声明
2013年12月18日
商品先物取引についての不招請勧誘禁止規制撤廃に反対する会長声明
2013年12月18日
死刑執行に関する会長声明
2013年12月18日
秘密保護法の採決強行に抗議し,同法の改廃を求める会長声明
2013年12月11日
行政書士法改正に反対する会長声明
2013年12月04日
衆議院選挙定数配分に関する最高裁判所大法廷判決についての会長声明
2013年11月29日
生活保護法改正案の廃案と国民の生活保護受給権の実効的保障を求める会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/chairman-statement/page/5
2013年11月27日
特定秘密保護法案の国際原則に照らした徹底審議と廃案を求める会長声明
2013年11月27日
通信傍受の安易な拡大と会話傍受の導入に反対する会長声明
2013年11月05日
国民の知る権利を侵害する特定秘密保護法案の廃案を求める会長声明
2013年10月31日
憲法第96条の発議要件緩和に反対する会長声明
2013年10月31日
福島第一原発事故に関し,損害賠償請求権を実質化するための立法措置及び,健康被害を未然に防ぐための措置を求める会長声明
2013年09月30日
死刑執行に関する会長声明
2013年08月01日
個人保証の原則的な廃止等を求める会長声明
2013年06月12日
「生活保護法の一部を改正する法律案」の廃案を求める会長声明
会 長  和 田 晋 一
2013年03月06日
「福井女子中学生殺人事件」再審棄却決定に関する会長声明
2012年07月25日
秘密保全法制定に反対する会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/chairman-statement/page/6
2012年07月18日
大飯原発の再稼働が行われたことに抗議するとともに,停止中の原発につき再稼働しないことを求める会長声明
2012年07月02日
貸金業法完全施行2周年を迎えての会長声明
会長  安 藤  健
2011年12月22日
福井県警察警察官による逮捕状請求書偽造行為に対する会長声明
2011年11月30日
「福井女子中学生殺人事件」再審開始決定に関する福井弁護士会会長声明
2011年04月28日
「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」に関する会長声明
会長 井  上    毅
2011年03月24日
提携リース契約を規制する法律の制定を求める会長声明
2010年11月25日
秋田弁護士会所属会員の殺害事件に対する会長声明
2010年06月25日
司法修習生に対する給費制の存続を求める会長声明
2010年05月31日
全面的国選付添人制度の実現を求める会長声明
会 長    黛   千 恵 子
2010年03月29日
家族法の差別的規定改正の早期実現を求める会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/chairman-statement/page/7
2010年01月29日
取調べの可視化(全過程の録画)の早期実現を求める会長声明
2009年12月24日
葛飾ビラ配布事件最高裁判決に関する会長声明
2009年10月30日
改正貸金業法の早期完全施行等を求める会長声明
2009年08月27日
消費者庁長官及び消費者委員会委員の選任手続に関し 両組織創設の趣旨の徹底を求める会長声明
2009年07月27日
生活保護「母子加算」制度の法定を求める会長声明
会長 朝  日   宏  明
2009年03月11日
取調べの可視化(全過程の録音・録画)の実現を求める会長声明
2008年09月17日
死刑執行に関する会長声明
2008年06月11日
死刑執行に関する会長声明
2008年05月30日
「犯罪被害者等による少年審判の傍聴」を内容とする少年法改正法案に対する会長声明
会長  北 川  稔
2008年02月13日
死刑執行に関する会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/chairman-statement/page/8
2007年04月27日
「憲法改正国民投票法案」の慎重審議を求める声明
会長  山川 均
2006年11月30日
教育基本法改正法案に反対する再度の会長声明
2006年06月02日
教育基本法改正法案に反対する会長声明
2006年04月28日
「弁護士から警察への依頼者密告制度(ゲートキーパー制度)」に反対する会長声明
2006年04月25日
共謀罪新設に反対する会長声明
ttp://fukuben.or.jp/statement/arguments
意見書
会 長  島 田   広
2013年09月17日
「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する意見書
会 長  和 田 晋 一
2012年07月25日
公契約法・公契約条例の制定を求める意見書
会 長 安 藤  健
2011年09月09日
地方消費者行政の充実強化に対する国の支援のあり方に関する意見書
会 長 北 川  稔
2007年10月03日
割賦販売法改正についての意見書
会 長 山 川  均
2006年11月14日
割賦販売法の抜本的改正を求める意見書
ttp://fukuben.or.jp/statement/resolution
決議
会 長  和 田 晋 一
2012年11月29日
生活保護基準の引き下げに強く反対する総会決議
会長 安藤 健
2012年02月22日
全面的国選付添人制度の実現を求める総会決議
会長 井上 毅
2010年12月27日
各人権条約に基づく個人通報制度の早期導入及びパリ原則に準拠した政府から独立した国内人権機関の設置を求める決議
―――――•―――――•―――――
放送の自由の確保を求める会長声明
1 自由民主党情報通信戦略調査会は,2015年4月17日,日本放送協会(NHK)の報道番組におけるやらせ報道問題及びテレビ朝日の報道番組においてコメンテーターが「官邸からバッシングを受けてきた」旨発言した問題について,両放送事業者の幹部を呼んで事情聴取を行った。同調査会(旧電気通信調査会)は同党の放送・通信分野の政策を担当する部局であり,報道によれば,同調査会の川崎二郎会長は,調査終了後,記者団に対して,放送倫理・番組向上機構(BPO)によるチェックが不充分なら,新たな第三者機関を設ける制度改正を行う可能性があることを示唆する発言をしたとされている。
政府と密接な関係にあり,今後の政府の放送政策に重大な影響を与える与党の調査会が,個々の番組の内容に関して放送事業者の幹部を呼んで事情聴取をすることは,放送事業者に対する事実上の圧力にほかならず,憲法及び放送法に照らしてきわめて不当な行為であると言わざるを得ない。
2 いうまでもなく,放送事業者には放送の自由がある。放送の自由は,日本国憲法第21条によって保障されており,国民の知る権利に奉仕するものとして民主主義の健全な機能を確保する上でもっとも重要な基盤となる憲法上の基本的人権である。
放送法は,第二次世界大戦中に放送が政府や軍部のプロパガンダの道具とされた歴史に対する真摯な反省にたちつつ1,かかる憲法上の重要な意義を有する放送の自由を確保すべく,その目的において「放送の不偏不党,真実及び自律を保障することによって,放送による表現の自由を確保すること」(第1条第2号)を掲げ,さらに「放送番組は,法律に定める権限に基づく場合でなければ,何人からも干渉され,又は規律されることがない。」(第3条)と規定し,番組編集の自由を保障している。番組内容に誤り等がある場合にも,放送事業者の「自律」を尊重しつつ是正が図られるよう,放送事業者自身に調査・訂正等の義務を課すほか(第9条),放送番組審議機関の制度を設けており(第6条,第7条),放送番組が外部からの圧力によってゆがめられることのないよう,慎重に配慮している。
3 こうした放送の自由の重要な意義及びこれを確保するための放送法の諸規定の趣旨に鑑みれば,政府が個々の放送番組の内容に干渉することが許されないのはもとより2,政党が政策調査を行う際にも,個々の番組内容に対する干渉にわたらないようにすべき制約があるといえる(なお政党が,事実と異なる報道により権利を害された場合には,放送法第9条に基づき訂正放送の請求をすればよいのであって,放送事業者の関係者から事情聴取を行う必要はない。)。
4 今回の自由民主党による事情聴取は,こうした制約を全く無視し,個々の番組の内容を狙い撃ちにして調査を行うものであり,放送番組の内容への干渉に外ならず,きわめて不当である。特に,政府と密接な関係を有する与党によってかかる干渉がなされることは,放送事業者の放送の自由を著しく脅かす行為といえる。
当会は,基本的人権の尊重と社会正義の実現を使命とする弁護士の団体として,民主主義の根幹をなす国民の知る権利と放送事業者の放送の自由を脅かすこうした行為を,看過することはできない。
5 よって,当会は,自由民主党はもとより,他の政党に対しても,個々の番組内容を狙い撃ちにした調査等,放送事業者の放送の自由を脅かす行為を行わないよう求め,放送事業者に対しては,そうした圧力に屈することなく自らの放送の自由を守ることを求める。
1 同法制定時の衆議院本会議において,当時衆議院電気通信委員会委員長であった辻寛一は,第3条に関する説明の中で,次のように述べて,放送の自由の重要性を強調している。「放送は,それが強力な宣伝の具であるがゆえに,一層表現の自由を確保されなければなりません。かつてわが国において,軍閥,官僚が放送をその手中に握って国民に対する虚妄なる宣伝の手段に使ったやり方は、将来断じてこれを再演せしむべきではありません。」
2 なお,放送法第3条の2のいわゆる番組編成準則については,かつては政府もこれを「精神的規定」と説明し,その実施は放送事業者の自律に待つべきものと説明していた。1993年9月のいわゆる椿発言問題以来,同条を理由とする放送内容に関する行政指導が繰り返されているが,この行政実務のあり方自体,憲法学説上,違憲の疑いが強いとして批判されている。
2015年(平成27年)4月30日
福井弁護士会 長 寺 田 直 樹

死刑制度の廃止を含む刑罰制度の見直しに着手しないまま死刑執行を続けることについて抗議する会長声明
2017年(平成29年)7月13日,2名に対し,大阪拘置所および広島拘置所においてそれぞれ死刑が執行された。金田勝年法務大臣による2度目の執行であり,第2次安倍内閣以降,死刑が執行されたのは11回目で,合わせて19名になる。
死刑制度は,死刑が人間の生命を奪うという非人道的行為であること,EUを中心とする世界の約7割の国々が死刑を廃止又は停止していること,誤判・冤罪により死刑を執行した場合には取り返しがつかないこと,などの様々な問題を内包していることは,2016年(平成28年)11月25日付け当会会長声明などにおいて繰り返し指摘してきたとおりである。そして,日本弁護士連合会は,2016年(平成28年)10月7日,我が福井県で開催された第59回人権擁護大会において,これまでよりさらに踏み込んで,「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し,その中で,日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年(平成32年)までに死刑制度の廃止を目指すべきであることを宣言した。その宣言においては,犯罪被害者・遺族に対する十分な配慮と支援が不可欠であるとしつつも,他方で,生まれながらの犯罪者はおらず,犯罪者となってしまった人の多くは家庭,経済,教育,地域等における様々な環境や差別が一因となって犯罪に至っているという実態があることを踏まえると,人権を尊重する民主主義社会であろうとする我々の社会においては,死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体を見直す必要があるとして,直ちに公の議論を始めるよう求めている。
当会においても,2013年(平成25年)7月には市民参加の下,「死刑を考える日2013」を開催し,また,2015年度(平成27年度)に設置された中部弁護士会連合会内の死刑問題検討ワーキンググループにおいても,昨年度は死刑廃止を考えるシンポジウムを富山,愛知,石川の各地で合計3回開催するなど,福井のみならず中部地方の各弁護士会を挙げて,より幅広く死刑廃止に向けた全社会的議論への取り組みを進めてきている。
このような状況下で,死刑制度とその運用に関する情報の公開が十分になされず,公の議論が何ら行われないまま,死刑の執行が繰り返されていることは,到底容認できない。当会は,死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の見直しに着手しないまま行われた今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑制度についてのさらなる全社会的議論を呼びかけるものである。
2017年(平成29年)8月31日
福井弁護士会     会長 川村 一司

いわゆる共謀罪法の制定・施行に抗議する会長声明?自由に考え,議論し,意見表明を行い続けられる社会のために?
去る2017年(平成29年)6月15日,共謀罪を新設することを内容とする組織的犯罪処罰法の改正案(以下「共謀罪法案」という)が国会で可決・成立し,同法は同年7月11日に施行された。
同法案に対しては,国内外からさまざまな問題点が指摘され,当会も複数回にわたり反対の見解を表明した(2016年(平成28年)11月25日付け及び2017年(平成29年)3月22日付け当会会長声明)。国連プライバシーに関する権利の特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏も,首相宛書簡の中で「プライバシーに関する権利と表現の自由への過度の制限につながる可能性がある」との強い懸念を表明した。
また,様々な指摘にもかかわらず,同法案の本質的問題は修正されなかった。準備行為に着手した時点で処罰するとされるが,その「準備行為」の内容は依然として曖昧であり,実質的には共謀内容に着目することになる。このように,憲法の保障する思想・信条の自由,表現の自由,集会・結社の自由等の基本的人権に対する重大な脅威となるばかりか,既遂処罰を原則とし,その前段階の未遂や予備等は例外的に処罰する刑法の基本原則を否定するという問題は解消されなかった。依然としてテロと無関係な犯罪まで多数が処罰対象となっており,また,処罰対象となる「組織的犯罪集団」の要件も曖昧であった。政府は,こうした問題点の指摘に対し,国会でも変遷し不明確さの残る答弁しかできず,国連の特別報告者からの質問にも,実質的に回答することはなかった。277もの多数の罪を対象とし,国民の基本的人権に重大な影響を与える法案にもかかわらず,審議時間は衆議院でわずか30時間,参議院では17時間50分に過ぎなかった。
かかる状況において,衆議院及び参議院で同法案の採決が強行され,とりわけ参議院においては,「中間報告」(国会法56条の3)の制度が濫用され本会議での採決が強行された点で,わが国の議会制民主主義の歴史に重大な汚点を残した。
当会は,国民の基本的人権を脅かす共謀罪法案が,国会での十分な審議も経ないまま成立を強行され,施行されたことに強く抗議し,今後も同法の改廃を求めていく。 また,成立した共謀罪法は,その要件の不明確さゆえに市民の基本的人権を不当に侵害し,もしくは市民が基本的人権を行使する上で重大な萎縮効果をもたらしうる。当会は,基本的人権が不当に侵害されることのないよう,日本弁護士連合会,市民団体等と連帯し,市民の基本的人権を擁護し,これが不当に侵害される場合には,当会と所属会員はその擁護のために全力をあげる決意であることを表明する。あわせて,市民各位に対し,同法によって萎縮することなく,これまで以上に,自由に考え,議論し,意見表明を行い続けることを呼びかけるものである。
2017年(平成29年)8月17日
福井弁護士会 会長 川 村 一 司
去る2017年(平成29年)6月15日,共謀罪を新設することを内容とする組織的犯罪処罰法の改正案(以下「共謀罪法案」という)が国会で可決・成立し,同法は同年7月11日に施行された。
同法案に対しては,国内外からさまざまな問題点が指摘され,当会も複数回にわたり反対の見解を表明した(2016年(平成28年)11月25日付け及び2017年(平成29年)3月22日付け当会会長声明)。国連プライバシーに関する権利の特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏も,首相宛書簡の中で「プライバシーに関する権利と表現の自由への過度の制限につながる可能性がある」との強い懸念を表明した。 また,様々な指摘にもかかわらず,同法案の本質的問題は修正されなかった。準備行為に着手した時点で処罰するとされるが,その「準備行為」の内容は依然として曖昧であり,実質的には共謀内容に着目することになる。このように,憲法の保障する思想・信条の自由,表現の自由,集会・結社の自由等の基本的人権に対する重大な脅威となるばかりか,既遂処罰を原則とし,その前段階の未遂や予備等は例外的に処罰する刑法の基本原則を否定するという問題は解消されなかった。依然としてテロと無関係な犯罪まで多数が処罰対象となっており,また,処罰対象となる「組織的犯罪集団」の要件も曖昧であった。政府は,こうした問題点の指摘に対し,国会でも変遷し不明確さの残る答弁しかできず,国連の特別報告者からの質問にも,実質的に回答することはなかった。277もの多数の罪を対象とし,国民の基本的人権に重大な影響を与える法案にもかかわらず,審議時間は衆議院でわずか30時間,参議院では17時間50分に過ぎなかった。
かかる状況において,衆議院及び参議院で同法案の採決が強行され,とりわけ参議院においては,「中間報告」(国会法56条の3)の制度が濫用され本会議での採決が強行された点で,わが国の議会制民主主義の歴史に重大な汚点を残した。
当会は,国民の基本的人権を脅かす共謀罪法案が,国会での十分な審議も経ないまま成立を強行され,施行されたことに強く抗議し,今後も同法の改廃を求めていく。 また,成立した共謀罪法は,その要件の不明確さゆえに市民の基本的人権を不当に侵害し,もしくは市民が基本的人権を行使する上で重大な萎縮効果をもたらしうる。当会は,基本的人権が不当に侵害されることのないよう,日本弁護士連合会,市民団体等と連帯し,市民の基本的人権を擁護し,これが不当に侵害される場合には,当会と所属会員はその擁護のために全力をあげる決意であることを表明する。あわせて,市民各位に対し,同法によって萎縮することなく,これまで以上に,自由に考え,議論し,意見表明を行い続けることを呼びかけるものである。
2017年(平成29年)8月17日
福井弁護士会 会長 川 村 一 司

いわゆる「共謀罪法案」の成立に反対する会長声明ー皆さんもいつの間にか捜査や処罰の対象になる世の中に!それでよいのでしょうか?
マンション建設反対の会で座り込みをしようと会員同士がSNSで相談し合い,その後お花見のためにシートを買ったAさん
宗教団体に入信したところ,団体のメーリングリストで「役所に放火しろ」と幹部から指示を受け,メーリングリスト内では下見に行った等やりとりがかわされていたが怖くて返信していないBさん このたび政府は,2017年(平成29年)3月21日,犯罪を計画段階で処罰する共謀罪を新設することを内容とする組織的犯罪処罰法の改正案(以下「共謀罪法案」という)を閣議決定し,本通常国会に提出した。
当会は,昨年11月25日にも,憲法の保障する思想・信条の自由,表現の自由,集会・結社の自由等の基本的人権に対する重大な脅威になるばかりか,刑法の基本原則を否定するものであるとして,いわゆる共謀罪法案の国会への提出に強く反対する会長声明を出してきた。
共謀罪法案は,①テロ対策を目的としていること②対象犯罪を277に減少させたこと等の点で,従来の共謀罪法案とは異なっていると政府は主張している。
しかし,そもそも法案の目的(第1条)にテロ文言がないばかりか,テロリズムの定義規定もなく,当初の政府原案にはなかった「テロリズム集団その他」がその後になって主体に付加された経過からして,真にテロ対策を目的としているとはうかがえない。また,テロ対策とは関連性のない犯罪(組織的な詐欺,覚せい剤譲渡,詐欺破産等)も多数対象犯罪とされていること等からすれば,従来の共謀罪法案の有する法的な問題点は何ら解消されていないものと評価できる。また,この間の国会審議を踏まえると,冒頭に記載した事例における,お花見のためにシートを買っただけのAさん,メーリングリストでのやりとりに返信しなかっただけのBさんのように,自分の知らない間に捜査対象となり,一般市民や市民団体が処罰の対象とされる可能性が否定できないことも明らかになってきた。
よって,当会は,国民の基本的人権を擁護する立場から,「共謀罪法案」の国会提出に強く抗議するとともに,その成立に強く反対するものである。
2017年(平成29年) 3月 22日
福井弁護士会 会長  海 道 宏 実

憲法に緊急事態条項を創設することに反対する会長声明―災害対策を口実にするな
未曾有の被害をもたらした東日本大震災の後、政府・自民党においては、災害対策を理由として、憲法を改正し緊急事態条項を創設しようとする動きがあり、憲法審査会でも議論が行われている。
この緊急事態条項は、大規模な自然災害、外部からの武力攻撃その他法律が定める緊急事態において、内閣総理大臣が閣議にかけ緊急事態の宣言を発することにより、内閣が法律と同一の効力を持つ政令を制定できること、内閣総理大臣が財政上必要な支出その他の処分を行うこと及び地方自治体の長に対して必要な指示ができること等を内容としている(自民党改憲草案第98条・第99条参照)。これは、いわば行政に立法権を付与して国民主権・議会制民主主義・権力分立という憲法秩序を停止するもので、政府への権力の集中と強化をもたらし、その結果、権力の濫用により国民の自由や権利が不当に奪われる危険性が高い。
一方、大規模災害時において最も重要なことは、刻々と変化する被災現場の状況に応じて臨機応変に対応することができる被災自治体の権限を強化することであり、政府に権限集中を図ることではない。東日本大震災の被災自治体に対する日弁連アンケート(2015年9月実施・24市町村回答)でも、大多数の自治体が災害対策の第一義的な権限は市町村主導にすべきと回答した。また一つを除き全自治体が憲法に緊急事態条項を導入する必要はない旨回答したとの結果が示されている。また、日本の災害法制では、大規模災害時の対処のために既に十分な整備がなされている。すなわち、内閣総理大臣は、災害緊急事態を布告し、生活必需物資等の授受の制限、価格統制等を決定できるほか、必要に応じて地方公共団体等にも指示をすることができる。今後の大規模災害への備えとして行うべきは、こうした災害法制を前提に、平時から防災・減災のための対策・準備を充実させることにほかならない。
武力攻撃やテロ行為が発生した場合等においても、事態対処法その他の法律により内閣総理大臣長とする対策本部を設置し内閣総理大臣に権限を集中させる等の対処の方法が既に規定されており、憲法に緊急事態条項を創設する必要性はない。むしろ、現行規定が過剰に内閣総理大臣に権限を集中させていないかの検証こそ必要である。ワイマール憲法下において独裁政権を許した例や大日本帝国憲法における緊急勅令等の例を挙げるまでもなく、緊急事態条項は、国家権力を担う者により濫用されてきた歴史がある。日本国憲法が、このような歴史を踏まえた憲法制定議会での議論を経て、敢えて緊急事態条項を設けなかった趣旨を今一度想起すべきである。
以上のことから、当会は、憲法に緊急事態条項を創設することについて、災害対策としてはまったく必要がないばかりかむしろ有害であり、立憲主義の根幹を変容させ、その濫用により国民の自由や権利を不当に奪われるおそれがあることから、これに強く反対するものである。
2016年(平成28年)11月25日
福井弁護士会 会長   海 道 宏 実

大津地裁による高浜原発運転差止・仮処分決定に対する会長声明
3月9日、大津地方裁判所は、関西電力高浜原子力発電所(以下「高浜原発」という)3、4号機の運転を禁止する仮処分決定(以下「本決定」という)を発令した。これを受け、関西電力も、停止中の高浜原発4号機に加え、3号機についても運転停止の手続に入った。2015年4月14日に福井地方裁判所が同原発の運転を差し止める仮処分決定を出したときは、高浜原発は運転を停止していたので、史上初めて、司法判断により、運転中の原発が停止したことになる。
周知のとおり福島原発事故は、人命の喪失を含む、きわめて広範かつ深刻な被害を現在も与え続けている。同様の事態を二度と引き起こしてはならないことは、あまりにも自明である。原発等に対する今日の司法審査は、同事故の教訓を踏まえ、万が一にも同様の事故を起こしてはならないという観点からなされるべきものである。
本決定は、福島原発事故を踏まえ、原子力規制行政に大幅な改変が加えられた後の事案であることを直視し、電力会社において、福島原発事故を踏まえ、原子力規制行政がどのように変化し、その結果、高浜原発の設計や運転のための規制が具体的にどのように強化され、電力会社がこの要請にどのように応えたかについて、主張及び疎明を尽くすべきであるとする一方、原子力規制委員会が電力会社に対して設置許可を与えた事実のみによっては、上記主張・疎明があったとすることはできないと判断した。
それを前提として、二度と福島原発と同様の事故を発生させてはならないとの見地から安全対策を講ずるには、徹底した原因究明が必要であり、電力会社や規制委員会の姿勢が、この点に意を払わないものならば、そもそも新規制基準策定に向う姿勢に非常に不安を覚えること、基準地震動策定の前提となる式が科学的に異論のない公式と考えることはできないこと、耐震性能やその評価の前提となる基準地震動の策定方法について十分な検討がなされたとは認められないこと、津波対策や避難計画を含んだ安全確保についても疑問が残ること等の理由により、差止を認めたものである。
当会は、本決定について、あるべき司法判断の道筋を示したものとして高く評価するとともに、政府及び電力会社各社に対し、本決定の趣旨を尊重し、本決定が指摘した諸点について、確実な安全性が確保されない限り、決して原発を再稼働させないよう求めるものである。
2016年3月23日
福井弁護士会長 寺田 直樹

死刑執行に強く抗議し,死刑執行を停止し,死刑制度について全社会的議論を求める会長声明
2016年(平成28年)3月25日,大阪拘置所において1名,福岡拘置所において1名の合計2名に対して死刑が執行された。岩城光英法務大臣による昨年12月に続く死刑執行である。
死刑制度は,死刑が人間の生命を奪うという非人道的行為であること,EUを中心とする世界の約3分の2の国々が死刑を廃止又は停止していること,誤判・冤罪に基づき死刑執行がなされた場合には取り返しがつかないこと,などの様々な問題を内包している。
特に,2014年(平成26年)3月27日には,静岡地方裁判所が袴田事件について再審を開始し,死刑および拘置の執行を停止する決定をしたところであり,誤った死刑判決に基づく執行の危険性は依然として残されたままである。
さらに,2014年(平成26年)2月には,裁判員経験者から,法務省に宛てて死刑執行停止の要望書が提出されており,また,同年11月の内閣府世論調査において,「死刑もやむを得ない」との回答が80.3%であったものの,そのうち40.5%は「将来的には,死刑を廃止してもよい」と回答していること,「仮釈放のない終身刑が導入されるならば」という前提の質問に対する回答において,「死刑を廃止する方がよい」37.7%,「死刑を廃止しない方がよい」51.5%との比率となっていることからも,死刑制度の存廃について議論する必要性があると言える。
日本弁護士連合会が, 2011年(平成23年)年10月7日,第54回人権擁護大会において「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め,死刑廃止についての全社会的な議論を呼びかける宣言」を採択したこと等を踏まえ,当会も,2012年(平成24年),会内に死刑廃止プロジェクトチームを設置し,死刑に関する議論を広めるべく活動を開始し,2013年(平成25年)7日には市民参加の下,「死刑を考える日2013」を開催するなど,死刑のない社会を目指した議論を重ねてきた。そして,当会としても,2016年(平成28年)1月21日付け,2015年(平成27年)7月1日付け等の会長声明において,十分な全社会的議論が尽くされることなく死刑が執行されていることに強く抗議するとともに,死刑執行を停止し,死刑制度について全社会的議論を行う必要性を繰り返し表明してきたところである。
また,昨年度からは,中部弁護士会連合会内にも死刑問題検討ワーキンググループが設置されたことから,中部地方の各弁護士会とも連携して,より幅広く死刑制度の存廃について全社会的議論を行うための取り組みも進めているところである。
このような状況下で,死刑制度とその運用に関する情報の公開がなされず,公の議論が何ら行われないまま,死刑執行だけがさらに繰り返されていることは,到底容認できない。
このような実情を踏まえ,当会は,これまでの死刑執行に対しても強く抗議してきたところであるが,今回もまた全社会的議論がなされないなか,死刑が執行されたことに強く抗議するとともに,死刑執行を停止することと死刑に関する情報を広く国民に公開することを要請し,死刑制度についての全社会的議論を求めるものである。
2016年(平成28年)4月22日
福井弁護士会  会長 海 道 宏 実

安全保障関連法の施行に強く抗議するとともにその廃止を求める会長声明
2016年(平成28年)3月29日,平和安全法制整備法及び国際平和支援法(以下「安全保障関連法」という。)が施行された。
安全保障関連法は,大多数の憲法学者,元内閣法制局長官ら,さらには元最高裁長官を含む最高裁判所裁判官経験者までもが,憲法違反であると指摘し,日本弁護士連合会及び全国全ての弁護士会が廃案を求め,多くの国民が反対する中で,採決が強行され成立した法律である。当会も,2015年(平成27年)5月25日付け,同年7月23日付け及び同年9月28日付け各会長声明において,憲法違反の同法に反対の態度を繰り返し表明してきた。
安全保障関連法は,「存立危機事態」なる抽象的で不明確な要件の下に,歴代内閣が憲法上許されないとしてきた集団的自衛権の行使を容認し,わが国が攻撃されていないにもかかわらず自衛隊が海外で他国と共に武力を行使することを可能にした。加えて,外国軍隊の武力行使との一体化に当たるとして禁じてきた範囲にまで「後方支援」を拡大し,国連平和維持活動(PKO)に従事している自衛隊に駆け付け警護等の新たな任務と任務遂行のための武器使用権限を付与した。
このように,安全保障関連法の内容は明らかに日本国憲法第9条に違反しており,同法により,日本国憲法が国家権力に課した最も重要な制約である「戦争放棄」が事実上骨抜きにされるに至っていることは,立憲主義を損なう重大な暴挙といわざるを得ない。
また,安全保障関連法は,手続的にも,内容が多岐にわたり憲法上の問題点も多い法案を,国会提出後わずか4か月という短期間で強行採決を重ねて成立させた点で,わが国の議会制民主主義の歴史に重大な汚点を残した。法案成立後,安倍内閣総理大臣は「政府としてこれからも国民に丁寧に説明する努力を続けていきたい」と記者会見で述べたが,その後も国民に対し十分な説明はなされていないばかりか,2016年(平成28年)2月に民主党などの野党5党(当時)が共同提出した安全保障関連法廃止法案の今国会での審議入りを与党が拒否するなど,安全保障関連法への疑問に耳を傾けない政府与党の対応には,「国民に丁寧に説明する」姿勢はいささかも感じられない。
折しも日本国憲法制定70周年にあたる今年,日本国憲法にとってかかる重大な危機が進行し,立憲主義が損なわれていることに対しては,深い憂慮を表明せざるを得ない。
よって,当会は,安全保障関連法が施行されたことに強く抗議するとともに,その廃止を強く求めるものである。
2016年(平成28年)4月20日
福井弁護士会
会長 海 道 宏 実

死刑執行に強く抗議し,改めて死刑執行を停止し,死刑制度の廃止についての全社会的議論を求める会長声明
2015(平成27)年12月18日,東京拘置所において1名,仙台拘置所において1名の合計2名に対して死刑が執行された。岩城光英法務大臣による初めての死刑執行であり,第2次安倍内閣以降,死刑が執行されたのは8回目で合わせて14名となる。
当会は,昨年7月にも,当面の間死刑執行を停止し,その間に死刑に関する情報を広く国民に公開し,全社会的議論を踏まえた上で死刑制度を見直すことを求めてきた。にもかかわらず,今回,さらに死刑執行が行われたことは極めて遺憾であり,改めて死刑執行に強く抗議するものである。
死刑の廃止は国際的な趨勢である。いわゆる先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で死刑制度を存置している国は,日本・韓国・米国の3か国のみであるが,韓国は18年近く死刑の執行を停止しており事実上の死刑廃止国と評価されており,米国は19州が死刑を廃止している。こうした状況を受け,国際人権(自由権)規約委員会は,昨年,日本政府に対し,死刑の廃止について十分に考慮すること等を勧告している。
また,米国では,死刑事件については,スーパーデュープロセスとして,9審制や,必要的上訴制など,我が国と比べて手厚い手続保障があり,また,弁護費用や量刑資料等の調査にかかる費用等についても財政的手当がなされている。このことを鑑みると,我が国は,十分な手続保障と量刑資料の元であれば本来死刑になるべきではない者でも死刑となってしまう,いわゆる量刑誤判の危険性が高いという問題を抱えているといえる。このように死刑制度がある国の中でも,我が国は手続保障の薄い国なのである。
そして,死刑は,一旦執行されてしまえば取り返しがつかない刑罰である。2014(平成26)年3月,いわゆる袴田事件の再審開始決定がなされ,死刑および拘置の執行が停止されたが,もし袴田氏に対し死刑の執行がなされていたならば,まさに取り返しのつかない事態となっていた。袴田事件は,えん罪の恐ろしさはもちろんのこと,この死刑制度の最大ともいえる問題点を浮き彫りにしている。
今回,死刑執行がなされた者のうちの1名は,裁判員裁判により死刑判決を受け,その後一旦は控訴したもののこれを取り下げたため死刑判決が確定した,という事案である。必要的上訴制の下であればさらに審理が行われていたわけであり,国際的な水準からして手続保障に問題があるというべき事案といえる。
また,もう1名についても,控訴審から事実関係を争った事案であることから,やはり手続保障に疑問が残る事案と言える。
2014(平成26)年11月に実施された死刑制度に関する政府の世論調査の結果,「死刑もやむを得ない」との回答が80.3%であったものの,そのうち40.5%は「将来的には,死刑を廃止してもよい」とした。また仮釈放のない終身刑が導入されるならば,「死刑を廃止する方がよい」37.7%,「死刑は廃止しない方がよい」51.5%と回答している。この世論調査の結果も,死刑廃止についての全社会的議論の必要性を示している。
日本弁護士連合会が,死刑のない社会が望ましいことを見据えて,2011(平成23)年10月7日,第54回人権擁護大会において「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め,死刑廃止についての全社会的な議論を呼びかける宣言」を採択したこと等を踏まえ,当会も,2012(平成24)年,会内に死刑廃止プロジェクトチームを設置し,死刑に関する議論を広めるべく活動を開始し,2013(平成25)年7月には市民参加の下,「死刑を考える日2013」を開催するなど,死刑のない社会を目指した議論を重ねてきた。今年度からは,中部弁護士連合会内にも死刑問題検討ワーキンググループが設置され,中部地方の各弁護士会とも連携して,より幅広く死刑廃止に向けた全社会的議論への取り組みを進めている。
このような状況下で,死刑制度とその運用に関する情報の公開がなされず,公の議論が何ら行われないまま,死刑執行だけがさらに繰り返されていることは,到底容認できない。
当会は,今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑執行を停止することと死刑に関する情報を広く国民に公開することを要請し,死刑制度についての全社会的議論を踏まえたうえで,その抜本的な検討及び見直しを重ねて求めるものである。
2016年(平成28年)1月21日
福井弁護士会 会長 寺 田 直 樹

司法修習生に対する給付型の経済的支援を求める会長声明
司法修習生への給付型の経済的支援(修習手当の創設)については、これまで、日本弁護士連合会・各弁護士会に対して、多くの国会議員から賛同のメッセージが寄せられており、先日、賛同メッセージの総数が、衆参両院の合計議員数717名の過半数である359名を超えた。
国会議員からの賛同の声は、与野党を問わず広がりを見せており、司法修習生に対する経済的支援の必要性について、理解が得られつつあるものと考えられる。
司法制度は、社会に法の支配を行き渡らせ、市民の権利を実現するための社会的基盤である。司法修習生は、かかる公共的価値を実現する司法制度を担う法曹になる者たちであるから、本来、国が公費をもって養成するべきである。このような理念のもとに、我が国では、終戦直後から司法修習生に対し給与が支払われてきた。しかし、2011年11月から、修習期間中に費用が必要な修習生に対しては、修習資金を貸与する制度(貸与制)に変更された。司法修習生のなかには、大学や法科大学院における奨学金の債務を負っている修習生も多く、これに修習資金の負債も加わることで、その合計額が極めて多額に上る者も少なくない事態となっている。法曹を目指す者は、年々減少の一途をたどっているが、こうした重い経済的負担が法曹志望者激減の一因となっていることが指摘されているところである。
このような事態を重く受け止め、法曹に広く有為の人材を募り、法曹志望者が経済的理由によって法曹への道を断念する事態が生ずることのないようにするべきである。そして、司法修習生が経済的不安を抱えることなく修習に専念できる環境を整えるため、司法修習生に対する給付型の経済的支援(修習手当の創設)が早急に実施されるべきである。
昨年6月30日、政府の法曹養成制度改革推進会議が決定した「法曹養成制度改革の更なる推進について」において、「法務省は、最高裁判所等との連携、協力の下、司法修習の実態、司法修習終了後相当期間を経た法曹の収入等の経済状況、司法制度全体に対する合理的な財政負担の在り方等を踏まえ、司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討するものとする。」との一節が盛り込まれた。
これは、司法修習生に対する経済的支援の実現に向けた大きな一歩と評価することができる。法務省、最高裁判所等の関係各機関は、法曹に広く有為の人材を募り、これらの人材が安心し希望をもって法曹を目指せる制度とするという観点から、司法修習生に対する経済的支援の実現について、直ちに前向きかつ具体的な検討を開始すべきである。
当会は、司法修習生への給付型の経済的支援(修習手当の創設)に対し、国会議員の過半数が賛同のメッセージを寄せていること、及び、政府においても上記のような決定がなされたことを踏まえて、国会に対し、給付型の経済的支援(修習手当の創設)を内容とする裁判所法の改正を求めるものである。
2016年(平成28年)1月20日
福井弁護士会  会長  寺田 直樹

安全保障法制改定法案の成立に抗議する会長声明
1 2015年9月19日,参議院本会議において,平和安全法制整備法案及び国際平和支援法案(以下併せて「本法案」という。)が可決成立した。
2 当会はこれまで,2014年7月1日付け閣議決定及び本法案について,政府が憲法第9条の解釈を変更し,法律によって集団的自衛権の行使を容認することは,憲法の立憲主義の基本理念及び恒久平和主義の基本原理に違反することを,繰り返し指摘してきた。また,後方支援の拡大や武器使用の拡大等の立法も,自衛隊が海外での武力行使に至る危険性を高めるものとして,同様に憲法に違反することを指摘してきた。
3 本法案の違憲性を指摘する声は,国内に大きく広がった。
日本弁護士連合会及び全国全ての弁護士会が本法案の違憲性を指摘し反対を表明したばかりではなく,衆議院憲法審査会における3名の参考人(与党推薦を含む)をはじめとする多くの憲法学者,歴代の内閣法制局長官,さらには元最高裁判所長官を含む最高裁判所判事経験者が,本法案の違憲性を指摘するに至った。
4 本法案については,国会の審議において重大な問題点が指摘されており,議論が尽くされたとは,到底いい難い。
例えば,具体的にどのような場合に集団的自衛権の行使が必要か,集団的自衛権行使の要件となる「存立危機事態」とは具体的にいかなる場合かについて,政府は「総合的に判断する」との答弁を繰り返すばかりで,少なくとも集団的自衛権の必要性に関しては十分な立法事実すら示すことができなかった。
5 安倍首相自身が認めるとおり,本法案に対する国民の支持は広まっていない。
各種世論調査の結果によれば,法案への反対は賛成を大幅に上回り,今国会での成立に反対する意見は,ほとんどの世論調査で過半数を大きく超えている。
6 このように,違憲の法案を,十分審議を尽くすことなく,しかも多数の国民の反対を無視して,衆参両院で強行採決を繰り返して成立させたことは,立憲民主主義を蹂躙する暴挙というほかなく,わが国の憲政史上に重大な汚点を残すものであって,当会は強くこれに抗議する。
7 憲法は,「この憲法は,国の最高法規であって,その条規に反する法律,命令,詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は,その効力を有しない。」(第98条第1項)と定めている。したがって,本法案は成立しても,その憲法違反の内容は無効といわざるを得ない。
当会は,憲法と立憲民主主義を守り,戦後70年にわたるわが国の平和国家としてのゆるぎない姿勢を堅持すべく,2014年7月1日付け閣議決定の撤回を求めるとともに,今後も多くの市民とともに,改正された各法律及び国際平和支援法の適用・運用に反対し,さらにはその廃止・改正に向けた取組を行う決意である。
2015年(平成27年)9月28日
福井弁護士会 会長 寺 田 直 樹

少年法の適用年齢引き下げに反対する会長声明
2015(平成27)年6月17日,選挙権年齢を18歳以上に引き下げる「公職選挙法等の一部を改正する法律案」が,参議院本会議において可決され成立した。
成年年齢引き下げについては,他の法律にも影響を与える事項であり,現に,この法律案には,「民法,少年法その他の法令の規定について検討を加え,必要な法制上の措置を講ずるものとする」との附則がある。
昨今,少年事件が凶悪化している,少年法が十分に機能していない等の意見がみられ,政府与党内などにおいて,少年法の適用年齢も現行の20歳未満から18歳未満に引き下げようとする議論がなされている。
しかし,法律は,それぞれ立法趣旨が異なるのであり,すべての法律でその適用年齢を一律に考える必然性はない。
公職選挙法は,衆議院議員,参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長を公選する選挙制度を確立し,その選挙が選挙人の自由に表明する意思によって公明かつ適正に行われることを確保し,もつて民主政治の健全な発達を期することを目的とする法律である。他方,少年法は,少年の健全な育成を期し,非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに,少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする法律である。
このように,公職選挙法と少年法は,それぞれ立法趣旨が異なるのであって,それぞれ立法趣旨に沿った適用年齢が設定されるべきである。上記附則は,選挙犯罪との関係での調整を図る規定と解するべきであり,少年法の適用年齢を引き下げる根拠となるものではない。
また,少年事件が凶悪化しているとの意見は,何ら根拠のない意見と言わざるを得ない。
我が国における少年非行件数について,刑法犯少年の検挙人員は,1980(昭和55)年代前半の約20万人をピークとして減少傾向にある。特に,2004(平成16)年以降は11年連続で減少して,2014(平成26)年には5万人を割っている。また,殺人,強盗,放火,強姦等といった重大犯罪についても,昭和30年代半ばには約8000人が検挙されていたのに対し,2014(平成26)年には,703人にまで減少している。殺人事件(未遂等も含む。)に限定してみても,昭和40年代頃までは,200件を超えていたが,その後,減少し,近年は多い年でも年間20件前後に留まっている。
このような客観的なデータに鑑みれば,刑法少年の検挙人員および少年による重大事件数は減少しているのであり,少年法の適用年齢を引き下げることを基礎づける立法事実は存在しない。
また,少年法が十分に機能していないとの意見も何ら根拠のない意見である。
少年法のもと,非行を犯したと考えられる少年は,全件,家庭裁判所に送致され,少年の成育歴や資質に踏み込んだ調査が行われる。その過程で,少年に内省を深めさせ,非行の背景にある環境を調整し,再度非行を犯すことがないように働きかけが行われている。保護観察および少年院においても,同様の働きかけが行われ,少年の立ち直りに成果を上げている。
仮に,一律に適用年齢を引き下げるとすれば,成年と同様の刑事手続に付されることになる。成人の刑事事件においては,多くの事件が起訴猶予や略式手続に付され,少年事件において行われているような調査や環境調整などは行われない。そうなれば,少年の立ち直りの機会が損なわれ,再犯リスクを高めることになる。
また,現行少年法においても,一定の重大事件については,成人と同じ刑事裁判手続に付すことが可能なのであって,少年法の機能の面からみても,適用年齢を引き下げる必要性は乏しい。
少年法の適用年齢の引き下げの議論にあたっては,各法律の立法趣旨や制度の検討をすることなく単純に連動させるべきではなく,個別の事件にのみ着目して十分な根拠ないままに議論をするのではなく,各法律の立法趣旨や制度について充分に検討し,客観的なデータにもとづく慎重な議論を行うべきである。
以上の通りであるから,当会は,拙速な少年法の適用年齢引き下げに反対するものである。
2015(平成27)年7月24日
福井弁護士会 会長  寺  田  直  樹

秘密保護法の施行に反対し同法の改廃を求める会長声明
政府は,2014(平成26)年10月14日,特定秘密の保護に関する法律(以下「秘密保護法」という。)の運用基準を閣議決定し,来たる同年12月10日に同法が施行されようとしている。
同法は,国民の知る権利を侵害し,国民主権原理の根幹を脅かし,罪刑法定主義にも抵触し,秘密に関与する関係者のプライバシーを侵害するなど,日本国憲法の基本原理に照らして看過しがたい重大な欠陥をもつものである。当会は,再三にわたる意見書や会長声明の中で,その問題点を強く訴え,日本弁護士連合会も,同様の立場から同法に強く反対してきた。
同法は,国民からも,国際社会からも強い批判をあびている。情報保全諮問会議が本年7月に作成した同法施行令(素案)及び運用基準(素案)等について同年7月24日から実施されたパブリックコメントでも,2万3820件もの多数の意見が寄せられたが,その多くが同法に対する深刻な懸念を表明するものだったと報じられている。また,国連人権(自由権)規約委員会は、同年7月31日,日本政府に対して,秘密指定には厳格な定義が必要であることやジャーナリストや人権活動家の公益のための活動が処罰の対象から除外されるべきことなどを勧告した。
こうした国内外からの強い批判にもかかわらず,秘密保護法は,その施行令や運用基準を総合しても,当会等が指摘してきた問題点を解消することなく施行されようとしている。秘密指定できる情報はきわめて広範であり恣意的な秘密指定の危険性は依然として存在するし,完全に独立した第三者機関や公益通報者保護制度といった恣意的運用を防止する仕組みもきわめて不充分である。秘密漏えいの罪に関する刑事裁判における被告人の手続保障も十分とはいえず,適性評価制度による評価対象者やその家族等のプライバシー侵害の危険も解消されていない。
したがって,当会は,国民の知る権利や国民主権等の日本国憲法の基本原理を脅かす同法の施行に強く反対し,政府に対し,改めて,同法の廃止又は抜本的な見直しを行うよう強く求める。
2014(平成26)年12月1日
福井弁護士会   会 長 内 上 和 博

【転載】余命3年時事日記 2353 どんたく滋賀弁護士会④

2018年02月04日 | 在日韓国・朝鮮人
歯および口腔の健康づくりの施策として「フッ化物洗口」を実施することに反対する意見書
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20141126.html
1.滋賀県は、「滋賀県歯および口腔の健康づくりの推進に関する条例」案要綱を作成し、同条例を制定しようとしている。
同条例案要綱では、「教育関係者は、基本理念にのっとり、幼児、児童、生徒等の歯および口腔の健康状態に注意し、フッ化物洗口、歯磨きその他歯および口腔の健康づくりに資する取組の実施により、当該幼児、児童、生徒等の歯科疾患等の予防その他歯及び口腔の健康づくりに努めるもの」(第5、第3項)とし、さらに、「県は、・・・・・保育所、幼稚園、小学校、中学校等におけるフッ化物洗口および歯磨きの普及その他歯および口腔の健康づくりに関する効果的な取組の推進のために必要な措置を講ずるもの」(第14、第1項)「知事または県教育委員会は、幼稚園、小学校、中学校等においてフッ化物洗口が実施される場合には、・・・・・フッ化物洗口の円滑な実施のために必要な援助の実施に努めるもの」(第14、第2項)と規定している。
2.しかし、フッ化物洗口には、以下のような問題点が指摘されている。
第1に、フッ化物洗口には、急性中毒、過敏症状の危険性があり、幼児・低学年児童においては、誤飲の可能性も否定できず、誤飲した場合の身体影響への懸念も払拭されていない(安全性)。
なお、WHO専門委員会報告書(1994年)は、6歳未満のフッ化物洗口を禁忌としている。
第2に、フッ化物洗口の有効性は、従来考えられてきたより低い可能性があり、フッ素配合歯磨剤が普及している現状においては、フッ化物洗口による併用効果にも疑問がある(有効性)。
第3に、虫歯予防には、フッ化物洗口以外にも様々あり、虫歯が減少している現状において、学校などにおいて、集団的にフッ化物洗口を実施する必要性・相当性には重大な疑問がある(必要性・相当性)。
第4に、有効性安全性について、追加調査がなされていない。
第5に、集団によるフッ化物洗口後の廃液により、水質汚濁防止法・下水法上の排水規制違反など環境汚染のおそれがある。
3.日本弁護士連合会は、2011(平成23)年1月21日、「集団フッ素洗口・塗布の中止を求める意見書」にて、上記問題点を指摘し、厚生労働省、文部科学省等に対し、学校等で集団的に実施されているフッ素洗口・塗布を中止するよう求めた。
4.条例案が施行されれば、保護者等に安全性・有効性・必要性などに関する否定的な見解も情報提供されないまま、県による組織的な推進施策の下、学校などで集団的にフッ化物洗口が実施されることになる。
このように集団によるフッ化物洗口を行うことは、前記の問題点の情報提供がないまま保護者等が意思決定を行う結果となり、これは自己決定権が侵害されるのと同じである。
よって、当会は、「滋賀県歯及び口腔の健康づくりの促進に関する条例」案において、歯及び口腔の健康づくりの施策として「フッ化物洗口」を実施することに反対する。少なくとも、幼児・低学年児童に対し、フッ化物洗口は実施すべきではない。        以上
2014(平成26)年11月26日
滋賀弁護士会 会長 近藤公人

本件掲載行為は、審判の中で認定された詳細な事実関係が記載されている審判書の全文掲載であり、本来公開を予定していない少年のプライバシーに関わる事実が詳細かつ網羅的に公衆に晒されるものである。本件掲載行為は、少年法が少年の健全な育成のために定めたこれらの法制度の趣旨を没却し各条文に明らかに反する行為であり、かつ、少年のプライバシーを著しく侵害するものである。
特に、本事件は、事件後約18年が経過し、当時の報道の記憶も薄まりつつあるところに行われたものである。本件の審判書は結果の重大性もあり、審判書の内容は他の事件と比しても非常に詳細であって、これが公表されることによるプライバシー侵害が特に著しい。たとえ事件当時公開された事実が含まれていたとしても新たなプライバシー侵害と評価できるものであり、全体として権利侵害にあたる。
また、本件掲載行為は、少年の実名は伏せてあるものの、本事件に関するこれまでの報道及び情報と併せると、少年を本事件の本人であると容易に推知することができるものである。
(2)また、世界195か国(本年1月時点)で締結されている子どもの権利条約の第40条第2項も、上記のような観点から手続の全ての段階において少年のプライバシーを尊重しなければならないとしており、本件掲載行為は同条にも違反している。
3.被害者遺族のプライバシーを侵害する点
また、本件掲載行為は、本事件から約18年を経過した現時点においてなされたものであり、被害者遺族の心情を無視し、遺族の当時の経験や記憶を改めて想起させるものであり、事件内容が詳細に世間に知れ渡ることにより被害者遺族に苦痛を与え、平穏な生活を送ることを害し、更なる被害を生むものである。
特に、本件掲載行為に関し、株式会社文藝春秋は、被害者遺族に対し、事前に何らの掲載に関する確認も行わずに、全文掲載を行ったものであり、その被害は甚大である。
4.以上のとおりであり、当会は、本件掲載行為を行った株式会社文藝春秋に対し、強く抗議するとともに、今後同様の行為を行わないよう強く要請する。
2015(平成27)年5月19日
滋賀弁護士会 会長 中原淳一

特定秘密保護法案に反対する会長声明
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20131114.html
政府は、2013(平成25)年10月25日、「特定秘密の保護に関する法律(案)」(以下、「本件法案」という。)を国会に提出した。
当会は、本年1月17日付「秘密保全法制定に反対する会長声明」において、秘密保全法制定に強く反対する旨の意見を表明した。すなわち、①新法制定の必要性を支える立法事実がないこと、➁保護対象となる「特別秘密」の範囲が広範かつ曖昧である上、行政機関による秘密指定の適正性をチェックする仕組みが無く、(主権者たる)国民の知る権利を損なうこと、➂秘密保全法違反により起訴される被告人が、適正な手続きにより裁判を受ける権利が十分に保障されないこと、➃適正評価制度導入により、特別秘密取扱者本人のみならず、その周辺者のプライバシーや思想・信条の自由までが侵害されることの4点を指摘し、法案作成の即時中止を求めたところである。
しかるに、政府は、その後も秘密保全法制定作業を進め、9月26日、本件法案の概要を公表し、その後実施したパブリックコメントに寄せられた約9万件の意見の内、約77%がこれに反対するものであったにもかかわらず、閣議決定の上、本件法案を国会に提出した。
さて、本件法案においても、前記会長声明において指摘した問題点は全く解消されていない。
特に、「特定秘密」として指定できる事項を列挙した「別表」は概括的網羅的な記載となっており、行政機関の長らが秘密指定できる事項の範囲は広範かつ曖昧なままである。
また、秘密指定の適正性をチェックする仕組みも無い。この点、本件法案第18条第1項は、「特定秘密の指定及びその解除・・・の実施に関し、統一的な運用を図るための基準を定める」としているが、同項により定められる基準は、同条2項の有識者の意見聴取を経てもなお抽象的なものとならざるを得ず、秘密指定が可能な範囲の明確化に資する面は乏しく、行政機関の長らの指定の適正性を保障するものでもない。
また、本件法案でも、処罰対象は広範であり、故意の漏えい行為や特定秘密の取得行為(これらの未遂を含む。)に限られず、過失の漏えい行為、更には、漏えい行為や特定秘密の取得行為の共謀、教唆、扇動にまで及んでおり、共謀、教唆、扇動罪の成立には実行行為の着手すら不要となっている。このような本件法案の処罰範囲の広範さは、保護対象となっている特定秘密の範囲の広範かつ曖昧さと相まって、国民の知る権利や報道・取材の自由に対して極めて深刻な萎縮効果を及ぼすものとなっている。
なお、政府は、国会提出前に、本件法案に、この法律の拡張解釈による国民の基本的人権の「不当」な侵害を禁止し、報道等に従事する者の取材行為については、「法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限り・・・正当な業務」と認めるなどとした規定を設けたが、抽象的な理念を明文化したところで、当不当の判断は、まずは行政機関たる捜査機関が行うものである以上、上記の萎縮効果が払拭されることはない。
当会も、政府には国家の安全保障上国民に秘匿すべき国家秘密があることを否定するものではない。しかし、国民は、必要な情報を得て初めて、主権者として、国の政治のあり方を決め、実行することが可能となるため、国家秘密の秘匿は、常に、国民主権ないし議会制民主主義との間で緊張をはらむことになる。従って、国家秘密の指定と解除のあり方に関する制度設計は、徹底的かつ慎重に検討されなければならない。
しかるに、本件法案には、上記のとおり、秘密指定により国民に秘匿できる事項を広範に認めるとともに、秘密指定の適正性につきチェックする仕組みを持たないため、行政機関の長らの恣意的な判断により、政府にとって国民に知られたくない情報を、「特定秘密」と偽って、国民に知らせないでおくことを可能とする欠陥を有する。しかも、特定秘密の提供は、国権の最高機関であり、国民の代表として行政を監視する立場にある国会に対してすら限定的かつ任意のものとなっている。かくては、本件法案は、国民主権ないし議会制民主主義の根幹を揺るがすものと評価せざるを得ない。
以上のとおりであるから、当会は本件法案の立法化について、断固反対する。
2013(平成25)年11月14日
滋賀弁護士会 会長 甲津貴央

4.これに対して、裁判所速記官による速記録は、尋問を実施したその日のうちに文字化された証言・供述調書を作成することが可能なまでに進歩している。文字化された逐語録調書は裁判員にも閲覧が容易であり、一覧性も高く、証言・供述調書を元に、公正・的確な心理や評議が
期待できる。
しかも、ビデオとコンピューターの音声認識では、発言が重なったり、曖昧な発音のため、証言・供述内容が確認できない場合がありうるが、裁判所速記官による速記録の場合には、裁判所速記官が立ち会って、その場で証言・供述を確認できるため、内容が確認できないことは殆どない。
よって、裁判員裁判における尋問の際には速記官を活用し、訴訟当事者が即時に速記録を閲覧等できるようにするべきである。
5.また、聴覚障がい者の、裁判を受ける権利や裁判員になる権利を保障するには、速記による情報保障が不可欠である。最高裁判所は、手話通訳者と要約筆記者とを確保するとしているが、手話のできる聴覚障がい者は全体の約2割程度であること、要約筆記では十分な情報保障にならないことなどの問題があり、聴覚障がい者の裁判を受ける権利や裁判員になる権利の保障には不十分である。
6.現在、世界の多くの国は、裁判に、機械速記によるリアルタイム速記を採用しており、アメリカでは、我が国の最高裁判所が裁判所速記官の養成を停止した当時約3万人であった速記者が現在では6万人を超える状況にあり、ハーグの国際刑事裁判所においてもリアルタイム速記が活用されている状況にある。
このように世界標準となっているリアルタイム速記は、裁判所速記官の増員や機器の確保などの態勢さえ整備されれば、日本においても十分に実現可能なものである。最高裁判所の裁判所速記官養成停止の方針は、このような世界の流れに逆行するものである。
7.よって、当会は、最高裁判所に対して、裁判員裁判の証拠調べや、聴覚障がい者の裁判を受ける権利等を保障するために必要な場合には、広く裁判所速記官を活用するとともに、速やかに裁判所速記官の養成を再開することを、強く求める。
2014(平成26)年1月27日  滋賀弁護士会
会長 甲津貴央

要保護者の保護の利用を妨げる「生活保護法の一部を改正する法律案」の廃案を求める会長声明
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20130611.html
1.政府は、本年5月17日、生活保護法の一部を改正する法律案(以下、「改正案」という。)を閣議決定し、国会に提出した。
2.改正案には、いわゆる「水際作戦」を合法化し、さらには、要保護者をより一層萎縮させることにより、保護申請自体を抑制する効果を与えるという看過しがたい問題がある。
3.まず、現行生活保護法(以下、「現行法」という。)は、保護の申請について書面によることを要求しておらず、申請時に要否判定に必要な書類の提出も義務付けていない(現行法第24条1項)。申請意思が客観的に明白であれば口頭による申請も有効であるとするのが確立した裁判例であり、保護の実施機関が、審査応答義務を果たす過程で、要否判定に必要な書類(通帳や賃貸契約書等)を収集することとされている。
しかし、実際には、全国の福祉事務所の窓口において、要保護者が生活保護の申請意思を表明しても申請書の書式を交付しなかったり、疎明資料の提出を求めて申請書の受理を拒否したりする事例が少なからず見受けられた。これらの行為は、申請段階、すなわち水際で保護を阻止するものとして「水際作戦」と呼ばれ、数々の裁判例において、申請権を侵害する違法な行為と評価されてきた。
改正案第24条1項は、生活保護の申請は、「要保護者の資産及び収入の状況」のほか「厚生労働省令で定める事項」を記載した申請書を提出しなければならないとし、同条2項は、申請書には保護の要否判定に必要な「厚生労働省令で定める書類を添付しなければならない」としている。
このような改正がなされると、添付書類の不備等を理由として申請を受け付けない取り扱いが合法的に行われることになり、これまで申請権侵害行為と評価されてきたいわゆる「水際作戦」が合法化されることになる。
この点、厚生労働大臣は、5月14日の閣議後記者会見において、「今まで運用でやっていたことを法律に書くというだけの話なので、それほど運用面では変わらない」と述べている。当該発言は、改正案の目的が、まさに、全国の福祉事務所の窓口においてまん延している申請権を侵害する行為を合法化することにあることを示している。
また、この点に関する国民からの批判の声を無視できなくなり、衆議院厚生労働委員会は、本年5月31日、特別な事情がある場合は口頭での申請も認めることで合意し、改正案を一部修正した上、自民、民主両党などの賛成多数で可決した。
その後、一部修正された改正案は、6月4日の衆議院本会議で賛成多数で可決され、参議院に送られた。
すなわち、改正案第24条1項及び2項につき、それぞれ、「特別の事情があるときは、この限りではない」とするただし書きを付加する内容で修正された。
しかしながら、結局のところ、「特別の事情」は福祉事務所の窓口が判断するのであり、いわゆる「水際作戦」を合法化することに変わりはない。

裁判所速記官の活用及び養成再開を求める会長声明
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20140127.html
1.裁判所速記官制度は、裁判記録の正確さや公正さを担保するとともに、迅速な裁判の実現にも資するものであり、特に、国民の司法参加が強く求められている現在、裁判に必要不可欠な制度である。裁判所法第60条の2第1項も、「各裁判所に裁判所速記官を置く」と規定し、各裁判所に裁判所速記官を配置することを法律上義務づけている。
ところが、最高裁判所が裁判所速記官の新規養成を1998(平成10)年度から停止したことにより、最大時825名いた裁判所速記官は2013(平成25)年4月1日時点で208名にまで減少し、大津地方裁判所管内の裁判所速記官の配置は、本庁の2名のみとなっている。
2.現在、最高裁判所は、裁判所速記官による速記録に代わるものとして、民間委託による録音反訳方式を導入している。しかし、録音反訳方式には、調書の完成までに日数がかかることや、法律上の独特の言い回しなどにつき民間業者が必ずしも精通していないためか、誤字・脱字、訂正漏れ、意味不明箇所が目立つなどといった問題点が指摘され、審理に少なくない影響を与えている。また、民間業者に委託すること自体についても、情報管理の観点からの懸念がある。
3.また、2009(平成21)年5月21日から、一般市民が裁判員として刑事裁判に参加する裁判員制度が開始され、一定の重罪事件につき一般市民が職業裁判官とともに事実認定や量刑判断を行っているが、裁判員の更生・的確な判断を保障するためには、法廷でのやりとりや証言内容が即時に確認できるようにすることが不可欠である。
最高裁判所は、ビデオ録画とコンピューターの音声認識を組み合わせ、一定の単語を手掛かりに証言・供述の各場面を探索できるようにして、裁判員裁判の評議に対応しようとしているが、このシステムは、認識精度が極めて低いため、正確な記録にならず、証言・供述の目的箇所の検索も困難である。また、裁判所が正確かつ迅速に文字化された供述記録を作成しないため、裁判員は、自分の記憶と自分の作成するメモを頼るしかない状況であると推測される。このような状況では、公正・的確な審理や評議による正しい事実認定のもと、適正に裁判が進められるのか、甚だ疑問である。
4.また、安倍首相は、憲法の解釈変更が認められる法的な論拠として、砂川事件最高裁判決(昭和34年12月16日最高裁大法廷判決)を挙げている。しかし、砂川事件最高裁判決は、日本が集団的自衛権を行使できるなどという見解を何ら示していない。
砂川事件は、在日駐留米軍の管理する敷地内に立ち入ったデモ隊を、刑事特別法で処罰できるか否かが問題となった事件である。争点は、旧安保条約に基づく米軍駐留が憲法9条2項の「戦力」にあたるかどうかであった。
砂川事件の最高裁判決は、「憲法が保持を禁止した戦力とは日本の戦力を指し、外国の軍隊は、憲法が禁止する戦力にはあたらない」、「日米安全保障条約の合憲性の判断は、司法審査になじまない」旨を判示したにとどまる。すくなくとも、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止するような行為が憲法上許容されるという判断はしていない。岸信介首相(当時)は砂川判決直後の1960年(昭和35年)3月31日の参議院予算委員会において、「集団的自衛権は、日本の憲法上は、日本は、持っていない」と答弁しているのである。また砂川事件の最高裁判決は、高度の政治性を有する問題についてはお墨付きを与えないという立場であるが、その判決の一部を抜き出して、お墨付きを得たと主張するのは矛盾している。
最近明らかになったところによれば、この大法廷判決に関与した裁判長田中耕太郎は、判決直前に駐日米大使らと非公式に会談していたという。これは、司法の独立を害する重大な事実である。このような状況の下で出された砂川事件最高裁判決は、その中立性にも疑問があるといわざるを得ない。このような重大な問題を抱える砂川事件最高裁判決に依拠して、しかもその判決内容を曲解して、集団的自衛権が憲法上認められるかのような主張が行われているのである。
5.以上のとおり、限定容認であっても集団的自衛権は、憲法9条が許容するものではない。また、閣議決定の方法で憲法を実質的に変更することは立憲主義に反する行為である。さらに、砂川事件最高裁判決は、集団的自衛権を合憲とする根拠にはならない。
憲法9条の解釈をこのようなやり方で変更することは、なし崩し的に憲法違反を作出することにほかならない。
よって、当会は、集団的自衛権の行使を容認する動きに、強く反対し、ここに決議する。
2014(平成26)年5月28日  滋賀弁護士会

集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明
ttp://shigaben.or.jp/chairman_statement/20140715.html
2014(平成26)年7月1日、政府は、歴代政権が憲法上禁じてきた集団的自衛権の行使を容認するための憲法解釈の変更を閣議決定した。
集団的自衛権の行使は、憲法第9条の許容するところではなく、そのことはこれまでの政府の憲法解釈においても長年にわたって繰り返し確認されてきたことである。2004(平成16)年6月18日の閣議決定においては、「政府による憲法の解釈」は「論理的な追求の結果として示されてきたもの」とし、「政府において、憲法解釈は便宜的、意図的に変更するようなことをするとすれば、政府の憲法解釈ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれかねないと考えられる」と説明され、さらに当時の首相は、かかる閣議決定を踏まえ、憲法と集団的自衛権の問題について、「便宜的な解釈の変更によるものではなく、正面から憲法改正を議論することにより解決を図ろうとするのが筋」と国会で答弁しているのである。
そもそも立憲主義とは、憲法により権力を拘束するというものであり、日本国憲法も立憲主義によって立つものである。立憲主義を担保するものとして、日本国憲法は憲法を最高法規と定め(憲法第98条)、内閣総理大臣及び国務大臣には憲法を尊重し擁護する義務(憲法第99条)が課せられ、厳格な憲法改正手続(憲法第96条)が定められているのである。
権力を拘束するための法である憲法について、拘束される側の都合のよい解釈を行うことにより、その拘束を緩やかにしてしまうことは、立憲主義の否定に等しい。
集団的自衛権の行使は、歴代政府が長年にわたり認められないと解釈してきたものであること、これを容認することは国家の在り方を根本的に変えてしまうことになることから、集団的自衛権行使を容認するというのであれば、それは憲法改正の手続によらなければならない。にもかかわらず、政府に都合のよいように憲法解釈の変更を閣議決定で行うというのは、一国の首相としてあるまじき憲法尊重擁護義務(憲法第99条)に反する行為であり、立憲主義に根本から違反する行為である。そして、本閣議決定は、恒久平和主義(憲法前文・第9条)に反するので、憲法の最高法規性(憲法第98条)により、効力を有しないと断ずるべきものである。
滋賀弁護士会は、本年5月28日に「憲法第9条の解釈変更により集団的自衛権の行使を容認しようとする動きに反対する決議」をあげた。また、日本弁護士連合会も、全国の全弁護士会も、憲法解釈の変更による集団的自衛権行使容認に反対する決議又は会長声明をあげている。
当会は、集団的自衛権の行使等を容認する本閣議決定に対し、強く抗議し、その撤回を求めるとともに、今後の関係法律の改正等に反対するものである。          以上
2014(平成26)年7月15日
滋賀弁護士会

「特定複合観光施設区域の整備に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する会長声明
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20141009.html
1.国際観光産業振興議員連盟(通称「IR議連」)に属する国会議員らによって提出された「特定複合観光施設区域の整備に関する法律案」(以下「本法案」という。)が、先の国会にて継続審議となった。
本法案は、カジノ施設を含む特定複合観光施設が、観光及び地域経済の発展に寄与すると共に財政の改善に資することを理由に、現在、刑法上の賭博罪に該当する行為として違法とされているカジノを合法化するとともに、カジノ施設を含む特定複合観光施設設置の推進を政府の責務とすることを内容とする。
しかし、現在違法とされている賭博であるカジノを合法化するような正当な理由はなく、本法案を容認することは到底できない。
2.そもそも、カジノ施設が設置されれば、①暴力団員その他不適当な者のカジノ施設に対する関与、➁犯罪の発生、➂風俗環境の悪化、➃青少年の健全育成への悪影響、➄入場者がカジノ施設を利用したことにより受ける悪影響等の様々な弊害発生が予見されるところである(本法案10条参照)。しかるに、本法案はこれらの弊害を予見しながら、その防止及び排除の具体策を何ら検討もしていない。
そして、厚生労働省が今年発表した報告書によれば、我が国におけるギャンブル依存症の推定有病率は、男性で8.8%、女性1,8%と極めて高く、潜在的なものを含めると、さらに多くのギャンブル依存症の患者が存在することが示されている。このようにギャンブル依存症の有病率が高い状況にもかかわらず、ギャンブル依存症患者の治療施設や相談機関の設置、社会的認知への取組みなど、ギャンブル依存症に対する予防や治療体制が不十分な状況である。
さらに、社会問題となっている多重債務問題の要因の一つとして、ギャンブルがあげられる。これまで、総量規制や金利規制を定めた貸金業法改正やこれに伴う多重債務者改善プログラムなどの対策の結果、多重債務者数も大幅に減少し、改善されてきたところである。しかし、カジノが解禁されれば、多重債務問題の再燃も大いに危惧されるところである。
4.また、カジノ解禁による経済効果が喧伝されているが、この点に関する客観的な検証はされていない。むしろ、カジノでの出費により多重債務に陥ったり、老後の資金等としての貯蓄が奪われることなどによる新たな経済的弱者が発生したり、増加するギャンブル依存症患者に対する様々な対策をする必要が生じる。このような対策に多額の税金を投入され、多額の社会的コストの発生も容易に予想されるところである。かかるカジノ解禁に伴う社会的コストをも考慮すると、これを上回る経済的効果が実際に存在するのか甚だ疑問である。
たとえカジノ解禁による何らかの経済効果が認められようとも、暴力団員らの関与、犯罪の発生、風俗の悪化、青少年への悪影響、ギャンブル依存症患者の増加、多重債務問題の再燃などの様々な弊害を招来する危険に鑑みれば、そのような経済効果を追い求めるべきではない。
以上のとおり、カジノを解禁することによる経済的視点からの合理性には疑問があり、賭博罪の保護法益を上回るものとは到底いえず、賭博であるカジノを合法化するような立法事実は存在しないといわざるをえない。
5.ところで、報道等によると、滋賀県から比較的近接した大阪府内において、カジノ解禁を睨んで、カジノの誘致ないし開設が計画されているという。もし、大阪府内にカジノが開設されると、滋賀県からもカジノを契機としてギャンブル依存症に陥る者や多重債務に陥る者が出るなど、県民にも影響が及ぶことが懸念される。
6.以上のとおり、刑法により禁止された賭博であるカジノを解禁し、推進する本法案について、当会は、ここに強く反対の立場を表明すると共に、本法案の速やかな廃案を求める。
2014(平成26)年10月9日
滋賀弁護士会 会長 近藤公人

憲法改正発議要件の緩和に反対する会長声明
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20130708.html
およそ近代国家においては、国の最高法規であり国家権力を制限する機能を果たす憲法に人権保障規定を設け、国民の基本的人権の擁護を図っている(立憲主義)。
日本国憲法も、人権保障規定を持ち、更に、時の政権が自己に都合の良いように憲法を改正して国民の基本的人権を不当に制限することがないよう、自らの改正に発議要件として各議院の総議員の3分の2以上の賛成という特別多数決を採用している。その結果、少数者の利益・人権にも配慮した国会における慎重な審議が期待できる。
さて、近時、政権与党の側から、我が国において憲法改正が一度もなされてこなかった理由を発議要件が厳しすぎることに求め、憲法を国民の手に取り戻すために発議要件を緩和しなければならない旨の主張が繰り返されている。
しかし、国の最高法規であり人権保障機能を果たす憲法が、その改正に、より慎重さを求められるのはむしろ当然である。それゆえ、多くの国が憲法に厳格な改正要件を定めているのであり、日本国憲法が殊更に厳しい改正要件を定めているわけではない。
また、憲法を国民の手に取り戻すために発議要件を緩和するとの主張は、発議要件を緩和すれば憲法改正案が国民投票に付される機会が増えるため、国民主権ないし民主主義に適うように見える。しかし、発議要件が緩和されると、国会での熟議がそれだけ期待できなくなり、国民は少ない情報しか与えられない状況下で投票を強いられる結果となる。かくては、発議要件の緩和は、時の政権に自己に都合の良いように憲法を改正する機会を多く与えるだけの結果に終わりかねない。特に、議院内閣制をとる国家にあっては、政権の座にある者が同時に国会の多数派でもあるので、その弊害は大きい。
よって、当会は、憲法改正の発議要件の緩和に、強く反対する。
2013(平成25)年7月18日
滋賀弁護士会 会長 甲津貴央

憲法9条の解釈変更により集団的自衛権の行使を容認しようとする動きに反対する決議
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20140528.html
1.安倍晋三首相は、本年2月の衆議院予算委員会で、日本国憲法9条に関する政府解釈を閣議決定の方法で変更する方針を示した。これに呼応して、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(以下「安保法制懇」という。)は、5月15日、集団的自衛権の行使を容認すべきであるとの答申を出した。
同首相は、同日、集団的自衛権行使の限定容認に向け、憲法解釈変更の基本的方向性を表明した。
2.憲法9条2項は、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」と定めて、日本が戦力を持つことができないこと、他国と交戦できないことを明記した。したがって、自衛隊そのものについても、それが戦力にあたる憲法違反の存在ではないかという議論が存在するのである。
この点についての政府見解は、「自衛隊は、我が国を防衛するための必要最小限度の実力組織であるから憲法に違反するものではない」(昭和55年12月5日)、「自衛のため必要最小限度の防衛力を保持することは9条の禁止するところではない」(昭和57年3月10日)というものである。政府自身も自国の防衛に必要な最小限度を超えていないとして、自衛隊が合憲だと主張してきたのである。
この論理によるならば、自国の防衛のために必要かつ最小の限度を超える実力の行使は、憲法違反ということになる。政府も、集団的自衛権を「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」と定義した上で、「憲法第九条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されない」と説明してきた(政府答弁書昭和56年5月29日)。
政府自身が認めてきたように、自国が攻撃を受けていないにもかかわらず、自衛の名の下に実力を行使することは、憲法が許容するところではない。自国が攻撃を受けていないのに実力を行使することは、明白な憲法違反である。
3.ところが、政府は、この問題について、安保法制懇という私的な諮問機関の報告書をもとに、解釈変更のための閣議決定をしようとしている。
そもそも、憲法の基本理念である立憲主義は、憲法で国家権力を制限することにより国民の権利・自由の保障を図るものである。憲法改正の手続を経ずに、政府自身が解釈により憲法の内容を実質的に変更することは立憲主義に反し、許されない。
憲法が予定する手続によらずに、憲法の制約を免れようとすることは、もはや憲法解釈の変更ではなく、憲法違反の状態を作り出す行為にほかならない。

「平和安全法制」関連法案に反対する会長声明
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20150714_1.html
「国際平和支援法案」及び自衛隊法や周辺事態安全確保法の改正案等の一連の「平和安全法制」関連法案が、現在、国会で審議されている。これらの法案は、以下に指摘するとおり、日本国憲法の立憲主義の基本理念及び憲法9条に違反する重大な問題を抱えている。当会は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする弁護士の団体として、この法案に反対する。
1.立憲主義及び憲法9条に反すること
一連の「平和安全法制」関連法案(以下「本法案」という。)は、昨年7月1日の集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を法制化しようとするものである。
集団的自衛権は、日本が攻撃されていないにもかかわらず、他国に対して自衛隊が武力を行使するというものであって、武力の行使を放棄した憲法9条1項に違反する。これまで、自衛隊は、日本が攻撃を受けたときに、これを排除するために必要最小限度の実力を行使するにとどまることを理由に、憲法9条2項の戦力にあたらないと説明されてきた。ところが、集団的自衛権の行使を容認することになれば、もはやこの論理は維持できなくなり、自衛隊は憲法9条2項が禁じている「戦力」であることを否定できず、その武力の行使は同項が否認している「交戦権」の行使となることから、憲法9条2項にも違反する。
集団的自衛権の行使が憲法上認められないことは、60年以上にわたって政府自身が繰り返し確認してきた、確立された憲法解釈である。にもかかわらず、こうした解釈を閣議決定で変更し、これを立法化することは、憲法改正手続によらずに実質的に憲法を改変するに等しい。これは、憲法によって権力に縛りをかけることで国民の自由・権利及び平和を守るという立憲主義に反するものである。
憲法学者の多くは、昨年の閣議決定や本法案が憲法違反である旨の意見を表明している。
加えて、衆議院の憲法審査会では、自民党が推薦した参考人を含め3人の憲法学者全員が「法案は違憲である。」旨を述べている。
また、昨年来、全国のすべての弁護士会が集団的自衛権の行使は憲法違反であることを指摘している。当会も、昨年5月28日には「憲法9条の解釈変更により集団的自衛権の行使を容認しようとする動きに反対する決議」を、同年7月15日には「集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明」を発表したところである。
政府は、砂川事件の最高裁判決を根拠に、集団的自衛権の行使が合憲であると主張している。しかし、砂川事件最高裁判決は、憲法上、日本が集団的自衛権を行使できるなどとは全く述べていない。この判決は「在日米軍は外国の軍隊であって、日本が主体となって指揮・管理できない。だから在日米軍は憲法9条2項が保有を禁止している戦力にはあたらない」と判断したにとどまる。日本が攻撃を受けていない状況下で、自衛隊が実力を行使することを憲法が認めているなどと判示したものではないのである。砂川事件最高裁判決は、集団的自衛権の行使が合憲であることの理由にはならない。
以上のとおり、本法案は憲法9条に反するものであり、憲法改正手続によらず、違憲の法律を制定することは、立憲主義に反するものである。
2.「存立危機事態」概念の問題性
自衛隊法76条の改正案では、いわゆる「存立危機事態」にも、」内閣総理大臣が自衛隊の出動を命じることができることとされている。そうなれば、同法88条によって自衛隊が武力を行使できることになる。
しかし、武力の行使を可能とする「存立危機事態」とはどのようなものであるかが、一連の法案でも、政府の説明でも、なんら具体的に示されていない。自国が攻撃されていないのに、他国が攻撃されて日本の存立が脅かされる状況とはどのようなものか不明である。しかも、武力行使の地理的な限定もない。これでは、自衛隊の武力行使を有効に制約することができず、恣意的に適用される危険がある。
憲法9条1項は、日本が攻撃されていないにもかかわらず、他国に対して自衛隊が武力を行使することを認めていないのであり、自衛隊法76条の改正案は、憲法9条1項に違反するものである。
3.「重要影響事態」概念の問題性
本法案の一つである「重要影響事態に際しての我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律」は「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」を「重要影響事態」と定義し、重要影響事態に該当するときは、地理的な制約なく、船舶検査活動、後方支援活動、捜索救助活動を可能にするとしている。
我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態という文言はあまりに漠然としており、恣意的に適用される危険がある。
また後方支援活動には、他国軍に対する兵站活動も含まれている。兵站活動は他国の武力行使と一体化した活動であるし、相手国からの攻撃を招く危険性が高い活動である。いまだ日本が直接に武力攻撃を受けていない状態で、他国軍と一体化してこのような活動を行うことは、自衛隊への武力攻撃を招来し、これに対する反撃を余儀なくされる結果、自衛隊の海外での武力行使へ道を開くものとして、憲法9条1項に違反するものである。
4.国際平和支援法案による自衛隊海外派遣法制の恒久法化の問題性
国際平和支援法案は、「国際社会の平和及び安全を脅かす事態であって、その脅威を除去するために国際社会が国際連合憲章の目的に従い共同して対処する活動を行い、かつ、我が国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があるもの」を「国際平和共同対処事態」と定義し、国際平和共同対処事態に該当するときは、自衛隊が諸外国の軍隊等に対して協力支援活動等を行うことができるようにするものである。
これまでのように個別法を作らずに、自衛隊の海外派遣を広範に認めるようにすることは、世界各地で日常的に自衛隊が武器の使用の危険性に直面することを意味する。
憲法は、あくまでも武力を背景としない国際関係を希求するものであって、武器を携えた自衛隊が、日常的に世界各地で活動するようなことを想定していない。
以上のとおり、本法案は、日本国憲法の立憲主義の基本理念及び憲法9条に違反する。当会は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする弁護士の団体として、この本法案に反対する。
2015(平成27)年7月14日
滋賀弁護士会 会長 中原淳一

「平和安全法制」関連法案の強行採決に抗議する会長声明
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20150919.html
本日、いわゆる平和安全法制関連法案が、参議院で強行採決され、可決成立した。これらの法案が憲法に違反するものであることは、当会だけでなく、全国の弁護士会、日本弁護士連合会がそろって訴えてきたところである。また、多くの憲法学者や、元最高裁判所長官、元内閣法制局長官からも、憲法違反の指摘がなされてきた。国民の反対の声を押し切り、国会での説明・審議も十分に尽くさないまま採決に踏み切ったことに対し、当会は、強い抗議の意思を表明するものである。
とりわけ、憲法9条のもとでは集団的自衛権の行使は許されないという、これまで政府自身がとってきた立場を、一内閣の解釈変更で反故にしたこと、そのための論拠として砂川事件の最高裁判決に無理な解釈を加えて法案を正当化したことは、立憲主義を踏みにじる暴挙であって、断じて許すことはできない。砂川事件最高裁判決が集団的自衛権の行使を容認したなどという解釈は、法律家からみればあり得ない誤った見解である。
当会は、集団的自衛権の問題について、昨年9月と今年6月の2回、市民向けの講演会を実施し、今年7月20日には約1300人を集めて新安保法制を許さない県民集会とデモを、8月21日には約500人が参加する緊急集会とデモを行い、さらに9月9日には、県内9か所で全県一斉街頭宣伝活動を行った。加えて、これらの準備中に20回を超える街頭宣伝活動を行った。そうした活動を通じて、多くの市民に法案の問題性への理解を深めていただくとともに、多くの市民と協同することができた。当会は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする弁護士の団体として、憲法違反のこの法律の廃止を目指す取組みを行うこととする。
2015(平成27)年9月19日
滋賀弁護士会 会長 中原淳一

少年法の適用年齢引下げに反対する会長声明
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20150714_2.html
選挙権年齢を20歳以上から18歳以上に引き下げる公職選挙法の改正案が可決、成立した。同法の附則では「少年法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずる」と規定されており、自由民主党は「成年年齢に関する特命委員会」を設置し、現行20歳未満とされている少年法の適用年齢の引下げについて検討を始めている。
しかし、国や社会の在り方について考え、投票行動により自分の意見を表明できる者は何歳以上であるかという公職選挙法の選挙権年齢の問題と、非行を行った者に対し健全な大人になるための手立てを講じる時期をどこまでに設定するかという少年法の適用年齢の問題は全く別であり、これらを連動させる理由はない。過去を見ても、選挙権年齢は戦後に現行の公職選挙法が制定・施行されるまでは25歳以上の男子とされていたが、旧少年法(1922(大正11)年制定)の適用年齢は18歳未満とされており、一致していなかった。また、1896(明治29)年制定の民法は成年年齢を20歳と規定しており、選挙権年齢とも旧少年法の適用年齢とも一致していなかった。法律の適用年齢はそれぞれの法律の立法趣旨に照らして慎重かつ具体的に検討すべきであり、少年法についても同様である。
この点、旧少年法で18歳未満とされていた適用年齢を現行の20歳未満に引き上げたのは、20歳くらいまでの者は未だ心身の発達が十分でなく環境その他外部的条件の影響を受けやすく、犯罪が深い悪性に根ざしたものではないため、刑罰を科すよりは保護処分によってその教化を図る方が適切である場合が極めて多いという立法趣旨に基づく。若年者の犯罪・非行がその資質と生まれ育った環境に大きく起因していることは、非行少年と接し、その立ち直りの支援に当たっている者が日々体感していることであり、この立法趣旨は現在にも当てはまる。
現行の少年法制の下においては、少年事件は全件家庭裁判所に送致され、家庭裁判所調査官による社会調査、少年鑑別所における資質鑑別、付添人等による更生のための援助、審判廷での質問、訓戒など様々な教育的な働きかけにより、少年の更生・成長・発達を図っている。少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げると、18歳、19歳の少年被疑者は刑事裁判手続で扱われることになり、比較的軽微な犯罪の場合、専門的な調査や審判時や審判後の教育的な働きかけなど、これまで練り上げられてきた処遇が全くなされないまま、起訴猶予処分により社会に復帰することになる。これは、少年の更生の機会を奪い、再犯のリスクを高めることになりかねない。2013(平成25)年に検察庁が新しく受理した18歳、19歳の少年被疑者数は4万8642人(検察統計年報)であり、その影響は大きい。
少年法の適用年齢を引き下げるべきであるとの意見の中には、少年非行や少年による凶悪犯罪の増加を根拠にするものがある。しかし、刑法犯少年の検挙者数は年々減少しており、少年10万人あたりの検挙人員も2013(平成25)年は763.8人となり、ピークであった1981(昭和56)年の1721.7人の半分以下となっている。また、殺人・強盗・放火・強姦といった凶悪犯罪と呼ばれる事件は昭和30年代のピーク時の12%以下まで減少しているのであって、少年非行や少年による凶悪犯罪が増加しているとはいえない。
よって、当会は、少年法の適用年齢の引下げに強く反対する。
2015(平成27)年7月14日
滋賀弁護士会 会長 中原淳一

少年審判書の全文掲載に対する会長声明
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20150519.html
1.本年4月10日に発売された「文藝春秋」5月号(株式会社文藝春秋発行)において、いわゆる「神戸連続児童殺傷事件(以下「本事件」という)」の少年審判における審判書の全文が、同紙に掲載された(以下「本件掲載行為」という)。
この点、本件掲載行為に対しては、既に神戸家庭裁判所が、記事を寄稿した記者、審判書を提供した元裁判官である弁護士と株式会社文藝春秋に対し、裁判官が退官後も負う守秘義務に違反する行為などにあたるとして抗議文を送付したところである。
本件掲載行為については、元裁判官による守秘義務違反という司法制度の根幹を揺るがす重大な問題があることは当然であるのに加えて、以下の点においても極めて問題がある。
2.少年法の制度趣旨を没却し、少年のプライバシーを侵害する点
(1)少年法は、少年の健全な育成(少年法第1条)のため、未成熟な少年を保護し、将来における更生を可能とすることを目的として制定されているところ、本件掲載行為は、成人の刑事裁判とは異なる制度設計のもと、少年審判制度が作られた法の趣旨に反する行為である。
すなわち、少年法は、更生した少年が社会に戻る際の妨げとならないように、非行したこと自体を秘密とする必要があること、また、少年の抱えている問題点・矯正教育の方法を踏まえ、処分を審判するために、少年の性格、全生活史、その家族のプライバシーに関わる事項、事件に至った経緯・内容等のプライバシーの多岐にわたる事実を少年や家族、関係者等から聴取する必要があることから、少年法では成年とは異なる特別の規定が設けられている。少年審判の非公開(同法第22条第2項)、推知報道すなわち少年を特定する事項の報道の禁止(同法第61条)、記録の閲覧制限(少年審判規則第7条)等がこれにあたる。

【転載】余命3年時事日記 2352 どんたく滋賀弁護士会③

2018年02月04日 | 在日韓国・朝鮮人
どんたく滋賀弁護士会③
各人権条約に基づく個人通報制度の早期導入を求める決議
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20130116_1.html
当弁護士会は、我が国における人権保障を推進し、国際人権基準の実施を確保するため、市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下、「自由権規約」)をはじめとして各人権条約に定める個人通報制度を早期に導入することを政府及び国会に対し強く求める。
以上のとおり決議する。
決議理由
個人通報制度とは、自由権規約等をはじめとする人権条約で保障された権利を侵害された者が、国内の裁判等の手続を尽くしても権利の回復がされない場合に、各条約の定める国際機関に直接救済の申し立てができる制度である。
多くの人権条約が条約上の権利の確保を実効化するために、各々個人通報制度を設置しているところ、この制度を我が国が受け入れるためには、自由権規約、女性差別撤廃条約等においては、本体である人権条約の加入とは別に個人通報制度を定める選択議定書を批准する手続きが必要であり、また人権差別撤廃条約等においては本体条約中にある個人通報条項を受諾宣言する必要がある。しかし、我が国は、いずれの選択議定書への批准および個人通報条項の受諾
宣言もしていない。
諸外国の状況については、自由権規約の選択議定書を批准している国は114カ国、女性差別撤廃条約の選択議定書を批准している国は104カ国にのぼる。また、OECD加盟国34カ国のうち、個人通報制度をもたない国は、我が国を含む2カ国のみであり、さらにG8サミット参加国のなかでは、唯一我が国のみがいかなる個人通報制度も有しない(本段落につき、2012(平成24)年4月現在)。
我が国は、自由権規約をはじめとする多くの人権条約に加入しているところ、これまで我が国の裁判所は、憲法ー条約ー法律ー命令という序列のもと我が国の法令の解釈にあたっては憲法のみならず条約適合性をも考慮しなければならないのはむしろ当然のことであるにもかかわらず、条約上の権利保障条項の適用に積極的とはいえず、我が国が加入している人権条約が定める国際人権条項の国内実施状況は極めて不十分なものとなっている。
例えば、婚外子に対する相続差別規定(民法900条4号但書前段)に関しては、日本政府は、これまで自由権規約委員会等からあらゆる差別の撤廃等を規定した自由権規約2条、24条等の条項に合致するよう、婚外子に対する差別的な規定を除去するよう勧告を受けてきたにもかかわらず、日本政府はなお婚外子差別規定を容認しており、最高裁判所は、同規定が憲法14条1項に反しないとした最高裁大法廷平成7年7月5日決定以来、同規定の合憲判断を続けている。その他にも、日本政府は、これまで国連人権条約機関による審査において、死刑制度、代用監獄や密室での取調べ等刑事司法制度全般、外国人に対する差別、女性に対する差別的規定などについて改善するよう勧告等を受けてきたにもかかわらず、これらの勧告を十分履行しているとは言い難い状況である。
各人権条約における個人通報制度が我が国に導入されると、裁判所は、判決後に個人通報がなされ、自由権規約委員会等条約上の国際機関による勧告によって判決に対する人権条約違反の指摘がなされる場合があることを事実上想定しなければならないため、条約上の国際機関の一般的意見等国際的に通用している権利条項の解釈について目を向けざるを得ず、その結果として、我が国における裁判の内容が条約上の権利を踏まえたものに大きく変わり、ひいては立法、行政においても国際的な人権基準を踏まえた法律改正、法律の運用を促す契機になり、我が国における人権保障水準が国際水準にまで前進することが期待される。
当弁護士会では、これまで人権救済申立てに対する調査及び警告勧告等の措置を講ずるなど人権擁護活動に真摯に取り組んできたところである。
そこで、当弁護士会は、我が国における人権保障を推進し、国際的水準での人権保障の実施を確保するため、自由権規約をはじめとした各人権条約に定める個人通報制度を早期に導入することを政府及び国会に対し強く求めるものである。
以上
2013(平成25)年1月16日  滋賀弁護士会
会長 荒川葉子

秘密保全法制定に反対する会長声明
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20130117.html
1.はじめに
2011年(平成23年)10月、政府における情報保全に関する検討委員会は、同年8月8日付「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」を受けて、秘密保全法制法案化作業を進めることを決定した。
しかし、秘密保全法案(仮称)は、以下に述べるとおり、憲法上の諸規定に抵触するおそれが高い。また、有識者会議の議事録が作成されず、議事メモも廃棄したと説明される等、その検討過程の多くが不透明なままである。
当会は、2012年(平成24年)11月3日、沖縄密約事件の当事者である西山太吉氏らを招き、シンポジウムを開催した。同シンポジウムにおいて、西山氏は、沖縄返還協定に絡む日米間の密約の存在を否定し続けてきた政府の姿勢からすれば、秘密保全法案は、政府にとって都合の悪い情報を隠蔽するためのものであると考えられること等を指摘した。また同シンポジウムにおいては、秘密保全法案が、情報公開の流れに逆行するものであること、メディアの取材の自由に対して萎縮的効果をもたらす危険性を持つこと等多数の問題点があることも浮き彫りとされた。
そこで、当会は、秘密保全法案を到底容認することはできず、本声明を発する次第である。
2.立法事実の不存在
秘密保全法を制定しようとする動きのきっかけとなったとされる尖閣諸島沖中国漁船衝突映像流出事件は、国家秘密の流出などとは到底言えない事案であった。また、前記報告書には、秘密保全法制の必要性を基礎付けるため、「主要な情報漏洩事件の概要」が資料として添付されているが、情報漏洩に関してはいずれも国家公務員法100条(罰則同109条)や自衛隊法59条(罰則同118条)等の現行法制で十分に対処できるものであり、新たな法制を設ける必要性はない。
3.国民の表現の自由との抵触
報告書によれば、禁止行為の一つに、「特別秘密」に対する「特定取得行為」がある。ここで、「特別秘密」とは、国の安全、外交、公共の安全及び秩序の維持の3分野において各行政機関が特に秘匿を要するものとして指定したものとされる。
かつて廃案となったスパイ防止法の対象範囲は、国の安全、外交であった。そして、報告書は、これに「公共の安全及び秩序の維持」を付加している。これは極めて広範囲、かつ、その外延も不明確なものである。そこで、報告書は、自衛隊法の別表方式によって限定列挙をすることが適当とする。しかし、自衛隊法の別表方式も、概括的網羅的であるから、同様の方式では何ら限定にならない。
また、秘密指定権者は当該秘密を作成・取得する各行政機関とされている。これに対して、第三者によるチェックの仕組みは何ら想定されていない。時の権力者の恣意的な権限行使により、表現の自由が著しく制約されることは、沖縄密約事件からも明らかである。
次に、「特定取得行為」には、社会通念上是認できない行為を手段として特別秘密を取得する場合も含まれるものとされる。
しかし、通常の判断能力を有する一般人の理解において、いかなる場合にそれに当てはまるのか、適用基準が不明確である。
さらに、故意による漏えい行為のみならず、過失による漏えい行為、共謀行為、独立教唆行為及び扇動行為をも処罰対象としており、秘密保全法案の想定する禁止行為は過度に広汎である。
このように、過度に広汎で漠然とした規制がなされた場合、取材・報道の自由を含む表現の自由に対して、萎縮的効果が及ぶ。その結果、取材・報道が差し控えられると、国民の知る権利は大きく損なわれる。
4.次に、現行法は、扶養義務者の扶養は保護の要件とはせず、単に優先関係にあるものとして(現行法第4条2項)、現に扶養(仕送り等)がなされた場合に収入認定してその分保護費を減額するに止めている。
しかし、実際には、全国の福祉事務所の窓口において、あたかも親族の扶養が保護の要件であるかのごとき説明がなされ、親子兄弟に面倒を見てもらうよう述べて申請を受け付けずに追い返すこともなされていた。また、扶養義務者への通知によって生じ得る親族間のあつれき等を恐れて申請を断念する事例も少なくなからず見受けられ、このような要保護者の心理を利用して申請を断念させることもなされた。これらも、いわゆる「水際作戦」の一種であり、申請権を侵害する違法な行為と評価が出来る。
この点、改正案第24条8項は、保護の実施機関に対し、保護開始の決定をしようとするときは、あらかじめ、扶養義務者に対して、厚生労働省令で定める事項を通知することを義務付けており、さらに、改正案第28条2項は、保護の実施機関が、保護の決定等にあたって、要保護者の扶養義務者等に対して報告を求めることができるとしている。また、改正案第29条1項は、過去に生活保護を利用していた者の扶養義務者に関してまで、官公署等に対し必要な書類の閲覧等を求めたり、銀行、信託会社、勤務先等に報告を求めたりすることができるとしている。
このような改正がなされ、扶養義務者に対する通知が義務化され、調査権限が強化されることになると、要保護者の保護申請に対し萎縮効果を及ぼすことは明らかである。
5.こうした改正案に対する批判の高まりを受けて、厚生労働省は、「書類の提出は保護決定まででよい」、「扶養義務者への通知は極めて限定的な場合に限る」などとして、従来の取り扱いを変更するものではないとの弁明をしている。
しかし、改正案の文言上、そうした解釈自体困難である。仮に、そうした取り扱いを法律の下位規範である省令等をもって定めるとすれば、改正案の内容に正当性がないことを自認することになるし、法律で義務付けられた事項を下位規範で緩和することができるか自体疑問である。
6.当会は、生活困窮者支援のための活動に関与する会員が増えている中、いわゆる「水際作戦」による被害の個別救済に全力を挙げるとともに、本年4月13日には、憲法記念行事として、「本当にいいの?生活保護バッシング~保護基準引下げが市民生活に及ぼすこと~」と題した集会を行うなど、貧困問題について積極的に取り組んできた。
改正案は、これまで違法とされてきたいわゆる「水際作戦」を合法化するものであり、一層の萎縮的効果を及ぼすことにより、客観的には生活保護の利用要件を満たしているにもかかわらず、生活保護を利用することのできない要保護者を続出させ、多数の自殺・餓死・孤立死等の悲劇を招く恐れがある。
これは我が国における生存権保障(憲法25条)の精神そのものを踏みにじるものであり到底容認できない。
よって、当会は改正案の廃案を強く求めるものである。
以上
2013(平成25)年6月11日
滋賀弁護士会 会長 甲津貴央

パリ原則に基づき政府から独立した国内人権機関の設置を求める決議
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20130329.html
当会は、わが国における人権保障を推進し、また国際人権基準を完全実施するための人権保障システムを確立するため、国連の「国内人権機関の地位に関する原則(パリ原則)」に合致し真に政府から独立した国内人権機関を速やかに設置することを、政府および国会に対して強く求める。
以上のとおり決議する。
2013(平成25)年3月29日  滋賀弁護士会
決議理由
国内人権機関とは、裁判所とは別の、人権侵害からの救済と人権保障を推進するための国家機関である。裁判よりも簡易・迅速に人権侵害からの救済を図る必要があること、及び人権保障推進のための提言や教育の機能を裁判所に求めることはできないことから、国連は、国内人権機関の設置を世界各国に求めている。
わが国も、1998年の国際人権(自由権規約)委員会による勧告以降、国内人権機関の設置勧告を何度も受けており、政府は本年3月14日の国連人権理事会で、国内人権機関の設置勧告をフォローアップすると表明したところである。
ここで、世界中で国内人権機関のあり方の基準となっているのが、1993年の国連総会で承認された「国内人権機関の地位に関する原則」(いわゆるパリ原則)である。具体的には、1.国内人権機関には、人権の促進・擁護のため、できる限り広範な職務が与えられること、
2.国内人権機関は、政府・議会等に対し、自らの権限で意見・勧告等をすること、
3.構成員の任命は、人権の促進・保護にかかわる(市民社会の)社会勢力からの多元的な代表を確保できる手続に従って行われること、4.国内人権機関が、政府からの独立性に影響しかねない財政統制のもとに置かれることのないよう、自らの職員と土地家屋を持つことを可能とする十分な財源をもつこと、5.国内人権機関の真の独立にとって不可欠である構成員の安定した権限を確保するため、構成員は一定の任期を定めた公的な決定によって任命されること、等が必要とされる。
この観点からみると、現行の法務省監督下の人権擁護委員制度では政府からの独立性が認められず、2002年に政府が国会に提出した「人権擁護法案」も、人権委員会が法務大臣の管轄下にあるとされる等、パリ原則が求める独立性を満たすものではなかった。
また、2012年11月に政府が国会に提出した「人権委員会設置法案」(同月衆議院の解散により廃案)、でも、人権委員会による調査手続の対象となる人権侵害行為を「司法手続においても違法と評価される行為」に限定しており(法務省政務三役「人権委員会の設置等に関する検討中の法案の概要」)、その権限に著しい制約が加えられていたこと、人権委員会を法務省の外局として設置するとしており、拘禁施設や捜査機関を抱える法務省内局との関係を完全に分離することができないこと、事務局の事務を法務局長・地方法務局長に委任することができる旨定めており、政府からの独立性の確保が不十分であること等の問題点が指摘されてきたところである。
当会では、今までにも、人権侵害救済申立てに対する調査を行い、必要な警告・勧告・要望等を行う等の取り組みを通じて、人権擁護に真摯に取り組んできたところである。しかし、調査を行うための十分な組織的基盤が存在しないこと、調査権限が任意のものにとどまること等から、その活動には一定の限界があったことも否定できない。
そこで、当会は、わが国における人権保障を推進し、また国際人権基準を完全実施するための人権保障システムを確立するため、パリ原則に合致し真に政府から独立した国内人権機関を速やかに設置することを、政府および国会に対して強く求めるものである。
以上
4.国民の裁判を受ける権利の形骸化
仮に、秘密保全法違反により起訴された場合、当該被告人の地位は、公開裁判の原則との間で緊張関係に立たされる。
公開の裁判で特別秘密の内容が明らかになれば、もはやそれは秘密ではなくなる。そこで、ある情報を特別秘密にした理由と秘密指定の適切さが立証されることにより、当該秘密が実質秘であることが推認される等の外形立証の方法を検討せざるをえなくなる。しかし、これでは被告人の防御の対象は極めて不明確なものとなる。
さらに、弁護人による防御活動も共謀行為、独立教唆行為等に問われるおそれがある。これにより弁護活動が萎縮すると、被告人は適正手続により裁判を受ける権利を十分に享受しえなくなる。
5.国民のプライバシー権との抵触
報告書によれば、秘密情報を取り扱わせようとする者について、秘密情報を取り扱う適正を有するかを判断するための適正評価制度が導入されようとしている。これにより、行政機関において特別秘密を作成・取得する業務に従事する者のみならず、特別秘密を取り扱う民間事業者、対象者本人以外にもその身近にあって対象者の行動に影響を与えうる者も、我が国の利益を害する活動への関与、外国への渡航歴、犯罪歴、懲戒処分歴、信用状態、薬物・アルコールの影響や精神の問題に係る通院歴等について調査される可能性が存する。
こうした調査事項は極めてセンシティブな情報であり、プライバシー侵害及び思想・信条の自由が侵害される危険性がある。
そこで、報告書は、対象者の同意を得ることが肝要とする。しかし、仮に対象者本人の同意が形式的に存しても、組織内における差別的取扱いのおそれがあり、実質的に対象者の自由意志が確保されたものとは言えない。
さらに、平成19年8月9日カウンターインテリジェンス推進会議決定に基づき、平成21年4月1日から実施された秘密取扱者適格性確認調査が実施されたところ、これは対象者の同意なしに行われたことが明らかとなった。かかる事実からすれば、同意を得る手続が履践されること自体に疑念を持たざるをえない。
6.結論
以上の理由より、当会は、日本国憲法を尊重する立場から、秘密保全法案の作成を直ちに中止することを強く求めるものである。
2013(平成25)年1月17日
滋賀弁護士会 会長 荒川葉子

【転載】余命3年時事日記 2351 2018/01/31アラカルト①

2018年02月04日 | 在日韓国・朝鮮人
どんたく
司法修習生への修習手当の創設が実現していたようですね。
ttp://www.moj.go.jp/housei/shihouseido/housei10_00150.html
弁護士会と同じ声明を出しているビギナーズネット
~司法修習生の給費制復活のための若手ネットワーク~
ttp://www.beginners-net.org/
こちらも国会議員への要請や集会を開催したり街頭で宣伝をしているそうです。
匿名希望
有罪か無罪か分かりませんが、唯一の外患罪裁判の概略がありました。
ttp://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/013/0512/01307020512060a.html
第013回国会 本会議 第60号
昭和二十七年七月二日(水曜日)
○吉田法晴君 (前略)
曾つて外患罪が実際に罪に問われたような例は、これは時間がございませんので正式に書類を取寄せて私ども見ることはできませんけれども、昭和十二年に米国大使館の日本人の飜訳官が、米国大使館の上司の命によつて、日本の国力を表現するような統計文書を渡した。而もこれは未遂であつた。これが外患罪に問われたということであります。当時は勿論旧刑法で、「外国二通謀シテ、帝国二対シ戰端ヲ開カシメ又ハ敵国二與シテ帝国二抗敵シタル者」という表現がなされておつたのでありますが、この米国大使館の日本人翻訳官が、恐らくこれは公刊せられた資料その他であろうかと思いますが、統計文書を渡したことが、或いは外国に通謀して戰端を開かしめる行為であつたかどうか、或いは敵国に與して帝国に抗敵したものであるかどうか、これは甚だ今日問題であることは、これは事態を聞かれる皆さんとして当然起される疑問でありますが、若しこの外患罪が、たつた一つ適用せられた場合のように、或いはこの資料を外国に提供するというようなことが、当時の軍機漏洩だとか、或いは今の刑事特別法の問題ではなくして、それが日本精神の欠除であるとか、或いは忠誠義務の欠除であるとか、こういう当時のこの空気、或いは観念で外患罪に問われるといたしますならば、これは外患罪が破壊活動防止法を通じて適用せられる場合には極めて危險であることは、これは何人も否定することはできないと思います。(後略)

通りすがりの人
青林堂@seirindo_book
TBS労基署から是正勧告 社員10人に月80時間以上の時間外労働ttp://www.sankei.com/entertainments/news/180122/ent1801220008-n1.html
… 当社は労基の違反は一切なくユニオン組合員は「残業0時間」でした。当社の件を大々的に取り上げた @news23_tbs は自社の問題はスルーですか?
『ユニオンとブラック社員 』http://amzn.to/2wp2bSR 。
宮崎マンゴー
お疲れ様でございます。いつもありがとうございます。
余命先生からの年賀状、色紙と共に神棚へ捧げ、日々手を合わさせていただいております。心の糧として、感謝申し上げます。
本日は、スタッフ様へお伺いでございます。
*2071アラカルト②
11/29am10:28大和会10月11月送金コメント
*2094
12/6am11:55コメント
*2096アラカルト
12/9am12:56
*2148
1/1am2:32
いずれも承認待ちでございます。
御多忙な余命先生のお目通しにはならなかった事と存じます。
次回[うずしお]へ、近日中、12月と1月分として送金致したく存じます。認証待ちの件で、愚文くだらない我コメントのお伺い、お忙しい中本当に申し訳ございませんでした。

.....すべて確認している。手を合わせているのはこっちだよ。処理は手つかずだが、管理は余命がやっている。出版、訴訟、投稿等を部門分けして進めているが、どれもめいっぱいである。手当たり次第の処理をしているが、なかなか進まずご迷惑をかけているが、そういうわけである。できるだけ急ぐので、お許し願いたい。



琵琶鯉
ma様へどうかミラー様へ投稿をして、官邸メールとして掲載してもらってください。
(琵琶鯉)
AZ
>捜査公判協力型協議・合意制度も、引き込みの危険(逮捕勾留された者が、自らの刑事訴追を逃れたい、少しでも軽くしたいと考え、捜査機関から「恩典」をちらつかせられることにより虚偽の供述をし冤罪を生み出す危険性が高いこと)
弁護士なのに「虚偽の供述を行った場合は偽証罪や虚偽布告を問われる」なんてのはまるで無視ですね、刑を軽くしようとして別の罪に問われたら意味が無いですよ。この文脈をそのまま読むと『検察が冤罪を生み出す為に司法取引を持ちかける恐れがある』と言ってるようなものです。同胞批判をして大丈夫なんでしょうか(笑)
実際のところは「お前も同罪だから黙っていろ」という恫喝というか統制が効かなくなる事が反対する理由なのでしょうね。
「自らの刑事訴追を逃れたい、少しでも軽くしたい」
これは弁護士の存在理由だと思うのですよね、依頼人の刑を軽くする為に金貰っているのだろうに、自己否定になっていると理解出来ないんですかね。一方では死刑を廃止しろと言いながら被告が証言して減刑を求めるのはけしからんとかまぁ良く言うものです。
この分では仮に証人保護プログラムを導入しようとしたらきっと日弁連は反対しますね、どんなアクロバットすり替えをするのか見てみたい気ので法案提出されないかと期待したりもします。
AZ


初めてコメントさせていただきます。
コメントと言うより、各弁護士会の声明に関しての疑問です。
弁護士会の役員の任期は一期一年なのでしょうか?
一般、公益、社団、財団、法人の場合には、一期二年が一般的ではないでしょうか?
一期一年で、これだけ声明を発して、その声明を実現することは不可能であると思います。
一つの事を実現するにも、二期四年は必要かと思いますが、声明を実現することよりも声明の数が役員の実績になると思っているのでしょうか?

はちべえ
怒涛の弁護士会会長声明を読んでいるうちに
弁護士会って、政治団体だったか?と思ってしまい確認してみたところ、
弁護士法の第五章第三十一条には
「弁護士会は、弁護士及び弁護士法人の使命及び職務にかんがみ、その品位を保持し、弁護士及び弁護士法人の事務の改善進歩を図るため、弁護士及び弁護士法人の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする」
とあり、やはり違うよなあ、となったのですが
それにしても会長は何のためにいちいち「声明」を出しているのか。
出さなきゃいけないルールなのか?
弁護士法には会長の職務として第五十四条に
「会長は、会務を総理する」
としかないので、出したくて出しているのか‥
こんなにも頻繁に会長声明とやらが出されていることは今回初めて知ったのですが
つまり特定の人以外は会長声明とやらの存在は全く知らないわけで
では会長たちは誰に向けて何のために長年に渡り長文の声明とやらを出し続けているのか?
業務に支障は出ないのか‥
とりとめのない文章ですみません。
年賀状、ありがとうございました。
どうか、お体にお気をつけ下さいませ。

.....既得利権の保持と擁護に狂奔している反日勢力の一組織としか言いようがない。
懲戒請求事由にある「憲法第89条違反をしている組織が憲法を語るな!」という話だ。
日弁連で弁護士活動に反対の手法として懲戒請求が使われていると問題をすり替えているが、まさに弁護士法違反である。これも法責任を問われることになるだろう。


るなちゃんはちわわ
翁様、皆様いつも有難うございます。
年賀状、1月9日に拝見しました。まさか頂いているとは思わず、驚いたと共にとても嬉しく思いました。
お返事も出せず、失礼致しました。
第6次告発に参加しましたが、私には何も送られて来ませんでした。
12月25日に警察の方が来られましたが.もしかして、余命チームと深い関わりがある方だったでしょうか?
あの時、私、二日酔いで頭が痛く、まだ酔いがさめてない感じで少しボーっとしていたのと、年末でしたので、世帯台帳の確認に、鳥栖警察署のお巡りさんが来られたと思って、子供達への不審者の声掛けが増えたとか、「朝鮮人がー」とか言わない方がいいのかなと思って、当たり障りの無い話をしたと思います。
日が経つにつれて、あの時すぐには帰られなかったのと、私の顔をジーッと見られて、なんか「あなたの事を知っていますよ」と言われている感じがして、制服もそういえば、白バイに乗ってる方のものだったようなと、色々考えているうちに、もしかしたら、余命ブログに関係ある方かな?と思うようになりました。
実は、衆院選で安倍総理圧勝の後、近所の在日らしき人達が、攻撃的になってきていたのと、12月23日に怖くておもわず泣いてしまった事が有りましたので、もし、その方が関係者の方だったら、話しを聞いて頂いたら少しは安心できるかなと思います。
今、体調を崩して寝込んでいますので、元気になったら、訪ねて行こうと思います。
感謝しております。
皆様に神のご加護がありますように。

柏餅二千年
余命様スタッフの皆様いつもありがとうございます。1月31日着で2月1日取り下げ最終期日総合消費料金に関する訴訟最終告知のお知らせ、などという怪しい葉書が届きました。弁護士会のアレラが関わっているように感じます。住所が少し違い、やること雑ですから。先ずはご報告まで。

.....意味がわからない。詳細をどうぞ。

通りすがりの774
おやおや
ヒゲの大佐が外務副大臣として韓国に入国ですか(笑)
安倍総理、ホントに痛い所突いていきますね。
てーけー
いつもありがとうございます。
そういや2/1からパチンコ新規制ですね。
どうなることやら
東の羊☀
余命さま 皆さま
お疲れ様です。
新しい年が始まりました。よろしくお願いいたします。
平昌オリンピックと竹島の日が重なるので、何か起こるような気配を感じます。
文大統領は依然竹島に不法侵入しておりますので、もしも訪日するならば、高いハードルを越えないとならないのではないでしょうか?
日本政府は慰安婦問題はすでに解決しましたので、次の竹島問題に進んでいる様に見えます。
文大統領が訪日する条件として国際司法裁判所での決着の合意に持っていくための兵糧攻めの最中であると期待しております。
河野外務大臣は父親、いや河野家の名誉回復のために、頑張るでしょう(笑)



神主の末裔
余命翁様
スタッフの皆様
毎日の活動お疲れ様です。
一件、ツイッターから情報を拾いましたので、共有の為投稿致します。
下記のURL(頭のhは取ってあります)は、中国政府が運営しているHPで翁長知事が出ておりますが、何とその内容が琉球復帰運動とのことです。
あまりの怒りに血圧が急上昇しましたが、これは外患誘致以外の何物でも無いと思います。
ttp://www.liuqiu-china.com/portal.php?mod=view&aid=2002



丘の上から見える風景
余命様 スタッフの皆様
日々の活動ご苦労様です。
安倍総理の、ピョンチャンオリンピック出席。
確定ですか?「文大統領に直接会って伝えたい」こんな記事を見たのですが。
まあ、安倍総理は、今までも対話と圧力の両方、色んな事を考え外交戦略を行っています。
私としては反対ですが、安倍総理が色々考えての事なのでしたら仕方ないと思ってます。
そして、その時に、デモや安倍総理人形、日の丸の国旗を破り燃やす、物を投げつける等あれば、心の中で憎悪しながら静かにその行動を目に焼きつけたいと思います。
話は変わりますが、月刊誌楽しみにしています。
予約制という事ですが、住所の分かる人は不要の申し出をしない限り、自動的に送られてくるのですか?
私はその方が良いのですが(^∇^)

.....今、出版部の方で作業している。10日過ぎにはお知らせできると思う。



路傍の石
余命翁様 スタッフの皆様には日本再生、在日駆除、反日勢力駆逐に御尽力頂有り難うございます。
本日2月1日パチンコの出玉規制が施行されました。
NHKニュースより抜粋
パチンコ出玉3分の2程度に きょうから施行
2月1日 7時02分
警察庁は、パチンコの出玉の上限をこれまでの3分の2程度に抑えるよう風俗営業法の規則を改正し、1日から規制を強化します。
NHKニュースより抜粋終わり
後、「マイナンバー制度」「テロ資産凍結法」 金融口座関係は任意からはじまり本格運用が2018年から始まりました。
そして、共謀罪/テロ等準備罪+パレルモ条約締結により日弁連の幹部の皆様は安保理や国際機関によりテロ支援組織、又はテロリストとして世界デビューが想定されています。
余命ブログにはこれでもかと言わんばかりに日本国の弱体化と利敵行為の会長声明が掲載され自ら敵であることを表明しているようです。
2018年が駆除元年でしょうか。
安倍総理が平昌オリンピックに参列と共に日韓合意の最後通告に行かれる予定ですが相手は朝鮮人ですから十分ご注意ください。
各国マニュアル「朝鮮人の扱い方」を参照しておりますがアメリカの駐韓大使もテロリストに襲撃された過去が有りました。
パレルモ条約締結以降の日本政府の動きが強硬になっているように感じます。
見つかるはずの無い中国の攻撃型原潜が尖閣で2日間海自に追尾され追い回されたようで世界の笑いものでした。
また、1月25日に竹島資料館を都内にオープンしました。
今年は春から縁起がいいわい。

【転載】余命3年時事日記 2350 ら特集岡山弁護士会⑥

2018年02月04日 | 在日韓国・朝鮮人
岡山弁護士会
ttp://www.okaben.or.jp/index.html

生活保護に関する偏見や差別を助長しない報道と,生活保護制度についての慎重な議論および適切な生活保護行政の実施を求める会長声明
1 人気芸能人の母親が生活保護を受給していたことについての報道を皮切りに,生活保護受給者に対する偏見につながる報道が続いている。
生活保護の不正受給が横行しているかのような報道,在日外国人が生活保護を受けていることが問題であるかのような報道,視聴者から寄せられた情報をもとにあたかも生活保護受給者の多くが資産や収入を隠しているかのような印象を与える報道がなされている。また,生活保護を受けることが恥であるかのような印象を与える報道も繰り返しなされている。
今回の一連の報道の発端となったケースでは生活保護制度における扶養の扱いが問題となった。この点については,生活保護法上,扶養については「民法に定める扶養義務者の扶養は保護に優先して行われるものとする。」と定められており(同法第4条2項),同法第4条1項のような「要件として」という文言があえて使用されていない。このことは,扶養義務者による扶養が実際に行われた場合にはその援助額だけ保護費を減額するということを意味しており,扶養義務者が扶養できないことは保護受給の要件ではないのである。これは,憲法第25条が生存権の保障を私的扶養の問題にせず,国の責務としているからである。
扶養義務者の扶養については,現在の運用においても,生活保護を申請すると原則として福祉事務所が親族に対して扶養の可否を尋ねる扱いがなされているが,これが障害となって保護を申請しない者が多数存在するとみられている。それにもかかわらず,扶養義務者の扶養をさらに強調することは,親族への負担や,親族関係の悪化への懸念から,生活困窮者が生活保護申請を断念する事態が更に広がる結果を招くおそれが大きい。
また,生活保護の不正受給は,金額ベースで全体の0.4%弱で推移しており,件数ベースでも2%弱で推移しているのであって*1,近年目立って増加しているという事実もない。
徐々に冷静な報道もみられつつあるものの,先に述べた一連の報道は生活保護受給者に対する偏見や差別を助長し,真に生活保護を必要としている国民の生存を脅かすことになる。
2 2012年(平成24年)5月25日,厚生労働大臣は,生活保護を実施する際の扶養義務者への調査権限の強化,生活保護基準の切り下げを検討すると表明した。また,6月26日に衆議院で可決された社会保障制度改革推進法案では,「安定した財源を確保しつつ受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度の確立を図る」(同法案第1条)と謳ったうえで,「家族相互及び国民相互の助け合いの仕組み」を通じて社会保障制度改革を実施していくとしており(同法案第2条1号),家族や国民の自助を強調している。さらに,同法案では,生活保護の「不正受給への厳格な対処」や「給付水準の適正化」などの見直しを実施するとされている。
ところで,生活保護利用者数は増えているものの,総人口に占める利用者の割合を示す利用率は1.6パーセントで*2,先進諸国との比較でもいまだ利用率は非常に低い状態である*3。また,保護を必要としている世帯のうち実際に保護を利用している世帯の率,すなわち捕捉率は15.3?18%程度と推定されており*4,捕捉率も先進諸国との比較で非常に低い*5。さらに,厚生労働省の2009年(平成21年)の調査によれば,等価可処分所得の中央値は250万円で,その半分にあたる125万円未満の人の割合である相対的貧困率は16%であり*6,2005年(平成17年)段階でもOECD加盟国30カ国の中で,日本の相対的貧困率は,メキシコ,トルコ,アメリカに次いで4番目に高いとされている*7。非正規雇用の拡大によって雇用が不安定化し,格差と貧困が広がっているというのが日本の現状である。
以上の現状を踏まえるならば,今後,上記一連の報道に便乗して安易な生活保護基準の切り下げや受給抑制策がなされてはならない。生活保護基準については2011年(平成23年)2月にすでに社会保障審議会に生活保護基準部会が設置され,生活困窮者の生活支援戦略については2012年(平成24年)5月から社会保障審議会に特別部会が設置され,それぞれ議論が進められているが,政府,国会,および,生活保護実施自治体は,過熱する報道に惑わされることなく,生活困窮者の実態調査に基づいて慎重に生活保護制度を含めた生活困窮者支援制度の在り方を検討する議論を深め,適切な生活保護行政の実施に当たるべきである。
3 以上の通り,当会は,報道機関に対して生活保護受給者に対する偏見や差別を助長することのない配慮ある報道を求めると共に,政府,国会,および生活保護実施自治体に対して生活保護制度についての慎重な議論と適切な生活保護行政の実施を求める。以上
*1平成24年3月厚生労働省社会・援護局関係主管課長会議資料。
*2福祉行政報告例に記載の被保護人員実人員数を,総務省統計局発表の人口統計で割って率を算出。平成24年3月時点。
*3利用率について,ドイツ9.7%,フランス5.7%,イギリス9.2%など。いずれも2010年(平成22年)時点。「生活保護『改革』ここが焦点だ!」(生活保護問題対策全国会議編集)より。
*42007年国民生活基礎調査に基づく推計。
*5捕捉率について,ドイツ64%,フランス91%,イギリス47%以上など。いずれも2010年時点。「生活保護『改革』ここが焦点だ!」(生活保護問題対策全国会議編集)より。
*6平成23年7月厚生労働省・大臣官房統計情報部社会統計課国民生活基礎調査室発表
「平成22年 国民生活基礎調査の概況」より。
*72005年OECD 調査。OECD 2008「Growing Unequal? Income Distribution and Poverty in OECD Countries.」より。
2012(平成24)年8月8日
岡山弁護士会 会長 火 矢 悦 治

秘密保全法制に反対する会長声明
平成23年8月8日,秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議は,「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」を発表し,政府における情報保全に関する検討委員会は,同報告書に基づき法案化作業を進めている。
しかし,同報告書が整備を求める秘密保全法制(以下「当該秘密保全法制」という。)は,以下に述べるとおり,立法を必要とする理由を欠くものであり,また,国民主権原理から要請される知る権利などの憲法上重要な諸原理と正面から衝突するものであるから,当会は,その制定に強く反対する。
1 当該秘密保全法制は,いわゆる尖閣沖漁船衝突事件に係る情報漏えいを契機とし,その内容は,「特別秘密」に指定された情報の公開を制限するとともに,その実効性を担保するために,新たに刑罰や適性評価制度と称する人的管理制度を創設するものである。
しかし,上記事件で問題となった情報は本来国民に公開すべきものであるし,ネットワークを通じた流出の原因も当該映像に対する物的管理が不十分であったことにあるから,上記事件は新たな法整備や人的管理の必要性を基礎づけるものではない。また,自衛隊法,日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法,国家公務員法等の現行法制及び運用実態に照らせば,新たな犯罪類型の法定や厳罰化の必要もない。
このように,当該秘密保全法制は,そもそも立法を必要とする理由を欠くものと言わざるを得ない。
2 当該秘密保全法制の中核は,行政機関が,(1)国の安全,(2)外交,(3)公共の安全及び秩序の維持に関する分野で「特別秘密」に指定した情報の公開を制限することである。
しかし,規制の鍵となる「特別秘密」の定義自体が広範かつ不明確である。また,その指定権者は「特別秘密」を作成・取得する行政機関とされており,指定の適法性を事後的に検証する仕組みもない。
したがって,時の政府が,恣意的に指定権を行使して本来国民が知るべき情報を隠す懸念が極めて大きく,国民にはこのような運用の有無を検証し是正する機会が与えられていない。その結果,国民主権原理の要請でもある「知る権利」が不当に制約されることになる。
3 当該秘密保全法制は,その実効性を担保するため,特別秘密の故意の漏洩行為,過失の漏洩行為,特定取得行為,未遂行為,共謀行為,独立教唆行為,扇動行為を処罰対象とする。
しかし,保護対象である「特別秘密」概念自体が過度に広範かつ不明確であることに加え,過失の漏洩行為,共謀行為,独立教唆行為及び扇動行為という各行為の外延も不明確であるため,犯罪構成要件が極めて曖昧であり,罪刑法定主義と行為責任主義という憲法上の要請や近代刑法の基本原理に反する。
また,当該秘密保全法制の犯罪構成要件は極めて曖昧であって,報道機関は,取材活動が特定取得行為等として処罰対象となるか否かを予測できない。
さらに,その法定刑の上限は懲役5年又は10年とされているため,同法制が,報道機関の取材の自由に及ぼす萎縮効果は図りしれない。また,「特別秘密」の対象には民間事業者や大学等が作成・取得するものも含まれているところ,科学技術や重要な政策に関する自由な発言・批判も萎縮させられる危険があるといわざるをえない。
このように,当該秘密保全法制は,民主主義を支える取材・報道の自由を始めとする表現の自由等国民に保障された憲法上の諸権利を不当に制約するものである。
4 当該秘密保全法制は,特別秘密の管理を徹底するためとして,「特別秘密」の取扱者となりうるものを対象とした適性評価を実施するための事前調査と評価の制度を導入しようとしている。しかし,調査対象者には配偶者など家族が含まれており,極めて広範になるとともに,調査事項も対象者のプライバシーに関わる情報や,運用次第では私人としての活動全般にまで及ぶおそれもあり,調査方法も第三者機関への照会まで含んでおり,調査対象者が関係していた私的な団体にまで調査が行われる危険がある。したがって,適性評価調査は,調査対象者のプライバシーの権利を侵害するほか,調査を口実に思想調査が行われ,思想信条の自由が侵害される危険性が極めて高いなど,人権保障上看過し難い問題をはらんでいる。
5 当該秘密保全法制に違反して起訴された場合,その国家秘密が公開の法廷で公開されればそれはたちどころに秘密ではなくなることから無意味であるし,逆に,特別秘密が非公開のまま裁判が進行すれば,憲法に定められた公開原則に違反し,さらには被告人・弁護人の防御権行使を困難なものとさせ,裁判を受ける権利を侵害することになる。
以上のとおり,当会は,当該秘密保全法制の制定に対して強く反対するものである。
2012(平成24)年5月10日
岡山弁護士会 会長 火 矢 悦 治

死刑執行に関する会長声明
2012(平成24)年3月29日、東京拘置所において1名、広島拘置所において1名、福岡拘置所において1名の合計3名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。
にもかかわらず、1年8か月間中断していた死刑の執行が再開されたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。国際社会においては、死刑廃止が潮流となっている。日本政府は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けている。
日本弁護士連合会は、2011(平成23)年10月7日に「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言」を決議し、「直ちに死刑の廃止について全社会的な議論を開始し、その議論の間、死刑の執行を停止すること」などを求めている。
当会においても、2011(平成23)年5月28日に憲法記念県民集会「いま、「死刑」を考える」を開催し、約200名の参加を得た。
このように、死刑の存否をめぐって社会全体で議論がなされている状況の中、死刑執行が再開されたことは極めて遺憾である。
また、議論の前提となる死刑執行の基準、手続、方法等死刑制度に関する情報は現在においてもほとんど公表されていない。昨年、当会の実施した上記集会のアンケートにおいても、「死刑制度について全く知らず、そういうことを知っていかないと、裁判員もできないと思う。」「公にされていない死刑制度についてもっと公開してほしいと思います。」等死刑制度に関する情報公開を求める意見が寄せられている。
法務省内部で行われてきた「死刑の在り方についての勉強会」が終了し、その報告書が公表されたが、死刑制度に関する新たな情報の公開を伴うものではなく、死刑制度賛成論・廃止論の論点整理にとどまっており、到底、死刑の廃止について全社会的議論がなされているとは言えないことは明らかである。
当会は、改めて政府に対し、死刑の執行を停止し、わが国における死刑確定者の処遇、死刑執行対象者の決定手続と判断方法、死刑執行の具体的方法とその問題点等に関する情報を開示し、死刑存廃について国民の広範な議論を踏まえた上で、死刑制度の見直しを検討するよう、重ねて強く要請するものである。
2012(平成24)年4月2日
岡山弁護士会 会長 火 矢 悦 治

岡山弁護士会ハンセン病問題を考える集会における集会決議
平成23年11月 6日
集会参加者一同
本日、岡山弁護士会主催によりハンセン病問題について考える集会「ハンセン病のことを知っていますか??今も残る課題」が開催された。
今から10年前の平成13年5月11日、熊本地方裁判所は、「らい予防法」及びこれに基づく国の隔離政策が違憲であり、国に法的責任があることを認める判決を言い渡し、国は控訴を断念しこの判決は確定した。
この判決を受けて、国は、「13の国立ハンセン病療養所入所者(今後入所する者を含む)が在園を希望する場合には、その意思に反して退所、転園させることなく、終生の在園を保障するとともに、社会の中で生活するのと遜色のない水準を確保するため、入所者の生活環境及び医療の整備を行うよう最大限努める」ことを確約した。
ところで、平成13年当時、全国13の国立療養所の入所者は4400名と言われていたが、現在では、入所者数はすでに3000名を大きく下回っており、入所者の平均年齢も80歳を超えている。10年後には、入所者数はさらに3分の1以下になるとも言われている。
このような急速な高齢化と入所者数減少の中、医師等医療職の定員の確保が困難な状況も生じており、ハンセン病療養所は、医療体制及び生活水準の確保が緊急の課題となっている。
平成20年6月18日、「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」(ハンセン病問題基本法)が制定された。そして、同法第12条第1項において、「国は、入所者の生活環境が地域社会から孤立することがないようにする等入所者の良好な生活環境の確保を図るため、国立ハンセン病療養所の土地、建物、設備等を地方公共団体又は地域住民等の利用に供する等必要な措置を講じることができる。」と規定され、ハンセン病療養所を地域に開かれた施設となすべく法的整備がなされた。
ハンセン病問題基本法の成立を受け、岡山県にある2つの国立ハンセン病療養所長島愛生園及び邑久光明園は、平成23年3月、各園独自の将来構想を策定し公表している。
これらの将来構想は、高齢化したハンセン病療養所入所者の努力のみで到底実現できるものではなく、県民、国、地方自治体及び各種団体が力を結集して初めて実現可能なものである。
本日の集会において、参加者は、ハンセン病問題の深刻さ及び将来構想実現の緊急性・必要性を学んだ。
本日の集会参加者一同は、県民、国、地方自治体及び各種団体と力を合わせて長島愛生園及び邑久光明園の将来構想実現に向けて取り組むことを決意しここに決議する。以上

国選弁護報酬基準及びその運用の抜本的見直しを求める会長声明
日本司法支援センター(以下「法テラス」という。)は,2006年(平成18年)10月に業務を開始し,刑事事件については,法テラスが国選弁護人になろうとする弁護士との間で契約を締結し,国選弁護人候補の指名及び裁判所への通知,国選弁護人に対する報酬及び費用の支払いなどの業務を行うこととなった。そして,国選弁護人に対する報酬及び費用の支払いは,国選弁護人が活動終了後に法テラスへ報告書を提出し,法テラスが国選弁護人の報酬及び費用を算定して,その結果を国選弁護人へ通知し,支払いを行うという仕組みになっている。
この国選弁護人に対する報酬の算定に関して,先般,当会所属の弁護士が担当した国選弁護事件につき,次のような事例があった。
被疑事実の要旨は,被疑者がA金融機関において,Bが同所に設置の現金自動預払機から取り忘れたA金融機関代表者管理にかかる現金5万円を窃取したというものである。そこで,国選弁護人は,Bに対して5万円を支払って示談を成立させ,同人から被疑者に対する減刑嘆願書を受領し,示談書及び減刑嘆願書を検察官に提出するという活動を行った。その結果,被疑者は不起訴処分となって釈放された。
これに対し,法テラス本部は,「本件の被疑事実は金融機関が占有を取得したものとして構成されているため,本件窃盗の被疑事実に係る被害者はBではなくA金融機関とみざるをえず,Bとの間で示談を成立させ,減刑嘆願書を取得したことは弁護活動として評価できるところではあるが,現行報酬基準では算定することはできない」として,示談等の成立に関する特別成果加算報酬を0円と算定した。
しかしながら,上記事例において,A金融機関からBへの補填はなされておらず,実質的な被害者は現金を取り忘れたBであることは明らかであって,Bとの間で被害弁償等の交渉を行った国選弁護人の活動は常識的かつ正当なものであり,また,その活動が不起訴処分という結果に結びついたといえる。他方,経済的被害が生じていないA金融機関との間で被害弁償等の交渉を行うことは,無意味である。
にもかかわらず,法テラスが形式的な判断をし,特別成果加算報酬を0円と算定したことは,国選弁護人の活動を否定するに等しく,実質的にも極めて不合理である。
当会は,2009年(平成21年)8月にも,国選弁護事件における私的鑑定費用等の支払いに関して会長声明を発表したが,未だこの点に関する法テラスの報酬基準は改められていない。
また,徐々に改正されてはいるものの,依然として,保釈や無罪等に関する特別成果加算報酬の金額は低いと言わざるを得ないし,起訴後の接見回数が全く報酬に反映されない,被疑者段階の接見回数においても報酬算定のうえで基準回数が設定されている,特急料金や謄写料等の実費も全額が支払われないなど,法テラスの報酬基準には多くの問題が残されている。
当会は,法テラスに対し,国選弁護人の活動が正当に評価され,報酬に反映されるよう,国選弁護報酬基準及びその運用の抜本的見直しを強く求めるものである。
2011年(平成23年)10月12日
岡山弁護士会 会長  的  場  真  介


給費制の存続を求める会長声明
現在,政府の「法曹の養成に関するフォーラム」において司法修習生の給費制の存廃問題が論議されている。
現在給費制に代わるものとして検討されている貸与制については?「違法の疑い」があり,?司法修習生に著しい困苦を強い,?若者の司法離れに拍車をかける ものであり,?信頼性の高い弁護士制度を国民のために整備し提供する国の責務についての自覚を忘れた提案であるから,当会は,これに強く反対するものである。
1,貸与制移行に違法の疑いありとする理由
(1)国家公務員に労働基準法は適用はない。(※1)司法修習生は国家公務員ではないが国家公務員に準じた立場とされ(※2),労働基本法が直ちに適用されることはないと考えられている。しかし,国家公務員といえども「憲法上の労働者」(※3)だから,最低民間並みの保障は与えなければならない。国家公務員に労働基準法が適用されなくてよいとされるのは,一般的には国家公務員には民間より手厚い身分保障制度が提供されているからだとされる。司法修習生にはこれまでは給費制があったから労働基準法69条をわざわざ適用して保護する必要もなかっただけである。しかし,給費制をやめて無給(貸与制)にするとなると話は別である。
(2)民間企業が新入社員に「新人研修の間の生活資金を無利子で貸してあげるから入社後1年間は無給で新人研修を受けて。」というようなことを言うと,労働基準法第69条違反や24条違反ということで叱られることになる。労働基準法第69条は「使用者は,徒弟,見習,養成工その他名称の如何を問わず,技能の習得を目的とする者であることを理由として,労働者を酷使してはならない。」という社会のルールであり,要するに「研修中」「見習」だからといって労働の対価を与えずに労働させてはいけないということである。
(3)最高裁が修習生に修習専念義務を課し,アルバイトも禁止している以上,司法修習生を1年間も拘束し,その間に転勤まで求めながら,何らの給与も与えないということになると,民間労働者についての労働基準法第69条の基準すら下回るような過酷な扱いをすることになるから,労働基準法69条に準じたルールに照らして違法とされる疑いがある。
(4)司法修習生は,学生と労働者との中間的な存在であり,単純にどちらと割りきることは困難だが,少なくとも労働者の一面を完全には否定できない以上(検察官の不足を補う方法として修習生に公判立会の権限を与えることさえ検討されたことがある。※4),上のように考えるべきである。
このような考え方に対しては,司法修習生は学生の色彩が強いのであり,学生と見るならば奨学金のような貸与制でよいという反対もあるが,2つの理由からこの考え方はとれない。
1つめの理由は,昭和22年に司法修習制度ができた時の時代背景である。制度の設計者は,アメリカのロースクール制度を強く意識したはずである。ロース クールを出た者は弁護士登録が可能になり,弁護士としてキャリアを積んだ者の中から優れた者を判事や検事に登用するというシステムを意識しつつ,弁護士資格を得させる時期を敢えて2年間遅らせて,そこに統一修習期間を置いたわけである。弁護士として収入を得る可能性を国の政策で2年間を奪うという側面がある以上は,生活補償を与えることになるのは自然な判断だったのではないか。そして,このような自然な判断を今日修正する合理性はないのではないか。(※ 5)
2つめの理由は,修習生の修習専念義務が重く,アルバイトが禁止され,遠隔地への転勤が予測されていることなど時間的,場所的な拘束の程度が著しいことがあげられる。
(5)給費制を維持しつつ給費額を減額するような選択もありうるが,生活補償に必要な額,どの程度の修習専念義務を負わせることが必要か,生活資金の貸与との組み合わせなどを慎重に考慮すべきである。
(a)ドイツの例
ドイツ(ベルリン)では給費制(月10万円程度らしい)であるが,修習専念義務とはいいながら,週8時間まで副業が認めており,法律家的な副業(弁護士事 務所の手伝い等)については,週10時間まで許可されるということである。十分な生活補償はできないことについては,専念義務を緩和してバランスをとろうとしているようにも見える。義務付けはそのままで貸与制に移行するといった議論はいかにも乱暴である。
(b)日本においては,修習専念義務は堅持されるべきである。我が国においては,修習専念義務は堅持されるべきである。短縮された1年という修習期間はあまりにも短く,修習生が学ぶべき事はあまりにも多いのであって,アルバイトをしながらの片手間の修習で到底間に合わない。そうだとすれば,生活補償に十分な水準の給費制を維持するのが最善策であり,その限りでは生 活資金の貸与との組み合わせは不要である。
2,司法修習生に著しい困苦を強い,若者の司法離れに拍車をかけるものである。
(1)2010年(平成22年)の新司法試験の合格者(2074名)の平均年齢は29.07歳であり,法科大学院を卒業した者である。既婚者も少なくない。既に実社会で活躍した人材も含まれている。
(2)「300万円貸してあげるから,それで修習の1年間を生活してください。貸した資金は5年据え置きで10年かけて返してくれたらいいから」という貸与制はしょせん借金でしかない。修習専念義務を課せられるため1年間「無職」の借金生活者になることを余儀なくされ,実務修習地次第では遠隔地への転勤(場合によっては単身赴任)を強いられる司法修習生への補償が「貸与制」という名の借金だけというのはあまりに過酷である。4年制大学卒業後,最低2年 (多くの者は3年)以上法科大学院で勉学してきた修習生は平均で300万円,多い人は1200万円もの奨学金債務を抱えている。それでも数年前までは法曹 資格を得て法律事務所に就職すればこういった借金も返せたであろう。しかし,現在は弁護士激増のあおりで一括登録時点で就職先がないため立ちすくんでしま う者(登録未了者)が1割以上出ており,しかも登録している者の中にも「軒弁(※5)」「即独(※6)」と呼ばれる「イソ弁(※7)」以外の態様の者がおり,彼らが十分な収入を得ていけるとは考えにくい。加えて,就職ができた者が手にできる「イソ弁」の給料額も一部で暴落している。こういった中から奨学金 等の借金の返済に困難をきたす者が少なからず出る可能性がある。苦労して法曹資格を得てもちっとも報われないという残酷話である。
(3)多くの才能と情熱ある修習生が就職難に苦しんでいる。司法試験の合格者はずっと年500人くらいのペースであったのが,年2000人程度に増加した 結果であり,彼らの怠慢のせいにすることは適切ではない。司法修習生の就職難をもたらした弁護士人口の激増は,修習生を雇って教育する側の既存弁護士の経営基盤の弱体化をもたらしており,それが修習生の就職難をさらに悪化させるという悪循環に陥っている。その結果,法科大学院の志願者も減っている。優秀な若者が法曹に大きな夢を抱いてどんどん集まってくるという状況ではない。法曹人口の増加によって,競争を生み出し,競争によって安価で良質な法的サービス が供給されるという目論見が外れたのは明らかである。弁護士という職業の魅力自体が揺らいでおり,競争参加者が減少することで,適正な競争を成り立たせる 条件自体が失われつつある。給費制廃止は,法曹志願者の減少にますます拍車をかけ,法曹養成制度の危機をさらに深刻化させる愚行である。
3,信頼性の高い弁護士制度を国民のために整備し提供する国の責務
(1)司法修習制度を国費で行うのは,実務経験を積ませ,社会正義と人権の守り手に鍛え上げるための最終過程だからである。弁護士が特別偉いわけでも何でもないが,ただ弁護士は社会とその構成員を社会生活上のリスクから守るための実力装置として訓練され社会の中に配置される存在である。同じく国民をリスクから守るための基本的なインフラとしては医師,自衛官,警察などがあるが,このような安全のための基本的なインフラについては国(警察については地方自治体)が整備して国民に提供してきた。
弁護士制度については国が責任をもって整備しなくても大丈夫な状況が生まれたのかというとそのような状況にはなっていない。それどころか,複雑化する社会の中で,その必要は増大している。社会の仕組みから事前規制の仕掛けが解除され,事後規制の社会に舵を切る一連の政策変更があったことによって,国民が新 種の社会リスクによるトラブルに巻き込まれる危険が増すことが確実に予測され,これへの対処も弁護士増員の理由のひとつであった。一方で,国民のリスクの増大が予測される重大な政策変更をし,その手当てとして弁護士大増員を決めておきながら,他方で法曹養成制度を支えていた給費制を切り捨てることは,国民の安全を守るという基準に照らすと正反対のことをやろうとしているようにも見える。「司法試験合格者を大増員すると司法修習にかかる費用が増大して負担が大変だから,給費制はもう止めよう」という話はかなり短絡的であり,大きな司法を目指す本来の司法制度改革の理念とも文脈が違う議論のようである。また,少なくとも自然界では環境がよくなって餌が増えたときに,動物は大増殖するのが摂理であり,環境が悪いときに何かの間違いで大増殖をした種は大飢餓に陥るのである。残念ながら我が弁護士業界は長期の不況の最中に大増殖のスイッチを入れるとどういうことになるかを身をもって実験しつつある。そして,飢餓の影響をまともに受けているのが我々の卵であり雛鳥たちである。今給費制を打ち切ることは,正義感に溢れ才能豊かな若者たちを大虐殺するような愚行であると考 える。
(2)我々が住むこの社会は,社会的なトラブル(犯罪,インチキ商法,投機的取引,多重債務などなど)に遭遇するリスクにあふれている。そして,飽くなき人間の欲望は次から次に新種のリスクを生み出していき,インターネットなどによって瞬く間に社会に蔓延し甚大な被害を発生させることも多くなっている。新たな社会リスクにもっとも敏感に感知して動くのが弁護士であり,リスクへの応急処置をしながら,場合によっては立法・行政を動かしてリスクを押さえ込もうという働きをすることを期待されている。サラ金地獄,豊田商事事件,霊感商法,オウム真理教事件など激甚な社会リスクが発生した際に弁護士が果たした役割 を想起されたい。弁護士がそのような役割をごく自然に果たせるのは,その弁護士の資質や考え方もあろうが,実は司法修習時代に植え付けられた使命感に従って行動している部分も少なからずある。
4,大震災と給費制維持
(1)今回の大震災にあたり,日弁連は二重ローン解消などを強く提唱している。また,各地から弁護士が被災地に集まって,被災地の弁護士と共に懸命に法律相談活動を展開している。
(2)未曾有の大震災と原発被害によって発生した強烈な衝撃波は,これを放置すれば被災地に深刻な企業倒産,多重債務被害,家庭崩壊など連鎖的に引き起こし,被災地を食い物にしようとする犯罪者,悪徳業者までがからんで,惨劇の第二幕が開いてしまう。これを何とか食い止める闘いが続いている。東北地方に は,冷害など天災の度に多数の餓死者等を発生させた悲しい歴史がある。そういった悲劇だけはなんとしても防がなければならない。医師が疫病の蔓延による悲劇を防ごうと活動しているのと同じように,弁護士も悲劇の拡大を食い止めるための活動をしなければならない。
(3)大震災が今後日本各地に派生させる様々な社会病理の激増を予見してこれに対処する弁護士の活動が必要な時に,「震災被害と財政難の中,税金を投入するための国民の理解が得られない。」といった理由で給費制廃止の議論をしなければならないのは何とも情けないことである。
(4)こういう時にこそ,昭和22年に司法修習制度ができてから永々と給費制を維持して築き上げてきた弁護士制度が社会のためにどのように機能してきたかを検証されてしかるべきである。(5)私たちの岡山弁護士会からも遠く離れた東北の被災地に相談員を送る計画があり,47人が志願して待機している。弁護士は自分達を大切に育んでくれた社会のことを決して忘れないのである。
(6)司法修習制度が始まったのは,昭和22年のことと聞いている。焦土と化した我が国をこれから復興していこうとした時,先人は,弁護士制度を含む司法を再構築する必要性を重視して乏しい国家財政にもかかわらず,給費制で司法修習制度を創設した。今回の大震災は,多くの国民の幸福を破壊し,しかも今なお その破壊は進行中である。
司法修習生の給費制を維持するかどうかについて世論に配慮することももちろん必要だろう。しかし,国民の安全を守るための基本的インフラを整備して提供する国の責務について国の見識と断固たる意思を示すべきである。
5,他の制度との比較?医師臨床研修制度の場合
(1)医師臨床研修制度
(a)国が研修に国庫支出をする制度はいくつかあるが,その中でも医師臨床研修制度(但し,国から直接研修医に支給されるのではなく,研修先医療機関に対し,研修医に対して研修を実施し,給与を支給するために補助金が支給されている。)を取り上げて比較してみたい。(※8)
(b)研修医は既に医師なのであり法曹の卵にすぎない修習生と同列に論じることは慎重にしなければならないが,研修医が既に医師だからといって,「研修制 度を修了した医師」という個人資格を取得するための給料を国庫から出せるということには直ちにならないから,研修医と司法修習生を比較する有用性は失われ ない。なお,有給の研修医制度を構築する際には既に古くからあった司法修習制度も参考にされたようである。
(c)医師の場合は,国家試験合格後2年間研修医として臨床を体験することが必要とされており,現在は月30万円程度の給与を得ながら研修医として勤務することになる。この勤務医の給与の原資は国庫から支出されている。研修医は,臨床研修専念義務(医師法16条の3)を負う。2004年(平成16年)までは,研修医は無給であり,当直医などのアルバイトをして生計を立てる者が多かったが,医師臨床研修制度が見直され,研修専念義務が新設されるとともに有給となった。(なお,「研修医の身分の安定及び労働条件の向上に努めること」 などを求めた平成12月11月の第150回国会参議院国民福祉委員会附帯決議が参考になる。また「新医師臨床研修の基本3原則」という中に「アルバイトせずに研修に専念できる環境を整備」という項目がある。)
(2)制度の比較
(a)医師制度も弁護士制度も,国民にとって基本的な社会インフラであるがゆえに,国家がその制度の整備に直接に責任を持ってきた。
(b)「アルバイトせずに研修に専念できる環境を整備」していこうという新医師臨床研修と比較しても,司法修習の貸与制は,あまりにも劣悪な扱いであり,国の制度として整合性があるかも疑問である。
(c)司法修習制度の制度が作られたのは,法曹資格を付与する前に一定の実務修習・臨床経験を積ませることが不可欠と考えられたからである。研修医の場合も臨床経験を積ませようという制度の目的は共通である。
研修医制度ができる以前は,インターン制度だったが,インターン生は国家試験前の学生でありインターンが国家試験の受験要件とされた。インターン制度は廃止され,無給の研修医制度に代わり,それが平成16年から有給の研修医制度に変わった。ここに臨床体験を積ませるための研修制度であっても無給ではいけないという理解の深化が見てとれる。
有給の研修医制度はできてからまだ日が浅い制度であるが,大震災だからこれを無給に戻すべきだという議論も聞かない。
6,結語
当会は,貸与制については,以上述べたとおり,?「違法の疑い」があり,?司法修習生に著しい困苦を強い,?若者の司法離れに拍車をかけるものであり,? 信頼性の高い弁護士制度を国民のために整備し提供する国の責務についての自覚を忘れた提案と考えるから,給費制の存続を強く求めるものである。
2011(平成23)年7月13日
岡山弁護士会 会長  的  場  真  介

脚注
※1 国家公務員法附則16条は,「労働組合法,労働関係調整法,労働基 準法,船員法,最低賃金法,じん肺法,労働安全衛生法及び船員災害防止活動の促進に関する法律並びにこれらに基づいて発せられる命令は,第2条の一般職に 属する職員には,これを適用しない。」と定めているので,国家公務員に労働基準法の適用はない。しかし,司法修習生については,国家公務員ではないのだか ら,労働基準法の適用を否定する明確な根拠はない。
※2 最高裁のホームページでは,「司法修習生は,国家公務員ではありませんが,これに準じた身分にあるものとして取り扱われ,国から一定額の給与が支給されます(裁判所法第67条第2項)」と説明されている。
裁判所法第67条第2項は,「司法修習生は,その修習期間中,国庫から一 定額の給与を受ける。」と規定するだけである。
※3 全農林警職法事件・最大判昭和48年4月25日刑集27巻4号547頁 ※4 昭和23年03月29日の衆議院司法委員会における佐藤政府委員の発言
検察庁の人手不足対策に関して,「司法修習生が区檢察廳の立会をなすこと ができるようにするとか,あるいは地方檢察廳の立会までもできるようにしたらどうか,というような意見もありますので,その点については,目下研究をいたしておる次第であります。」このような政府委員の発言は司法修習生が純粋な学生とは異質な存在であったことを示している。
※5 「司法修習生=非法曹=学生」→「学生=無給」→「奨学金=貸与制で十分」という推論は,元々「司法修習生=非法曹」である必然性がない(「司法修習生=非法曹」はある法曹養成政策を選択した結果でしかない。)ことを見落としている。
司法修習生の「統一修習」は,法曹一元的な色彩を持つ一方で,経験を積んだ弁護士の中から判事・検事を登用するシステムを忌避するための妥協として生まれた制度という見方もあるが,法曹の質を高めるうえでは優れた制度であった。しかし,給費制の存廃が再検討されている時期なのであるから,キャリアを積んだ 弁護士の中から判事・検事を登用する法曹一元システムを本格的に導入することをあらためて正面から議論し直されてよいのではないか。
※6 「軒先を借りる弁護士」の意。「ノキ弁」とも書く。既存の法律事務所の一部を借りて机と電話を置き,営業を始める新米弁護士。給料は出ない。
※7 新規登録と同時に独立開業する弁護士。
※8 弁護士事務所に勤めている弁護士のこと。弁護士事務所に居候している弁護士なので「イソ弁」という説などがある。
※9 研修医制度については,厚生労働省 医師臨床研修制度のホームページを主に参考にした。ttp://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/rinsyo/

修習生給費制会長声明
平成22年11月26日、司法修習生に対する貸与制の施行を1年間停止し、給与の支給を行うこととする「裁判所法の一部を改正する法律」が成立した。これにより昨年採用された新64期司法修習生は、従前と同様、給与の支給を受けられることになった。
当会は、署名活動、地元選出国会議員への要請活動、緊急市民集会など、司法修習生に対し給与を支給する制度(給費制)の存続に向けて運動を展開してきたところ、今回の法改正は、完全な給費制の復活とはならなかったものの、これまでの当会の運動方針に沿うものである。当会の運動方針をご理解いただき、署名等にご協力いただいた県民の皆様、報道等にご協力いただいたマスコミの皆様、問題の本質をご理解いただき、裁判所法の改正にご尽力いただいた各政党及び国会議員の皆様に心より感謝申し上げる次第である。
しかしながら、今回の法改正による給費制の延長期間は1年間のみであり、その附帯決議においては、その間に「法曹の養成に関する制度の在り方全体について速やかに検討を加え、その結果に基づいて順次必要な措置を講ずること」が求められている。
そこで、当会としては、政府及び最高裁判所に対し、司法修習生に対する財政的支援の在り方や、法曹養成制度全体の在り方を検討する組織を直ちに設置するとともに、法曹が、国が費用を支出してでも養成すべき社会資源であることに鑑み、法曹志望者が経済的理由から法曹への途を断念することのないよう、平成23年11月以降も給費制が維持・存続される措置をとるよう、強く求めるものである。
2011(平成23)年1月12日
岡山弁護士会 会長  河 村 英 紀


秋田弁護士会所属弁護士殺害に関する会長声明
本年11月4日,秋田弁護士会会員で日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員長を務めていた津谷裕貴弁護士が,同弁護士の自宅を訪れた男性により,刃物で刺され死亡するという事件が発生した。事件の詳細は明らかでないものの,報道によると,その男性は,かつて津谷弁護士が受任していた調停事件の相手方であったとのことであり,弁護士業務に関連する事件である疑いが強い。
また,本年6月にも,横浜弁護士会会員の前野義広弁護士が,事件の相手方に法律事務所内で刃物で刺され死亡するという事件が発生している。
このような行為は,基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士の職務を暴力でもって妨害しようとする卑劣極まりないものであり,司法制度や法秩序に対する重大な挑戦であって断じて許されない。
当会は,津谷弁護士の御冥福を祈り,その御遺族に対し深い哀悼の意をささげるものである。そして,このような暴力による卑劣な弁護士業務妨害行為に対して毅然と闘い,今後も,弁護士の使命である基本的人権の擁護と社会正義の実現のため全力を尽くす決意であることをここに表明する。
2010(平成22)年11月10日
岡山弁護士会 会 長  河 村 英 紀

給費制に関する会長声明
平成22年11月から、司法修習生に給与を支給する給費制が廃止され、必要な者に生活資金を貸与する貸与制が実施されることが予定されている。当会は、平成21年9月9日、給費制の継続を求める会長声明を出したが、いよいよ現実に給費制が廃止されるのが目前に迫ろうとしている現時点で、司法修習生の給与給費制を堅持すべきことを、改めて強く求めるものである。
1給費制の存在意義
裁判官、検察官、弁護士になるためには、司法試験に合格後に、司法修習を終えることが必要とされているところ、この司法修習は、裁判官、検察官、弁護士のいずれの道に進む者に対しても同じカリキュラムで行われ、法律実務に関する知識等のみならず、法曹としての高い職業意識と倫理観の修得も目的としている。そして、司法修習生には、修習に専念すべき義務が課されている。
司法修習生に対する給与給費制は、この司法修習制度の創設以来、これと不可分一体のものとして採用され、すべての司法修習生が貧富の差に関係なく司法修習に専念することを可能にし、法曹三者の統一修習を経済的側面から支えてきたものであり、この給費制があればこそ、あらゆる経済的階層から有為で多様な人材が法曹界に輩出されてきたのである。
2給費制廃止の弊害
法科大学院制度が導入され、法曹を志す者は司法修習生となるまでに多大な経済的負担を追っている現状の下で、給費制を廃止すると、司法修習中にも更に約300万円の負債を生じさせることになるため、多くの有為の人材が経済的事情により法曹への道を断念する事態につながり、経済的富裕層のみが法曹になっていく社会を現出させかねない。
また、給費制は、法曹三者、とりわけ弁護士の公共性・公益性を担保する役割を果たしてきた。弁護士・弁護士会による各種の公益活動を支える弁護士の使命感は、給費制の下での司法修習制度によって醸成されてきたものであるところ、給費制の廃止は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とすべき弁護士の在り方をも変質させかねない。
以上のとおり、給費制を廃止することは、高い専門的能力と職業倫理を備えた法曹の養成を担ってきた司法修習制度の存続を危うくし、ひいては司法制度の利用者である国民の利益を損なうものであることから、当会は、司法修習生の給与給費制を堅持することを強く求めるものである。
2010(平成22)年7月12日
岡山弁護士会 会長  河 村 英 紀


公訴時効廃止・延長に反対する会長声明
殺人等の重大犯罪について公訴時効を廃止・延長し、かつ、その遡及適用を行うことを内容とする刑事訴訟法の改正案は、平成22年4月14日に参議院で可決され、現在、衆議院にて審議が行われている。しかしながら、当会は、下記の観点から同法案には反対するものである。
1 被疑者・被告人及び弁護人の防御権の観点からの問題点
公訴時効制度は、一見、犯罪者に逃げ得を許すかのような制度にも見えるが、冤罪防止のために極めて重要な機能を有している。すなわち、事件発生から起訴までに長期間を要した場合、時間の経過により、?証人の記憶が薄れたり、証人が死亡したり、事件の現場の状況が大きく変わったりすることにより、反対尋問等による防御権の実質的保障の基盤が失われる、?被告人・被疑者に有利な証拠が散逸する(なお、捜査機関が被疑者・被告人に有利な証拠を積極的に収集・保全することは期待できない)、といった事態が生じ、冤罪防止のためにも重要な権利である被疑者・被告人及び弁護人の防御権が著しく侵害される危険があるところ、公訴時効はかかる危険を緩和する重要な機能を有しているのであり、その廃止・延長は、かかる重要な機能を大きく損なうものである。上記のような刑事司法の実情と公訴時効制度の存在意義が国民に十分に説明されていない現状からも、重大犯罪について公訴時効の廃止・延長を行うことには大きな問題がある。
なお、科学的証拠の活用により、事件発生から長期間を経た後の起訴事案についても冤罪の危険は軽減されるという見方もあるが、当時信頼できるとされた科学的証拠の信用性が後に否定されることもあり、したがってかかる見方が必ずしも正しいとは言えないことは、いわゆる足利事件の教訓からも明らかである。
2 立法事実及び比較立法の観点からの検討
公訴時効期間については、既に平成16年の刑事訴訟法改正において一定の延長がなされているところ、それ以後の約6年の期間に、再度の、かつ、一部廃止が含まれる大幅な改正が必要となるような、我が国における社会事情の変化が存するかについては、疑問である。
また、諸外国の立法例では、公訴時効が存在しない国もある一方で、例えばフランスでは公訴時効がない犯罪は集団殺害など人道に対する罪に限られ、ドイツでも公訴時効がないのは民族虐殺などの犯罪に限られている。これら立法例との比較検討の見地からも、我が国において殺人一般について公訴時効を廃止するに当たっては、慎重な検討が必要である。
3 遡及適用の問題点
憲法39条は、直接的には実体的刑罰法規の遡及適用を禁止するものであるが、訴訟規定であっても、被疑者・被告人の実質的地位に直接影響を持ち、したがって、実体法と密接な規定については、遡及適用は許されないと考えるべきである。また、公訴時効については、一定期間の経過によってその可罰性が減少するという実体法上の意味もあるところ、かかる公訴時効の実体的側面に鑑みると、公訴時効を廃止・延長する法案を遡及的に適用することは、実体的刑罰法規の遡及適用そのものということになる。
したがって、重大犯罪について公訴時効を廃止・延長する法案を、その施行の際に時効が完成していない事件に遡及適用することは、憲法39条に違反する疑いが強い。
4 犯罪被害者及びその遺族との関係
重大犯罪について公訴時効が廃止・延長されたからといって、犯人が直ちに逮捕・処罰されるわけではなく、犯罪被害者及びその遺族の立場が強化されるわけでもない。つまり、犯人が逮捕されないままの犯罪被害者及びその遺族にとって必要なのは、公訴時効の廃止等より、むしろ、初動捜査を含めた刑事警察の捜査能力の向上と、具体的な経済的・精神的な支援の施策や措置である。犯罪被害者及びその遺族に対する、社会的・精神的な援助を中心とする総合的な対策を後回しにして、重大犯罪についての公訴時効の廃止・延長と、その遡及適用を先行的におこなうことは、犯罪被害者及びその遺族への支援策としても、本末転倒で安易な弥縫策でしかない。
以上の観点から、当会は、重大犯罪について公訴時効を廃止・延長し、かつ、その遡及適用をおこなう法案に反対するものである。
2010(平成22年)4月21日
岡山弁護士会 会 長  河 村 英 紀


国選付添人制度の拡充を求める会長声明
1 少年審判において、弁護士付添人は、非行事実の認定や保護処分の必要性の判断が適正に行われるよう、少年側の立場から手続きに関与し、家庭や学校・職場等の環境の調整を行い、少年の立ち直りを支援する活動を行っている。
少年審判において、少年を受容・理解したうえで、少年に対して法的・社会的な援助を行い、少年の成長・発達を支援する弁護士付添人の存在は、少年の更生にとって極めて重要である。
子どもの権利条約第40条2項(b)は、「刑法を犯したと申し立てられた全ての児童は、…防御の準備及び申立において弁護人(又は)その他適当な援助行う者をもつこと」と規定し、第37条(d)は、「自由を奪われた全ての児童は、…弁護人(及び)その他適当な援助を行う者と速やかに接触する権利を有する」と規定しており、身体拘束を受けた少年には必ず弁護士と接触する権利が保障されなければならないとしている。
しかしながら、現実には多くの少年やその保護者には、弁護士付添人の費用を負担する資力がなく、仮に保護者に資力があったとしても、少年のために費用を負担することには消極的な場合がほとんどであって、国費により弁護士付添人を付する制度でなければ、少年が弁護士付添人の援助を受ける権利は実質的に保障されることにならない。
2 2008年(平成20年)に審判に付された少年は、54,054人、そのうち観護措置決定により身体の拘束を受けた少年は、11,519人であったが、弁護士である付添人が選任されたのは、4,604人で、身体が拘束された事件のわずか40パーセントに過ぎない。 また、現行の国選付添人制度は、対象事件を重大事件に限定しているため、同年の対象事件に該当する少年の数は707人で、身体の拘束を受けた少年の6パーセントに過ぎないうえ、実際に国選付添人が選任された少年の数は、422人(4パーセント)であった。
刑事被告人の98パーセント以上に弁護士の国選弁護人が選任されていることと対比すると、あまりにも低率といわざるを得ない。
3 日本弁護士連合会は、弁護士付添人の援助を受ける少年の権利を保障するため、全国の会員から特別会費を徴収し、弁護士付添人の費用を援助する付添援助制度を実施している。
これにより、弁護士付添人選任数は従来に比べ増加するに至っている。
しかし、付添援助制度は、弁護士会員がいわば自腹を切って支えている臨時的・暫定的なものであって、恒常的なものと位置づけられるものではないし、選任件数の増加により財源の枯渇するおそれも生じている。
4 よって、当会は、現行の国選付添人制度を拡充し、少なくとも身体の拘束を受けた少年の全事件に弁護士付添人が選任されるよう、政府に対し少年法を早急に改正することを求める。
2010(平成22)年2月10日
岡山弁護士会 会長 東 ?司←?は最初から

【転載】余命3年時事日記 2349 ら特集岡山弁護士会⑤

2018年02月04日 | 在日韓国・朝鮮人
岡山弁護士会
ttp://www.okaben.or.jp/index.html

死刑執行に関する会長声明
2013(平成25)年12月12日、東京拘置所、大阪拘置所において、それぞれ1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。前回の死刑執行の際にも、本年9月17日付で死刑執行に抗議し、死刑に関する情報を開示した上で、国民的議論を行い、死刑制度の見直しを検討するよう求める「死刑執行に関する会長声明」を発したところである。
にもかかわらず、本年になってから4回目、前回執行から3か月という短い間に連続して死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。最近では、死刑廃止又は事実上停止している国が140か国であるのに対し、死刑存置国は58か国に過ぎず、2013年(平成24)??年に実際に死刑を執行した国は我が国を含め21か国しかない。国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けており、本年5月31日に発表された国連拷問禁止委員会の総括所見においても、我が国に対し、死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告を受けている。
日本弁護士連合会は、本年2月12日、谷垣法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまで全ての死刑の執行を停止することなどを求めた。
当会においても、本年2月9日、「死刑を考える日」を開催し、日本における死刑制度の問題点について広く考える機会を設けたところである。
このように、当会及び日本弁護士連合会が求める死刑制度に関する十分な国民的議論とその前提となる死刑制度に関する情報公開が全くなされないまま、死刑の執行が続いていることは極めて遺憾である。
今回の執行は、死刑判決確定から執行までの期間が一方は18年6か月であり、他方は1年4か月しかたっていない。この執行までの期間の長短について法務省からは何ら具体的な説明もなく、執行対象者の選定基準や死刑判決確定から死刑執行までの経過の不透明さが改めて浮き彫りとなった。
当会は、改めて政府に対し、死刑の執行を停止し、わが国における死刑確定者の処遇、死刑執行対象者の決定手続と判断方法、死刑執行の具体的方法とその問題点等に関する情報を開示し、死刑存廃について国民の広範な議論を踏まえた上で、死刑制度の見直しを検討するよう、重ねて強く要請するものである。
2013(平成25)年12月13日
岡山弁護士会  会長 近 藤 幸 夫

特定秘密保護法案の参議院採決強行に抗議し,
改めて同法の廃止を含む見直しを求める会長声明
当会は,臨時国会において審理されていた特定秘密保護法案について,国民の知る権利やプライバシーの権利,報道の自由を侵害し,国民主権原理に反するものであるから成立に強く反対する立場から,本年10月19日に同法案に反対する会長声明を発し,11月9日には市民集会を実施し,11月20日及び12月4日に街頭宣伝活動を行い,同法案の危険性について訴えてきた。
そして,11月26日の衆議院の採決強行に際しては,衆議院の審議において多くの問題点が明らかとなり,福島市で行われた地方公聴会においては8名全ての公述人が同法案に反対であったにも関わらず,十分な修正審議がなされず,同法案に対する懸念がぬぐい去られることのないまま採決が強行されたことに抗議し,参議院において徹底した審理を求める会長談話を発したところである。
この間,法学者,外国人記者を含む報道関係者,映画監督等表現の自由の担い手とされる方々や国連人権高等弁務官からも続々と反対,懸念の表明がなされ,12月3日に行われた参議院国家安全保障特別委員会の参考人質疑において与党側の参考人も慎重な審理を求める発言があるなど,国の内外から同法案に対する懸念,不安が高まっている。にも関わらず,良識の府であるはずの参議院においても,2週間にも満たない短い審理期間しかなく,何らの修正もなされないまま,衆議院に続いて採決が強行され,同法案が可決,成立したことは極めて遺憾であり,強く抗議する。
同法案は成立したものの,国民の同法に対する懸念や問題点は消滅するわけではない。
当会は,政府及び国会に対し,改めて,同法が国民の重要な権利を侵害し,国民主権原理に反するものであることから,今後,廃止を含めた抜本的見直しを行うよう強く求めるものである。
平成25(2013)年12月7日
岡山弁護士会 会長 近 藤 幸 夫

司法修習生に対する給費制の復活を求める会長声明
1 2013年(平成25年)9月10日,平成25年度司法試験の結果が発表され,2049名が合格した。これらの者の大半が第67期司法修習生として最高裁判所に採用され,当会においても,岡山地方裁判所配属の42名の司法修習生を司法修習指導のため迎え入れた。
しかし,新第65期司法修習生から,「裁判所法の一部を改正する法律」(平成16年法律第163号)が施行され,司法修習期間中の生活費等の必要な資金が国費から支給される給費制が廃止され,これを貸与する制度(以下「貸与制」という。)に移行している。
2 当会は,2011年(平成23年)7月13日には「給費制の存続を求める会長声明」,2013(平成25年)1月23日には「司法修習生に対する給費制の復活を求める会長声明」を発し,同年5月13日には,法曹養成制度検討会議の中間的取りまとめに対するパブリックコメントとして,司法修習生に対する給費制の復活を求めるなど,司法修習生に対する貸与制に反対し,給費制の復活を求める活動を続けてきた。
3 にもかかわらず,法曹養成制度検討会議は,同年6月26日,「法曹養成制度検討会議取りまとめ」(以下「取りまとめ」という。)において,貸与制を前提とした上で,(1)分野別実務修習開始に当たっての転居費用の支給,(2)通所圏内に住所を有しない者に対する集合修習期間中の司法研修所への入寮,(3)司法修習生の兼業許可に関する運用の緩和の各措置を,可能な限り第67期司法修習生から実施すべきであるとした。
そして,今後,司法修習生に対する経済的支援については,法曹養成制度検討会議の後継組織である法曹養成制度改革推進会議の下に設置された法曹養成制度改革顧問会議において,司法修習生の地位及びそれに関連する措置の中で検討されることになっている。
4 しかし,法曹養成制度検討会議が「取りまとめ」において指摘した各措置は,あくまで現行法下における運用改善による応急措置的な,極めて限定的な方策に過ぎず,司法修習生に対する経済的支援としては,給費制を復活することが不可欠である。
(1)そもそも,戦後一貫してわが国の司法は,日本国憲法の下で三権の一翼として国民の人権・権利擁護のため重要な役割を求められ,司法修習は,この司法を担い司法をつかさどる法曹である裁判官・検察官・弁護士の養成のための統一修習制度として制度化された。
そして,これら法曹の資格要件としての司法修習生の地位の重要性に鑑み,司法修習に人材を吸収し,また司法修習生に修習に専念させる等の見地から,特に一定額の給与が支給されることとされていたものである。
かかる日本国憲法の要請や社会的背景に何ら変わりはなく,また司法修習生は,司法の担い手たる法曹の予定者として,国の厳格な規律の下,国の権力行使に関与し,国民の権利義務に関わる法曹の職務そのものに密接に関連する準備過程に従事していることにも何ら変わりはない。
(2)また,日本弁護士連合会が行った「新第65期司法修習生に対する生活実態アンケート」(回答者数717通,回答率35.8%)及び「第66期司法修習生への修習実態アンケート」(回答者数850通,回答率41.8%)において,多数の司法修習生から,「司法修習配属地で住宅を借りるにあたり契約を断られた」,「貸与金返済の経済的不安感から,書籍購入や医者にかかることを自粛した」等の声が寄せられている。このように,司法修習生が司法修習に専念するに当たり,貸与制が大きな妨げとなっている。
(3)さらに,司法修習生の多くは,大学及び法科大学院の奨学金等の返還義務を負担しており,貸与制はその返還義務を加算することになり,法曹としてのスタート時点において多額の債務を負担することとなる。
上記アンケートにおいても,貸与制に移行したことによる経済的な不安等の理由から,司法修習生となることを辞退しようと考えたとの回答が,新第65期司法修習生のうち174名,第66期司法修習生のうち111名から寄せられた。
貸与制が今後とも継続されるのであれば,有為な人材が経済的事情によって法曹への道を断念する事態がさらに悪化し,法曹志願者数が減少する一方である。かかる事態は,2012年(平成24年)6月1日付け衆議院法務委員会における「経済的事情によって法曹への道を断念する事態を招くことがないようにする」との附帯決議に反しており,かかる事態を放置すれば,国民の人権・権利を擁護する担い手としての司法そのものの弱体化は必至である。
5 以上の理由により,当会は,法曹養成制度改革推進会議及び法曹養成制度改革顧問会議を含め,国に対し,一刻も早く,司法修習生に対する給費制を復活し,新第65期司法修習生,第66期司法修習生及び第67期司法修習生に対しても遡及的に適切な経済的措置が採られることを強く求める。
平成25(2013)年12月4日
岡山弁護士会 会長 近 藤 幸 夫

特定秘密保護法案衆議院採決についての談話
当会はこれまで、特定秘密保護法案に対し国民の知る権利、プライバシーの権利等を著しく侵害するものであるとして、本年10月9日、同法案制定に反対する会長声明を発し、11月9日、憲法講演会を開催し、さらには11月20日、同法案に反対する街頭宣伝活動を行った。
パブリックコメントでも大多数の人が反対し、法案提出後も、言論団体を始め、様々な団体が反対声明を出し、昨日25日の福島市の地方公聴会では、7人全員が反対意見を述べるなど、国民の懸念が高まっている。このように国会の審議を通じて、むしろ同法案に対する懸念が高まり、国民の関心が高まるにつれ、同法案の問題点がよりいっそう明らかになって来ている。にもかかわらず、国民の懸念を払拭するだけの徹底した議論や、実効的な修正もなされないまま、衆議院国家安全保障特別委員会で強行採決した上,同日衆議院で強行採決することは、多数派の横暴というほかない。今後、参議院においては改めて徹底した審議を行う必要があり、同法案の問題点に鑑みれば、廃案にされるべきである。
平成25年11月26日
岡山弁護士会 会長  近 藤 幸 夫

「特定秘密の保護に関する法律」制定に反対する会長声明
2013年9月3日,内閣官房より,「特定秘密の保護に関する法律案の概要」が示された。現在,政府が法案化作業を進めており,閣議決定を経て,今月招集される予定の臨時国会に提出される可能性が高い状況にある。
特定秘密の保護に関する法律案(以下,「本法案」という。)は,2011年8月8日に公表された,秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議(以下,「有識者会議」という。)による「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」に基づくものである。当会は,2012年5月10日,「秘密保全法制に反対する会長声明」において,同報告書に基づく秘密保全法制の整備が憲法上の諸原理と正面から衝突するものであることから,その制定に強く反対する旨表明し,日本弁護士連合会(以下,「日弁連」という。)においても反対の意見表明がなされた。
今回,意見募集に付された本法案については,当会及び日弁連の見解に多少配慮していることは窺えるが,基本的には,上記会長声明及び意見書において,同報告書に対し行ってきた批判がそのまま当てはまるものである。
本法案について,日弁連は2013年9月12日付で「「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する意見書」を提出し,本法案について強く反対する旨表明しているが,当会も,同法案の制定には強く反対する。
本法案の問題点は以下の通りである。
1 国民主権原理や国民の憲法上の権利などに重大な影響を与えるおそれのある法案の立法化が是認されるためには,当該法案を必要とする具体的事情(立法事実)の存在が必要不可欠である。ところが,有識者会議において紹介された過去の情報漏えい事案については,既に必要以上とも言える対策が採られている。従って,秘密漏えいを防止するために新たな立法を必要とする立法事実は存在しない。
2 本法案では,秘密指定の対象となる「特定秘密」の範囲を,(1)防衛,(2)外交,(3)外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止,(4)テロ活動防止の4分野とし,別表で項目を挙げている。
しかし,これによって秘密指定できる情報の範囲は広範かつ不明確に過ぎる。第1号(防衛に関する事項)は,自衛隊法別表第4と同じであり,何ら限定していない。第2号(外交に関する事項)は,「安全保障」の範囲が無限定に広がるおそれがある。第3号(外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止に関する事項)は,「外国の利益を図る目的」「我が国及び国民の安全への脅威」「その他の重要な情報」など抽象的で曖昧な文言になっており,範囲が極めて不明確である。第4号(テロ活動防止に関する事項)は,政府がどのような「テロ活動」を想定するかについての歯止めもなく,政府の主観的な判断次第であることから,際限なく範囲が拡大する可能性がある。
また,法律案の概要は秘密指定について有効期間を定めているが,回数制限のない期間更新が認められており,秘密指定の乱発を防止する機能を果たすものではない。
3 本法案は,特定秘密情報を取り扱う者及びその家族,同居者について,一定の事項を調査することを可能にする,適性評価制度を導入している。
現実には,様々なリスク要因があっても情報漏えいしない者がいる一方で,リスク要因がほとんどなかった者が情報漏えいすることも起こりうる。従って,リスク情報を集積することにより漏えい事件を未然に防ぐことは困難である。
他方,適性評価制度により取得することが可能であるとされた情報には,特定秘密情報を取り扱う本人のみならず,家族及び同居人の,他人に知られたくない個人情報が相当含まれており,プライバシー侵害のおそれが高い。本法案では,対象者の同意を要件としているが,上司等から同意を求められた行政機関職員等が真に自由な意思に基づいて同意・不同意の判断を行うことは不可能であり,家族・同居人及び対象者の関係者については,この点,何ら配慮されていない。
4 本法案では,過失による情報漏えいも処罰するとしているが,過失犯を処罰対象とすることは,責任主義の原則からして極めて問題である。
さらに,本法案では,国会議員,裁判官等が故意又は過失により秘密情報を漏えいした場合には懲役5年以下の刑罰を科することにしている。しかし,特に国会議員については,議員間の自由な討論や政策秘書に調査させることもできなくなるなど,議会制民主主義が空洞化する恐れがある。
また,本法案では,既遂の場合だけでなく,未遂,共謀,独立教唆,煽動の各行為も処罰対象としている。また,秘密情報を取得する行為態様が,「人を欺き」「人に暴行を加え」「人を脅迫する行為」「財物の窃取」「施設への侵入」「不正アクセス行為」「特定秘密の保有者の管理を害する行為」である場合,行為者は処罰される。
このように処罰できる行為の範囲が著しく広範囲・不明確であり,過剰と言わざるを得ない。また,正当な取材活動をも萎縮させ,支障を来すことになりかねず,国民の知る権利を侵害する恐れが強い。
5 本法案については,「国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならない」等の拡張解釈禁止の規定が設けられ,また,報道の自由や国民の知る権利に配慮した条項を盛り込む動きもあるが,いずれも一般的・訓示的な規定に過ぎず,上記の懸念を払拭させるだけの実効的な措置が担保されているわけではない。
以上のとおり,日本国憲法の諸原理を尊重する立場から,当会は,本法案が立法化されることに強く反対するものである。
平成25(2013)年10月9日
岡山弁護士会 会長 近 藤 幸 夫

死刑執行に関する会長声明
2013(平成25)年9月12日、東京拘置所において1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。前回の死刑執行の際にも、本年5月15日付で死刑執行に抗議し、死刑に関する情報を開示した上で、国民的議論を行い、死刑制度の見直しを検討するよう求める「死刑執行に関する会長声明」を発したところである。
にもかかわらず、本年になってから3回目、前回執行から約4か月半という短い間に連続して死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。最近では、死刑廃止国が140か国(事実上の廃止国を含む。)であるのに対し、死刑存置国は58か国に過ぎない。日本政府は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けている。
日本弁護士連合会は、本年2月12日、谷垣法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまで全ての死刑の執行を停止することなどを求めた。
当会においても、本年2月9日、「死刑を考える日」を開催し、日本における死刑制度の問題点について広く考える機会を設けたところである。
このように、当会及び日本弁護士連合会が求める死刑制度に関する十分な国民的議論とその前提となる死刑制度に関する情報公開が全くなされないまま、死刑の執行が続いていることは極めて遺憾である。
今回、死刑執行がなされた死刑確定者については、一審で無期懲役判決が下されるなど死刑の適用について裁判官の中でも意見が割れた事例である。また、同確定者は執行時73歳であり、2008(平成20)年10月に公表された国際人権(自由権)規約委員会総括所見において、死刑の執行に対し、より人道的なアプローチを採るべきと指摘された高齢者にあたることからしても、死刑執行には慎重でなければならない事案であった。当会は、改めて政府に対し、死刑の執行を停止し、わが国における死刑確定者の処遇、死刑執行対象者の決定手続と判断方法、死刑執行の具体的方法とその問題点等に関する情報を開示し、死刑存廃について国民の広範な議論を踏まえた上で、死刑制度の見直しを検討するよう、重ねて強く要請するものである。
2013(平成25)年9月17日
岡山弁護士会 会長 近 藤 幸 夫

中国地方弁護士会連合会ホームページ開設のお知らせ
ttp://www.okaben.or.jp/news/index.php?c=topics_view&pk=1378693335
この度,中国地方弁護士会連合会(中弁連)のホームページが開設されました。
中弁連は,中国地方にある5つの弁護士会によって構成されている団体で,各県の弁護士会の枠を超えて広域的な活動をしています。 「宣言・決議」や中弁連が主催または共催する企画など,有益な情報が掲載されておりますので,ぜひご覧下さい。
ttp://chugoku-ba.org/index.html

憲法96条改正に関する会長声明
1  自由民主党は,憲法改正の発議を衆参各議院の総議員の過半数によって行えるように憲法96条を改正することを次期参議院議員選挙の争点とする意向を表明している。自由民主党のほかも,日本維新の会もこれに賛成する旨を表明している。
しかし,のちに述べるように,憲法96条を改正して発議の要件を緩和することには大きな問題があり,このような提案に強く反対する。
2  民主的過程を経て選ばれた国家権力であっても,権力が濫用され国民の基本的人権が侵害されるおそれがある。そこで,憲法は,国家権力に制約を加えることによりその濫用を防止し,基本的人権を保障しようとしている(立憲主義)。
しかし,各議院の総議員の過半数の賛成で憲法改正の発議ができることになれば,その時々の政権与党の意向に沿った憲法改正の発議が容易に行えるようになる。このことは,憲法の制約に服するべき内閣が,都合により,自己の活動を制約する憲法の規定を改正できることを意味するものであり,ひいては国民の基本的人権の保障がないがしろにされる危険を有するもので,許されるべきではない。
3  日本国憲法96条は,「この憲法の改正は,各議院の総議員の3分の2以上の賛成で,国会がこれを発議し,国民に提案してその承認を経なければならない。」と定める。
96条改正に賛成する根拠として,現在の96条の要件の下では,憲法改正が各議院の多数の支持を得ていても,どちらかの議院で3分の1以上の反対があれば,発議ができないことになり,国民には憲法改正の是非を考える機会すら与えられない。これは少数意見による多数意見の封殺であるというものである、との主張がある。
憲法が基本的人権を保障し,国家の仕組みを定める国の最高法規であり,その改正が国民の基本的人権や国家の仕組みに重大な変更をもたらすものであること,少数者の基本的人権が多数派によって侵害されてきた歴史的経緯を踏まえれば,憲法改正に際しては,多数派の意見を安易に国民の意思とするのではなく,国民の間の様々な意見を集約し,調整しながら慎重に議論を進め,より広い国民的な合意を得ていく必要があるのは当然のことといえる。
諸外国でも,過半数より厳しい要件のもとで憲法の改正が行われる例は多々ある。上下両院の3分の2の賛成を発議の条件とする米国でも、幾度にもわたって憲法の修正が行われてきたことは周知のとおりである。我が国においても,憲法改正にあたっては広く国民的な合意を得る努力をすべきであり,安易に要件を緩和すべきではない。
4  以上のことから,憲法96条を改正して発議要件を各議院の総議員の過半数の賛成とすることは,立憲主義,基本的人権の保障の観点から認められるべきではなく,憲法96条の改正に強く反対するものである。
平成25(2013)年7月1日
岡山弁護士会 会長 近 藤 幸 夫

橋下徹氏の「慰安婦」等に関する発言に対する会長声明
日本維新の会の共同代表であり大阪市長でもある橋下徹氏は,2013年(平成25年)5月13日,(1)戦争時の軍隊に「慰安婦制度」は必要であった,(2)沖縄海兵隊司令官に風俗業を活用して欲しいと述べたとの発言をした。
日本国憲法13条は,国家は国民の人権を尊重すべきことを定める。そして,同14条及び24条は両性の本質的平等を定め,さらに女子差別撤廃条約は,女性の尊厳が男性と等しく尊重されるべき旨を定めている。
橋下氏の今回の発言は,これら憲法及び女子差別撤廃条約等が尊重する女性の尊厳を踏みにじるものである。
すなわち,橋下氏による「慰安婦制度」が必要であったとの発言は,「慰安婦制度」が国家の関与の下で女性を性の道具として扱った,女性の尊厳を著しく損なう重大な人権侵害であったことを看過し,「慰安婦制度」を正当化する一部の不見識な主張を助長する不用意な発言であり,当時慰安婦として人権を侵害された女性たちの名誉と尊厳をさらに傷つけるものである。
さらに,沖縄海兵隊司令官に風俗業を活用して欲しいと述べたとの発言は,今日の沖縄において,女性の性を国家が軍隊のために利用することを容認し正当化する発言であり,特に米軍兵士による性的暴行事件が度々問題となっている現状において,沖縄の女性をはじめすべての女性の尊厳を傷つけるものである。
これらの発言に対し,橋下氏は,2013年(平成25年)5月27日,「私の認識と見解」と題する文書において弁明し,「女性の尊厳は,基本的人権において欠くべからざる要素」であり,「日本兵が『慰安婦』を利用したことは,女性の尊厳と人権を蹂躙する,決して許されないもの」であることを認め,風俗業を活用して欲しいとの発言については「アメリカ軍のみならずアメリカ国民を侮辱することにも繋がる不適切な表現でしたので,この表現は撤回するとともにおわび申し上げます。」と述べた。
しかしながら,橋下氏は,(1)いまだ軍隊に「慰安婦制度」が必要であったとの発言を明確に撤回しておらず,(2)風俗業を活用して欲しいとの発言については撤回し,撤回理由においてアメリカ国民への配慮を見せるものの,かかる発言により沖縄の女性をはじめすべての女性の尊厳を傷つけたことへの配慮が見られず,また,(3)国政政党の共同代表並びに地方公共団体の首長として公権力を行使する立場にある公人である自らがかかる発言を行ったことによって傷つけた慰安婦及びすべての女性への謝罪を行っていない。
当会は,基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命としており,全ての時及び場所において「慰安婦制度」ないし軍隊のために女性の性を利用する行為が決して許されない重大な人権侵害であることを確信する。その上で,橋下氏に対し,これらの発言をしたことを強く非難するとともに,当時慰安婦として人権を侵害された被害女性及び沖縄の女性をはじめすべての女性に対して謝罪することを強く求めるものである。
2013(平成25)年6月12日
岡山弁護士会 会長 近 藤 幸 夫

小野市福祉給付制度適正化条例の廃止を求める会長声明
平成25年3月27日,兵庫県小野市において,小野市福祉給付制度適正化条例が制定された。
本条例では生活保護,児童扶養手当等の福祉制度による金銭給付受給者が,これらの金銭をパチンコ,競輪,競馬等に費消し,生活の維持安定向上義務に違反することを防止し,同受給者の生活支援に資することを目的とし,そのために受給者らの責務を定めるとともに,市民及び地域の構成員に対して,市への積極的な協力,情報提供の責務を課している。
しかし,本条例は,違憲,違法の疑いが強いものであるから小野市は同条例を即時廃止すべきである。
まず,福祉制度による金銭給付受給者が受給した金銭は,そもそも使途を限定されているものではない。にもかかわらず,本条例は福祉制度により現金給付を受けている受給者の私生活を,その周辺の市民及び地域の構成員が監視し,市に情報提供し,市の職員が生活指導をするという仕組みを規定している。
この市民及び地域の構成員による情報提供の仕組みは,誰が生活保護をはじめとする福祉制度の受給者であるのかという高度なプライバシーに属する情報(憲法13条)を,一般市民が知っていることが前提となっている。ともすれば,生活保護受給者は,税金から給付を受けている以上,プライバシーを暴かれても受忍すべき存在であるとの差別や偏見を助長させかねず,このような危惧感から要保護者であっても生活保護の受給を躊躇するという効果を生みかねない。プライバシーの権利と生活保護受給権に対する侵害であり,憲法13条,25条に違反するおそれがある。本来生活保護の対象となるべき生活困窮者が何らかの理由で保護を受けられていない漏給が問題となっている現状に鑑みると決して許されるものではない。不正受給が許されないことは当然であるが,不正受給の防止は,行政の責任であるのに,これを市民に転嫁し,しかも,犯罪行為でさえ市民に法律上の通報義務はないのに受給者のプライバシーの領域まで一般市民に監視通報義務を負わせる条例の制定は,小野市が全市民を巻き込んだ相互監視社会化を助長し,福祉制度による金銭給付受給者に対して差別偏見を助長するものであるといわざるを得ない。
ところで,全市民の六割が本条例を支持しているとの報道もみられる。小野市に限ったことではないが「民主主義で得られた結論であるから正しい。」との論調で政策の実行や,条例の制定をする動きが往々にしてなされることがある。しかしながら,民主主義で得られた結論であるから正しいのではなく,その前提として既存の法体系との整合性,少数者の人権への十分な検討が必要である。このことを抜きにした,単に多数決による結論により誤った結果を招くことは過去の歴史を振り返ってみても明らかである。
当会は本条例の問題点を上記のとおり指摘した。小野市においては本条例を即時廃止すべきである。
2013(平成25)年6月12日
岡山弁護士会 会長 近 藤 幸 夫

生活保護法改正に反対する会長声明
1 政府は,2013(平成25)年5月17日,生活保護法を改正する法律案(以下「改正案」という。)を国会に提出することを閣議決定した。
2 改正案では,生活保護の開始のためにはあらかじめ定められた申請書を提出することを義務化,すなわち要式行為とすることが規定されている。
このことは,現在の生活保護法が保護の申請を書面によるものとせず,また,口頭による保護申請も認められるとする確立した裁判例(さいたま地裁平成25年2月20日判決など)からも生活保護申請権に制限を加えるものであることは明らかである。
従来から,生活保護の現場においては,生活保護を受給するために窓口を訪れた要保護者に対して,相談だけであるとして申請として扱わず審査すら行わないといういわゆる水際作戦が実施されていた例が多数報告されている。
厚生労働省が,保護を利用したいという意思の確認ができれば申請があったものとして取り扱い,実施機関の責任において必要な調査を行い,保護の要否の決定をなすべきとの見解を示しているにもかかわらずこのような事例が起こっているのである。
改正案のとおり,保護の申請を要式行為とすれば,たとえ意思の確認ができたとしても,申請書が提出されない以上申請があったと扱わず,実施機関対応する必要はないということになり,従来の違法な水際作戦にお墨付きを与えることになる。
この点,与野党による修正協議を経て,「保護の開始の申請は」との文言が「保護の申請をする者は」に改められ,また,但し書きとして「特別な事情があるときは,この限りでない」との文言が加えられ,現在と変わらない運用がなされることになるとの説明がなされている。
しかし,修正後の文言によっても,保護の申請は書面による要式行為であると解釈されるおそれがある。しかも,「特別な事情」の判断は実施機関に委ねられるため,水際作戦を助長する結果を招くことになる。
他方で,当該改正部分について,現在の運用と何ら変わらないのであれば、そもそも,このような法改正をする必要はないことになる。
3 次に,改正案では,保護開始の決定をする際には,保護の実施機関に対して,あらかじめ,要保護者の扶養義務者に対して,通知をすることを義務付けた上,扶養義務者等の資産や収入状況等について銀行や雇用主に対して報告を求めることができる権限を付与し,また,官公署に報告を義務付けている。
この点について,厚生労働省は,従前から,「扶養が保護の要件であるかのごとく説明を行い,その結果保護の申請を諦めさせるようなことがあれば,これも申請権の侵害にあたるおそれがあるので留意されたい。」との通知を出している。
しかしそれでも,親族間に通知されることで生じる軋轢を恐れて,要保護状態でありながら生活保護の申請を断念する例は少なくない。にもかかわらず,扶養義務者等に対する通知が義務化され,調査権限が強化されると,要保護者の保護申請に現在よりもさらに萎縮的効果が働くことは必至である。
4 以上のとおり,本改正は要保護者の生活保護申請権を不当に制限するものであり,到底容認できない。本会は,改正案に強く反対するものである。
2013(平成25)年6月12日
岡山弁護士会 会長 近 藤 幸 夫

死刑執行に関する会長声明
2013(平成25)年4月26日、東京拘置所において2名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。前回の死刑執行の際にも、本年2月25日付で死刑執行に抗議し、死刑に関する情報を開示した上で、国民的議論を行い、死刑制度の見直しを検討するよう求める「死刑執行に関する会長声明」を発したところである。
にもかかわらず、前回執行から約2か月という短い間に連続して死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。国際社会においては、死刑廃止が潮流となっている。日本政府は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けている。昨年12月20日には国連総会において、全ての死刑存置国に対し、死刑廃止を視野に死刑執行を停止するよう求める決議が過去最高の111か国の賛成多数で採択されている。
日本弁護士連合会は、2011(平成23)年10月7日に「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言」を決議し、その中で「直ちに死刑の廃止について全社会的な議論を開始し、その議論の間、死刑の執行を停止すること」などを求めており、本年2月12日には谷垣禎一法務大臣に対して、上記事項を求める要請書を提出している。
当会においても、本年2月9日に「死刑を考える日」を開催し、日本における死刑制度の問題点について広く考える機会を設けたところである。
このように、当会及び日本弁護士連合会が求める死刑制度に関する十分な国民的議論とその前提となる死刑制度に関する情報公開が全くなされないまま、死刑の執行が続いていることは極めて遺憾である。
当会は、改めて政府に対し、死刑の執行を停止し、わが国における死刑確定者の処遇、死刑執行対象者の決定手続と判断方法、死刑執行の具体的方法とその問題点等に関する情報を開示し、死刑存廃について国民の広範な議論を踏まえた上で、死刑制度の見直しを検討するよう、重ねて強く要請するものである。
2013(平成25)年5月15日
岡山弁護士会 会長 近 藤 幸 夫

死刑執行に関する会長声明
2013(平成25)年2月21日、東京、名古屋、大阪の各拘置所において合計3名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。前回の死刑執行の際にも、昨年10月10日付で死刑執行に抗議し、死刑に関する情報を開示した上で、国民的議論を行い、死刑制度の見直しを検討するよう求める「死刑執行に関する会長声明」を発したところである。
にもかかわらず、昨年10月につづき、3名もの死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が潮流となっている。日本政府は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けている。昨年12月20日には国連総会において、全ての死刑存置国に対し、死刑廃止を視野に死刑執行を停止するよう求める決議が過去最高の111か国の賛成多数で採択されている。
日本弁護士連合会は、2011(平成23)年10月7日に「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言」を決議し、その中で「直ちに死刑の廃止について全社会的な議論を開始し、その議論の間、死刑の執行を停止すること」などを求めており、本年2月12日には谷垣禎一法務大臣に対して、上記事項を求める要請書を提出している。
当会においても、本年2月9日に「死刑を考える日」を開催し、日本における死刑制度の問題点について広く考える機会を設けたところである。
このように、当会及び日本弁護士連合会が求める死刑制度に関する十分な国民的議論とその前提となる死刑制度に関する情報公開が全くなされないまま、死刑の執行が続いていることは極めて遺憾である。
なお、谷垣法務大臣は、法務大臣に就任して2か月足らずであり、今回の死刑執行が十分慎重に検討した上での執行であったのかも大いに疑問である。
当会は、改めて政府に対し、死刑の執行を停止し、わが国における死刑確定者の処遇、死刑執行対象者の決定手続と判断方法、死刑執行の具体的方法とその問題点等に関する情報を開示し、死刑存廃について国民の広範な議論を踏まえた上で、死刑制度の見直しを検討するよう、重ねて強く要請するものである。
2013(平成25)年2月25日
岡山弁護士会 会長 火 矢 悦 治

地方の法科大学院の存続発展に関する会長声明
2004年(平成16年)4月に始まった法科大学院制度は、これまでに多種多様な人材を法曹界に送り出す等一定の成果をあげているが、その一方で、司法試験合格率の低迷や、法科大学院への入学志願者の減少といった深刻な課題に直面している。
このような中で、2012年(平成24年)8月、法曹の養成に関する制度の在り方について検討を行うため、内閣に法曹養成制度関係閣僚会議(以下「閣僚会議」という。)が設置されるとともに、法曹の養成に関する制度の在り方について学識経験を有する者等の意見を求めるため、閣僚会議の下に、法曹養成制度検討会議(以下「検討会議」という。)が設置された。閣僚会議は、検討会議の意見等を踏まえつつ、2013年(平成25年)8月2日までに今後の法曹養成制度の在り方について検討を加えて一定の結論を出すものとされており、現在、検討会議においては、法科大学院の統廃合や定数削減に向けた具体的な基準案を検討することが決定されている。
現在法科大学院制度が直面している上記問題点からすれば、法科大学院の統廃合や定数削減についての検討は避けられないところではあるが、法科大学院の地域適正配置については、最大限の配慮がなされなければならない。家庭の事情や経済的理由等で地方を離れることができない法曹志望者にも法曹になる機会を実質的に保障するためには、地方の法科大学院が必要不可欠である。また、地方の法科大学院は、地方の様々な法的ニーズに応えることのできる法曹を養成して、地方を支える人材を育成するという重要な役割も担っている。
当会管内に所在する岡山大学大学院法務研究科(以下「岡山大学法科大学院」という。)は、これまでに岡山県内外に在住する多くの法曹志望者に対して、法曹となるための教育を受ける機会を提供してきている。岡山大学法科大学院からの司法試験合格者数は、これまでに81名に達しており、弁護士登録をした合格者の大半が当会及び近隣の地域の単位会に登録する等、地元の司法を担う人材として貢献し、のみならず、地域のニーズに対応した質の高いリーガルサービスを提供できる人材の育成にも積極的に取り組んでいる。
すなわち、岡山大学法科大学院は「地域に奉仕し、地域に根ざした法曹」として、依頼者に共感してともに汗をかき、涙を流せるような人権感覚豊かな法曹の養成を目的とし、問題発見・事案の解決能力、地域的法実務に必要な総合的判断能力・批判能力を養成することを目指し、地域の実態や法実務を踏まえながら、「ビジネス法分野」と「医療・福祉分野」を重点的教育分野としている。
そして、岡山大学法科大学院は、ネットワーク・セミナーなどの独自の法曹教育カリキュラムを構築し、また専門家との間のネットワークと、大学内に設置された法律事務所を活用した「理論と実務を架橋する法曹教育」の確立と充実を実行している。
このように岡山大学法科大学院は、自らの努力によって存続を維持する決意を有しており、だからこそ当会としても、岡山大学法科大学院に対して、会員を実務家教員や非常勤講師として派遣する等の積極的な支援を行ってきたところ、地方の法科大学院の経営あるいは存立自体を現在以上に困難にする動きを看過することはできない。
上記のとおり、岡山大学法科大学院をはじめとする地方の法科大学院は、大都市圏の法科大学院とは異なる存在意義を有している。したがって、法科大学院の統廃合や定数削減について検討するに際しては、地域適正配置という観点を軽視することがあってはならない。そこで、当会は、今後も岡山大学法科大学院を支援していくことを表明するとともに、検討会議及び閣僚会議に対して、地方の法科大学院の統廃合や定数削減を検討するに当たり法科大学院の存続発展に最大限配慮することを強く求めるものである。
2013(平成25年)1月23日
岡山弁護士会 会長  火 矢 悦 治

生活保護基準の切り下げに反対する会長声明
1 2012年(平成24年)8月10日、社会保障制度改革推進法が成立し、その附則2条において、生活保護の「給付水準の適正化」が明記され、8月17日に閣議決定された「平成25年度の概算要求組替え基準について」では「生活保護の見直しをはじめとして合理化・効率化に最大限取り組み、その結果を平成25年予算に反映させるなど、極力圧縮に努める」ものとされており、生活保護の削減方針が示されている。そして、財務省は10月22日、財政制度等審議会に生活保護基準切り下げに向けた具体的提言を行い、同審議会において、平成25年度の予算編成に向けた生活保護制度の見直しの議論が始められた。
これらの動きからすれば、平成25年度予算編成において、政府が生活保護基準切り下げに動く可能性が極めて大きい情勢である。
2 しかし、生活保護は憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を具体化した最後のセーフティネットであって、生活保護基準は生存権保障の水準を具体化して「健康で文化的な最低限度の生活」を決する極めて重要な基準である。
生活保護受給者の増加が問題視されることが多いが、実際には生活保護の捕捉率(生活保護を受給する資格がある人のうち、実際に生活保護を受給している人の割合)は2010年(平成22年)時点でも2割?3割程度(平成22年4月9日付け厚生労働省発表「生活保護基準未満の低所得世帯数の推計について」)にとどまっている。本年になってからも札幌市、さいたま市、立川市などで餓死孤立死が相次いで発生しているが、こうした事例は生活保護を受給していれば防ぐことができた可能性が高いのである。このように、生活保護が必要な人々に行き渡っていないという現状であるにもかかわらず、生活保護受給者の増加が問題であるとして生活保護基準を切り下げて生活保護の受給にさらに厳しい要件を課すことは、本末転倒である。そのようなことがなされれば、生活困窮者を更に増大させ、あるいは、その抱える問題を更に大きなものにすることが容易に想像されるのである。
また、生活保護基準は、最低賃金、課税最低限度額、社会保険の自己負担額の基準とも連動しており、基準の切り下げは生活保護受給者だけでなく、それ以外の低所得者層の更なる貧困化を招くことになる。
3 このような生活保護基準の重要性からすれば、その基準のあり方については、2011年(平成23年)2月に発足した社会保障審議会生活保護基準部会における学識経験者らの専門的検討も踏まえ、生活保護受給者の生活実態も考慮して慎重に決せられるべきであって、財政目的の安易な基準切り下げがあってはならない。
4 岡山県は、津山市出身で国立岡山療養所(現在の独立行政法人国立病院機構南岡山医療センター)に入院していた故・朝日茂氏が、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」「人間が人間らしく生きる権利」の保障を求めた「朝日訴訟(人間裁判)」を提起し、その後の生活保護基準の改善や社会保障制度の発展に大きく貢献した地でもあり、当会にとって、今般の生活保護基準の切り下げの動きは到底看過することができないものである以上のとおり、当会は、来年度予算編成における生活保護基準の切り下げに強く反対する。以上
2012年(平成24年)11月21日
岡山弁護士会 会 長  火 矢 悦 治

【転載】余命3年時事日記 2348 ら特集岡山弁護士会④

2018年02月04日 | 在日韓国・朝鮮人
岡山弁護士会
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「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する会長声明
第1 意見の趣旨
いわゆるカジノ設置推進を定める「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」に反対し,その廃案を求める。
第2 意見の理由
1 法案について
昨年12月,国際観光産業振興議員連盟(通称「IR議連」)に所属する有志議員が,「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(以下,「カジノ解禁推進法案」という。)を提出した。カジノ解禁推進法案については,今秋の臨時国会で継続審議となっている。
カジノ解禁推進法案は,カジノ管理委員会の許可を受けた民間事業者が,「特定複合観光施設区域」において,カジノを設置できるような措置を講ずることを内容とする。
しかし,この法案については,経済効果のみが喧伝され,カジノが社会に及ぼす深刻な影響についての検討がなされていない。
2カジノ解禁推進法案の問題点
(1)刑法上の各賭博罪に該当する問題性
「賭博」は,偶然の事情に関して財物を賭け,勝敗を争うことを言う。我が国では,刑法185条(単純賭博罪),186条1項(常習賭博罪),及び186条2項(賭博場開張罪・博徒結合罪)の各規定(以下,「各賭博罪」という。)により,「賭博」は処罰対象とされているが,これは,国民一般の健全な勤労観念を害するとともに,賭博が暴行,脅迫,殺傷,強窃盗その他の副次的犯罪を誘発しまたは国民経済の機能に重大な障害を与えるためである(最判昭和25年11月22日)。
カジノはまさに「賭博」そのものであるため,各賭博罪の構成要件に該当する行為であり,現行法下では設置することができない。従って,カジノの設置・運営を解禁しようとするのであれば,刑法の禁ずる各賭博罪の構成要件には該当するにもかかわらず,その違法性が阻却される理由が明らかにされねばならない。
例えば,現在合法とされている,競馬,競輪,競艇などは,(1)施行者が地方自治体または政府全額出資の特殊法人であること(公設),(2)運営機関が非営利法人であること(公営),(3)収益は社会貢献活動に使用すること(公益)を理由に,刑法上の賭博罪の違法性が阻却されるとされている。
しかるに,今回のカジノ解禁推進法案は,単なる民間事業者がカジノの経営を行うことを前提にしており,上記(1)ないし(3)に該当しないのであって,到底,各賭博罪の違法性は阻却されえない。
カジノの解禁を推進する立場からは,カジノ施設を含む特定複合観光施設やその設置区域の整備によって,観光,地域経済の振興,雇用の拡大,財政改善等のプラスの効果があると主張されているが,そもそも,それらの経済効果については疑問が呈されているところである。
(2)カジノ施設の設置による著しい弊害の発生
しかも, カジノ施設が設置されれば,以下で述べる様々な弊害の発生が予見される。カジノ解禁推進法案10条自身がこの点に言及していることからも,このような弊害が生じることは明らかである。
カジノ解禁推進法案は,これらの弊害を予見しながら,その防止及び排除の具体策を何ら検討していない。かかる状況の中,カジノを解禁するという結論のみを進めることは,賭博について刑事罰をもってまで禁止してきた趣旨に反するものであって,極めて無責任な立法である。
(1)ギャンブル依存症・多重債務者の増大
最も深刻な問題はギャンブル依存症の問題である。ギャンブル依存症はいったん発症すると治療が非常に困難な疾患であり,ギャンブル依存症から家族関係が悪化したり,多重債務に陥って犯罪や自殺に至ったりする者も少なくない。
我が国には,競馬,競輪,競艇等の公営ギャンブルが存在する。このような社会情勢の下,我が国におけるギャンブル依存症の患者数は推定で560万人以上,国民の中に占める依存症の有病率は男性の8.7%,女性の1.8%とされている。
もしカジノを解禁すれば,ギャンブル依存症患者が更に増加することが見込まれ,深刻な事態を惹起する。
2006年の貸金業法改正等,官民一体となって取り組まれてきた一連の多重債務者対策によって,この間多重債務者が激減し,結果として破産者等の経済的に破綻する者,また,経済的理由によって自殺する者も減少してきた。カジノの合法化は,これら一連の対策に逆行し,多重債務者を再び増加させる結果をもたらす可能性がある。
(2)青少年の健全育成への悪影響
また,合法的賭博が拡大することによる青少年の健全育成への悪影響も座視できない。
とりわけ,IR方式(カジノが,会議場,レクリエーション,宿泊施設その他と一体となって設置される方式)は,家族で出かける先に賭博場が存在する方式であるから,青少年らが賭博に対する抵抗感を持たないまま成長することになりかねず,そのような環境では健全な勤労観念が涵養されようはずがない。
(3)暴力団対策上の問題
カジノを解禁すれば,暴力団が資金獲得のためカジノへの関与に強い意欲を持つことが想定される。暴力団自身が事業主体となり得なくとも,事業主体に対する出資,従業員の送り込み,事業主体の下請け等といった,種々の脱法的方法でカジノ事業及びその周辺領域での活動に参入する可能性がある。
カジノ解禁推進法案においては,カジノ施設の運営から暴力団を排除するための具体的方策が何ら示されていないが,仮に何らかの方策がとられたとしても,暴力団の潜在的な関与を排除することがどこまでできるのか疑問である。
(4)マネー・ロンダリング対策上の問題
我が国は,FATF(Financial Action Task Forceの略。マネー・ロンダリング対策・テロ資金供与対策の政府間会合)に加盟しているが,2003年のFATFによる勧告において,カジノ事業者は,マネー・ロンダリングに利用されるおそれの高い非金融業者に指定されている。
我が国にカジノを設置した場合,仮にカジノ事業者に対して,犯罪による収益の移転の防止に関する法律に基づく,取引時確認,記録の作成・保存,疑わしい取引の届出を求めたとしても,こうしたマネー・ロンダリングを完全に防止することは極めて困難であると考えられる。
(3)経済効果喧伝に対する疑問
カジノ推進の立法目的に経済の活性化が掲げられているが,上で述べたような弊害を考えれば,仮に経済効果があったとしても推進すべきではない。
また,本当に経済効果があるのかどうかという点は,既存のカジノの状況等を十分に検証した上で評価されるべきである。
韓国,米国等では,カジノ設置自治体の人口が減少した,多額の損失を被ったといった調査結果が存在する。また,地域経済が一旦カジノに依存することとなれば,自治体がカジノ規制を忌避することとなり,必要なカジノ規制がなされなくなってしまうおそれもある。
そもそも,増加が予想される多重債務者やギャンブル依存症患者への対策等に要する社会的コスト等を考慮に入れると,これを上回る経済的効果が実際に存在するのか甚だ疑問である。
3 結論
以上のとおり,カジノ解禁推進法案が成立すれば,刑事罰をもって賭博を禁止してきた刑法の立法趣旨が損なわれ,様々な弊害をもたらす。
よって,当会は,カジノ解禁推進法案に強く反対の意見を表明し,カジノ解禁推進法案の廃案を求める。
平成26年(2014年)10月22日
岡山弁護士会 会長 佐々木 浩 史

裁判所予算の増額を求める会長声明
声明の趣旨
最高裁判所は大幅な裁判所予算の増額を要求すべきであり、政府・財務省はそれを受けて裁判所予算を大幅に増額させるべきである。
声明の理由
1 紛争を解決し、権利侵害を救済し、違法な行為から身体や財産を守るのが司法の使命であり役割である。
このような観点から、司法制度改革審議会意見書(平成13年)は、司法制度改革を実現するために、裁判所等の人的物的体制を充実させ、司法に対する財政面の十分な手当が不可欠であるとし、政府に対して、必要な財政上の措置について特段の配慮を求めた。
また、「裁判の迅速化に関する法律」(平成15年)は、裁判を迅速に行い、司法を通じて権利利益が実現できるよう、政府に財政面も含めた措置を講じる責務を課した。
また、最高裁判所による裁判の迅速化に係る検証に関する報告書でも、「裁判所の基盤整備を含めた体勢面の施策も着実に実現していく必要がある」と指摘されている。
2 しかるに、裁判所予算の現状と推移は、近年、非常に憂慮すべき状況にある。
裁判所予算は平成8年度に3000億円を超え、平成18年度に約3331億円に達したが、それを頂点として7年連続で減少し、平成25年度予算では3000億円を割り込み、18年前の平成7年度の水準にまで落ち込んだ。
平成26年度予算額は前年度比約122億円増加して約3110億円となったが、給与特例法の失効に基づく人件費の増額分約171億円を含んでいるので、実質的には前年度比約49億円の減額となっている。しかも平成27年度の概算要求額は平成26年度予算額より1.5億円減少した。
また、裁判所予算が一般会計予算に占める割合は、平成20年度まで0.4%前後(司法の重要性の観点からはこの予算比自体が非常に少ないが)で推移していたが、平成21年度から低下し、平成25、26年度予算では約0.32%にまで落ち込んだ。
このような事態は、前記司法制度改革審議会意見書が求めた「財政上の特段の配慮」や、「迅速化法」が定める「措置を講じる責務」が怠られてきたことを意味している。
3 予算関係文書を子細に検討すれば、さらに憂慮すべき事情が明らかになる。
(1) 裁判官の報酬を含む人件費が大幅に減少している。最高裁判所及び 下級裁判所の人件費に該当すると思われる各科目(委員手当、退職手当を除く)の合計額は、平成24年度1900億円余から平成25年度1800億円弱へと約7.2%減少した。平成26年度予算額は約1980億円であるが、前記の給与特例法の失効に基づく人件費の増額分約171億円が含まれるので、実質的に平成24年度の水準には及ばない。
(2) IT化関連予算が大幅に減少している。最高裁判所及び下級裁判所の「情報処理業務庁費」の合計額は、平成24年度約15億円から、平成25年度5億円余へと、前年度比約64%も急減した。平成26年度予算では約7.3億円まで回復したが、平成27年度概算要求では約3.6億円と半減した。社会においてIT化の流れが定着し発展を続けている状況を考えれば、かかる予算の減少は、裁判所におけるIT化対応への意欲の欠落を如実に示していると言わざるを得ない。
(3) 概算要求書によれば、裁判所予算中の「経常的広報経費」の額は平成22年度(約490万円)以降おおむね減少傾向にあり、平成26年度予算額は約454万円、平成27年度概算要求額は約336万円である。もともと非常に少額な広報経費が、年々減少していっているのである。このことは例えば、平成25年に家事事件手続法が施行されて家事事件手続が全面的に変化したにもかかわらず、裁判所は手続利用者である国民に向けて広報(すなわち情報発信)を十分に行えないことを意味している。 これでは、裁判所が裁判制度や裁判所の業務を広く市民に知らせることが不可能である。
4 こうした裁判所予算の不足は、司法機能に看過できない悪影響を及ぼしている。中でも最大の弊害を生じさせているのが、裁判官を含む裁判所職員数の絶対的不足である。
(1)裁判官の勤務の過酷さは以前から異常な状態にあり、書記官をはじめ裁判官以外の職員の繁忙も激化の一途をたどっている。にもかかわらず、家庭裁判所以外の裁判所予算は総じて減少傾向にある。
(2)家庭裁判所は、近年の家事事件の増加と複雑化のため、繁忙が甚だしい。裁判官・書記官は多忙をきわめ、本来自ら行うべき申立内容の確認や後見業務の打合せなどを参与員に依存せざるを得ない状況となっている。
(3) 全国の各地に存在する裁判官非常駐支部は、いっこうに解消されず、支部での手続の遅れや不都合を生じている。
(4) 労働審判は、労働事件を簡易迅速に解決することを趣旨として創設 された制度で、利用件数が増加しているが、裁判所支部では立川・小倉を除き実施されていない。制度の本旨から国民の身近な裁判所で行われるべきなのに支部で実施されないのは、実施に必要な裁判官・書記官のマンパワーが、予算不足からくる人員不足のために不足しているからである。全国の弁護士会が裁判所に対し度々支部での労働審判実施を求めているが、ほとんど実現していない。
(5) 他にも、(1)勾留請求を受けて裁判官が勾留質問を行い判断するまでに時間がかかることが増えていること、(2)簡易裁判所民事事件の和解の大半が司法委員任せで裁判官が臨席しないこと、(3)簡易裁判所等を統廃合した際、代替措置として実施されることになった出張事件処理の利用促進がなされていないこと、(4)民事事件等において、現場検証などで裁判官が現地に赴くことが減少していることなど、裁判所の人員不足に起因する弊害はきわめて多い。
(6) 裁判官の人数が少ないために個々の裁判官の負担が過重となり、一 つ一つの事件に丁寧に取り組む余裕がない、という問題は、長く指摘されてきた。また裁判官数の不足は、裁判所支部での裁判官の非常駐や支部の取扱事件の制約などの問題も生み出してきた。このような事態は全国各地の国民の裁判を受ける権利(憲法第32条)が侵害されていることを意味する。
裁判官の大幅増員を実現するためには、財政措置として裁判所予算が大幅に増額されなければならない。近年の裁判所予算額の推移はこれに逆行するものであり、国民の裁判を受ける権利という観点から看過できない水準にまで落ち込んでいる。
5 裁判所予算の不足は、裁判所の物的施設の充実をも阻害している。
裁判所支部等には多機能トイレがない庁舎があるなど、バリアフリー化が進んでいない。小規模支部ではTV会議システムの導入が遅れ、遠隔地支部での証人尋問等に不都合をきたしている。
6裁判手続そのものも、予算不足の悪影響を受けている。
簡易裁判所での証人尋問等について、尋問調書の省略を徹底する取扱いがなされている。書記官の負担軽減(背景には人員不足がある)と反訳費用の節減が原因であることは明白である。
地方裁判所でも、尋問調書に項数が表示されなくなっている。証人尋問等の反訳は平成21年度以降最高裁が一括発注しているが、経費削減のため、発注仕様に「項数表示」が含まれていないことが原因である。
このような裁判手続自体の過度の簡略化は、裁判所を利用する当事者である国民の負担を増やすだけでなく、裁判官(特に上訴審)の業務の効率にも悪い影響を及ぼし、「迅速な裁判」の要請に反することにもなる。
7 以上のような、裁判所予算の不足による弊害、とりわけ裁判官を含む裁判所職員数の絶対的不足は、司法機能の弱体化をもたらす。
充実した司法の実現、迅速な裁判の実現のためには、裁判所予算を大幅に増額することが絶対に必要である。
8 よって、頭書のとおり声明する。
平成26年(2014年)10月22日
岡山弁護士会 会長 佐々木 浩 史

死刑執行に関する会長声明
2014年(平成26年)8月29日、東京拘置所、仙台拘置支所において、それぞれ1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。前回の死刑執行の際にも、本年7月9日付で死刑執行に抗議し、死刑に関する情報を開示した上で、国民的議論を行い、死刑制度の見直しを検討するよう求める「死刑執行に関する会長声明」を発したところである。
にもかかわらず、死刑に関する情報公開や国民的議論が行われないまま、本年6月につづき、約2か月という短い間に連続して死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。最近では、死刑廃止又は事実上停止している国が140か国を上回っているのに対し、死刑存置国は58か国に過ぎない。その中で、2013年(平成25年)に実際に死刑を執行した国は我が国を含め22か国しかない。我が国は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けており、2013年(平成25年)5月31日に発表された国連拷問禁止委員会の総括所見においても、死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告を受けており、本年7月24日に発表された国際人権(自由権)規約委員会の総括所見においても、死刑の廃止について十分に考慮することや、執行の事前告知、死刑確定者への処遇等をはじめとする制度の改善等の勧告を受けたばかりである。
日本弁護士連合会は、2013年(平成25年)2月12日、谷垣法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまで全ての死刑の執行を停止することなどを求めた。
冤罪による誤った死刑執行は人権侵害の最たるものであり、絶対にあってはならない。静岡地方裁判所は、2014年(平成26年)3月27日、死刑判決が確定していた袴田巌氏の第2次再審請求事件につき、再審開始、死刑及び拘置の執行停止を決定したが、この決定は、この要請書が指摘した、絶対にあってはならない冤罪による誤った死刑執行がなされるおそれが現実にあることを示すものである。
当会においても昨年2月に「死刑を考える日」を開催し、死刑制度についての議論を深める企画を行っているところである。
しかしながら、現実には、国際社会の潮流に反し、また、当会及び日本弁護士連合会が求める死刑制度に関する十分な国民的議論とその前提となる死刑制度に関する情報公開が全くなされないまま、死刑の執行が続いており極めて遺憾である。
今回の執行についても、執行対象者の選定基準や死刑判決確定から死刑執行までの経過については法務省より何ら説明もなく、死刑執行に至る過程についての不透明さが改めて浮き彫りとなった。また、今回の被執行者のうち一方は、一貫して殺意を否認し、先月に第3次再審請求が棄却され、近日中に第4次再審請求を行うべく準備を進めていたとのことであり、死刑執行にはより慎重でなければならない事案であった。
そこで、当会は、改めて政府に対し、死刑の執行を停止し、我が国における死刑確定者の処遇、死刑執行対象者の決定手続と判断方法、死刑執行の具体的方法とその問題点等に関する情報を開示し、死刑存廃について国民の広範な議論を踏まえた上で、死刑制度の見直しを検討するよう、重ねて強く要請するものである。
2014(平成26)年9月17日
岡山弁護士会 会長 佐々木 浩 史

集団的自衛権行使を容認する閣議決定に強く抗議し,
その撤回を求める会長声明
当会は,本年5月14日及び6月11日の二度にわたり,政府に対し,憲法改正手続をとることなく憲法解釈の変更によって集団的自衛権行使を容認することに強い反対の意見を表明してきた。
しかしながら,政府は,7月1日,「国の存立を全うし,国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」と題する閣議決定を行った。
閣議決定は,集団的自衛権行使に関して,「我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず,我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し,これにより我が国の存立が脅かされ,国民の生命,自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において,これを排除し,我が国の存立を全うし,国民を守るために他に適当な手段がないときに,必要最小限度の実力を行使することは,従来の政府見解の基本的な論理に基づく自衛のための措置として,憲法上許容されるべきである」としている。
しかし,この閣議決定は,自衛のための必要最小限度の防衛力を持ち,専守防衛に徹するとしてきた従来の日本の防衛政策を根幹から変えるものであって,従来の政府見解の基本的な論理を大きく逸脱している。自衛のための措置との名目で,時の政府の判断によって,際限のない「武力の行使」に途を開くものである。
集団的自衛権を行使することは,我が国をいまだ攻撃していない相手方を攻撃することであるから,当然に我が国は戦争の当事国となり,反撃を受ける可能性が生じることを意味する。集団的自衛権の行使により,逆に,国民の生命,自由及び幸福追求の権利は根底から覆されることになりかねない。
我が国は,多くの尊い命を犠牲にしたアジア・太平洋戦争の惨禍に対する真摯な反省の上にたち,武力によらない平和の達成を目指して恒久平和主義を憲法の基本理念とした。その我が国が,憲法の基本理念に反して,一内閣の閣議決定によって実質的な改憲をし,この閣議決定に基づいて関連法を整備し,または新たな法案を提出することによって,再び戦争をする国となる危険な方向に向かうことは何としても避けなければならない。
閣議決定は,「我が国を取り巻く安全保障環境が変化した」ことを強調するが,仮にそうであったとしても,集団的自衛権行使という重大な方向転換を,憲法の定める国会による発議と国民投票という厳重な憲法改正手続によらず,一内閣の閣議決定による解釈変更で容認しようとすることは憲法破壊そのものである。政府や立法府による権力の行使を憲法の制限下に置き,権力の濫用を阻止しようとした立憲主義に著しく反するものであって断じて許されない。
よって,当会は,基本的人権の擁護を使命とする弁護士の団体として,立憲主義堅持の立場から,憲法改正手続をとることなく集団的自衛権行使を容認する閣議決定に強く抗議するとともに,その撤回を求める。
2014(平成26)年7月9日
岡山弁護士会 会長 佐々木 浩 史

死刑執行に関する会長声明
2014年(平成26年)6月26日、大阪拘置所において、1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。前回の死刑執行の際にも、昨年12月13日付で死刑執行に抗議し、死刑に関する情報を開示した上で、国民的議論を行い、死刑制度の見直しを検討するよう求める「死刑執行に関する会長声明」を発したところである。
にもかかわらず、死刑に関する情報公開や国民的議論が行われないまま、前回の執行から約6か月後に死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。最近では、死刑廃止又は事実上停止している国が140か国を上回っているのに対し、死刑存置国は58か国に過ぎない。その中で、2013年(平成25年)に実際に死刑を執行した国は我が国を含め22か国しかない。我が国は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けており、2013年(平成25年)5月31日に発表された国連拷問禁止委員会の総括所見においても、死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告を受けている。
日本弁護士連合会は、2013年(平成25年)2月12日、谷垣法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまで全ての死刑の執行を停止することなどを求めた。
冤罪による誤った死刑執行は人権侵害の最たるものであり、絶対にあってはならない。静岡地方裁判所は、2014年(平成26年)3月27日、死刑判決が確定していた袴田巌氏の第2次再審請求事件につき、再審開始、死刑及び拘置の執行停止を決定したが、この決定は、この要請書が指摘した、絶対にあってはならない冤罪による誤った死刑執行がなされるおそれが現実にあることを示すものである。
当会においても昨年2月に「死刑を考える日」を開催し、死刑制度についての議論を深める企画を行っているところである。
しかしながら、現実には、国際社会の潮流に反し、また、当会及び日本弁護士連合会が求める死刑制度に関する十分な国民的議論とその前提となる死刑制度に関する情報公開が全くなされないまま、死刑の執行が続いており極めて遺憾である。
今回の執行についても、執行対象者の選定基準や死刑判決確定から死刑執行までの経過については法務省より何ら説明もなく、死刑執行に至る過程についての不透明さが改めて浮き彫りとなった。
そこで、当会は、改めて政府に対し、死刑の執行を停止し、我が国における死刑確定者の処遇、死刑執行対象者の決定手続と判断方法、死刑執行の具体的方法とその問題点等に関する情報を開示し、死刑存廃について国民の広範な議論を踏まえた上で、死刑制度の見直しを検討するよう、重ねて強く要請するものである。
2014(平成26)年7月9日
岡山弁護士会 会長 佐々木 浩 史

「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」報告書を受けて発表された「基本的方向性」に対する会長声明
2014年5月15日,首相の私的諮問機関である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(以下「安保法制懇」という。)が報告書を提出した。
これを受けて同日,首相は今後の検討に関する「基本的方向性」を発表した。その中で,憲法が掲げる平和主義を守ると述べるとともに,安保法制懇の報告書で示された集団的自衛権の行使容認についての二つの考え方のうち,「個別的か,集団的かを問わず,自衛のための武力の行使は禁じられていない,また,国連の集団安全保障措置への参加といった国際法上,合法な活動には憲法上の制約はないとする」考え方(いわゆる芦田修正論)は,「これまでの政府の憲法解釈とは論理的に整合しない」として政府として採用できないとした。しかし,他方「我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるとき,限定的に集団的自衛権を行使することは許される」という考え方については,従来の政府の基本的立場を踏まえた考え方であると強弁し,「今後さらに研究を進めていきたい」とした上で,「憲法解釈の変更が必要と判断されれば」閣議決定を行うとしている。
集団的自衛権は,日本が攻撃されていないにもかかわらず,実力をもって他国(同盟国等)への武力攻撃を阻止しようとするものである。限定的であれ,日本が攻撃されていないにもかかわらず我が国が集団的自衛権を行使すれば,相手国との間で全面的な戦争になり,自衛隊員が戦闘の中で人を殺し殺されることになるだけではなく,相手国が我が国を直接攻撃することも覚悟しなければならない。首相は,集団的自衛権が行使された後,国民が直接被害を受ける危険性について,ことさらに無視している。集団的自衛権の行使容認という国民の生命に直接関わる重要事項について,主権者たる国民の議論は不可欠である。
また,「我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるとき」という限定は,「可能性」の判断を時の政府に委ねるもので,何の限定にもなっていない。同様に,被害国からの援助要請や必要最小限の実力を行使するというのも国際司法裁判所が明示している集団的自衛権の行使要件そのものであって限定の意味を有していない。その上,安保法制懇は,首相の私的諮問機関であって,首相の思惑に沿う結論ありきの報告書を作成したに過ぎず,当報告書において意義ある議論が尽くされたとはとうてい評せない。
そもそも,立憲主義は,人類の過去の経験に鑑み,時の政治権力がその権力を濫用しがちであるという権力に対する疑いや不信を前提として,憲法によって国家権力の行使をその制限下に置き,権力の濫用を防止することによって個人の人権を保障することに意義を有している。当会は,憲法改正手続をとることなく,閣議決定という国民の議論を抜きにした政府の一方的な憲法解釈の変更によって,憲法の基本原理に関わる重大な解釈の変更を行うことが立憲主義に著しく反するとして,2014年(平成26年)5月14日「集団的自衛権行使容認に反対する会長声明」を発表した。
また,日本弁護士連合会も,2013(平成25年)年5月31日の総会における「集団的自衛権の行使容認に反対する決議」に続いて,2014年(平成26年)5月30日の総会で「重ねて集団的自衛権の行使容認に反対し,立憲主義の意義を確認する決議」をし,その中で近代自由主義国家が共有する立憲主義の意義・重要性について,日本国憲法のもとにおける徹底した恒久平和主義とともに確認をしているところである。
集団的自衛権の行使を容認することは,これまでの日本国憲法の下で,戦争をしない平和国家である日本という国の在り方を根本から変えることになる。今回示された首相の「基本的方向性」は,「あくまでも憲法解釈の変更を閣議決定により行う」という首相の姿勢を鮮明にするものであり,この姿勢は,政府や立法府による権力の行使を憲法の制限下に置き,権力の濫用を阻止しようとした前記立憲主義に著しく反するものであり,立憲主義を踏みにじるものである。
したがって,当会は,重ねて,憲法改正手続をとることなく,政府の憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使を容認することに強く反対するものである。
2014年(平成26年)6月11日
岡山弁護士会 会長 佐々木 浩 史

法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会・事務当局試案に関する会長声明
1(1) 我が国の刑事司法制度においては,捜査機関の想定に基づいて供述獲得が目指される密室取調べとその結果作成される供述調書が,公判実務に決定的な影響を与えている。また,いわゆる人質司法の問題,被疑者と捜査機関との間の証拠の偏在といった状況は,被疑者・被告人が十分な防御を行うことを困難にしてきた。
すなわち,捜査機関の力が刑事司法実務全体に過大な影響力を持ってきたという構造的な問題があり,これが往々にして,捜査機関による独善・暴走を許すことにつながり,冤罪・誤判を生み出す大きな要因となってきたものである。
このような状況は,適正手続を保障する憲法第31条,不利益供述の強要を禁止する憲法第38条,これらを実現する刑事訴訟法全体の趣旨に悖る状況と言わざるを得ないものであった。
(2) 近年,厚生労働省局長事件に関する証拠改ざん等の違法行為により,検察に対する社会の信頼は大きく揺らいだが,これを契機として法務省に設置された「検察の在り方検討会議」は,平成23年3月31日,「検察の再生に向けて」と題する提言を発表した。同提言は,「取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方を抜本的に見直し,制度としての取調べの可視化を含む新たな刑事司法制度を構築するために,直ちに,国民の声と関係機関を含む専門家の知見とを反映しつつ十分な検討を行う場を設け,検討を開始するべきである。」と結論付けた。
そして,同提言を受けて法務大臣は,法制審議会に対して「取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方の見直しや,被疑者の取り調べ状況を録音・録画の方法により記録する制度の導入など,刑事の実体法及び手続法の整備の在り方について,御意見を承りたい。」とする諮問第92号(以下「本諮問」という。)を発し,これを受けて法制審議会は,「新時代の刑事司法制度特別部会」(以下「本特別部会」という。)の設置を決定した。
(3) 本特別部会の設置に至る経緯は以上のとおりであり,本諮問が求める「見直し」とは,憲法及び刑事訴訟法上の適正手続保障の趣旨を徹底し,冤罪の発生を根絶するため,密室取調べなどの構造的な問題を抜本的に改善する方策の検討を行うことにあると理解すべきである。より具体的に述べれば,本諮問の趣旨は,「取調べの全面可視化を中心として,捜査の適正を確保し,捜査機関の暴走を抑制し,冤罪の根絶に資する方向での提言」を行う役割を本特別部会に求めたものである。
2 平成26年4月30日開催の法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会第26回会議において,事務当局試案が提示された。
(1)  同試案においては,取調べの録音・録画制度について,(a)録音・録画の対象を裁判員裁判対象事件に限定するか(A案),裁判員裁判対象事件の全取調べ及び裁判員裁判対象事件以外の全身体拘束事件の検察官による取調べに限定し(B案),(b)「被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき」などの例外事由を認めている。
しかし,このような限定的な取調べの録音・録画制度では,「取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方の見直し」を実現することはできず,本諮問の趣旨を没却してしまう。
すなわち,(a)裁判員裁判対象事件以外の事件においても虚偽自白の強要及び冤罪の危険は減少せず,冤罪が起きてしまった場合に冤罪被害者が受ける影響は絶望的に大きい。また,(b)試案が認める例外事由は捜査機関による恣意的運用の危険を否定できず,ひとたび恣意的運用を許してしまえば,せっかく導入した録音・録画制度の価値を水泡に帰してしまうこととなる。
(2) また,同試案においては,被疑者・被告人の身体拘束の在り方についてなんら具体的な提言がなされておらず,いわゆる人質司法の問題を抜本的に解決し,冤罪の発生を根絶するという当初の目的は没却されてしまった。
(3) 証拠開示制度についてみれば,冤罪を根絶するための鍵ともいえる全面証拠開示制度は制度設計から外されてしまい,現行の公判前整理手続における証拠開示制度の枠組みを前提とした限定的な制度の提言にとどまっている。
このような提言を行うことは,冤罪を防止するための刑事司法制度の実現という本特別部会の本来の役割を放棄するものに他ならない。
3 そして,(a)刑の減軽制度,(b)司法取引,(c)通信傍受の拡充,(d)犯罪被害者等証人の支援・保護,(e)公判廷に顕出される証拠が真正なものであることの担保,(f)自白事件を簡易迅速に処理するための方策の各項目については,「捜査の適正を確保し,捜査機関の暴走を抑制し,冤罪の根絶に資する方向での提言」には該当せず,本諮問の趣旨に沿うものとは言えない。
特に,(a)刑の減軽制度については,取調べにおける利益誘導に基づく虚偽自白獲得を助長することになりかねず,また無実の第三者の引っ張り込みの危険も否定できない。(b)司法取引については,(a)と同様の引っ張り込みの危険に加え,共犯者への責任のなすりつけといった重大な事態が生じる危険も想定される。さらに(c)通信傍受の拡充については,現行の通信傍受法でさえも憲法違反の疑いが濃いと言われているにもかかわらず,更に捜査機関の権限を拡大し,広く一般市民のプライバシー侵害を引き起こす危険の強い内容となってしまっている。また,(e)公判廷に顕出される証拠が真正なものであることの担保として具体的に検討されている被告人の虚偽供述等の禁止については,いったん虚偽の自白調書が作成されてしまった事案において,被告人の防御権が著しく侵害されてしまい,「自己が真実と考える事実」を積極的に裁判において主張することができなくなってしまう。
4 当会は,同部会に対し,法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会・事務当局試案の撤回し,例外のない取調べの全事件・全過程の録音・録画制度を導入すること及び全面的証拠開示制度を実現することに関しては,再度,諮問の趣旨に立ち返って議論を行うことを求め,通信傍受法の対象犯罪の拡張など新たな捜査手法の導入を行うことに関しては,諮問の趣旨に沿うものとは言えないことから,検討項目から除外することを求める。以 上
2014年(平成26年)6月11日
岡山弁護士会 会長 佐々木 浩 史

集団的自衛権行使容認に反対する会長声明
日本国憲法において,平和主義は,基本的人権の尊重,国民主権と並んで三大基本原理と評され,前文及びこれを受けた第9条において平和主義が様々な表現をもって詳細に規定されている。すなわち,前文においては,「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し…日本国民は,恒久の平和を念願し…平和を維持し,専制と隷従,圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において,名誉ある地位を占めたいと思ふ。」と定め,恒久平和主義を謳っている。また,「全世界の国民が,ひとしく恐怖と欠乏から免かれ,平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」と平和的生存権を定めている。その上で,第9条は,その第1項において,戦争の永久放棄を定め,第2項において,戦力の不保持と交戦権の否認を定めたのである。このように恒久平和主義を子細かつ明確に謳った憲法は世界的に見ても類がなく,日本国憲法が定める恒久平和主義の理念は,日本国民の中に深く根付いている。
政府見解は,加盟国の個別的自衛権と集団的自衛権が固有の権利であるとする国際連合憲章51条のもとにおいても,「日本国憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は,我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており,集団的自衛権を行使することは,その範囲を超えるものであって憲法上許されない」として,一貫して憲法は集団的自衛権の行使を否定していると解釈してきた。
ところが,近時,政府は,これまでの政府見解を一変し,集団的自衛権の行使を容認する方向へと大きく舵を切り,猛進している。さらに,最近では,砂川事件最高裁判決が集団的自衛権行使を容認しているかのような説明までしている。しかし,砂川事件は駐留米軍の合憲性が争点となった事件であり,判決が「わが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されてない」と述べているのは,日米安全保障条約に基づいて米軍を駐留させることを念頭に置いている。砂川事件最高裁判決が集団的自衛権の行使を容認しているとの理解は誤っている。
また,たしかに国際連合憲章51条は「この憲章のいかなる規定も,国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には,安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間,個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。」と規定している。しかし,2度にわたる世界大戦の惨禍に学び,戦争の違法化と集団安全保障の仕組みを設けた国際連合憲章では,もともと個別的自衛権のみを想定していた。ところが,憲章作成交渉の過程で米ソの対立が決定的となり,一方の常任理事国の反対によって安全保障理事会の決議が得られない状態でも,合法的に戦争できるようにしたいとの米ソの政治的思惑から集団的自衛権が規定されたという経過がある。これにかんがみるなら,同条を根拠に集団的自衛権が固有権と断定してよいかどうか,疑問がある。
日本国憲法の基本原理である恒久平和主義を根本から揺るがしかねない集団的自衛権の行使が,憲法改正という厳格な手続を経ることなく,日本国民の意思や議論を排除したままで,閣議決定による時々の政府解釈の変更や政府による集団的自衛権の行使を可能とする法案の提出等によって,容認されることは,到底許されるものではない。このような,集団的自衛権行使の容認ありきで,日本国憲法が定める恒久平和主義の精神を踏みにじる政府の姿勢は,憲法の最高法規性(第10章)や,憲法に違反する法律や政府の行為を無効とし(第98条),国務大臣や国会議員に憲法尊重擁護義務を課す(第99条)ことで,政府や立法府による権力の行使を憲法の制限下に置き,権力の濫用を阻止しようとした立憲主義に著しく反するものである。
よって,当会は,政府に対し,日本国憲法の定める恒久平和主義の意義について改めて認識することを求め,憲法改正手続をとることなく,閣議決定という国民の議論を抜きにした政府の一方的な憲法解釈の変更によって,集団的自衛権行使を容認することに強く反対するとともに,集団的自衛権の行使を認める法案が国会に提出されることのないように強く求めるものである。
2014年(平成26年)5月14日
岡山弁護士会 会長 佐々木 浩 史
注.旧仮名遣いは原文のまま。この御仁は80才以上?



福川律美元会員に対する刑事事件の上告取下げを受けての会長談話
福川律美元会員が,業務上横領等被告事件について上告を取下げたとの情報に接しました。上告取下げにより,福川元会員に対する,懲役14年の判決が確定することになります。あらためて,福川元会員の犯行によって多数の被害者に対し深刻な被害が発生したことについて,こころから遺憾の意を表明いたします。
当会は,福川元会員の不祥事等を契機として,不祥事の再発を防止するため,預かり金等の取扱に関する規定,市民窓口に関する規定及び会員の非行情報の取扱に関する規定等を制定するなどし,現在,会を挙げて不祥事防止対策を実施しております。
今後とも,当会は,会員一人一人にさらなる自覚を求めるべく努力を重ね,不祥事の再発防止に全力で取り組んでまいります。
平成26年(2014年)4月9日
岡山弁護士会 会 長  佐 々 木   浩   史

「生活保護法施行規則の一部を改正する省令(案)」に抜本的修正を求める会長声明
1 厚生労働省は,昨年12月に成立した「生活保護法の一部を改正する法律」(以下「改正生活保護法」という。)に関して,「生活保護法施行規則の一部を改正する省令(案)」(以下「省令案」という。)の概要を本年2月27日に発表した。しかし,省令案の内容は,いわゆる「水際作戦」を合法化するとの批判を解消する方向でなされた改正生活保護法に関する国会での法文修正,政府答弁や参議院厚生労働委員会附帯決議をないがしろにするものであり,到底容認することができない。
2 改正生活保護法案の内容は,保護の申請に関して,従来とは異なり,書面による要式行為とし,申請時に保護の要否判定に必要な書類の添付を要件としているように読めたため,違法な水際作戦を合法化するものとして厳しい批判にさらされた。また,扶養義務者に対する通知義務や報告要求を定めていたため,事実上扶養が保護の要件とされるのではないかとも批判された。
そこで,国会における審議では,現行の運用を変えない旨の政府答弁が繰り返され,それに沿う形で法文修正が行われ,通知や報告要求を行うのは「極めて限定的な場合に限ることにし,その旨厚生労働省令で明記する予定である」とされた。
参議院厚生労働委員会でも,改正生活保護法案に対し,「これまでの取り扱いに今後とも変更がないことについて,省令,通達等に明記の上,周知するとともに,いわゆる水際作戦はあってはならないことを,地方自治体に周知徹底する」などと,7項目にわたって詳細に言及する異例の附帯決議を行った。
3 しかしながら,法文修正等によっても修正の趣旨がなお不明確であり,改正生活保護法案が成立すると,不明確な法文が一人歩きし,申請を要式行為化し厳格化したものであると誤解され,違法な水際作戦をこれまで以上に助長,誘発する可能性が極めて大きい。また,従前の運用を変更しないのであればそもそも法文の新設は不要なはずであった。
このため,当会は,平成25年6月12日,生活保護法改正に反対する会長声明を発表し,また当会の所属する中国地方弁護士会連合会は,平成25年10月11日,すべての人に生存権を保障するため,生活保護の利用を妨げる生活保護法の改正に強く反対する旨の決議を採択した。にもかかわらず,昨年12月にこのような反対を押し切る形で改正生活保護法が成立したものである。4 このような事情があるにもかかわらず,省令案は,以下の通りこれらの法文修正等を骨抜きにするものとなっている。
第1に,省令案は,「保護の開始の申請等は,申請書を・・・保護の実施機関に提出して行うものとする。ただし,身体上の障害があるために当該申請書に必要な事項を記載できない場合その他保護の実施機関が当該申請書を作成することができない特別の事情があると認める場合は,この限りではない。」として,書面申請が原則で,口頭申請が認められるのは例外的とされており,国会での答弁に反する内容となっている。
また,改正生活保護法第24条1項但書は,単に「当該申請書を作成することができない特別な事情があるときは」という表現であるのに,省令案は,上記のとおり「保護の実施機関が当該申請書を作成することができない特別の事情があると認める場合は」として特別の事情の有無の判断権を実施機関に委ねており,恣意的な判断がなされるおそれのある内容となっている。
第2に,改正生活保護法第24条2項については,要否判定に必要な資料の提出は可能な範囲で保護決定までの間に行うというこれまでの取り扱いに変更がないことを省令に明記すべきであるのに,省令案にはこの点に関する記述が一切存在せず,参議院厚生労働委員会の附帯決議に明確に反するものとなっている。
第3に,改正生活保護法第24条8項及び同法第28条において,扶養義務者に対する通知や報告要求を行うのは極めて限定的な場合に限るという国会答弁通りの内容を省令に明記すべきであるのに,省令案は,原則として通知や報告要求を行うものとし,「保護の実施機関が,当該扶養義務者に対して法第77条1項の規定による費用の徴収を行う蓋然性が高くないと認めた場合」など3つの場合を規定し,それらに該当する場合にのみ例外的に通知や報告要求を行わないとしている。これは,原則と例外を逆転させるものであって,国会答弁に全く反する内容となっている。
5 以上の通り,このたび明らかにされた省令案は重大明白な問題点を数多く含む内容となっている。このような省令案がそのまま成立してしまえば,「書類が整わないと申請を受理できない」などの口実で申請を受け付けず,単に相談を受けたのみの扱いとするなどの違法な水際作戦にお墨付きを与え,生活保護の利用を妨げる結果となる。このような事態は,まさに当会及び中国地方弁護士会連合会が危惧した事態にほかならない。
国会答弁によって批判をかわしつつ改正法を成立させながら,省令において国会答弁とは全く反する内容を規定することは,国会軽視とのそしりを免れず,ひいては国民主権を否定するものである。生活保護の申請を妨げることは,国民の健康で文化的な最低限度の生活を営む権利(憲法第25条)を侵害することになり,基本的人権の擁護を使命とする当会としては到底容認できない。当会は,上記の政府答弁や法文修正,附帯決議の内容を真摯に反映した省令へと抜本的に修正することを強く求めるものである。
2014年(平成26年)4月1日
岡山弁護士会 会長 佐々木 浩 史

福川律美元会員に対する控訴審判決を受けての会長談話
本日,広島高等裁判所岡山支部において,福川律美元会員(平成25年4月5日付け登録取消)に対して控訴棄却の判決が言い渡されました。福川元会員の犯行によって多数の被害者に対して深刻な被害が発生したことに対し,当会としては,改めて心から遺憾の意を表します。当会は,不祥事の再発防止策として,平成25年9月28日の臨時総会において「預り金等の取扱いに関する会規」を制定(同年12月1日施行)し,同年12月14日の臨時総会において,市民窓口の体制強化及び非行情報の捕捉・管理に関する整備(平成26年3月1日施行)を行いました。
今後とも,当会は,福川元会員による重大な犯罪事実を真摯に受け止め,会員の倫理意識を高め、会員一人一人にさらなる自覚を求めるべく努力を重ねる所存であり,このような不祥事の再発防止に全力を挙げて取り組んでまいります。
2014年(平成26年)1月29日
岡山弁護士会 会長 近 藤 幸 夫

司法修習生に対する前期(集合)修習の実施を求める会長声明
1 旧司法試験合格者(平成22年度終了,以下「旧試合格者」という。) に対しては,司法研修所入所後,2か月間の「前期(集合)修習」を実施したのち,実務修習地に配属されていた。旧試合格者は,司法試験受験勉強中は,実体法の解釈中心の勉強をしており,法律実務家としての基礎的知識を修得していないので,実務修習に入る前に司法研修所で統一的に法律実務家としての基礎的学力を修習させる必要があった。
2 ところで,司法改革の一環として法科大学院が設立され,法科大学院卒の司法試験合格者が初めて採用されたいわゆる新60期司法修習生に対して,旧試合格者と同様の「前期(集合)修習」を実施するか否かについて,最高裁の司法修習委員会で検討された。その結果,「前期(集合)修習」に相当する教育は,法科大学院に委ねることとしているので,司法研修所入所後は実務修習から開始するが,法科大学院設置当初なので,実務への導入教育の成熟途上であるから,当面,司法修習の1年間の課程の冒頭に,法科大学院における実務導入教育を補完するための教育を行なうことを相当とし,差し当たり1か月程度の統一的な実務導入教育として,新60期司法修習生に対して「導入研修」が実施された。
3 ところが,次の新61期司法修習生に対しては,上記の「導入研修」を廃止し,「導入研修」教育を行なうことなく,実務修習地に配属することとし,現在(67期)まで,司法研修所による「導入研修」は実施されていない。
この間,法科大学院において最高裁の司法修習委員会が期待する「前期(集合)修習」に相当する教育が十分に行なわれているならば,いきなり実務修習から始めてもさしたる問題はない。しかし,現実は必ずしもそうではなく,多くの法科大学院において「前期(集合)修習」に相当する実務家教育がなされておらず,実施されているとしても法科大学院によって密度に差がある状況である。
4 したがって,法律実務家教育がほとんどなされていない司法修習生を,いきなり実務修習から開始することに対する懸念があるため,司法修習生を受け入れる弁護士会において,独自に司法研修所入所前の司法試験合格者に対し,事前の導入講義等を行なう工夫をしてきたが,大規模弁護士会に限られ,中小規模弁護士会では中々実施できないし,導入講義等を実施できたとしても短期間で,しかも全司法修習生に対して等しく実施されたわけではない。
そこで,日本弁護士連合会においては,平成24年度(66期)から,全司法修習生に対し民事,刑事の課題を司法研修所入所前に配布し,実務修習開始直後に2日間にわたって導入講義を実施している。しかし,この導入講義も,旧司法試験合格者に対する「前期(集合)修習」の内容と比べれば,全く不十分と評価せざるを得ない。
5 そもそも,法科大学院は司法試験合格のための教育を行なうこと,すなわち法律科目の基礎的知識,理解,解釈を司法試験合格レベルに到達させるのが第一の目的であり,法律実務家教育を行なうことを主たる目的としている教育機関ではない。仮に,法科大学院で法律実務家教育までも行なうことを制度的に予定されていたとしても,全ての法科大学院において旧司法試験合格者に対する「前期(集合)修習」に相当する教育の実施を求めることは困難である。
したがって,法律実務家を養成する責任を持つ司法研修所は,全ての司法修習生に対して,統一的かつ実務修習をより効果的に行なうために実務修習開始前の一定期間(1~2か月間程度),「前期(集合)修習」を実施すべきである。
6 よって,当会は,最高裁判所及び国に対して,早急に司法修習生に対して司法研修所による統一的な「前期(集合)修習」を実施することを強く求める。
2014(平成26)年1月15日
岡山弁護士会  会長 近 藤 幸 夫

【転載】余命3年時事日記 2347 ら特集岡山弁護士会③

2018年02月04日 | 在日韓国・朝鮮人
岡山弁護士会
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夫婦同氏制を定める民法750条の規定を合憲とする最高裁判所大法廷判決に対する会長声明
2015年(平成27年)12月16日、最高裁判所大法廷は、夫婦同氏制を定める民法750条につき、夫婦同氏制は旧民法で採用され我が国社会に定着してきたこと、氏は社会の自然かつ基礎的な集団単位である家族の呼称として一つに定めることに合理性が認められること、民法750条は夫婦いずれの氏を称するかを夫婦となろうとする者の協議に委ねているのであって、文言上性別に基づく法的な差別的取扱いを定めているわけではないこと、婚姻前の氏を通称として使用することまで許さないものではないことなどの諸事情を考慮すると、夫婦同氏制が個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠く制度であるとは認めることができず、憲法24条に違反するものではないと判示した。
ところで、氏名は個人の人格の象徴であって人格権の一内容を構成するものであり、個人は婚姻にあたり氏を自己決定する権利を有している。夫婦同氏制については,現行憲法制定当時としては、妻は家庭内において家事育児に携わるという家族生活が標準的な姿として考えられていたことから、妻が婚姻により氏を変更することに特に問題を生じることは少なかった。しかしながら、近年女性の社会進出が著しく進み、婚姻前のみならず婚姻後に稼働する女性が増え、その職業も家内的な仕事にとどまらず、社会と広く接触する活動に携わる機会も増加した。そのため、婚姻による氏の変更により、個人の識別、特定に困難を引き起こす事態が生じ、また、氏はその個人の人格を一体として示すものであるところ、氏を変更した一方は自己喪失感を持つに至ることもあり得るなど、夫婦同氏制が個人の人格的利益を侵害するに至っている。そして、現実に96パーセントを超える夫婦が夫の氏を称する婚姻をしており、氏の自己決定権の制約、個人の識別機能に対する支障、自己喪失感などの負担はほぼ妻のみに生じているため、個人の尊厳及び両性の本質的平等に反する事態が生じている。さらに、上記の不利益を避けるためにあえて法律上の婚姻をしないという選択をする者を生んでおり、夫婦同氏制によって婚姻の自由も制約を受けている。世界的に見ても、多くの国において夫婦同氏の外に夫婦別氏が認められており、現時点において、例外を許さない夫婦同氏制を採っているのは我が国以外にほとんど見あたらない。我が国においては、法制審議会が1994年(平成6年)に「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」を公表し、これをさらに検討した上で1996年(平成8年)に法務大臣に答申した「民法の一部を改正する法律案要綱」において、いわゆる選択的夫婦別氏制という改正案が示され、国会においても選択的夫婦別氏制の採否が繰り返し質疑されてきた。我が国が1985年(昭和60年)に批准した「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」に基づき設置された女子差別撤廃委員会からも、2003年(平成15年)以降、民法に夫婦の氏の選択に関する差別的な法規定が含まれていることについて懸念が表明され、その廃止が繰り返し勧告されている。
今回の最高裁判決は、夫婦同氏制が憲法24条に違反しないと判断したが、上記諸事情に照らすと、別氏を望む夫婦にまで同氏を強制する理由はなく、民法750条は、女性が持つ氏の自己決定権並びに氏による個人の識別機能及びアイデンティティという人格的利益、あるいは婚姻の自由を実質的に侵害している。最高裁判決は、上記不利益は氏の通称使用が広まることにより一定程度緩和され得るとするが、通称は便宜的なもので、使用の拒否、許される範囲等が定まっているわけではなく、通称名と戸籍名との同一性という新たな問題を惹起することになるだけでなく、そもそも通称使用は婚姻によって変動した氏では個人の同一性の識別に支障があることを示す証左なのであり、通称使用が広まることは、夫婦が別の氏を称することを全く認めないことの合理的な理由とはならない。5名の裁判官(3名の女性裁判官全員を含む。)が述べるとおり、民法750条は個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き、国会の立法裁量の範囲を超える状態に至っており、憲法24条に違反する。また、法制審議会による答申後、国会において選択的夫婦別氏制が議論されながらその立法化を長年放置しており、国会による立法不作為も違法といわざるを得ない。
したがって、岡山弁護士会は国に対して、夫婦の氏を同等に尊重し両性の本質的平等を実現するために、夫婦同氏規定を廃止し、婚姻前の氏を引き続き称することを望む者にこれを認める選択的夫婦別氏制の立法化及びこれに伴う戸籍法等の改正を強く求めるものである。
2016年(平成28年)1月13日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

共謀罪規定の新設に反対する会長声明
報道によれば、政府は、過去3度廃案となった共謀罪の規定(以下「共謀罪規定」という)を、改めて国会へ上程しようとしている。
しかし、当会は、以下のとおり、共謀罪規定は極めて問題の多く、かつ危険な規定であるので、その新設に断固反対する。
そもそも、共謀罪とは、団体の活動として犯罪の遂行を共謀した者を処罰するための刑罰法規である。
そして、共謀した者の内に、犯罪の実行の着手やその準備行為を行った者を含まなくとも共謀罪が成立するという点において、従来の共謀共同正犯とは全く異なっている。これは、思想ではなく行為を処罰するという刑事法体系の基本原則に根本的に矛盾するものである。
また、個人がどのような思想や信条を持ち、また、それをどのように表現するかを処罰の対象とすることは、憲法が保障する思想信条の自由、表現の自由、集会・結社の自由を侵害する危険が極めて強い。共謀罪規定はその対象を暴力団等の反社会的組織に限定していないため、例えば、一般市民によって構成される市民団体や労働組合が政府の政策に反対し、首相官邸前での座り込みなどの行動について話し合っただけで、身体を拘束され、処罰されてしまう可能性がある(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律)。少なくとも、共謀罪規定が市民団体や労働組合等の活動に深刻な萎縮的効果をもたらすことは明らかである。現在検討されている共謀罪規定は、一定の法定刑(長期4年)以上の犯罪全てに適用され、600以上もの犯罪について一挙に共謀罪を新設する内容であることからすれば、共謀罪規定が国民に与えるであろう萎縮的効果は甚大である。
さらに、仮に共謀罪規定が導入された場合、捜査機関は、謀議を立証するため、取調べによる自白獲得の外、国民の私的な会話・通話・通信などを秘密裏に聴取・閲覧するなどの捜査活動に注力することが予想される。
そうであれば、通信傍受法の対象範囲拡大を前提に、通信傍受が広範かつ包括的になされる危険性も認められ、また、共同謀議を否認する被疑者に対しては捜査機関によって自白調書の獲得を目指して苛烈な取調べがなされる危険性は増大し、国民の基本的人権と深刻な対立を引き起こすおそれが増大する。
なお、先般のパリ同時多発テロ事件を受けて、テロ撲滅のために共謀罪規定が必要であるなどの意見もあるが、これは、無理やりなこじつけである。そもそも、政府は国際組織犯罪防止条約を批准することを目的として共謀罪規定の創設を提案しているところ、同条約の取り締まりの対象は、経済目的の組織的犯罪集団であって、その内容はテロ対策とはまったく関係ない。わが国では、組織的犯罪集団に関連した主要犯罪は既に未遂以前の段階から処罰できる体制がほぼ整っており、共謀罪規定の必要性はない。
以上のとおり、共謀罪規定は、刑事法体系の基本原則に矛盾し、基本的人権の保障と深刻な対立を引き起こすおそれが高いことから、当会は、その新設に断固反対する。
2016年(平成28年)1月13日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

死刑執行に反対する会長声明
2015年(平成27年)12月18日、東京拘置所と仙台拘置支所において、それぞれ1名の死刑確定者に対して、死刑が執行された。
執行されたうちの1名は、裁判員裁判による死刑判決を受けた者として初めて死刑の執行をされた者である。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。
にもかかわらず、死刑に関する情報公開や国民的議論が行われないまま、前回の執行から約半年後に死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。最近では、死刑廃止又は事実上停止している国が140か国に上っているのに対し、死刑存置国は58か国に過ぎない。その中で、2014年(平成26年)に実際に死刑を執行した国は我が国を含め22か国しかない。我が国は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けており、2013年(平成25年)5月31日に発表された国連拷問禁止委員会の総括所見においても、死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告を受けており、2014年(平成26年)7月24日に発表された国際人権(自由権)規約委員会の総括所見においても、死刑の廃止について十分に考慮することや、執行の事前告知、死刑確定者への処遇等をはじめとする制度の改善等の勧告を受けたばかりである。
日本弁護士連合会は、2015年(平成27年)12月9日には岩城法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまで全ての死刑の執行を停止することなどを求めた。
静岡地方裁判所は、2014年(平成26年)3月27日、死刑判決が確定していた袴田巌氏の第2次再審請求事件につき、再審開始、死刑及び拘置の執行停止を決定したが、この決定は、この要請書が指摘した、絶対にあってはならない冤罪による誤った死刑執行がなされるおそれが現実にあることを示すものである。
当会においても2015年(平成27年)1月にシンポジウムを開催し、死刑制度についての議論を深める企画を行っているところである。
しかしながら、現実には、国際社会の潮流に反し、また、当会及び日本弁護士連合会が求める死刑制度に関する十分な国民的議論とその前提となる死刑制度に関する情報公開が全くなされないまま、死刑の執行が続いており極めて遺憾である。
そこで、当会は、改めて政府に対し、死刑の執行を停止し、我が国における死刑確定者の処遇、死刑執行対象者の決定手続と判断方法、死刑執行の具体的方法とその問題点等に関する情報を開示し、死刑存廃について国民の広範な議論を踏まえた上で、死刑制度の見直しを検討するよう、重ねて強く要請するものである。
2016年(平成28年)1月13日
岡山弁護士会  会長 吉 岡 康 祐

面会室における写真撮影に関する東京高裁判決に対する会長声明1 本年7月9日,東京高等裁判所第2民事部は,弁護人が面会室内で写真撮影を行っていたことを理由に,拘置所職員が接見を中断・終了させた行為について,同弁護人の国家賠償法に基づく損害賠償請求を一部認めた原判決を取消し,同弁護人の請求を全て棄却する逆転判決を言い渡した。
2 原判決は,弁護人が行った面会室内での写真撮影は,将来,公判等において使用すべき証拠を収集,保持しておくという証拠保全を主な目的としており,接見交通権に含まれないとしながらも,接見交通権は憲法で保障された権利であるので,刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律117条,113条に基づいて,弁護人に対して面会を一時停止または終了させることができるのは,未決拘禁者の逃亡のおそれ,罪証隠滅のおそれ,その他刑事施設の設置目的に反するおそれが生ずる相当の蓋然性があると認められる場合に限るとし,拘置所職員が接見を中断・終了させた行為は違法であるとした。
3 しかし,本判決は,刑訴法39条の「接見」と「書類もしくは物の授受」が区別されていること,同規定が制定された当時はカメラやビデオ等の撮影機器は普及しておらず,弁護人が被疑者・被告人を写真撮影したり動画撮影することは想定されていなかったことを理由に,写真撮影,動画撮影は接見交通権の範囲外とした上で,さらに,東京拘置所長は,庁舎管理権に基づいて面会室内へのカメラの持ち込みや撮影を原則として禁止することができるとした。そして,これに反する面会は,どのような場合でも,面会を一時停止または終了させることができると判示し,弁護人の請求を棄却した。
4 そもそも,接見交通権は,身体の拘束を受けている被疑者・被告人が外部の人物と面会等する権利であり,その中でも弁護人との接見交通権は,憲法34条で保障されている弁護人依頼権の中核をなす刑事手続上の極めて重要な権利である。弁護人は,面会室内で被疑者・被告人と立会人を置かずに接見でき,当然ながら被疑者・被告人から事情を聴取する際に弁護人がメモをとることを想定している。そして,弁護人が被疑者・被告人を面会室内で写真撮影をしたり動画撮影をすることは,それによって被疑者・被告人の話や所作等を記録するために行うのであるから,面会状況の記録という意味では何らメモと異なるところはない。従って,弁護人が被疑者・被告人を写真撮影したり動画撮影することは,接見交通権の範囲内の行為であると言うべきである。
また,被疑者・被告人が捜査官等から有形力の行使を受けたと訴えた場合には,その痕跡を直ちに保全する必要があり,写真撮影はそのための有効な手段である。この点,本判決は,かかる場合は刑訴法179条の証拠保全を行えば足りるとする。しかし,証拠保全の手続を待っていては証拠保全の目的を十分に達せない場合があり,本判決の指摘は妥当でない。
さらに,本判決は,被疑者・被告人の逃亡のおそれ,証拠隠滅のおそれ,庁舎内の秩序の乱れ,警備保安上支障をもたらすおそれ等を理由に,拘置所長の庁舎管理権に基づいて面会室内へのカメラ持ち込みや撮影を禁止できるとするが,いずれも抽象的危険にすぎず,カメラの持ち込みや撮影禁止の根拠たり得ない。かつ,本判決の論理によれば拘置所長の庁舎管理権の裁量をより広範囲で認めることとなり,接見交通権の侵害になるとともに,ひいては弁護人の弁護権の制約につながりかねず,本判決は極めて不当である。
5 以上より,本判決は,刑訴法39条の解釈を誤った判決であるとともに,拘置所長の庁舎管理権を広範囲で認める極めて不当な判決であるので,本会は強く抗議する。
2015年(平成27年)9月30日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

参議院の安保法案強行採決に抗議する会長声明
今月19日、参議院本会議は、自民公明などの賛成多数で、安保法案を強行採決した。長年維持されてきた憲法解釈を一内閣の判断で変更したうえ、多数の国民の意思を無視して行われた、立憲主義・国民主権の原則に反する強行採決に対して強く抗議する。
そもそも、安倍内閣は昨年7月、歴代内閣が継承してきた憲法第9条の解釈を変更して、集団的自衛権行使を容認する閣議決定を行い、続いて集団的自衛権行使を前提とする安保法案を今国会に提出した。この閣議決定は、憲法第9条の恒久平和主義に反するだけでなく、憲法改正手続を経ることなく一内閣の判断で憲法解釈を変更する点において立憲主義にも反している。日本弁護士連合会及び全国52すべての弁護士会が、この閣議決定を撤回するように何度も求めてきた。
衆議院での審議中、憲法審査会に出席した与党推薦者を含む3名及び全国90%以上の憲法学者、数名の元内閣法制局長官、数名の元最高裁裁判官も明確に安保法案の違憲性を公述している。しかし、政府は、そもそも集団的自衛権について念頭になかった1959年(昭和34年)の「砂川最高裁判決」を合憲性の根拠に持ち出すなど、法律家として到底容認できない反論を重ねてきた。
そして、多くの国民が今国会での成立に反対しているにもかかわらず、7月16日衆議院本会議は数を頼んで強行採決の暴挙にいたった。
その後、審議の場は参議院に移り、国民の反対の声は一層大きくなった。例えば8月26日、日弁連主催の市民集会においては、元内閣法制局長官及び元最高裁裁判官、全国108の大学の学者らが一堂に会し、安保法案の違憲性及び廃案を主張し、続いて同月30日には市民十数万人が国会議事堂前に集まり、同時に全国300箇所以上で、数千、数万人の市民が集まるなど、連日のように全国津々浦々で安保法案の廃案を求めて集会やパレードが行われている。参加者の年齢層も、高校生からお年寄りまで広がっている。そして、9月初旬には、山口繁元最高裁長官が、「砂川最高裁判決」は集団的自衛権行使容認の理由にはならず安保法案は違憲と明言し、同月9日にも同様に大森政輔元内閣法制局長官も違憲性を公述し、同15日には元裁判官75名が連名で安保法案が立憲主義に反するなどする陳情書を参議院議長へ提出した。
さらに、参議院の審議中、安保法案の問題点は以下のように一層明らかになった。すなわち、政府が合憲性の根拠とする「砂川最高裁判決」の成立以前に、田中耕太郎最高裁長官(当時)や藤山愛一郎外務大臣(当時)が米国駐日大使らと密会し、同判決の見込みなどについて報告した事実(米国公文書による)によって司法権の独立が改めて問題になった。そして、自衛隊の統合幕僚監部が安保法案成立を先取りした研究を行い、同様に、河野克俊統合幕僚長も、昨年12月、米軍幹部に対して安保法案の整備は今夏までには終了するなどと説明していたことなど国会の審議を軽視していたことが明らかになった。また、安保法案の法文上兵站活動の範囲について通常兵器はもとより核兵器の運搬も可能であることなど法案自体の欠陥も明らかになった。
多くの国民の世論を聞こうとせず、違憲と主張する圧倒的多数の憲法学者など専門家の見解にも耳を貸すことなく、強行採決したことは、憲政史上最大の汚点となることは明らかである。
我々弁護士及び弁護士会は、法の支配の下、人権擁護と社会正義の実現を使命とする立場から、平和主義、立憲主義、国民主権に反する違憲法案を衆議院に続いて参議院においても強行採決したことに怒りを込めて抗議する。
2015(平成27年)9月24日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

戦後70年を迎えるにあたっての会長談話
2015年(平成27年)8月15日、戦後70年を迎えます。先の大戦は、私たちの想像がつかないほど悲惨で、惨い戦争であったと、戦争を体験した父や母あるいは先輩たちから聞いています。一枚の赤紙で兵隊にとられ、夫や恋人、息子を失った者。戦死したら、お国のために命を捧げた英霊と崇められるだけで、遺骨も帰って来ない。国民は、日々空襲の恐怖と飢えに苦しみ、明日への希望も持てなかった。命をつないでゆくだけで必死だったと聞いています。また、出征した兵士は、片道切符の戦闘機や特殊潜航艇で特攻を命じられたり、玉砕覚悟の突撃を強いられたり、理不尽な戦闘行為によって命を奪われました。捕虜になることを恥とし、自決させられた者もいます。あるいは、飢餓や疫病で命を失った兵士、戦後シベリアへ抑留され帰還できなかった人も大勢います。国内では、沖縄においては激しい地上戦が行われ、兵士だけでなく多数の非戦闘員(民間人)が犠牲になりました。空襲も東京、大阪等の大都市だけでなく日本各地の都市におよび、広島・長崎では、原子爆弾によって、一瞬のうちに何万もの人々の命が奪われました。おそらく自分が何故死んでゆくのか理解しないまま、亡くなったものと思います。戦争によって亡くなった全ての人々の無念さを想像すると、筆舌に尽くし難い思いが募ります。
他方、日本は、先の大戦によって、アジア・太平洋地域の人々に対しても、多大な被害を加えています。無差別攻撃、一般住民や捕虜に対する虐殺、生体実験、性的虐待、強制連行、強制労働、財産の没収、文化の抹殺等、アジア・太平洋地域の人々の生命だけでなく、自由や財産や文化までも奪いました。先の大戦の評価についてはさまざまではありますが、戦後50年に出されたいわゆる「村山談話」では、率直に植民地支配に基づく侵略戦争であったことを認め、それに対して真摯に反省するとともに、被害者に対する謝罪を、日本政府は行っています。過去に犯した過ちを反省・謝罪し、今後再びこのような過ちを繰り返さない決意をすることは、何度してもけっして十分ということはありません。
私は、まず、この戦後70年を迎えるにあたって、先の大戦によって生命・自由・財産・文化を奪われた全ての国の犠牲者に対して、心から哀悼の意を表したいと思います。
戦後、われわれは、先の大戦の痛切な反省から平和憲法を定めました。その前文には、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起きることのないよう決意し」、憲法9条では「戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認」が謳われています。憲法施行後、自衛隊が創設されましたが、平和憲法の下で、自衛隊の活動は制約され専守防衛に徹し、この70年間、日本は戦争当事者となることなく平和国家としての道を歩んできました。戦争放棄を定めた憲法9条は、日本が国際社会の中で信頼を得る上で大きな役割を果たしてきたものと思います。そして、憲法9条を持つ日本国憲法の下で、法律家として仕事ができることを私は誇りに思っています。
ところで、日本政府は、日本を取り巻く国際環境の変化を理由に、戦後一貫して否定してきた集団的自衛権の行使を、憲法9条を改正することなく閣議決定で容認し、それに引き続いて、現在国会では集団的自衛権行使のための各種安全保障法制が立法化されようとしています。この動きは、戦後の恒久平和主義に立脚した我が国の70年の平和な存立の歴史とそのための努力を真っ向から否定するものであり、恒久平和主義に反するだけでなく、憲法に反する法律を、憲法を改正することなく成立させようとするもので、立憲主義にも反し、とうてい許されるものではありません。
軍事的抑止力によって平和がもたらされるという論理は、かつての歴史が明確に否定しています。日本国憲法前文で規定されているように、平和は、「諸国民の公正と信義に対する信頼」によってこそもたらされるものであることを日本政府は認識すべきです。文化・哲学・文学・芸術・芸能・映画・漫画・アニメ・音楽・経済・産業・医療・技術・観光・スポーツ・ボランティア活動等々、あらゆる分野で我が国は世界中の多くの国々とあるいは人々と国際交流を重ね、進展している状況に鑑み、日本政府は軍事力に頼らず、軍事力以外の分野での国際交流を通じて、平和外交の道を模索すべきです。そして何よりも、武力による威嚇外交ではなく、対話による平和外交を望みます。
1950年。日本弁護士連合会(以下「日弁連」という)は、第一回定期総会を原爆によって壊滅的被害を受けた平和都市「広島」で開催しました。それに引き続き行われた平和大会で、われわれ弁護士は、「平和と人権」を守る活動をすることを宣言しました。「基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命」とする弁護士の決意宣言です。「戦争は人権の最大の敵」であることを考えると、平和を守ることこそ弁護士の使命であると言っても過言でありません。  私は、岡山弁護士会会長として、憲法とりわけ憲法9条が危機的状況に陥っている今日、広島の「平和宣言」を再び思い起こし、日弁連及び全国の弁護士会そして平和を愛する国民の皆様とともに、日本国憲法の理念と基本原則を堅持し、戦争のない社会を構築するため、全力を尽くすことを誓います。
2015年(平成27年)8月12日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

衆議院の安保法案強行採決に反対する会長声明
本日、衆議院本会議において、自民公明など与党の賛成多数をもって安保法案は強行採決された。もとよりこの法案は、憲法9条違反であるにもかかわらず、安倍内閣が砂川最高裁判決を根拠にした独自の合憲解釈のもと、強行採決に踏み切ったものである。
そもそも、安倍内閣は、昨年7月、歴代内閣が継承してきた憲法9条の解釈を突如変更し、憲法9条のもとでも、集団的自衛権行使を可能とする閣議決定をなし、今国会にその集団的自衛権を前提とする安保法案を提出した。この閣議決定及び安保法案は、憲法9条の恒久平和主義に反するだけでなく、憲法改正手続を経ることなく一内閣が勝手に憲法の解釈を行ったという意味で立憲主義にも反するので、全ての弁護士会はこの閣議決定の撤回や安保法案の廃案を求めてきた。
しかも、安保法案の衆議院の審議中に、憲法審査会に出席した与党推薦者を含む3名の憲法学者全員が、提案された法案は憲法に違反すると公述したにもかかわらず、与党自民党の幹部は、「憲法学者が平和や安全を守ってきたわけではない」とか、「憲法違反と考えていない憲法学者もいる」とか、「違憲と考えている憲法学者の数が問題ではない」などと、全く不合理な反論を展開し、また、閣議決定や法案の合憲性については、集団的自衛権が争点になっていなかった砂川最高裁判決を持ち出すなど、法律家集団として到底容認できない反論を重ねてきた。
このような安倍内閣の不誠実な説明に対して、80パーセントを超える国民が十分な説明を受けていないと答えている。(7月6日毎日新聞)また、いまだ審理が尽くされていない論点も多数残されている。このように多くの国民が納得していない法案を、予定していた審議時間の経過という理由だけで強行採決することは、数の横暴以外の何物でもなく、国民主権にも反する極めて由々しき事態であり、到底認めることができない。
そもそも憲法に違反する法案について立法理由の説明がまともにできるはずはなく、審理が進むにつれて、益々、安保法案の違憲性が明らかになっていったことから、安倍内閣は、これ以上時間をかけて審理されたら、法案の違憲性が白日のもとになるため、早期に、数の力で押し通す以外に方法がないと判断したとしか考えられない。
国民の世論に耳を貸さず、違憲を主張する圧倒的多数の憲法学者の論にも耳を貸さず、自らの偏った考えだけで、国会運営を行い強行採決することは、憲政史上最大の汚点となることは明らかである。
当会は、法の支配の下、人権擁護と社会正義の実現を使命とする立場から、平和主義、立憲主義、国民主権に反して違憲立法を行う安倍内閣に対して、今一度、集団的自衛権行使を可能とする閣議決定の撤回を求め、参議院に対しては、安保法案の廃案を求めるとともに、いわゆる60日ルールを使って違憲法案を成立させることがないように、強く求める次第である。
2015年(平成27年)7月16日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

死刑執行に関する会長声明
2015年(平成27年)6月25日、名古屋拘置所において、1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。前回の死刑執行の際にも、昨年9月17日付で死刑執行に抗議し、死刑に関する情報を開示した上で、国民的議論を行い、死刑制度の見直しを検討するよう求める「死刑執行に関する会長声明」を発したところである。
にもかかわらず、死刑に関する情報公開や国民的議論が行われないまま、前回の執行から約10か月後に死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。最近では、死刑廃止又は事実上停止している国が140か国に上っているのに対し、死刑存置国は58か国に過ぎない。その中で、2014年(平成26年)に実際に死刑を執行した国は我が国を含め22か国しかない。我が国は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けており、2013年(平成25年)5月31日に発表された国連拷問禁止委員会の総括所見においても、死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告を受けており、2014年(平成26年)7月24日に発表された国際人権(自由権)規約委員会の総括所見においても、死刑の廃止について十分に考慮することや、執行の事前告知、死刑確定者への処遇等をはじめとする制度の改善等の勧告を受けたばかりである。
日本弁護士連合会は、2013年(平成25年)2月12日に谷垣法務大臣に対し、2014年(平成26年)11月11日には上川法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまで全ての死刑の執行を停止することなどを求めた。
冤罪による誤った死刑執行は人権侵害の最たるものであり、絶対にあってはならない。静岡地方裁判所は、2014年(平成26年)3月27日、死刑判決が確定していた袴田巌氏の第2次再審請求事件につき、再審開始、死刑及び拘置の執行停止を決定したが、この決定は、この要請書が指摘した、絶対にあってはならない冤罪による誤った死刑執行がなされるおそれが現実にあることを示すものである。
当会においても本年1月にシンポジウムを開催し、死刑制度についての議論を深める企画を行っているところである。
しかしながら、現実には、国際社会の潮流に反し、また、当会及び日本弁護士連合会が求める死刑制度に関する十分な国民的議論とその前提となる死刑制度に関する情報公開が全くなされないまま、死刑の執行が続いており極めて遺憾である。
今回の執行についても、執行対象者の選定基準や死刑判決確定から死刑執行までの経過については法務省より何ら説明もなく、死刑執行に至る過程についての不透明さが改めて浮き彫りとなった。
そこで、当会は、改めて政府に対し、死刑の執行を停止し、我が国における死刑確定者の処遇、死刑執行対象者の決定手続と判断方法、死刑執行の具体的方法とその問題点等に関する情報を開示し、死刑存廃について国民の広範な議論を踏まえた上で、死刑制度の見直しを検討するよう、重ねて強く要請するものである。
2015年(平成27年)7月8日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

生活保護の住宅扶助基準、冬季加算の引下げに反対する会長声明h厚生労働省は、平成27年1月15日、平成27年度から生活保護の住宅扶助基準と冬季加算を引き下げるとの方針を発表し、同年3月9日、同省社会・援護局関係主管課長会議において、その具体的指針を現場に示した。この引下げにより、住宅扶助基準は平成27年7月から3年間にわたって総額約190億円、冬季加算は、平成27年度で30億円もの大幅な減額が行われようとしている。
これらの引下げに先行し、厚生労働省は平成25年1月、生活保護費のうち食費や光熱費などの生活費を賄う生活扶助基準について、3年間で総額670億円を減額すると発表し、実際に、平成25年8月、平成26年4月、平成27年4月の3度にわたり生活扶助の基準額を引き下げている。これに対して、日本弁護士連合会や当会を含む各弁護士会は、かかる一連の引下げは、最低限度の生活を保障する憲法25条に違反するとして強く反対する声明を繰り返し発してきた。同時に、生活保護受給者の最低限度の生活を行う権利が侵害されたとして、岡山をはじめ全国各地で減額処分の取消しを求める裁判が相次いで提起されている。
政府は、平成18年6月に施行された住生活基本法に基づき、平成23年3月に「住生活基本計画(全国計画)」を閣議決定し、「最低居住面積水準」を定めた。この最低居住面積水準とは、「健康で文化的な住生活を営む基礎として必要不可欠な住宅の面積に関する水準」であり、「単身者25平方メートル」「2人以上の世帯10平方メートル×世帯人数+10平方メートル」等と定められ、これらの水準未満の住宅については「早期に解消」するべきと決定された。この最低居住面積水準は、憲法25条が保障する「健康で文化的な生活」を住生活の面において数値化したものであり、「健康で文化的な生活」の具体化立法である生活保護法の実施にあたっても当然に守られなければならない。さらに、厚生労働省の諮問機関である生活保護基準部会は、生活保護受給世帯が居住する民営借家における最低居住面積水準の達成率に関して、一般世帯においては、単身世帯で76%、2人以上世帯で86%に対して、生活保護受給世帯においては、単身世帯で46%、2人以上世帯で67%と、生活保護受給世帯の水準は一般世帯に対してこれを大きく下回っているため、より適切な住環境を確保する方策が必要と指摘した(平成27年1月生活保護基準部会作成の報告書)。
しかし、厚生労働省は、今回の引下げに際して、この生活保護受給世帯の最低居住面積水準の実情を無視する姿勢を明確にし、住家賃物価の動向(全国平均△2.1%)を住宅扶助基準へ反映させることなどを理由に、住宅扶助基準の引下げを強行しようとしている。また、従前2人世帯の住宅扶助は単身世帯の1.3倍とされていたところを、今回の方針では1.2倍に引き下げるとしたため、単身世帯の住宅扶助基準が引き下げられた地域では、2人世帯の基準も大きく引き下げられる結果となった。しかも、生活保護受給世帯の住宅扶助の実績額(平均)は37,088円(2人以上の世帯)であって、一般低所得世帯(年収下位10%世帯、生活保護受給世帯や生活保護基準以下で生活する世帯も含まれる)の平均家賃額38,123円と比べても、なお低く、生活保護受給世帯が不当に優遇されているという実態はない。
また、冬季加算とは、冬季に暖房費などの出費のため、11月から3月までの期間、生活扶助基準に加えて、地域別、世帯人数別に定められた額を支給する制度である。上述の生活保護基準部会報告書では、季節要因等によって変動する現実の冬季増加費用が、冬季加算額によって実際に賄えるかを検証する必要があるなどと指摘した。しかしながら、厚生労働省の方針は、この指摘を無視したまま、11月から3月の一般低所得世帯における冬季増加費用と生活保護受給世帯の冬季増加費用を単純に比較するなどして、ほとんどの地域・世帯において冬季加算額を引き下げることを決めている。しかし、そもそも一般低所得世帯には生活保護受給世帯や生活保護基準以下で生活する世帯も含まれていることから、単純に比較すること自体きわめて不合理である。
これまでの3度にわたる生活扶助基準の引下げに加えて、今回の住宅扶助基準や冬季加算の引下げが実施された場合、生活保護受給世帯は、生活費の切り詰めや、家賃滞納で住宅の明け渡しを求められる等の危険が生じ、特に子どものいる多人数世帯の生活の場が不安定になることが懸念される。また、冬季加算の引下げは、平年以上に厳冬になった場合などは、寒冷地のみならず温暖地においてすら生命や身体への深刻な影響を招きかねない。
以上のとおり、今回の住宅扶助基準と冬季加算の引下げは、生活保護基準部会の専門的知見との整合性を欠くなどの点において、厚生労働大臣の裁量権を逸脱・濫用する点で生活保護法8条2項に違反し、同時に、生存権を保障する憲法25条にも違反するものであり、当会は、政府がこれらの引下げ方針を撤回するように、また、衆参両院に対しては、かかる厚生労働大臣の裁量権の逸脱・濫用行為を厳しく監視するように、強く求める。
2015(平成27)年6月10日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

少年法の適用年齢引下げに反対する会長声明
選挙権年齢を18歳以上に引き下げる公職選挙法改正案が、今国会(第189回通常国会)に提出された。同案附則11条で、「少年法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする」とされていることから、自民党は、少年法の適用年齢などの引下げについて検討するため、「成年年齢に関する特命委員会」(以下「特命委員会」という)を設置した。そして、2015年4月14日に開催された特命委員会の初会合において、「18歳から選挙権を持つようになることと関連付けて、果たす義務についても考えるべきであり、少年法の適用年齢も18歳未満にすべきではないか」という趣旨の発言があったと、報道されている。
しかし、法律の適用年齢を考えるにあたっては、それぞれの法律の立法趣旨に照らし、個別法ごとに慎重かつ具体的に検討すべきである。したがって、同じ適用年齢に関する問題であっても、法の立法趣旨によっては異なる年齢とすることも当然あり得、選挙権年齢が18歳以上となったからといって、少年法の適用年齢も当然に18歳未満に引き下げるということにはならないはずである。
そもそも、旧少年法では、適用年齢を18歳未満と規定していた。しかし、1948年に制定された現行少年法は、この程度の年齢(18歳、19歳)の者は、未だ心身の発達が十分でなく、環境その他の外部的条件の影響を受けやすく、「刑罰」を科するより保護処分によってその「教化」を図る方が、立ち直りのためには適切である場合が極めて多い(1948年6月25日付参議院司法委員会における佐藤藤佐政府委員の説明参照)ことを理由に、適用年齢を20歳未満に引き上げた。このように、少年法の適用年齢は、少年の「教化」という点を重視し、個人の権利義務とは異なる観点から定められたものである。したがって、少年法の適用年齢を考えるときに、選挙権年齢と関連して議論を開始すること自体が、少年法の趣旨に反し、許されない。
たしかに、現代の若年者は、身体的には早熟傾向にある。しかし、他方で、精神的・社会的自立が遅れたり、人間関係をうまく築くことができなかったりする傾向にあるとも指摘されている(2008年9月30日付法制審議会民法成年年齢部会第8回会議配布資料32)。かかる現代の若年者の特徴からすると、「立ち直り」のために必要とされるのは、「刑罰」による処罰ではなく、充実した「教化」であると考えるべきである。また、仮に少年法の適用年齢が18歳未満に引き下げられた場合、18歳、19歳の者については、現行少年法の下で行われている、犯罪の背景・要因となった若年者の資質や環境上の問題点の調査・分析が行われなくなり、「立ち直り」のための手当がなされず、極めて不当である。
さらに、特命委員会において、「続発する少年の凶悪犯罪に対処するために少年法の適用年齢を引き下げるべき」という趣旨の発言もあったと、報道されている。しかし、少年犯罪の件数は、2004年以降、減少し続け、凶悪犯罪も横ばいまたは減少傾向にある(警視庁「少年非行情勢」2014年1月?12月)ことを考えると、少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げることによって、犯罪抑止効果が得られるという合理的な立法事実は存在しないというべきである。
以上より、選挙権年齢に合わせて少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げることは、少年法の立法趣旨に反し、かつ、合理的な立法事実に基づかないので、当会は反対を表明する。
2015(平成27)年5月13日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

「集団的自衛権行使容認の閣議決定」の撤回を求め、「新ガイドライン」及び「平和安全法制案」に反対する会長声明
1  日本国憲法9条は、戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認を定め、徹底した恒久平和主義をとることを全世界に表明した。これは、先の大戦の多くの被害と加害の両方を経験した日本国民の願いであり、世界に向けての不戦の誓いでもある。
戦後70年、憲法9条は幾たびか改変の危機に見舞われてきたが、これまでの政府は、憲法9条は個別的自衛権までは放棄しておらず、自衛隊は専守防衛に徹する必要最小限度の実力であるから憲法9条の「戦力」ではないという解釈のもとに、外交・防衛政策をとってきており、かろうじて憲法9条は堅持されてきた。 しかし、2014年7月1日に、これまでの政府見解を変更し、現行憲法9条の下でも集団的自衛権の行使は可能であるとする閣議決定がなされた。これに対し、日本弁護士連合会及び岡山弁護士会をはじめとする各単位会は、この閣議決定は恒久平和主義及び立憲主義に反するので撤回せよとの会長声明・総会宣言・決議を幾度となく出してきた。
2 ところで、政府は、本年4月27日、米国との間で、新たな「日米防衛協力のための指針」(以下「新ガイドライン」という)に合意した。この新ガイドラインによれば、緊急事態のみならず、平時、グレーゾーン事態を含むあらゆる状況において、切れ目のない緊密な日米の軍事協力により、大気圏外及びサイバー空間にも及んで、アジア太平洋地域及びこれを超えた全世界に及ぶ日米同盟関係を形成するものとなる。これは、日米及び極東の平和と安全の維持に寄与することを主眼としてきた従来の日米同盟の本質を根本的に転換するものであると言わざるを得ない。
すなわち、新ガイドラインは、日米両国が、米国又は第三国に対する武力攻撃に対処するため、日米両国が当該武力攻撃への対処行動をとっている他国とも協力することを取り決め、集団的自衛権に関しては、自衛隊が機雷掃海、艦船防護のための護衛作戦、敵性船舶の臨検及び後方支援を行うこと等を具体的に定めている。また、これまでの「周辺事態」にとどまらず、「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」への対応、及びアジア・太平洋地域を超えたグローバルな地域の平和と安全のための対応として、自衛隊と米軍が、実行可能な限り最大限協力するとし、後方支援を行うこと等を定めている。
もとより、国家の安全保障・防衛政策は、日本国憲法前文と憲法9条が掲げる徹底した恒久平和主義に基づいて行わなければならない。集団的自衛権の行使はもちろん、世界中に自衛隊を派遣して米国等の戦争の後方支援をし、武力行使の道を開くことは、日米安全保障条約の範囲すらも超えて、明らかに恒久平和主義に反するものである。
のみならず、集団的自衛権行使を容認し、世界規模での自衛隊の活動を認める内容の新ガイドラインについて、憲法改正の手続きを経ることなく、単なる政府間の合意でなされることは、立憲主義の根本原則を踏みにじるものである。
しかも、新ガイドラインの合意に際し、日本政府は、まだ国会に上程されていない安全保障関連法(平和安全法制整備法案)について、今国会で成立させると米国に約束した。まだ、国会にも上程されておらず、かつ、法案の内容すらも明確になっていない段階で、米国との約束を先行させ、既成事実化しようとするもので、国権の最高機関である国会そして何よりも国民を完全に無視する態度と言わざるを得ず、民主主義・国民主権に著しく違背し、到底許されない。
3 自民、公明両党は、5月11日の与党協議会で、新しい安全保障法制を構成する11の法案の内容で正式に合意した。今後は、閣議決定を経て、15日には国会に提出し、5月下旬より国会審議に入ると報道されている。
自衛隊の海外派遣の恒久法である「国際平和支援法案」と、武力攻撃事態法改正案・重要影響事態法案(周辺事態法)・自衛隊法改正案・PKO協力法改正案等を含めた10法案の、合計11の法案は「平和安全法制」と命名され、これらの法案は、「日本の平和と安全」に関するものと、「世界の平和と安全」に関するものに分かれる。
前者の「日本の平和安全」については、武力攻撃事態法改正案に、集団的自衛権行使の要件として「存立危機事態」を新設し、日本が直接、武力攻撃を受けていなくても、日本と密接な関係にある他国が武力攻撃されて、日本の存立が脅かされる明白な危険がある事態で、他に適当な手段がない場合に限り、自衛隊が武力行使できるように、また、従来の周辺事態法は「重要影響事態法」に変わり、「日本周辺」という地理的制限をなくし、世界中に自衛隊を派遣できるようにし、後方支援の対象も、米軍以外の外国軍に拡大している。
後者の「世界の平和と安全」については、「国際平和支援法」を新設し、国際社会の平和と安全を目的として戦争している他国軍の後方支援を、自衛隊が行うことを可能とする「恒久法」である。これまでは、自衛隊の海外派遣の度に特別措置法(時限法)を作ってきたが、この法案が成立すれば、国会の事前承認さえあれば、いつでも海外派遣することが可能となる。
以上のような内容の「平和安全法制」は、「平和」「安全」とは名ばかりで、まさしく「戦争法案」と評価せざるを得ず、日本国憲法前文及び憲法9条の徹底した恒久平和主義に反するもので、到底容認できるものではない。かかる内容の法案は、これまで、平和国家として日本がとってきた外交・安全保障政策や方針を180度転換するものであり、国民的議論を背景にした慎重な国会審議と直接に国民の意思を問う憲法改正手続を経ることがないまま、今国会の会期中で早急に審議し成立させるべき法案でない。米国との約束の履行より、国民の意思と覚悟の確認を先行させるべきである。
4 岡山弁護士会は、以上の通り、「集団的自衛権行使を容認した閣議決定」の撤回を再び強く求めるとともに、「新ガイドライン」及びその国内立法として、今国会(第189回通常国会)で審議予定の全ての「平和安全法制案」は、日本国憲法前文、憲法9条、立憲主義、国民主権という憲法の極めて重要な基本原則に違反し、我が国の平和国家としての根幹を揺るがすものとして、強く反対するものである。
2015(平成27)年5月13日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐