himikoの護国日記

長年の各種自虐史洗脳工作から目覚めた一人の愛国者の日記。
日本をおかしな反日勢力から守り、真の独立国にしたいです。

【転載】余命3年時事日記 2346 ら特集岡山弁護士会②

2018年02月04日 | 在日韓国・朝鮮人
岡山弁護士会
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「共謀罪」と実質的に変わらない,いわゆる「テロ等準備罪」を創設する
組織犯罪処罰法改正法案の国会提出に反対する会長声明
1 当会では,昨年だけでも1月,11月と,二度にわたり,いわゆる「共謀罪」を内容とする法案の国会提出に反対する声明を発表しているが,現在の国会での議論状況及び報道を踏まえ,過去に3回も廃案になった「共謀罪」と実質的に変わらないいわゆる「テロ等準備罪」を創設する組織的犯罪処罰法改正法案を国会に提出することに強く反対する。
2 政府が本国会に提出しようとしている新法案(以下,「提出予定新法案」という。)の内容は,報道によれば,犯罪主体を組織的犯罪集団に限定した上で,特定の犯罪実現の計画に加え,準備行為を要件としているという。そして,政府はこれらの変更点から,提出予定新法案を従来の「共謀罪」とは全く異なるテロ対策のための法案であるとしてきた。
しかし,組織的犯罪集団の定義は曖昧であり,捜査機関の恣意的な解釈によって通常の市民団体や労働組合等が組織的犯罪集団と認定される危険性を孕んでいることから,主体がテロ組織等に限定されているとは言い難い。政府もテロ等準備罪について,「一般の方々がその対象になることはあり得ない」としながら,「団体の性質が一変することはある」と述べるなどその態度は一貫しておらず,テロ等準備罪が通常の市民団体や労働組合等に適用されるおそれは払拭されていない。
また,「計画」及び「準備行為」についても,何をもって「計画」がなされたと判断するのか基準が明確になっていない上に,「準備行為」も現行法上の予備罪における予備行為以前の危険性の乏しい行為を含むものであり,政府や捜査機関などの恣意的な運用により思想・信条の自由はもちろん,表現の自由,集会・結社の自由等の憲法上保障された基本的人権を侵害する危険性が含まれていることは平成28年11月9日発表の当会会長声明において述べたとおりである。
3 政府はこれまで,国連越境組織犯罪防止条約(以下,「条約」という。)締結のためにいわゆる「共謀罪」を創設する必要があるとしており,そのためには,条約において「4年以上の懲役・禁固の刑が定められている罪」について共謀罪を創設することが求められている以上,対象犯罪を減らすことはできないとの見解を示していた。それにもかかわらず,今回,何ら合理的な理由を示すことなく対象犯罪を600超から277にまで絞り込んだことは,政府の過去の説明と矛盾する。これは,従前の法案の内容でなければ条約を批准できないという政府の説明が誤りであること,及び条約の批准のために新たにテロ等準備罪を創設する必要のないことの証左である。
4 また,我が国の国内法においては,爆発物取締罰則,化学兵器禁止法,サリン防止法,航空機強取処罰法,銃砲刀剣類所持等取締法など,未遂以前の共謀や予備の段階からの処罰が可能となっており,しかも,これらについて講学上の共謀共同正犯も認められる以上,テロ対策のために新たにテロ等準備罪を創設する必要はない。加えて,我が国は,テロ対策のために制定されたテロ防止関連諸条約(13本)を締結している。これらの条約は,一定のテロリズム行為を国内法上の犯罪として,その犯人の処罰,引渡し等を行うことを定めることで,犯人を処罰しうる国際的な体制を取るものであり,国際的なテロリズムの行為の防止に関する国際協力の強化に資するものである。
これらの条約締結に際して,我が国は必要な国内法を整備しており,2002年に国連のテロ資金供与防止条約を締結した際には,国内法としてテロ資金提供処罰法(公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律)を制定し,公衆等脅迫目的の犯罪を実行しようとする者を援助する目的で資金等を提供する準備行為についても処罰の対象としている。
このように,我が国のテロ対策は十分に法的整備がなされており,国民の基本的人権を侵害する危険を冒してまで,新たに広範なテロ等準備罪を創設する必要はない。
5 このようにテロ等準備罪は,政府や捜査機関の恣意的な運用によって憲法の保障する思想・信条の自由,表現の自由,集会・結社の自由などの基本的人権に対する重大な脅威となるばかりか,その制定の必要性に乏しいものであることから,当会は,いわゆるテロ等準備罪を創設する組織的犯罪処罰法改正法案を国会に提出することに強く反対する。
2017年(平成29)年3月8日
岡山弁護士会  会長 水 田 美由紀

改めて少年法の適用年齢引下げに反対する会長声明
1 当会は,この問題に関し,すでに平成27年5月13日付「少年法の適用年齢の引下げに反対する会長声明」を発表し,少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げることに対して反対運動を重ねてきた。しかしながら,法務省は,平成28年12月,「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」取りまとめ報告書を発表し,少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げた場合に備えて若年者に対する刑事政策的措置に言及し,さらには法務大臣が少年法の適用年齢の引下げに関して法制審議会へ諮問したことが報道されるなど,少年法の適用年齢の引き下げの動きに向けた動きが進んでいる。
2 現行少年法は,少年の健全育成を目的に掲げて,その適用年齢を20歳未満と定め,全ての少年事件を家庭裁判所に送致したうえ,家庭裁判所及び少年鑑別所による科学的な調査と鑑別を踏まえ,少年に相応しい処遇を決する手続を採用している。かかる現行少年法の手続は,少年院などにおける個別的な指導と教育の処遇と相まって,少年の立ち直りと再犯の防止に有効に機能してきた。
この長きにわたり有効に機能してきた現行少年法の適用年齢を,いま引き下げる方向で見直さなければならない合理的な理由は存在しない。法律の適用年齢を考えるにあたっては,それぞれの法律の立法趣旨や保護法益に照らし,個別法ごとに慎重かつ具体的に判断すべきであって,国民のわかりやすさや整合性は適用年齢の一律引き下げの理由とはならない。
この点,民法の成人年齢引下げの議論は,公職選挙法との一致や,若年者の自己決定権を尊重することなどが理由とされている。しかし,これらは刑事手続において,若年者が,自己の権利を適切に行使して防御することが可能かどうか,あるいは今後いかに立ち直り更生することができるか,という場面とは,全く状況を異にするものである。仮に,契約を単独で行うことができることになっても,民法上想定されている通常の取引行為と,国家権力に対する防衛権を行使する必要がある刑事手続とでは,必要とされる知識,判断能力等は質・量ともに格段に異なる。
したがって,民法上の成年者であっても,社会的・精神的に未熟な18歳・19歳の者に対し,保護主義に基づき,家庭裁判所の後見的な処遇に委ねることには,合理性,必要性がある。
さらに,満18歳未満への適用年齢が引き下げられた場合,非行少年の多くが立ち直りに向けた十分な指導と処遇を受けられないまま放置されることになりかねない。現行少年法の下では,非行少年は家庭裁判所へ送致された後,家庭裁判所の調査官や少年鑑別所の技官などの専門家が,非行の背景や要因,少年の資質や環境上の問題点等の調査や分析を行い,少年院送致となった場合も,一人一人の少年の状態や問題点を踏まえて指導と教育が行われている。しかしながら,少年犯罪の約5割を占める18歳・19歳の非行少年が,少年法の対象外となった場合には,その多くが初犯であるため,不起訴処分,罰金刑,または執行猶予判決により施設収容されることなく手続を終了し,立ち直りに向けた十分な指導や処遇を受けられない。そもそも,18歳以上の非行少年の多くは,その発達過程で大きな問題を抱えており,成長発達権を保障されなかった子どもたちである。かかる非行少年にこそ,少年に可塑性を踏まえた個別的な指導と教育により,充実した「教化」が必要であり,その結果,非行少年の立ち直りと再犯の防止につながると考えられる。
加えて,少年犯罪の全体的な傾向は,増加も凶悪化もしていない。少年犯罪の検挙者数は,2004年以降減少を続け,凶悪犯罪も減少・横ばい傾向にあることを考えると,少年法の適用年齢を引き下げることによって,犯罪抑止効果が得られるということにはならない。
なお,法務省が発表した「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」取りまとめ報告書に記載されている若年成人層に対する刑事政策のあり方と少年法適用年齢の引下げに関する議論とは問題の所在を異にするため,区別してなされるべきである。若年成人層に関する刑事政策のあり方は,個別の問題点や必要性等から議論をつくし,慎重に判断されるべき事柄である。
3 以上のように,少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げるという議論は,少年の立ち直りを阻害しかねないものであって少年法の立法趣旨に反し,かつ,合理的な立法事実にも基づかないものである。
したがって,当会は,少年法の適用年齢を18歳未満まで引き下げることに改めて強く反対する。
2017年(平成29)年3月8日
岡山弁護士会  会長 水 田 美由紀

「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(いわゆる「カジノ解禁推進法」)の成立に抗議し、法律の廃止を求める会長声明
「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(以下、「カジノ解禁推進法」という。)が、2016年(平成28年)12月15日成立した。
カジノ解禁推進法は、2013年(平成25年)12月に国会に提出されたものの、実質的な議論が行われないまま、一旦廃案となり、その後2015年(平成27年)4月に再提出されたものの、1年半以上もの間全く審議されなかった。
ところが、突如、2016年(平成28年)11月30日から法案の審議が始まり、わずか2週間後の12月15日未明に成立となった。
当会は、2014年(平成26年)10月22日、同法案に反対する旨の「カジノ解禁推進法案に反対する会長声明」を発しているところであり、その理由として、次のような点を指摘していた。まず、カジノは、刑法上の賭博に該当することは明白であることから、カジノの設置・運営を解禁しようとするならば、その違法性が阻却される根拠が必要である。しかし、カジノ解禁推進法では、民間事業者がカジノの経営を行うことを前提としており、違法性が阻却される理由は明らかでなく、これでは賭博罪の違法性が阻却され得ない。また、カジノ施設の設置により著しい弊害(ギャンブル依存症、多重債務者の増大、青少年の健全育成への悪影響、暴力団対策上の問題、マネー・ロンダリング対策上の問題)の発生が予見され、これらの点を考慮するならば、仮に喧伝されているような経済効果があったとしても推進すべきではないこと等を指摘した。
カジノ解禁推進法は、刑法が賭博を犯罪としている中で、民間賭博を認めることの法秩序全体の整合性を欠いていることに何ら変わりはない。また、カジノ解禁推進法第10条第8号では、「カジノ施設の入場者がカジノ施設を利用したことに伴いギャンブル依存症等の悪影響を受けることを防止するために必要な措置に関する事項」について、必要な措置を講ずるとしているが、当該規定は、抽象的な表現に留まっているだけでなく、我が国の実態に照らしても、何らカジノ解禁推進法を正当化するものではない。
そもそもギャンブル依存症とは、単に、ギャンブルが好きな傾向があるというものではなく、国際的に診断基準が定められ、深刻な行動障害を伴う疾患であるところ、我が国におけるギャンブル依存症の人数は推定で536万人以上、国民の中に占める依存症の有病率は4.8パーセントとされている。これは、米国や韓国などと比較して、突出して高い割合である(米国1.6パーセント、韓国0.8パーセント)。
つまり、もともと我が国はギャンブル依存症が深刻な問題でありながら、必要な対策が取られなかったため、ギャンブル依存症の割合が高い状態となっている。十分な対策を行うことは、当然に必要なことであり、民間賭博を解禁する代わりに、対策を行えば足りるというものではない。ギャンブル依存症が重篤な疾患であることを看過し、さらに民間賭博を解禁するならば、ギャンブルに接する機会が増加するのであるから、依存症患者が増加することもまた、容易に予測できる。ギャンブル依存症は、その疾患を抱える者だけでなく、家族を始めとする周囲にも深刻な影響を及ぼすのであって、これ以上、新たなギャンブル依存症患者が増加するような施策を採ることは、許されるものではない。
以上より、カジノ解禁推進法は、当会がかねてから指摘している問題点について解消策が講じられておらず、その審議経過も拙速といわざるを得ない。
よって、当会は、カジノ解禁推進法の成立に断固抗議し、その廃止を求める。
2017年(平成29年)3月8日
岡山弁護士会 会長 水 田 美由紀

死刑執行に関する会長声明
2016年(平成28年)11月11日、福岡拘置所において、1名の死刑確定者に対して、死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。
にもかかわらず、またしても死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。最近では、死刑廃止又は事実上停止している国が140か国に上っているのに対し、死刑存置国は58か国に過ぎない。我が国は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けている。2013年(平成25年)5月31日に発表された国連拷問禁止委員会の総括所見においても、死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告を受けており、2014年(平成26年)7月24日に発表された国際人権(自由権)規約委員会の総括所見においても、死刑の廃止について十分に考慮することや、執行の事前告知、死刑確定者への処遇等をはじめとする制度の改善等の勧告を受けたばかりである。
日本弁護士連合会(以下、「日弁連」という。)は、2015年(平成27年)12月9日には法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまで全ての死刑の執行を停止することなどを求めた。
さらに、日弁連は、2016年(平成28年)10月7日に福井市で開催された第59回人権擁護大会で、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年(平成32年)までに死刑制度の廃止を目指すべきであること、死刑を廃止するに際して死刑が科されてきたような凶悪犯罪に対する代替刑を検討すること等を国に対して求めた。
当会においても本年9月10日にシンポジウム「徹底討論、死刑。―考え悩む世論―」を開催し、死刑制度についての議論を深める企画を行ったところである。
しかしながら、我が国においては、国際社会の趨勢に反し、当会及び日弁連の度重なる要請にもかかわらず、死刑の執行が続いており極めて遺憾である。
そこで、当会は、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、直ちに死刑の執行を停止した上で、2020年(平成32年)までに、死刑制度の廃止を目指すことを要請するものである。
2016年(平成28年)12月1日
岡山弁護士会  会長 水 田 美由紀

いわゆる共謀罪法案の提出に反対する会長声明
1 政府は,過去に3回廃案になった共謀罪法案に関し,テロ対策の必要性を新たな提出理由に加え,「共謀罪」という名称を「テロ等組織犯罪準備罪」に変更した組織犯罪処罰法改正案を今後の国会に提出する方針であると報じられている(以下,「提出予定新法案」という。)。
2 当会では,従前政府から提案されてきた共謀罪法案に対して,2016年1月に,共謀罪法案の問題点を指摘して,これに反対する声明を発表した。
3 提出予定新法案は,共謀罪法案と比較していくつかの修正が加えられている。しかし,その内容は以下に述べるとおり,罪刑法定主義により導かれる明確性の原則及び刑事法体系の基本原則に反するものであり,政府や捜査機関などの恣意的な運用により思想・信条の自由はもちろん,表現の自由,集会・結社の自由等の憲法上保障された基本的人権を侵害する危険性が含まれている。
まず,提出予定新法案は,適用対象を「組織的犯罪集団」とし,その定義について,「目的が4年以上の懲役・禁固の刑が定められている罪を実行することにある団体」とした。そして,犯罪の「遂行を2人以上で計画した者」を処罰することとし,その処罰に当たっては,計画をした誰かが「犯罪の実行のための資金又は物品の取得その他の準備行為が行われたとき」という要件を付した。
提出予定新法案における「組織的犯罪集団」の定義は不明確であり,その認定は捜査機関が個別に行うため,解釈によっては処罰される対象が拡大する危険性が高い。また,処罰要件とされている「計画」及び「準備行為」についても,何をもって「計画」がなされたと判断するのか基準が明確になっていない上に,「準備行為」も現行法上の予備罪における予備行為以前の危険性の乏しい行為を含むものであり,例えば,預貯金口座から単なる団体の運営資金を引き出す行為も,捜査機関によって犯罪実行に向けた資金の準備行為と認定されれば立件されうることになる。
以上のように,提出予定新法案の処罰範囲は広範かつ不明確であり,今般の刑事訴訟法改正に盛り込まれた通信傍受制度の拡大と合わさることによって,テロ対策の名のもとに広く市民の会話が監視・盗聴され,市民社会の在り方が大きく変わるおそれさえあると言わなければならない。
加えて,「計画」とは,「犯罪の合意」を意味し,結局のところ,特定の犯罪を複数人で謀議したという「共謀」を処罰することと同じく,行為そのものではなく,「合意」の危険性に着目して処罰しようとするものに他ならない。これは,外形的行為のない「意思」を処罰しないとする刑事法体系の基本原則に反するものである。
4 政府は,国連「越境組織犯罪防止条約」(以下,「条約」という。)締結のためにいわゆる「共謀罪」を創設する必要があるとしているが,同条約は,締結国についてそれぞれ国内法の基本原則に基づく立法上・行政上の措置をとればよいことを定めており,締結国に対しては組織犯罪対策のために未遂以前の段階での対応を可能とする立法措置を求めているに過ぎない。そして,わが国では,既に現行法上刑法をはじめとする個別の法律により,組織的な犯罪集団による犯行が予想される重大な主要犯罪については,例外的に予備罪・陰謀罪が定められており,未遂に至らない予備・陰謀の段階での犯罪を処罰することも可能となっている。したがって,同条約を締結するためにいわゆる「共謀罪」を創設する必要があるとの政府の説明は全くあてはまらない。
5 また,提出予定新法案は,テロ対策の必要性を新たな提出理由に加えているが,条約は経済目的の組織犯罪を適用対象としており,宗教的・政治的目的のテロ対策は目的となっていないことから,条約締結とテロ対策は無関係である。
そもそも,テロ対策との側面から提出予定新法案を検討しても,同法案は適用対象犯罪を単に「4年以上の懲役・禁固の刑が定められている罪」と形式的に定めた結果,その対象犯罪は600を超え,テロ犯罪・組織犯罪との結びつきが必然でない一般犯罪についてまで対象とされてしまっている。このように形式的に適用対象を定めたことは人権に対する配慮を欠き,あまりにも杜撰であると言わざるを得ない。
6 提出予定新法案は,憲法の保障する思想・信条の自由,表現の自由,集会・結社の自由などの基本的人権に対する重大な脅威となるばかりか,外形的行為のない「意思」を処罰しないとする刑事法体系の基本原則に反するものであるにもかかわらず,その制定の必要性に乏しいものであることから,当会は,いわゆる「共謀罪」を内容とする提出予定新法案の提出に強く反対する。
2016年(平成28)年11月9日
岡山弁護士会 会長 水 田 美由紀

沖縄における機動隊による地元紙記者排除に強く抗議する会長声明
1 沖縄県の米軍北部訓練場(東村高江など)の新たなヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)建設をめぐり,本年8月20日午前,工事車両の搬入を阻止するために県道上に座り込んでいた人たちに対し,警察官(機動隊員)が強制排除を始めたが,地元新聞社である琉球新報,沖縄タイムスの各記者がその模様を取材していた。
両新聞社を含む報道によると,その取材中に,琉球新報の記者は,機動隊員に両腕をつかまれ,背中を押されて約40メートルも移動させられた。その後,再度,機動隊員に両腕をつかまれ,警察車両の間に押し込められた。排除される際に,カメラに付けていた同社の腕章を示した上で,「新報の記者です。取材なんです。」と訴えたが,聞き入れられず,約15分間にわたって,取材の機会を奪われた。
また,沖縄タイムスの記者も,社員証を見せ,記者であることを訴えたにもかかわらず,琉球新報の記者と同様に,2度にわたって強制排除され,警察車両の間で身動きがとれない状況におかれるなどして,約30分間にわたって取材活動が制限された。
2 機動隊員による上記各行為は,憲法21条で保障されている国民の知る権利及びそれと表裏一体をなす報道の自由,同条の精神に照らして十分尊重されるべき取材の自由に対する重大な侵害である。
言うまでもなく,報道機関の報道は,民主主義社会において,国民が国政に関与するにつき,重要な判断の資料を提供し,国民の「知る権利」に奉仕するものである(最高裁大法廷昭和44年11月26日決定)。
今回の取材対象は,基地建設に抗議する市民を,国家権力である警察をもって強制排除する現場である。強制排除の法的根拠について疑問が示されるなか,国家権力の行き過ぎをチェックするため,現場取材から事実を報道し,広く国民に提供する報道機関の役割は極めて大きい。
3 また,特に沖縄の人々にとっては,近世まで独立国家として日本本土とは異なる歴史を歩み,太平洋戦争では住民を巻き込んだ大規模な地上戦が行われ,戦後米軍統治下を経て,昭和47年に本土復帰したという経緯から,米軍および日本政府が沖縄に対してどのような態度で臨んでいるのかを知ることは,沖縄の今後の在り方を考える上で極めて重要である。
地元紙2紙は,このような沖縄の歴史的な経緯を踏まえ,こうした沖縄の人々はもちろんのこと,広く国民に対しても,沖縄の抱える基地問題を考える上で不可欠な情報を継続的に提供し続けている。当会においても,2015年(平成27年)5月30日,沖縄の基地問題について,沖縄発の生の情報に基づき市民とともに考える,「沖縄と岡山から民主主義と安全保障を考える」と題した憲法講演会を開催したが,この集会により,沖縄で実際起きている事実や基地問題を巡る沖縄県民の感情を,多くの国民が知ることの重要性を再認識した。
4 当会は,今般,基地問題の最前線で起きている事実を伝えるという使命のもと取材を続けていた新聞記者が機動隊員により妨害され,報道の自由が侵害されたことに強く抗議し,今後同様の事態が発生しないよう強く申し入れるものである。
2016(平成28)年11月9日
岡山弁護士会  会長 水 田 美由紀

本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律に対する会長声明
1 2016(平成28)年5月24日,「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(以下「本法律」という。)が成立し,同年6月3日,施行された。
2 近年,特定の国籍や民族の人々の排斥を主張する,いわゆるヘイトスピーチが全国各地で繰り返し行われている。
ヘイトスピーチは,憲法で保障された個人の尊厳を著しく傷つけ差別意識を生じさせるものであり,その根絶が強く求められる。そのため,本法律が成立したことは,ヘイトスピーチ解消に向けた取組を前進させるものとして評価できる。
3 しかし,本法律は,「不当な差別的言動」の対象となる被害者を,「本邦外出身者」であって「適法に居住するもの」に限定しており,「本邦外出身者」以外の者や在留資格を有しない者に対するヘイトスピーチは許されるとの誤解を生じさせるおそれがある。そもそも在留資格いかんに関わらず,ヘイトスピーチは憲法14条が定める法の下の平等の精神に反し,国際人権規約(自由権規約)及び人種差別撤廃条約等国際条約が禁止する差別にあたるものであり許されない。本法律は速やかに改正すべきである。
4 また,本法律第4条は,地方公共団体に対しては努力義務を定めるにとどまっているところ,より実効的にヘイトスピーチを根絶するためには,地域に根差した地方公共団体による差別解消に向けた取組が欠かせない。
5 この点,衆議院法務委員会及び参議院法務委員会において,「『本邦外出身者に対する不当な差別的言動』以外のものであれば,いかなる差別的言動であっても許されるとの理解は誤り」であること,「地域社会に深刻な亀裂を生じさせている地方公共団体においては」不当な差別的言動の「解消に向けた取組に関する施策を着実に実施すること」等の附帯決議がなされており,この附帯決議に沿って本法律を解釈運用することが求められる。
6 当会は,国や地方公共団体に対し,本法律に基づいてヘイトスピーチの根絶に向けた具体的な施策を講じることを求めるとともに,国会に対しては,必要な改正及びヘイトスピーチ解消に向けた更なる法整備を速やかに行うよう求めるものである。
2016(平成28)年8月9日
岡山弁護士会 会長 水田 美由紀

死刑執行に反対する会長声明
2016年(平成28年)3月25日、大阪拘置所と福岡拘置所において、それぞれ1名の死刑確定者に対して、死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。
にもかかわらず、死刑に関する情報公開や国民的議論が行われないまま、前回の執行から約3か月後に死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。最近では、死刑廃止又は事実上停止している国が140か国に上っているのに対し、死刑存置国は58か国に過ぎない。我が国は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けている。2013年(平成25年)5月31日に発表された国連拷問禁止委員会の総括所見においても、死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告を受けており、2014年(平成26年)7月24日に発表された国際人権(自由権)規約委員会の総括所見においても、死刑の廃止について十分に考慮することや、執行の事前告知、死刑確定者への処遇等をはじめとする制度の改善等の勧告を受けたばかりである。
日本弁護士連合会は、2015年(平成27年)12月9日には岩城法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまで全ての死刑の執行を停止することなどを求めた。
当会においても昨年1月にシンポジウムを開催し、死刑制度についての議論を深める企画を行っているところである。
しかしながら、現実には、国際社会の潮流に反し、また、当会及び日本弁護士連合会が求める死刑制度に関する十分な国民的議論とその前提となる死刑制度に関する情報公開が全くなされないまま、死刑の執行が続いており極めて遺憾である。
そこで、当会は、改めて政府に対し、死刑の執行を停止し、我が国における死刑確定者の処遇、死刑執行対象者の決定手続と判断方法、死刑執行の具体的方法とその問題点等に関する情報を開示し、死刑存廃について国民の広範な議論を踏まえた上で、死刑制度の見直しを検討するよう、重ねて強く要請するものである。
2016年(平成28年)4月1日
岡山弁護士会  会長 水 田 美由紀

憲法尊重義務(憲法99条)を誠実に履行することを求める会長声明
2015年(平成27年)9月19日未明に参議院で安保法案は強行採決の末成立し、2016年(平成28年)3月29日、施行されるに至った。以後、自衛隊はこれまで経験したことのない領域に活動の範囲を拡大することとなり、戦後の防衛政策は一気にその性格を変貌することとなる。1954年(昭和29年)の自衛隊創設以来、一人の戦死者も出さず、一人の外国人も殺していない自衛隊が、安保法制の下でその危険に晒されることとなる。
われわれ弁護士、弁護士会は再三にわたって、集団的自衛権行使を容認する閣議決定の撤回及び安保法制反対を訴えてきた。なぜなら、まず、憲法9条のもとでは集団的自衛権は許されないとする歴代政権の解釈を、国民の意思を問うことなく一内閣の解釈で変更することは、立憲主義及び国民主権に反するからである。そして何よりも、集団的自衛権を認めることは、憲法9条及び前文で定める徹底した恒久平和主義に反するからである。したがって、昨年成立した安保法制は、明らかに憲法に反し無効な法律である。われわれ弁護士、弁護士会は、無効な法律の執行を許すことはできない。今後も、安保法制の違憲性を国民に訴え、その廃止を求める活動を国民とともに行う決意である。
ところで、安保法案が国会で審議される前の2015年(平成27年)4月頃から、安倍政権の日本国憲法軽視の姿勢が顕著になってきた。たとえば、文部科学大臣が国立大学に対し、国旗掲揚・国歌斉唱を要請すると答弁したが、これは明らかに憲法23条で保障された「学問の自由・大学の自治」を侵害する行為である。また、政権与党議員らによる放送局に対する干渉行為は、憲法21条で保障する「表現の自由・報道、放送の自由」に対する侵害である。
安保法制成立後は、さらに現憲法軽視の姿勢に拍車がかかり、放送局を所管する高市総務大臣の「電波停止発言」、立憲主義との関係で極めて問題のある緊急事態条項(国家緊急権)を、憲法上に組み込むべく憲法改正を行いたいとの発言等にみられるように、現憲法の理念や基本原則を無視あるいは軽視する言動が相次いでいる。
現憲法が占領下のもとでアメリカ合衆国に押し付けられたものであるので、憲法改正をして自主憲法を制定すべきと安倍晋三氏が個人として考える事、また、国務大臣が個人として安倍晋三氏の考えに同調するのは、それぞれに「思想・信条の自由」があるので本来自由である。しかし、憲法によってその権限行使に縛りをかけられている国家権力の中枢にいる内閣総理大臣や国務大臣には、その職責上、当然ながら憲法尊重義務が課されていることに鑑みると、上記のような現憲法を無視あるいは軽視する言動は、極めて問題であると言わざるを得ない。
よって、われわれ弁護士、弁護士会は、現憲法のもとで基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命(弁護士法1条)とされている立場から、現憲法の理念、基本原則を軽視あるいは無視するかのような言動を繰り返す安倍内閣総理大臣及び各国務大臣に対して、憲法尊重義務(憲法99条)を誠実に履行することを、強く求めるものである。
2016年(平成28年)3月30日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

国家緊急権の創設に反対する会長声明
安倍首相は、2015年(平成27年)11月開催の衆参予算委員会において国家緊急事態条項の創設に触れ、憲法改正に向けた姿勢を示した。
安倍首相が創設を目指す国家緊急事態条項とは、戦争、内乱、恐慌、大規模な自然災害など、平時の統治機構をもってしては対処できない非常事態において、国家権力が、国家の存立を維持するために、立憲的な憲法秩序(人権保障と権力分立)を一時停止して、非常措置をとる権限、つまり、憲法上のいわゆる国家緊急権のことを指している。安倍首相は、この国家緊急権は、東北大震災などの未曾有の災害時や、パリ同時多発テロ事件などの一連のテロ活動時に対しても、国民の生命・身体及び財産を守るために必要とする。
日本国憲法は基本的人権の保障を基本原理とし、立法、行政、司法の三権を分立することにより国家権力によって人権が侵害されないように規定している。憲法に国家緊急権を創設するということは、内閣総理大臣を長とする行政権力に対して人権保障及び権力分立制の停止権限を認めることであり、国家権力を制約して人権保障を実現しようとしている憲法の中に、人権を制約する権限を国家権力に付与する規定を創設する矛盾を含む。すなわち、国家緊急権の創設には、これを憲法的に厳格に枠づけようとすれば国家緊急権の意味をなさず、他方、国家緊急権を包括的・抽象的に定めれば国家緊急権に対する憲法による統制ができず人権侵害の危険性が増大するという問題がある。
日本国憲法が国家緊急権に関する規定を全く置いていないのは、一旦、国家緊急権が濫用されれば、憲法秩序の破壊や否定が容易に導かれるためであり、とりわけ我が国においては、過去、広範な国家緊急権を定めた大日本帝国憲法のもとで侵略戦争に邁進した過去を反省し、9条の戦争放棄条項により平和国家の確立を志向したためである。
また、日本国憲法が54条において参議院の緊急集会規定を置いた趣旨は、緊急時においても立法府による立法を可能にすることにある。
つまり、緊急時において人権を制限する法律を制定せざるを得ない場合においても、国民から選ばれた国会議員によることが必要であることを意味する。このことから、立憲主義に基づく憲法には安倍首相が考えているような国家緊急権は敢えて意図的に排除されていることを意味する。
歴史的にも、国家緊急権は国民の自由や権利を奪うことに使われてきた。ドイツでは、ワイマール憲法の国家緊急権の規定が濫用され、ヒトラーによる独裁に道を開くことになった。また、わが国でも、大日本帝国憲法の国家緊急権のひとつである戒厳宣告が関東大震災の混乱の中で発令され、この戒厳宣告がきっかけとなって軍隊により多くの朝鮮人・中国人が虐殺された事実がある(詳しくは2003年(平成15年)8月25日日弁連「関東大震災人権救済申立事件調査報告書」)。
以上より、一旦濫用されれば憲法秩序の破壊、否定に至る国家緊急権を、日本国憲法を改正して創設する必要は全くないのであって、外国からの武力攻撃、内乱、大災害などについては既に自衛隊法、警察法、災害対策基本法などが制定されており、これらによって対応すべきである。
よって、岡山弁護士会は、日本国憲法を改正して国家緊急権を創設することには断固反対する。
2016年(平成28年)3月9日
岡山弁護士会   会長 吉 岡 康 祐

高市早苗総務大臣をはじめとした政府並びに政権与党よる報道機関への圧力に強く抗議し、併せて高市早苗総務大臣の放送法に関する発言の撤回を求める会長声明
1 はじめに
高市早苗総務大臣は、2016年(平成28年)2月8日の衆議院予算委員会で、野党議員の質問に対し、「放送局が政治的な公平性を欠く放送を繰り返し、行政指導しても全く改善されない場合、それに対して何の対応もしないと約束するわけにはいかない」と述べた上、政府が放送局に対し放送法4条違反を理由に電波法76条に基づいて電波停止を命じる可能性に言及した。
その際「政治的に公平」の意味として、「国論を二分する政治課題で一方の政治的見解を取り上げず、ことさらに他の見解のみを取り上げてそれを支持する内容を相当時間にわたり繰り返す番組を放送した場合」などと例示し、総務省は「政治的公平」の解釈について「一つ一つの番組を見て、全体を判断する」との政府統一見解を発表した。
また、これに先立つ2014年(平成26年)11月26日、政権与党である自民党報道局長福井照衆議院議員は、「報道ステーション(テレビ朝日)」の報道内容に関し、番組プロデューサー宛てに「アベノミクスの効果が、大企業や富裕層のみに及び、それ以外の国民には及んでいないかのごとく断定する内容」であり「放送法4条4号の規定に照らし、同番組の編集及びスタジオの解説は十分な意を尽くしているとは言えない」と批判する文書を送っており、2015年(平成27年)4月17日には、「報道ステーション」の番組内で古賀茂明氏が自身の番組降板を巡って官邸から圧力があったと発言したことについて、自民党情報通信戦略調査会が、テレビ朝日の幹部に対し、事情聴取を行っている。
高市早苗総務大臣の発言はもとより、政権与党の所属議員や自民党情報通信戦略調査会によるこれらの行為は、政権与党に批判的な言論を抑圧する意図に基づいており、以下のとおり、憲法21条及び放送法で保障される報道機関の報道の自由に対する重大な侵害行為であり、到底許されない。
2 表現の自由と報道の自由
(1)表現の自由の価値
そもそも、表現の自由(憲法21条)は、「表現」そのものが個人の人格を発展させるという価値とともに、近代市民革命の原動力となった重要な権利の一つとして政府に対する批判を核心部分として発展してきたものであって、「表現(言論)」を通じて国民が政治的意思決定に関与するという価値を有することから、国民主権制度の下では極めて重要で、かつ、不可欠な人権である。
また、「表現の自由」を含めた精神的自由権は、一旦傷つくとその回復が困難なことから、経済的自由権より優越した地位を有するとされ、原則として制限することはできず、制限が許されるとしても、必要最小限でなければならないとされている。そのため、憲法は表現の自由に対する事前抑制を原則として禁止している(憲法21条2項参照)。
(2)報道の自由の価値
また、情報の「送り手」であるマス・メディアが発達した現代社会においては、社会生活において情報の持つ意義が飛躍的に増大している。そのため、個人が多種多様な情報や思想を求め、受けることができてこそ、個人それぞれが自分の思想や意見を形成し、それを表現することができると考えられている。
したがって、憲法21条が保障する表現の自由は、思想や情報を発表し伝達する自由(送り手の自由)のみならず、多種多様な情報や思想を求め、受ける自由(いわゆる「知る権利」)も含むものとされている。
さらに、マス・メディアが発達し、情報が集中している社会においては、「報道機関の報道」は、民主主義を維持するための国民の「知る権利」に奉仕する極めて重要な意義を有している。そして、「放送の自由」は、「報道の自由」の一環として、当然ながら、憲法21条によって保障されているのである。
3 放送法の趣旨
(1)基本目的
放送法1条では、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を保障」し、「健全な民主主義の発達」を目的としている。これは、戦前の日本放送協会が国家権力の宣伝機関になっていったことの反省から、放送局が国家権力から独立したものになるように、国家権力の介入を防ぐために規定されたものである。それを受けて、放送法3条では、「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、または規律されることがない」と規定している。この規定は、放送が周波数の割り当てという技術的理由によって無線局の免許という形で国家権力の介入を余儀なくされており、それゆえに国家権力による干渉や侵害の危険にさらされているところから、憲法21条の趣旨に照らして、当然のことをあえて明文化した規定である。
(2)放送法4条の趣旨
ところが、放送法1条で、「放送による表現の自由」が保障されているにも関わらず、放送法4条では、放送番組の編集に対し、「政治的公平」や、「多角的論点の提示」等の制約基準が示されている。これは、一般的には、放送は、新聞や雑誌と違って、放送の電波は限られており、放送局の数も制限されるので、放送局の放送が「公平でない場合」等の影響力が大きいからだと言われている。しかし、もし、この放送法4条が法的強制力を持つ強行法規で、同条に違反したら何らかの制裁を受けるとなると、同じ法律内に相矛盾する規定が存在することになるので、放送法4条は、放送局に対する倫理規範と解釈すべきであるとされている。すなわち、放送法4条で求められる「政治的公平」等の制約は、放送局側の自主的判断に委ねるという規定にすぎないのである。よって、放送法4条は、放送局に法的義務を課すものではなく、電波法76条1項や放送法174条の「違反したら電波停止や業務停止」にされる「法律」には含まれない。
4 高市早苗総務大臣及び与党議員や自民党調査会の行為の問題点高市早苗総務大臣が、放送法4条の「政治的に公平」という文言を行政指導の根拠とし、さらに違反した場合に電波法76条1項による電波停止の可能性にまで言及することは、放送事業者に対して「時の政府を批判する報道」を控えさせるに十分な言動であり、「重大な萎縮効果」が生じる。
さらに、政権与党所属の国会議員や自民党情報通信戦略調査会が、報道機関の報道内容を問題視して当該報道機関宛てに文書を送付したり、当該報道機関幹部に意見聴取を行ったりすることも、報道機関が、政権与党関係者らの出演を拒否され、あるいは放送免許を取り消される等の不利益を恐れて政権批判の報道を自粛することにつながる恐れがある。
したがって、このような行為は、実質的には政権批判報道を禁止するに等しく、報道・放送の自由に対する重大な侵害行為であると言わざるを得ない。
5 結語
よって、当会は、高市早苗総務大臣をはじめとした政府並びに、政権与党所属の国会議員及び自民党情報通信戦略調査会による報道機関への圧力に強く抗議するとともに、特に、高市早苗総務大臣に対しては、前記発言をすみやかに撤回することを求めるものである。2016年(平成28年)3月9日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

消費者庁・国民生活センター・消費者委員会の地方移転に反対する会長声明
現在,政府は「まち・ひと・しごと創生本部」の「政府関係機関移転に関する有識者会議」(以下「有識者会議」という。)において,消費者庁・国民生活センター・消費者委員会を徳島県に移転することを検討している。
東京一極集中を是正し地方を活性化させるため,政府関係機関を地方に移転するという政策は評価でき,これ自体に反対するものではない。しかし,消費者庁・国民生活センター・消費者委員会については,その果たすべき役割と機能に鑑みて,地方に移転する機関としては不適切であり,当会としてはこれに強く反対するものである。
そもそも有識者会議は,道府県等からの提案のうち,「中央省庁と日常的に一体として業務を行う機関」や「官邸と一体となり緊急対応を行う等の政府の危機管理業務を担う機関」に係る提案,「現在地から移転した場合に機能の維持が極めて困難となる提案」については受け付けないものとしている。
消費者庁は,従前多数の省庁に分散していた消費者行政を一元化し,その推進の司令塔的役割を果たすものとして創設された組織であるから,各種施策の実施や立法・法改正に当たっては関係する府省庁との密接な連携が不可欠な機関である。また,消費者の安全に関する重大事故の発生時には,官邸及び中央省庁等と一体となり緊急対応を行うことが求められている。
国民生活センターは,全国の消費生活相談情報を集約・分析し,消費者庁と連携して諸問題を検討して関連省庁に意見を述べ,地方消費者行政を支援し,消費者・事業者・地方自治体・各省庁に情報提供を行うという機能を有している。
消費者委員会は,消費者庁等からの諮問事項を審議するほか,自ら任意の問題を調査して他省庁への建議等を行うという監視機能を有している。他省庁からの諮問を受ける場合も建議等の監視機能を行使する場合も,他省庁や関連事業者,事業者団体からの事情聴取や協議が頻繁に行われている。
したがって,いずれの機関も有識者会議のいう地方移転の提案が受け付けられない典型例である。
さらに,消費者庁・国民生活センター・消費者委員会は,現在,長年にわたり消費者問題に関わり,豊富な知識経験を有する多くの任期付公務員,非常勤職員,審議会委員等により支えられているところ,遠隔地に移転した場合,現在と同様の人材を確保し,機能を維持することは極めて困難である。
以上からすれば,消費者庁・国民生活センター・消費者委員会が地方に移転した場合,国民の生命や健康にも密接に関わる消費者行政の円滑な遂行が大きく阻害されることは明白であり,その結果,消費者である日本全国の国民の安全や安心が脅かされる結果となれば本末転倒である。
よって,当会は,消費者庁,国民生活センター及び消費者委員会の地方移転について強く反対する。
2016年(平成28年)2月3日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

司法修習生に対する給費制の実現を求める会長声明
1 司法修習生とは,司法試験に合格後,裁判官・検察官・弁護士としての能力・素養を磨くために,最高裁判所所管の司法研修所に配属され,修習を1年間にわたり行う者をいう(司法修習制度)。司法修習生は,修習に専念する義務を負い,兼業(アルバイト)は原則禁止されている。また,裁判修習では法廷に立ち会い,検察修習では被疑者・被告人の取調べにも同席する。弁護修習では依頼者からの聴き取りにも同席する。したがって,当然のことながら,公務員や弁護士に課せられる守秘義務も負う。
戦後,司法制度改革の過程において,我が国の司法は,日本国憲法の下,三権の一翼として新たな役割を求められ,司法修習は,司法作用を担う将来の法曹(裁判官・検察官・弁護士)の養成のために,国家による法曹の統一的な養成制度(統一修習)として制度化された。したがって,三権の一翼を担う将来の法曹を養成する責任は国家にあり,司法修習制度発足後64年間にわたり,司法修習生には国家公務員水準の給費が支給されてきた。
2 しかし,司法制度改革により司法試験の合格者が大幅に増加したことに伴い,財政負担も増大することを主な理由として,2011年(平成23年)11月,新65期司法修習生より,従来の給費制を廃止し,貸与制(無給制)へと移行した。これにより,新65期以降の司法修習生は,1年間の修習期間,国から貸与を受けるか,貯金を取り崩すか,親族からの支援を受けるかして生活せざるを得なくなった。司法修習生は修習に専念する義務があり,アルバイトが原則禁止されており,また,修習生には十分な貯金もなく,親族からの支援を受けられる者も限られているので,多くの修習生は,国に貸与の申請をしているのが現状である。新65期から68期の修習生については,約70?90%の修習生が貸与の申請をしている(最高裁判所調べ)。修習生の平均貸与額は約300万円であり,さらに,法科大学院や大学時代の奨学金返還債務を合わせて負っている修習生も約50%弱存在し,1000万円の債務を負っている修習生も存在する(日本弁護士連合会調べ)。司法研修所を修了して法曹になった時点で,数百万円の借金を背負って社会に出るのである。それが,今の司法修習生の現実である。
それゆえ,たとえ司法試験に合格しても,修習期間は無給で,法曹になっても借金の返済が待っているとなれば,司法試験を目指す法曹志望者が減少するのは必然である。実際,司法修習生に対する給費制が廃止されて貸与制に移行した2011年(平成23年)の法科大学院受験生(20,497人)は,2004年(平成16年)の受験生(40,810人)の約半分に減少し,平成27年度の実際の入学者は過去最低の2,201人で,募集した54校のうち50校で定員割れとなっている。さらに,司法試験に合格しても,貸与制への不安から司法修習を辞退した者も現れている。
3 以上のように,法曹志望者減少の理由は,司法修習生に対する給費制の廃止が大きな要因となっていることは明らかである。このまま,修習生に対する貸与制を継続させると,ますます法曹志望者が減少するとともに,経済的に余裕のある家庭の者しか受験できなくなる可能性が高くなり,多種多様な人材が法曹になるべきとする司法改革の理念も実現できない。司法修習生に対する給費制の実現は,法曹志望者減少に歯止めをかけるためにも早急に実現されなければならない。
4 日本弁護士連合会や各単位会,あるいは若手弁護士や法科大学院生等で構成される任意団体であるビギナーズ・ネットは,司法修習生に対する給費制実現の活動を継続的に行ってきた。国会議員に対する要請や院内学習会も開催し,多くの国会議員がそれによって給費制に前向きな意識を持ってくれるようになった。衆参両院の717名の議員のうち過半数を超える議員から賛同のメッセージが日弁連に寄せられている。与野党を問わず,また世代を超えて賛同者が集まっている。司法修習生に対する給費の必要性に対する理解が得られつつあることの現れであり,当会としても心から歓迎する。
5 さらに,昨年6月30日,政府の法曹養成制度改革推進会議(議長:菅官房長官)が決定した「法曹養成制度改革の更なる推進について」において,「法務省は,最高裁判所等との連携・協力の下,司法修習の実態,司法修習終了後相当期間を経た法曹の収入等の経済状況,司法制度全体に対する合理的な財政負担の在り方等を踏まえ,司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討するものとする」との一節が盛り込まれた。
これは,これまでの法曹養成制度改革に関する政府組織での提言や決定等が「貸与制を前提」と明言していたことに比べて,一歩前進したものと評価する。6 三権の一翼を担う司法,それに携わる法曹を養成するのは国の責務である。国は,法曹養成のため司法修習生に対し給費を支給し,修習生が生活の心配をすることなく修習に専念できる環境を構築していく責任がある。
よって,当会は,国会に対しては,司法修習生に対する給費の実現を内容とする裁判所法の改正を早急に求めるとともに,内閣,最高裁判所に対しては,同法改正を実現するため,早急に必要な措置をとることを求めるものである。
2016年(平成28年)1月20日
岡山弁護士会 会 長  吉 岡 康 祐

【転載】余命3年時事日記 2345 ら特集岡山弁護士会①

2018年02月04日 | 在日韓国・朝鮮人
岡山弁護士会
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意見表明・お知らせ
ttp://www.okaben.or.jp/news/index.php?category=2
会 長 大 土   弘
2017.12.06
【 意見表明 】最低賃金の大幅引上げを求める会長声明
2017.11.07
【 意見表明 】臨時国会の召集に関する憲法53条後段の趣旨を遵守するよう求める会長声明
2017.11.07
【 意見表明 】民法の成年年齢引下げに反対する会長声明
2017.10.16
【 意見表明 】弁護士法人アディーレ法律事務所に関する岡山弁護士会臨時電話相談窓口について
2017.08.18
【 意見表明 】日本国憲法施行70年にあたり、憲法の基本原理を再確認し、これを守り抜く決意を新たにする会長声明
2017.08.03
【 意見表明 】会員の懲戒処分の公表
2017.07.19
【 意見表明 】死刑執行に関する会長声明
2017.06.15
【 意見表明 】「共謀罪」と実質的に変わらない,いわゆる「テロ等準備罪」を創設する 組織的犯罪処罰法改正法案の採決強行に抗議し,同法の廃止を含む見直しを求める会長声明
2017.05.10
【 意見表明 】修習給付金を支給すること等を内容とする改正裁判所法の成立にあたっての会長声明
2017.04.03
【 意見表明 】大土弘会長のあいさつを掲載しました

会長 水 田 美由紀
2017.03.08
【 意見表明 】「共謀罪」と実質的に変わらない,いわゆる「テロ等準備罪」を創設する組織犯罪処罰法改正法案の国会提出に反対する会長声明
2017.03.08
【 意見表明 】改めて少年法の適用年齢引下げに反対する会長声明
2017.03.08
【 意見表明 】「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(いわゆる「カジノ解禁推進法」)の成立に抗議し、法律の廃止を求める会長声明
2016.12.01
【 意見表明 】死刑執行に関する会長声明
2016.11.09
【 意見表明 】いわゆる共謀罪法案の提出に反対する会長声明
2016.11.09
【 意見表明 】沖縄における機動隊による地元紙記者排除に強く抗議する会長声明
2016.08.09
【 意見表明 】本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律に対する会長声明
2016.07.13
【 意見表明 】ハンセン病「特別法廷」最高裁判所調査報告に関する会長声明
2016.06.08
【 意見表明 】朝鮮学校に対する適正な補助金交付を求める会長声明
2016.04.20
【 意見表明 】消費者契約法改正についての意見書
2016.04.18
【 意見表明 】熊本地震発生にあたっての会長談話
2016.04.01
【 意見表明 】水田美由紀会長のあいさつを掲載しました
2016.04.01
【 意見表明 】死刑執行に反対する会長声明

会長 吉 岡 康 祐
2016.03.30
【 意見表明 】憲法尊重義務(憲法99条)を誠実に履行することを求める会長声明
2016.03.09
【 意見表明 】高齢者の消費者被害の予防と救済のためのネットワークづくりに関する要望書
2016.03.09
【 意見表明 】国家緊急権の創設に反対する会長声明
2016.03.09
【 意見表明 】高市早苗総務大臣をはじめとした政府並びに政権与党よる報道機関への圧力に強く抗議し、併せて高市早苗総務大臣の放送法に関する発言の撤回を求める会長声明
2016.03.09
【 意見表明 】ハンセン病を理由とした最高裁判所の「特別法廷」指定に関する会長声明
2016.02.03
【 意見表明 】消費者庁・国民生活センター・消費者委員会の地方移転に反対する会長声明
2016.01.20
【 意見表明 】司法修習生に対する給費制の実現を求める会長声明
2016.01.15
【 意見表明 】夫婦同氏制を定める民法750条の規定を合憲とする最高裁判所大法廷判決に対する会長声明
2016.01.13
【 意見表明 】共謀罪規定の新設に反対する会長声明
2016.01.13
【 意見表明 】女性の再婚禁止期間を定めた民法第733条第1項の一部について憲法違反とする最高裁判所大法廷判決に関する会長声明
2016.01.13
【 意見表明 】死刑執行に反対する会長声明
2015.09.30
【 意見表明 】面会室における写真撮影に関する東京高裁判決に対する会長声明
2015.09.24
【 意見表明 】安保法案を提出した安倍内閣、これに賛成した全ての国会議員に対する会長コメント
2015.09.24
【 意見表明 】参議院の安保法案強行採決に抗議する会長声明
2015.08.12
【 意見表明 】戦後70年を迎えるにあたっての会長談話
2015.07.22
【 意見表明 】安保法制改正法案の強行採決に抗議する岡山弁護士会歴代会長有志による声明
2015.07.16
【 意見表明 】衆議院の安保法案強行採決に反対する会長声明
2015.07.08
【 意見表明 】死刑執行に関する会長声明
2015.06.10
【 意見表明 】生活保護の住宅扶助基準、冬季加算の引下げに反対する会長声明
2015.05.13
【 意見表明 】少年法の適用年齢引下げに反対する会長声明
2015.05.13
【 意見表明 】「集団的自衛権行使容認の閣議決定」の撤回を求め、「新ガイドライン」及び「平和安全法制案」に反対する会長声明
2015.04.22
【 意見表明 】国立大学の国旗・国歌の扱いに対する不当な介入に反対する会長声明
2015.04.22
【 意見表明 】労働者派遣法改正案に三たび,反対する会長声明 2015.04.03
【 意見表明 】吉岡康祐会長のあいさつを掲載しました

会長 佐々木 浩 史
2015.03.11
【 意見表明 】労働時間規制の緩和に反対する会長声明
2015.03.11
【 意見表明 】商品先物取引法における不招請勧誘禁止を緩和する省令に抗議する会長声明
2014.11.12
【 意見表明 】「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案」に反対する会長声明
2014.10.22
【 意見表明 】「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する会長声明 2014.10.22
【 意見表明 】裁判所予算の増額を求める会長声明
2014.09.17
【 意見表明 】貸金業規制緩和に反対する会長声明
2014.09.17
【 意見表明 】死刑執行に関する会長声明
2014.08.06
【 意見表明 】過疎地公共交通支援に関する意見書
2014.08.06
【 意見表明 】 「金融商品取引法施行令の一部を改正する政令(案)」等(商品関連市場デリバティブ取引に係る行為規制関係)に関する会長声明
2014.07.09
【 意見表明 】集団的自衛権行使を容認する閣議決定に強く抗議し,その撤回を求める会長声明
2014.07.09
【 意見表明 】死刑執行に関する会長声明
2014.06.11
【 意見表明 】「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」報告書を受けて発表された「基本的方向性」に対する会長声明
2014.06.11
【 意見表明 】法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会・事務当局試案に関する会長声明
2014.05.14
【 意見表明 】集団的自衛権行使容認に反対する会長声明
2014.04.22
【 意見表明 】「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案」に反対する会長声明
2014.04.22
【 意見表明 】「商品先物取引法施行規則」及び「商品先物取引業者の監督の基本的な指針」改正案に対する意見書
2014.04.09
【 意見表明 】福川律美元会員に対する刑事事件の上告取下げを受けての会長談話
2014.04.01
【 意見表明 】「生活保護法施行規則の一部を改正する省令(案)」に抜本的修正を求める会長声明

会長 近 藤 幸 夫
2014.01.29
【 意見表明 】福川律美元会員に対する控訴審判決を受けての会長談話
2014.01.15
【 意見表明 】司法修習生に対する前期(集合)修習の実施を求める会長声明
2013.12.13
【 意見表明 】死刑執行に関する会長声明
2013.12.07
【 意見表明 】特定秘密保護法案の参議院採決強行に抗議し,改めて同法の廃止を含む見直しを求める会長声明
2013.12.04
【 意見表明 】司法修習生に対する給費制の復活を求める会長声明
2013.11.26
【 意見表明 】特定秘密保護法案衆議院採決についての談話
2013.11.13
【 意見表明 】商品先物取引についての不招請勧誘禁止撤廃に反対し,改正金融商品取引法施行令に同取引に関する市場デリバティブを加えることを求める会長声明
2013.10.09
【 意見表明 】「特定秘密の保護に関する法律」制定に反対する会長声明
2013.09.17
【 意見表明 】死刑執行に関する会長声明
2013.09.10
【 意見表明 】中国地方弁護士会連合会ホームページ開設のお知らせ
2013.08.28
【 意見表明 】福川律美元会員に対する判決言渡を受けての会長談話
2013.07.01
【 意見表明 】憲法96条改正に関する会長声明
2013.06.12
【 意見表明 】橋下徹氏の「慰安婦」等に関する発言に対する会長声明
2013.06.12
【 意見表明 】小野市福祉給付制度適正化条例の廃止を求める会長声明
2013.06.12
【 意見表明 】生活保護法改正に反対する会長声明
2013.06.12
【 意見表明 】東京電力福島第一原子力発電所事故による損害賠償請求権の消滅時効につき特別の立法措置を求める会長声明
2013.05.15
【 意見表明 】死刑執行に関する会長声明
2013.05.15
【 意見表明 】「菊池事件」について検察官による再審請求を求める会長声明
2013.04.30
【 意見表明 】福川問題検証委員会からの報告書提出を受けての会長談話
2013.04.30
【 意見表明 】ホームページ復旧とサーバーへの不正アクセスのお知らせとお願い【重要】
2013.04.23
【 意見表明 】福川律美元会員の第一回公判期日を受けての会長談話
2013.04.05
【 意見表明 】福川律美会員の弁護士資格喪失についての会長談話

会 長  火 矢 悦 治
2013.03.11
【 意見表明 】当会の福川律美会員の破産手続開始決定についての会長談話
2013.03.11
【 意見表明 】裁判員制度施行3年目を迎えて  岡山弁護士会の提言
2013.02.25
【 意見表明 】死刑執行に関する会長声明
2013.02.08
【 意見表明 】当会の福川律美会員の追起訴についての会長談話 2013.01.23
【 意見表明 】地方の法科大学院の存続発展に関する会長声明
2013.01.23
【 意見表明 】司法修習生に対する給費制の復活を求める会長声明
2013.01.18
【 意見表明 】当会会員の追起訴についての会長談話
2012.12.28
【 意見表明 】当会会員の起訴についての会長談話
2012.12.10
【 意見表明 】福川弁護士問題・依頼者対応センター
2012.12.10
【 意見表明 】当会会員の逮捕についての会長談話
2012.11.21
【 意見表明 】生活保護基準の切り下げに反対する会長声明
2012.11.21
【 意見表明 】遠隔操作による脅迫メール事件等の取調べについての会長声明
2012.10.10
【 意見表明 】死刑執行に関する会長声明
2012.09.10
【 意見表明 】改正貸金業法完全施行後2年を迎えての会長声明 2012.08.08
【 意見表明 】生活保護に関する偏見や差別を助長しない報道と,生活保護制度についての慎重な議論および適切な生活保護行政の実施を求める会長声明
2012.08.08
【 意見表明 】死刑執行に関する会長声明
2012.05.10
【 意見表明 】秘密保全法制に反対する会長声明
2012.04.02
【 意見表明 】死刑執行に関する会長声明

会長  的 場 真 介
2011.12.26
【 意見表明 】外国籍会員の参与員選任を求める会長声明
2011.11.06
【 意見表明 】岡山弁護士会ハンセン病問題を考える集会における集会決議
2011.10.12
【 意見表明 】武富士の更生計画案の決議に関する会長声明
2011.10.12
【 意見表明 】国選弁護報酬基準及びその運用の抜本的見直しを求める会長声明
2011.09.12
【 意見表明 】提携リース契約を規制する法律の制定を求める意見書
2011.07.13
【 意見表明 】給費制の存続を求める会長声明
2011.04.01
【 意見表明 】東日本大震災会長声明
会 長  河 村 英 紀
2011.01.12
【 意見表明 】交通基本法案意見書
2011.01.12
【 意見表明 】修習生給費制会長声明
2010.12.01
【 意見表明 】たすっぴに決まりました
2010.11.12
【 意見表明 】秋田弁護士会所属弁護士殺害に関する会長声明
2010.07.14
【 意見表明 】給費制に関する会長声明
2010.05.14
【 意見表明 】労働者派遣法抜本的修正を求める会長声明
2010.04.22
【 意見表明 】公訴時効廃止・延長に反対する会長声明

会長 東 ?司
2010.02.10
【 意見表明 】国選付添人制度の拡充を求める会長声明

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安保法制改正法案の強行採決に抗議する岡山弁護士会歴代会長有志による声明
ttp://www.okaben.or.jp/news/index.php?c=topics_view&pk=1437616236
 安倍内閣は,昨年7月1日,歴代政府による従前の憲法解釈を変更し,集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行い,これに基づき今国会に集団的自衛権の行使を可能とする自衛隊法・武力事態対処法等の安全保障法制改正案を提出し,7月16日衆議院はこれらを全て可決する強行採決をした。
 しかし,現憲法のもとで行使できるのは個別的自衛権に限られるという長年積み重ねられてきた歴代政府の憲法解釈を一内閣の判断で変更することは,憲法は国家権力を縛るという立憲主義に反し,ひいては国民の意思にも反している。
 さらに,安全保障法制改正案は,「存立危機事態」という不明確な概念のもとで,自衛隊が米軍その他の外国軍隊とともに,時間的,場所的な制約なしに武力行使することに道を開くこととなり,「我が国に対する武力攻撃が発生した場合にこれを排除する必要最小限度の実力行使」(合憲とする枠組み)という範疇を踏み外し,これにより「武力の行使による国際紛争の解決」を禁じた憲法9条に違反することは明らかである。
 このような理由からほとんどの憲法研究者が憲法違反と言い,数々の世論調査の結果からも多くの国民が反対していることが明らかな安全保障法制改正案の強行採決は,憲法の平和主義,立憲主義,国民主権に反する暴挙である。よって,政府に対して法案の撤回を求めるとともに,国会に対して法案を廃案とするよう求める。
平成27年7月22日

昭和52年度 会長 一井淳治     昭和57年度 会長 井藤勝義
昭和58年度 会長 陶浪保夫     昭和60年度 会長 片山邦宏
昭和61年度 会長 田淵浩介     昭和63年度 会長 奥津 亘
平成 2年度 会長 河原昭文     平成 7年度 会長 高原勝哉
平成 8年度 会長 西田秀史     平成 9年度 会長 佐々木齊
平成10年度 会長 平井昭夫     平成11年度 会長 西田三千代
平成13年度 会長 山崎博幸     平成14年度 会長 和田朝治
平成15年度 会長 水谷 賢     平成16年度 会長 河田英正
平成17年度 会長 平松敏男     平成18年度 会長 大石和昭
平成19年度 会長 中野 惇     平成20年度 会長 秋山義信
平成21年度 会長 東 隆司     平成22年度 会長 河村英紀
平成23年度 会長 的場真介     平成24年度 会長 火矢悦治
平成25年度 会長 近藤幸夫     平成26年度 会長 佐々木浩史
平成27年度 会長 吉岡康祐

朝鮮学校に対する適正な補助金交付を求める会長
声明
1 文部科学省は,2016(平成28)年3月29日,朝鮮学校が所在する28都道府県に対し,「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について(通知)」(以下,「本通知」という。)を通知した。本通知は,各都道府県知事に対して,「朝鮮学校に関しては,我が国政府としては,北朝鮮と密接な関係を有する団体である朝鮮総聯が,その教育を重要視し,教育内容,人事及び財政に影響を及ぼしているものと認識して」いるとした上で,各地方公共団体に対して,「朝鮮学校の運営に係る上記のような特性も考慮の上,朝鮮学校に通う子供に与える影響にも十分に配慮しつつ,朝鮮学校に係る補助金の公益性,教育振興上の効果等に関する十分な御検討とともに,補助金の趣旨・目的に沿った適正かつ透明性のある執行の確保」を求めている。
本通知に先立つ自由民主党の「北朝鮮による弾道ミサイル発射に対する緊急党声明」では,「対北朝鮮措置に関する要請」13項目の制裁強化策を速やかに実施するよう求めているところ,同要請第7項が「朝鮮学校へ補助金を支出している地方公共団体に対し,公益性の有無を厳しく指摘し,全面停止を強く指導・助言すること」とされていること,現に本通知を受けて補助金の交付停止を検討・決定する地方公共団体も出てきていることに鑑みれば,本通知は,政府が外交的な理由から各地方公共団体に対し,朝鮮学校に対する補助金交付を停止するよう求めたものと評価せざるを得ない。
2 そもそも,朝鮮学校に対する補助金の支給は,朝鮮学校に在籍する生徒が憲法第26条第1項,子どもの権利に関する条約第30条,国際人権規約A規約(「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)」)第13条などにより保障されている学習権を実質的に保障するために行われている措置である。大阪高判平成26年7月8日(判例時報2232号34頁等参照)では,朝鮮学校は,「民族教育を軸に据えた学校教育を実施する場として既に社会的評価が形成されている」学校であると認定しているが,それは,外国人も自らの社会的背景にある文化,歴史などを学習する権利があること及びその権利は社会的に評価されていることを認めたものに他ならない。
それにもかかわらず,朝鮮学校に在籍する生徒とは無関係な外交問題・政治問題を理由として朝鮮学校への補助金を停止することは,憲法第14条,国際人権A規約,国際人権B規約(「市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)」),人種差別撤廃条約(「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する条約」)及び子どもの権利条約が禁止する不当な差別に該当する。
また,本通知やそれに続く補助金の不交付,交付の留保は,朝鮮学校に通う子どもたちに社会からの疎外感を与えるとともに,朝鮮学校の子どもたちへの不当な差別を助長する可能性が高く,この点からも到底容認することができない。
3 2014(平成26)年8月28日に採択された国連人種差別撤廃委員会による「日本の第7回・第8回・第9回定期報告に関する最終見解」においても,地方公共団体による朝鮮学校に対する補助金の停止あるいは継続的な縮小を含む,在日朝鮮人の子供の教育を受ける権利を妨げる政府の行動について懸念が指摘されているところである。さらに,上記最終見解でも指摘されているとおり,我が国ではとりわけ韓国・朝鮮人に対して人種的ヘイトスピーチが広がっている現状がある。このような状況下において,本通知のように差別を助長する可能性のある措置は厳に慎むべきである。
4 子どもたちは人類の未来を担う存在であり,その学習権を保障することは,子どもたちが一個の人格として成長・発達するために重要である。その対象として,朝鮮学校に通う子どもたちも例外ではない。
5 当会は,以上の理由から,文部科学省に対し,本通知を速やかに撤回することを求める。また,岡山県をはじめとする各都道府県に対し,憲法及び各種条約に違反する本通知に拘束されることなく,朝鮮学校に対する補助金について,停止または縮小することなく交付することを強く求めるものである。
2016(平成28)年6月8日
岡山弁護士会 会長 水 田 美由紀

国立大学の国旗・国歌の扱いに対する不当な介入に反対する会長声明
 安倍首相は、本年4月9日、参議院予算委員会で、次世代の党の松沢成文氏の、国立大学の入学式や卒業式での国旗掲揚、国歌斉唱に関する質問に対して、国立大学が「税金によって賄われていることに鑑みれば、教育基本法にのっとって正しく実施されるべき」と答弁し、これを受けて、下村博文文部科学相が「広く国民に定着し、国旗国歌法が施行されたことを踏まえて、各大学で適切な対応が取られるよう要請したい」と述べた。
 しかし、安倍首相の答弁、下村文科相の発言は、それ自体が、政府(国家権力)による大学への不当な介入行為であり、憲法23条及び教育基本法7条2項に反し許されない。
 そもそも憲法23条は、憲法19条(思想良心の自由)、憲法21条(表現の自由)とは別個に「学問の自由」を保障している。これは、明治憲法下において、滝川事件や天皇機関説事件などで、「学問の自由」が国家権力によって不当に侵害された苦い経験の反省から、特に規定されたものである。そして、「学問の自由」は、沿革的には大学の学問の自由がその中心にあり、大学の人事、学問研究、教育、運営などにつき、国家権力などの外部勢力が不当に干渉するときは、学問の自由に対する侵害の危険が生ずることから、特に大学に限って学問の自由を実質的に担保するために「大学の自治」が認められているのである。また、この憲法23条の趣旨を受けて、教育基本法7条2項でも、「自主性、自立性その他大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない」と規定されている。
 加えて、安倍首相の答弁及び下村文科相の発言は、政府の要請に従わなければ予算配分に影響を与えるという意味が含まれているとしか受け取ることができず、国立大学に対して、国旗掲揚、国歌斉唱を事実上強制することとなり、国立大学の自主性を著しく侵害する。また、国家予算が投入されているのは国立大学だけでなく、私立大学も同じであるので、安倍首相の答弁は、国立大学のみならず、私立大学を含めた全ての大学の自治を侵害する行為と言わざるを得ない。
 よって、当会は、政府が国立大学に対して国旗掲揚、国歌斉唱を要請すること自体に強く反対し、安倍首相に対しては、参議院予算委員会での、国立大学に対する国旗掲揚、国歌斉唱が正しく実施されるべきとする答弁は、憲法23条、教育基本法7条2項で保障された大学の自治を侵害するので撤回するよう求めるとともに、文科省に対しても、国旗掲揚、国歌斉唱を国立大学に要請するとの方針を撤回するよう求める。
2015年(平成27年)4月22日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

外国籍会員の参与員選任を求める会長声明
1 当会は,2011年(平成23年)10月17日,岡山家庭裁判所からの推薦依頼を受けて,2012年(平成24年)1月1日からの任期の参与員について,2011年(平成23年)11月7日付けにて,外国籍弁護士1名を含む15名の参与員候補者を当会会員の中から推薦した。
ところが,2011年(平成23年)12月12日,岡山家庭裁判所から,日本国籍を有しない者については参与員に選任しない旨の連絡があった。その理由の概要は,参与員は,審判に立ち合って家事審判官に意見を述べ(家事審判法第3条1項),あるいは,人事訴訟において,審理又は和解の試みに立ち会って,裁判所に意見を述べる(人事訴訟法第9条1項)立場にあるため,公権力の行使または国家意思の形成への参画にたずさわる公務員に該当するというものである。
2 しかしながら,法律にも,最高裁判所規則にも,参与員について日本国籍を要求する条項は存在せず,ただ,「徳望良識のある者」(参与員規則 第1条)とされているのみである。最高裁判所のホームページにおいても,参与員については,「選任されるための特別な資格などは必要ではなく,人望があって,社会人としての健全な良識のある人から選ばれています。」と説明されているに留まる。
3 参与員の上記のような職務に鑑みれば,弁護士としての専門的知識を備え,あるいは,社会生活の上での日本の社会制度や文化,そこに住む市民の考え方に精通し,人格識見を備えた人物であれば,参与員としての資質に欠けるところはなく,日本国籍の有無を問題とすべきではない。ことに今回,参与員として選任されなかった会員は,永住資格を有し,司法修習を終え,弁護士としての経験を積み,参与員としての能力・適格性を十分に備えているものである。
また,参与員の職務の内容は,裁判所・家事審判官の補助機能しかなく,いわゆる公権力の行使に当たるものではない。破産管財人,相続財産管理人,不在者財産管理人など,公的側面も有する職務について,外国籍の弁護士等の就任が認められていることに照らしても,参与員が,審理に立ち会い,家事審判官に意見を述べる立場等にあることをもって,外国籍の者を参与員に選任しないとすることには,合理性を見出しがたく,国籍を理由とする不合理な差別というほかなく、これを是認することは到底できない。
4 よって,当会は,岡山家庭裁判所に対して,当会が推薦した外国籍の会員についても参与員に選任するよう改めて求めるものである。
2011年(平成23年)12月26日
岡山弁護士会 会長  的 場 真

<PDファイル縦書きです。>
安保法案を提出した安倍内閣、これに賛成した全ての国会議員に対する会長コメント
ttp://www.okaben.or.jp/news/index.php?c=topics_view&pk=1443080940
憲法はあなたのためのものじゃない
まもり護って国の礎
2015年(平成年27年)9月24日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

臨時国会の召集に関する憲法53条後段の趣旨を遵守するよう求める会長声明
2017(平成29)年6月22日,野党所属議員らは森友学園及び加計学園と安倍晋三内閣総理大臣の関係についての疑惑解明を目的とした臨時国会の召集を求める要求書を内閣に提出した。
ところが,安倍内閣は3か月余りこれを放置してきた。そのうえ,2017(平成29)年9月28日,臨時国会を召集したその冒頭に衆議院を解散した。
憲法53条後段は,臨時国会の召集に関し,「いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば,内閣は,その召集を決定しなければならない。」と定めている。この規定の趣旨は,議院内閣制のもとで,国会内の少数派が内閣に対して臨時国会の召集を義務付けることにより,少数派の提起する案件について国会で議論する機会を保障し,民主主義を徹底しようとする点にある。
したがって,国会法には召集要求があった際の召集期間に関する規定が存在していないところであるが,臨時国会召集のための事務手続に要する期間を考慮しても,内閣は速やかに臨時国会を召集し,要求のあった案件について国会審議がなされるべきである。
今回,「総議員の4分の1」という要件を満たした召集要求があったにもかかわらず,安倍内閣が3か月以上これを放置したあげく,臨時国会を召集したその冒頭に衆議院を解散したことは,議院内閣制のもとで少数派に保障された臨時国会召集要求権をないがしろにし,少数派の提起する案件について国会で議論する機会を奪うものであるから,憲法53条後段の趣旨を実質的に没却することは明らかである。
安倍内閣は,2015(平成27)年にも,野党所属議員らからの臨時国会の召集要求に応じなかった。以上のような安倍内閣の態度は,国会において多種多様な観点から議論を行うという民主主義の根本原理に反し,許されない。
したがって,当会は,内閣に対し,臨時国会の召集に関する憲法53条後段の趣旨を遵守するよう求めるとともに,国会に対し,憲法53条後段に基づく召集要求があった場合の召集手続に関する国会法の整備を行うよう求める。
2017(平成29)年11月7日
岡山弁護士会  会長  大 土  弘

民法の成年年齢引下げに反対する会長声明
第1 はじめに
現在,民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正法案の立案作業が進められている。
しかし,次の理由から,民法の成年年齢を引き下げることに反対する。
第2 成年年齢引下げによる弊害は大きい
1.未成年者取消権の喪失による消費者被害の拡大
(1)民法は,未成年者が,親権者の同意なく単独で行った法律行為につき,取消権を認めている(民法第5条
第2項)。この未成年者取消権が認められた趣旨は,社会経験が乏しく判断能力が未熟な未成年者を保護する
ためである。
若年者は,社会経験の乏しさや判断能力の未熟さから,違法・不当な契約の勧誘に脆弱な面があること
から,様々な消費者被害が発生している。
また,若年者は,学校等における先輩後輩関係や友人関係等の影響を受けやすく,そういった人間関係から被害が拡大しやすい。さらに,被害に遭ったときに適切な対応ができないため問題を抱え込んでしまうことも少なくない。
そのため,未成年者取消権は,未成年者保護のために重要である。(2)未成年者取消権は,未成年者に対する違法・不当な契約の締結を勧誘する悪質な事業者に対する抑止力としての機能も有している。
未成年者取消権が抑止力として機能していることは,全国の消費生活センター等に寄せられる相談件数が,18歳から19歳までの平均値と20歳から22歳までの平均値を比較すると,20歳から22歳までの平均値が18歳から19歳までの平均値の約1.55倍と増えていること(平成27年度)からも推認できる。
すなわち,悪質な業者は,未成年者取消権を失った直後の若者を狙って勧誘をしているために,20歳を境に相談件数が増加していると考えられる。そのため,未成年者が18歳に引き下げられれば,18歳を境に消費者被害が増加すると考えられる。
さらに,18歳及び19歳の若年者は,20歳を超えた若年者と比較して,より社会経験に乏しく判断能力が未熟であるため,消費者被害が拡大することが容易に予想できる。
(3)このように,成年年齢の引下げにより,18歳及び19歳の若年者が未成年者取消権を行使できなくなる結果,消費者被害が拡大することが懸念される。
2.労働契約の解除権の喪失に伴う労働者被害の拡大
労働基準法第58条2項は,「親権者若しくは後見人又は行政官庁は,労働契約が未成年者に不利であると認める場合においては,将来に向ってこれを解除することができる」と規定し,未成年者の労働契約について,未成年者にとって不利な労働契約の解除権を認めている。
民法の成年年齢を引き下げた場合,18歳及び19歳の若年者は,民法の未成年者取消権による保護だけではなく,労働基準法第58条第2項の解除権による保護も受けられなくなる可能性が高く,解除権による抑止力が働かなくなる結果,労働条件の劣悪ないわゆるブラック企業等による労働者被害が18歳及び19歳の若年者の間で一気に拡大する可能性がある。
3.若年者の消費者被害拡大のおそれに対する対策が不十分である(1)法制審議会「民法の成年年齢引下げについての最終報告書」(以下「最終報告書」という。)は民法の成年年齢を18歳に引き下げるのが適当であるとの結論を出している。ただし,最終報告書も,成年年齢の引下げのためには,消費者被害の拡大のおそれ等の問題点の解決に資する施策が実現される必要があるとの留保をつけている。
しかし,次のとおり,消費者被害の拡大のおそれ等の問題点の解決に資する施策は実現していないことからも,成年年齢を引き下げるべきではない。
(2)最終報告書においても,若年者の社会的経験の乏しさによる判断力の不足に乗じて取引が行われた場合(以下「『つけ込み型』勧誘の類型」という。)に,契約を取り消すことができるようにする等の施策の充実を図る必要があるとされた。
また,平成29年8月8日付の「消費者委員会答申書」においても,「つけ込み型」勧誘の類型についての消費者の取消権につき,早急に検討し明らかにすべき喫緊の課題とされている。
しかし,平成29年8月21日,消費者庁により,消費者契約法の見直しに関する意見公募手続が実施されたが,その意見募集対象である消費者契約法の改正に関する規定案には,「つけ込み型」勧誘の類型について,取消権を認める等の規定案は含まれていない。そのため,次回の消費者契約法改正において,「つけ込み型」勧誘の類型について,消費者の保護の規定が追加される可能性は低い。
(3)このように,若年者の消費者被害拡大のおそれを防ぐための施策がなされているとはいえない状況である。
第3 まとめ
以上のとおり,民法の成年年齢の引下げにより,18歳及び19歳の若年者への消費者被害を拡大させ,また,労働者として搾取される等の被害を増加させるおそれが高いことから,当会は,民法の成年年齢の引下げに反対する。
2017(平成29)年11月7日
岡山弁護士会  会長  大 土  弘

日本国憲法施行70年にあたり、憲法の基本原理を再確認し、
これを守り抜く決意を新たにする会長声明
日本国憲法が1947(昭和22)年5月3日に施行され、今年で70年を迎えた。
この70年間、日本国民は、基本的人権の尊重、国民主権、恒久平和主義という憲法の基本原理や、憲法が最高法規として国家権力の濫用から国民の人権を保障するという立憲主義の理念を不断の努力によって守り抜いてきた。
憲法9条については、1960年代の憲法調査会の設置など、何度も改変の危機があったにもかかわらず、第二次世界大戦で膨大な犠牲を払うことを強いられた国民の、戦争を二度と起こしてはならないという強い決意と行動の結果、明文による憲法改正を許さず、今日に至っている。
また、憲法25条の生存権についていえば、ここ岡山において、国立岡山療養所に入所していた朝日茂さんが立ち上がった、いわゆる朝日訴訟が「健康で文化的な最低限度の生活」の実質的な保障につながる第一歩となった。
しかし、いま、日本国憲法は最大の危機に瀕している。
2014(平成26)年7月の閣議決定で、従来の政府の憲法解釈が変更されて、集団的自衛権の行使が容認された。これに対しては、当会を含む全国各地の弁護士会や圧倒的多数の憲法学者が憲法違反であるとの声明を出していたにもかかわらず、2015(平成27)年9月には新たな安全保障法制が成立した。こうして、憲法の基本原理である平和主義にかかわる重大な解釈を、憲法改正手続を経ずに変更した。 そして、新たな安全保障法制のもとで、早速、南スーダンに派遣されている陸上自衛隊の部隊に「駆けつけ警護」の新任務が付与された。その上、米国と北朝鮮の緊張関係の高まりを契機として、国民に対する十分な説明がなされないまま、2017(平成29)年5月に米国の艦船を自衛隊の艦船が守る「武器等防護」が、日本近海において初めて実施された。
さらに、2017(平成29)年6月に委員会採決を省略するという異例の強行採決によって成立した、いわゆる共謀罪法(組織犯罪処罰法改正法)によって、プライバシー権(憲法13条)、表現の自由(憲法21条)、ひいては思想・良心の自由(憲法19条)すら脅かされようとしている。277もの広範囲な罪について、「準備行為」を要件としているものの、その適用範囲が限定されたものとは言えず、事実上、共謀のみをもって犯罪とする共謀罪法は、刑罰権の発動は実行行為をまって行われるという刑法の基本原則に反するものである。それにもかかわらず、日本における共謀罪法の必要性、犯罪主体等の構成要件について十分な審理を行わずに成立した共謀罪法は、罪刑法定主義(憲法31条)に反するのみならず、表現の自由(憲法21条)等の精神的自由に対する萎縮効果は大きく、基本的人権尊重の基本原理に反する。
このような憲法の基本原理にとって重大な脅威となる法律が続々と成立する中で、明文の憲法改正を目指す動きも活発になってきている。安倍晋三内閣総理大臣は、今年5月3日、憲法改正を推進する集会の場に、自ら、「2020年までに新憲法を施行したい」、「憲法9条を改正し、自衛隊の存在を明記する」と発言したビデオメッセージを寄せた。憲法改正に関する国民的議論が進んでいない状況において、憲法改正を発議する立法府の頭ごしに、憲法尊重擁護義務(憲法99条)を負っている内閣総理大臣が憲法改正を主張することは、立憲主義を軽視するものといわざるを得ない。
このように、この70年間、国民が守り抜いてきた憲法の基本原理を一気に破壊しようとする動きが着々と進行している。
われわれ弁護士、弁護士会は、あらためて、日本国民がこの70年間守り抜いてきた憲法の基本原理を再確認するとともに、憲法の基本原理を破壊するいかなる企てに対しても、国民と共に抵抗し、不断の努力によって、憲法の基本原理を守り抜く決意を、ここに新たにするものである。
2017(平成29)年8月18日
岡山弁護士会  会長 大 土   弘

会員の懲戒処分の公表 ←下記?は最初から
平成29年8月3日
岡山弁護士会
会長 大 土   弘
会員の懲戒処分の公表
本会は、懲戒委員会の議決に基づき、下記のとおり会員を懲戒したので、お知らせします。

1.対象弁護士の氏名、登録番号及び事務所
(氏   名) 櫻 井 幸 一
(登録番号) 第18623号
(事 務 所) 岡山市中区下54?15
さくらい法律事務所
2.懲戒の処分の内容
退会命令
3.懲戒の処分が効力を生じた年月日
平成29年8月3日
4.懲戒の処分の理由の要旨
第1
1 対象弁護士は,平成27年11月から平成28年6月までの本会会費合計16万円及び同期間中の日本弁護士
連合会会費合計10万7200円並びにその他同連合会の特別会費を滞納した。
これは,本会会則第108条第1項(本会会費納付義務)及び同第111条第1項(同連合会会費納付義務)に
違反する。
2 また,対象弁護士は,次のとおり紛議調停の期日に出頭せず,答弁書を提出しない等の行為を行った。
(1)平成26年7月10日付けで申し立てられた紛議調停事件について,正当な理由なく期日に出頭しなかった。
(2)平成27年2月12日付けで申し立てられた紛議調停事件について,答弁書を提出期限までに提出せず,再度指定された提出期限までにも提出しなかった上,申立人に対し12万円支払う旨調停外で申立人と合意しながら履行せず,弁済計画の提出要請にも応じず,6万円しか支払わなかった。
(3)同年6月19日付けで申し立てられた紛議調停事件について,(1)正当な理由なく期日に出頭しなかった上,
?答弁書を提出期限までに提出せず,再 度指定された提出期限までにも提出しなかった
(4)同年11月17日付けで申し立てられた紛議調停事件について,答弁書を提出期限までに提出せず,期日で合意した提出期限までにも提出しなかった上,弁護士賠償保険金請求の進捗状況を説明することを約束したにもかかわらず,申立てが取り下げられるまで説明しなかった。
(5)同月26日付けで申し立てられた紛議調停事件について,答弁書を提出期限までに提出せず,再度指定された提出期限までにも提出しなかった上, 自ら申し出た提出期限にも提出しなかった。(6)対象弁護士の(1)及び(3)?の各行為は,本会紛議調停に関する会規第14条(紛議調停への出頭義務)及び弁護士職務基本規程第26条(紛議が生じたときは紛議調停で解決するよう務める義務)にそれぞれ違反し,(2),(3)?,(4)及び(5)の各行為は弁護士職務基本規程第26条に違反する。
3 以上の対象弁護士の各行為は,弁護士法第56条第1項に定める「品位を失うべき非行」に該当する。
第2
1 対象弁護士は,懲戒請求者から,医療過誤が問題となった件を受任し,平成26年11月11日,懲戒請求者の家で打合せをした。しかし,その後,対象弁護士から懲戒請求者に対し,事件の経過を報告したり,協議したりすることは一度もなく,対象弁護士は懲戒請求者からの苦情を受けて平成27年3月5日付けで懲戒請求者に手紙を出しただけであった。その後も対象弁護士は懲戒請求者に連絡を取らず,同年7月3日,懲戒請求者は対象弁護士を解任するに至った。
2 対象弁護士において懲戒請求者からの連絡に十分対応できなかった期間は少なくとも7か月に及んでおり,職務基本規程第36条(依頼者への報告義務)に違反する。また,平成27年3月5日以降4か月にわたって
事件処理を放置しており,同規程第35条(事件の処理義務)にも違反する。
3 以上の対象弁護士の行為は弁護士法第56条第1項に定める「品位を失うべき非行」に該当する。
なお、櫻井幸一(さくらい こういち)氏は、退会命令を受けたため,現在では,岡山弁護士会会員ではなく,弁護士ではありません。したがいまして,櫻井幸一弁護士またはさくらい法律事務所の名で法律相談を行ったり、事件を引き受けることはできません。依頼した方にも、被害が及ぶことがありますので、ご注意ください。
法律問題に関する相談などは、このウェブサイト内でご案内している法律相談センターでご相談ください(有料のものもあります。また電話相談はいずれも通信料ご利用者負担となります)。

死刑執行に関する会長声明
2017年(平成29年)7月13日、大阪拘置所及び広島拘置所において、それぞれ1名の死刑確定者に対して、死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。
にもかかわらず、またしても死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。最近では、死刑廃止又は事実上停止している国が141か国に上っているのに対し、死刑存置国は57か国に過ぎない。我が国は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けている。
日本弁護士連合会は、2015年(平成27年)12月9日には法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまで全ての死刑の執行を停止することなどを求めた。
また、2016年(平成28年)10月7日に福井市で開催された第59回人権擁護大会で、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであること、死刑を廃止するに際して死刑が科されてきたような凶悪犯罪に対する代替刑を検討すること等を国に対して求めた。
なお、同宣言では、我が国が、国連自由権規約委員会や国連拷問禁止委員会等の国際機関から、これまでに死刑判決の全員一致制、死刑判決に対する自動上訴制、死刑判決を求める検察官上訴の禁止等の慎重な司法手続が保障されていないことについて幾度となく改善を勧告されているにもかかわらず、今日まで見るべき改善がなされていないことも指摘されているが、今回、広島拘置所において死刑が執行された者は、2013年(平成25年)2月に岡山地方裁判所における裁判員裁判で死刑判決を受け、その後、控訴したが、同人が控訴を取り下げたことにより上訴審において量刑に関して十分な審理がなされないまま死刑判決が確定した者であり、今回の死刑執行はかかる国際機関による勧告も考慮することなく行われたと言わざるを得ない。
当会においても昨年9月にシンポジウムを開催し、死刑制度についての議論を深める企画を行ったところである。
このような国際社会の潮流に反し、また、当会や日本弁護士連合会の要請等に反し死刑の執行が続いていることは極めて遺憾である。そこで、当会は、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、死刑の執行を停止し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきことを要請するものである。
2017年(平成29年)7月19日
岡山弁護士会  会長 大 土   弘

「共謀罪」と実質的に変わらない,いわゆる「テロ等準備罪」を創設する組織的犯罪処罰法改正法案の採決強行に抗議し,同法の廃止を含む見直しを求める会長声明
当会では,今国会において審理されていた組織的犯罪処罰法改正案について,市民の思想・信条の自由はもちろん,表現の自由,集会・結社の自由等の憲法上保障された基本的人権を侵害する危険性を有し,我が国の刑法の基本原則に反するものであるから成立に強く反対するとの立場から,昨年1月,11月,本年3月と,三度にわたり,いわゆる「共謀罪」を内容とする法案の国会提出に反対する声明を発表し,街頭宣伝活動や市民集会を開催するなど,同法案の危険性について訴えてきた。
同法案の対象となる277の罪の中には,著作権法違反等およそテロ犯罪とは無関係な犯罪が含まれており,対象範囲が広範に過ぎる。また,「組織的犯罪集団」がテロ組織や暴力団等に限定されず,これまで繰り返し述べてきたように市民団体や労働組合等も対象となり得ることから,ひいては一般市民も捜査の対象となり得るという懸念は払拭できない。加えて,同法案に係る衆議院法務委員会での審議において,計画(共謀)よりも前の段階から尾行や監視が可能となることが明らかになるなど,問題点は解消されるに至っていない。
また,同法案が既遂処罰という我が国の刑法の基本原則に反することはこれまでにも繰り返し述べてきたことであるが,既に予備罪が規定されている強盗罪等について,同法案に基づく共謀罪の方がその予備罪よりも法定刑が重いという不均衡が生じる点についてもなんら合理的な説明がない。
同法案については,日本弁護士連合会及び全国52の弁護士会全て並びに刑事法学者ら等からも続々と反対の表明がなされ,国連特別報告者からも「プライバシーや表現の自由を制約するおそれがある」として懸念を表明する書簡が内閣総理大臣宛てに送付された。本年6月10日に当会が開催した市民集会及びパレードには約600名の市民が参加し,多くの市民が同法案の内容に疑問を抱いていることが明らかになった。
それにもかかわらず,上述のように十分な議論を経ぬまま衆議院において強行採決し,良識の府であるはずの参議院においても委員会採決を省略した上で採決が強行され,同法案が可決,成立したことは極めて遺憾であり,強く抗議する。
当会は,政府および国会に対し,改めて,同法が国民の重要な権利を侵害し,我が国の刑法の基本原則に反するものであることから,今後,廃止を含めた抜本的見直しを行うよう強く求めるものである。
2017年(平成29年)6月15日
岡山弁護士会  会長 大 土   弘

修習給付金を支給すること等を内容とする改正裁判所法の成立にあたっての会長声明
1 はじめに
本年4月19日、司法修習生に対して修習給付金を支給すること等を内容とする改正裁判所法(以下、「本法」という。)が成立した。本法の施行日である本年11月1日以降の司法修習生に対しては本法67条の2に基づき、基本給付金として一律月額13万5000円、さらに必要に応じて住居給付金(上限3万5000円)及び移転給付金が支給される見込みとなった。
給費制の実現に向けては、日本弁護士連合会及び各弁護士会が、法曹志望者・法科大学院生・若手弁護士らを中心とするビギナーズ・ネットや市民の皆様とともに、7年余にわたって活動してきたものであるが、本改正が実現したのは、多くの市民の皆様、国会議員の皆様、法務省をはじめとする関係各省庁及び最高裁判所、マスコミ関係者の方々など、多くの方のご理解とご協力があったからであり、当会として、心から感謝申し上げる。
2 従前の制度
この修習給付金をめぐっては、2011年(平成23年)の裁判所法改正により、司法修習生に対する給費が廃止され、同年採用の司法修習生以降、司法修習生に対し、月額23万円を標準とする修習資金相当額を貸与する制度(貸与制)が導入された。しかし、貸与金はあくまで司法修習生にとって借入金(債務)にすぎず、2011年(平成23年)から2016年(平成28年)の間に採用された司法修習生は、無給での司法修習を強いられてきた。
3 司法修習生の経済状況
司法修習生は、本法67条2項により修習専念義務が課されたうえ、原則として副業が禁止されていることから、無給となった司法修習生は経済的に非常に困窮し、多くの司法修習生は、国からの修習資金の貸与を受け、司法修習に要する経費及び生活費等を賄ってきた。もっとも、修習資金の貸与を受けるためには年収150万円以上の保証人2人を付けるか、機関保証(有利子)を申し込む必要があったため、保証人を付けられず、かつ、機関保証を申し込んで更に債務が増大することを恐れた司法修習生は、貸与金の申請が行えないといった事態も生じた。加えて、貸与制の下の司法修習生は、司法修習生に採用される以前の法科大学院や大学の奨学金返還債務を抱えていることが多く、約300万円の貸与金返還債務は経済的に非常に重い負担となった。このような経済的負担は、近年の法曹志望者激減の一因ともなった。
4 司法修習の意義
そもそも、法曹(裁判官・検察官・弁護士)になるには、司法試合格後、1年間の司法修習を経て、考試(本法67条1項)に合格することが必要である。司法修習は、法曹として実務に必要な能力や高い見識・倫理観等を習得するために必要不可欠なものであり、法曹志願者としては必ず経なければならない制度である。国は、法律上、法曹志願者に対し、1年間の司法修習制度を定め、かつ、司法修習期間においては修習に専念する義務を課しているから、司法修習生の生活を賄うべく公費を投じることは、国の当然の責務といえる。
5 当会の活動
貸与制は、こうした国の責務を放棄するものであり、当会では、これまで、日本弁護士連合会やビギナーズ・ネットなどとともに、貸与制を廃止し、かつての給費制を実現すべく、地元選出の国会議員との面談、市民集会の開催、司法修習生給費制実現PTの立ち上げ、地元紙における意見広告、マスコミの皆様との意見交換、院内集会への委員の派遣等の活動に取り組んできた。
この活動が、司法修習生に対する経済的支援の必要性を広く認識していただく一助となり、本法が成立した。
6 法改正の評価
本法は、司法修習生に対する一律での給付が実現したという点において、これまでの貸与制が誤りであったことを認めたものであり、また、司法修習生の経済的困窮を幾分か和らげるものではある。したがって、当会としても、本法の成立自体について司法修習生に対する経済的支援の前進と評価する。
7 残された課題
しかしながら、本法は以下の2つの課題を残したといえる。
第一に、給付金額13万5000円という金額は、経済的不安なく司法修習を行うための費用としては必ずしも十分ではない。本法に基づく給付金額については、司法修習の意義及び今後の司法修習の実態も踏まえて、その適正額について引き続き検討が続けられるべきである。
第二に、本法の成立により、貸与制の下で司法修習を行った2011年(平成23年)から2016年(平成28年)の間に採用された司法修習生のみが、無給での司法修習を強いられ、給費制のもとで修習した2010年(平成22年)以前の司法修習生及び修習給付金の支給を受ける本年以降の司法修習生と比較して著しい不公平が生じることとなる。そこで、2011年(平成23年)から2016年(平成28年)の間に採用された貸与世代の司法修習生に生じる著しい不公平を解消するための措置をとることが必要不可欠である。本法案の審議の過程においても、与野党を問わず国会議員の皆様から同様の指摘がなされ、何らかの措置を講ずべきであるとの意見もあったにもかかわらず、本法にはこの点につき何らの言及もない。
貸与世代の第1期生である2011年(平成23年)に採用された司法修習生であった者に対する貸与金の返還開始時期である2018年(平成30年)7月が迫ろうとしている。一度貸与金の返還が開始されてしまうと、貸与世代の司法修習生に生じる著しい不公平を解消するために必要な措置をとるに当たり、制度設計上困難な事態が新たに生じてしまうことは明らかであり、上記第二の課題は喫緊の対応が必要である。
8 おわりに
当会としては、本法の成立をひとまず前進と受け止めるとともに、今後も、上記2つの課題を解決すべく、引き続き活動を続けていく所存である。
2017年(平成29年)5月10日
岡山弁護士会 会長 大 土   弘