残照日記

晩節を孤芳に生きる。

世論と実態

2011-08-28 19:51:36 | 日記
【連帯意識】
≪王権というものは、たとえある一派から消滅したとしても、その民族全体がなお連帯意識を温存しているならば、かならず同じ民族のうちの他の一派に移る。≫≪連帯意識は庇護、相互防衛、目標追及など、あらゆる社会集団活動をもたらす。≫≪指導権は支配能力を通じてのみ存在し、支配能力は連帯意識を通じてのみ存在する。≫ (イブン・ハルドゥーン著「歴史序説」岩波書店)

≪海江田氏先行 決選投票の可能性も──民主党の代表選挙は、29日に開かれる両院議員総会で、398人の議員による投票が行われ、新しい代表が選出される。これまでのNHKの取材では、海江田経済産業大臣が、小沢元代表のグループや鳩山前総理大臣のグループを中心に、100人余りの支持を固めて先行。これに対して野田財務大臣は、みずからのグループや岡田幹事長ら執行部の議員を中心に60人余りを、また前原前外務大臣は、みずからのグループを中心に50人前後をそれぞれ固め、追い上げを図っている。さらに、鹿野農林水産大臣は、ベテラン議員や農林水産関係の議員ら30人余りの支持を固めたほか、馬淵前国土交通大臣は、推薦人の20人からの上積みを目指している。ただ、100人を上回る議員は態度を決めていないか明らかにしておらず、各陣営は、こうした議員の支持獲得に向けて働きかけを強めている。≫(8/28 NHKオンライン)

∇代表選立候補5氏は、今朝のNHK「日曜討論」で、それぞれの“立ち位置”を懸命に述べていたが、聞くかぎりに於いては、さした違いは見られなかった。ともあれ誰が首相になろうが、待ち構えている課題は一筋縄では片付けられぬ「不可避」の問題ばかり。東日本大震災の復旧・復興対策や原発・エネルギー政策、マニフェスト見直しの是非、小沢処遇問題そして「ねじれ国会」解消のための野党との連携問題等々。菅政権から持ち越された超難題の方向付けが、新代表の肩にズシリとかゝる。政権発足時は、「政権交代」なる目標が、異質な寄せ集め集団を支えていた。当初は間違いなくイブン・ハルドゥーンが強調する「連帯意識」があった。トロイカ体制の歪、殊に小沢処遇を見て見ぬふりをした党員たちの不見識がそれを全て瓦解させた。今日午後、都内ホテルで行なわれた5氏による討論会で、≪小沢一郎元代表の党員資格停止処分解除の是非が争点となる中、候補者からは代表選後の結束を訴える声が相次いだ。≫(時事通信)とあるが、各候補者が総理になった際、党内統一に絶対不可欠な、 単なる“御都合主義”による呼びかけであって、かつての「連帯意識」が醸成される可能性は無い。民主党崩壊の足音が聞こえてくるようだ。

∇朝日新聞社が25、26の両日、全国緊急世論調査(電話)を実施したが、喫緊の「政局」動向をよく捉えている気がする。先ず結論だけを掻い摘んで列挙しよう。①次期首相適任者は「前原氏」40%で圧倒。以下海江田万里5、野田佳彦4、馬淵澄夫4、鹿野道彦1だった。②尚、前原氏が外相を辞任する原因となった在日外国人からの違法献金問題は、「大きな問題ではない」と答えた人が49%で、「大きな問題だ」は39%。③民主党のマニフェスト見直しは賛成73%、反対13%と支持が圧倒的。④小沢一郎元代表の党員資格停止処分の解除には、反対が74%で、賛成14%。⑤政党支持率は民主18%、自民15%で、前回(8月6、7日)調査の民主14%、自民19%から逆転した。支持政党なしは51%だった。⑥ 仮にいま、衆院選の投票をするとしたら、民主20(15)、自民22(28)だった。カッコ内は前回。⑦民主党と自民党が、期間を区切って大連立政権をつくることに、賛成39:反対36 ⑧震災復興の財源への増税に、賛成51:反対37 ⑨社会保障の財源に消費税は、賛成44:反対45 ⑩原子力発電を段階的に減らし、将来は、やめることに、賛成68:反対20 ⑪農産物の関税を大幅に引き下げ、貿易の自由化に、賛成34:反対44⑫ 民主党が衆院選で掲げたマニフェストを見直すことに、賛成73:反対13。etc

∇この時点での世論の趨勢は、前原氏が「在日外国人からの違法献金問題」さえクリアできれば、圧倒的に有利だった。それを見越して、支持政党なしが51%で変わらぬものゝ、支持政党率は久し振りに自民党を逆転し、比例区でも僅差に迫った。小沢氏の復帰動向には7割の回答者が「ノー」を突きつけ、脱原子力とマニフェスト見直しには7割が賛成している。あとは、復興財源や社会保障の財源問題と貿易の自由化、大連立の是非等で世論が割れているので、新内閣の下、与野党協議を慎重に進めればよいという「読み」が可能であった。これから推せば、海江田支持は世論に逆行する、単に“小沢事情”を成就する手助けの方便に過ぎないことになる。そんな馬鹿げたことに加担する議員ばかりなら、民主政権は超短期に崩壊し、総選挙を今から覚悟すべきだろう。では前原首相の可能性はどうか。これも残念ながら政治資金規正法で禁じられている外国人からの政治献金が、今年3月に発覚した25万円以外に計34万円あったことが、大きな障害になる。前原氏は折角の大チャンスを、自らの脇の甘さで大魚を失ってしまいそうだ。小沢氏の「数の論理」が勝つか、決選投票でやはり「前原人気」が制するのか、はたまた“漁夫の利”を得て野田陣営に転がり込んでくるかは知らないが、民主党は崩壊の危機に晒されている。誰が選出されても、かつての「連帯意識」が生まれる可能性が無いため、神が民主党を「お好み」にならぬように見受ける。どうなることやら……。