残照日記

晩節を孤芳に生きる。

複眼思考

2011-08-09 18:41:41 | 日記

○円高に株も暴落 秋に入る  楽翁

【タルムード的思考】
問:顔を洗うのはどちらの男の子か──二人の男の子が夏休みに家の煙突掃除をした。一人は真っ黒になって煙突から降りてきた。もう一人は、顔にまったく煤煙をつけずきれいな顔で降りてきた。貴方はどちらの男の子が顔を洗うと考えるか。

∇≪ある篤学者がユダヤ人を研究しようと思って、彼らの聖典「タルムード」を学びたいとラビ(ユダヤ教の僧侶)を尋ねた。するとラビはまだ貴方はタルムードを開く資格がないという。そこで篤学者はじゃあテストしてみて下さいと申し出た。ラビはそれならというので標記の問題を出した。学者「無論、顔の汚れた方です」ラビ「だから貴方には資格がない」学者「えっ? 答は何ですか」ラビ「タルムードを研究すればこう答を出すでしょう。顔の汚い子はきれいな子の顔を見て、自分の顔は汚れていないと思うし、きれいな子の方は、相手の子が汚れているのを見て自分も汚いと思うだろう」学者「なる程、分りました!もう一度テストして下さい」 ラビはまた同じ質問をした。学者「きれいな顔をした男の子が顔を洗います」ラビ「貴方はまだタルムードを研究する資格はない」学者「?……。では一体どう答えればタルムードに適うのですか」ラビ「二人の男の子が同じ煙突を掃除しているならば、一人の男の子の顔がきれいで、もう一人の男の子が汚い顔をして降りてくることはありえない」学者「……ウーム!」──≫(M・トケイヤー「ユダヤ5000年の知恵」実業之日本社版より)

∇「タルムード」は“偉大な研究”という意味だそうで、全部で20巻、1万2000ページ、語数にして250万字以上、重量75㎏もある膨大な書物だそうだ。この書物には、≪人生の意義とは何か、人間の威厳とは何か、幸福とは何か、愛とは何か等、5000年にわたるユダヤ人の知的財産、精神的滋養がここにはある。… アインシュタイン、フロイド、カール・マルクスなどの天才をはじめとしてすべてユダヤ人は不和、争い、苦悩、迷いに直面したとき、必ずその解決をタルムードに求めてきた≫。(同上) タルムードには、一つの思考方法を鍛えるために、現実的でなくても、上例の如き原理的な話がたくさん載っている。ユダヤ人の優秀性はあらゆる分野で天才を輩出してきた事実で証明済みだが、その理由を自らもユダヤ人で、高名な英国歴史学者であったアイザック・ドイッチャーは次のように言っている。≪(ユダヤ人は)みんな社会の中にあると同時に、よそ者であった。みんな社会に属していながらその社会にはうけいれられていない。かれらにその社会を超えた高い理想をもち、広い新しい地平にその精神を飛躍せしめ、またはるかの未来にまで考えを可能ならしめたのは、まさにこの点であった≫。(ダニエル・ベル「二十世紀文化の散歩道」正慶孝訳より孫引き) 

∇日本人に馴染み深いP・F・ドラッカーなどもポルトガル系ユダヤ人の家系であったが、ユダヤ系知識人の特徴は、その「ものの見方」や「着眼点」に他者に追随しない多角的で独創的な発想が見られることで、日々研鑽される「タルムート」研究がその背骨をなしているのであろう。ラビ・トケイヤーは言う、≪タルムードには、延々と4ヶ月、6ヶ月、7年もの長い間、いろいろな問題について人々が問題を提起した話がたくさん出ている。それらの中には結論が出ないものもあり、その話には一番最後の結びに「わからない」と書いてある。この教訓は「わからないときにはわからないというほうがいい」ということである。タルムードの中にはいろいろな決定が下された物語があるが、それには必ず少数意見が紹介されている。少数意見は書きとどめなければ消えてしまうからである。≫と。この一文を反芻熟考するだけで、胸にズシンとくるものが感じられる。かくして老生は和訳されている「タルムード」関係本や「ユダヤのジョーク集」をいつの間にか20巻も揃えてしまったのである。ではタルムードから簡単な質問2つを出してみよう。「人間は口が一つなのに耳は二つある。何故か?」「人間の目は、白い部分と黒い部分からなっている。それなのに何故黒い部分(瞳)から見るのだろうか?」。ウオーミングアップが終わったら、最新NHKの世論調査を以下に掲げてみたので、ユダヤ式複眼で色々考察してみよう。今日はとにかく暑い! 明日又。

【NHK世論調査 】
≪NHKは、今月5日から3日間、全国の20歳以上の男女を対象に、世論調査を行い、1052人から回答を得た。この中で、菅総理大臣が「原発に依存しない社会を目指す」と表明したことへの評価を聞いたところ、「大いに評価する」が16%、「ある程度評価する」が41%、「あまり評価しない」が23%、「まったく評価しない」が12%で、「評価する」と答えた人が半数を超えた。次に、原発の運転再開が認められない状態が続けば、来年の春までには、すべての原発が停止する見通しであることを踏まえ、定期検査や地震のために停止している原発の運転再開への賛否を尋ねたところ、「賛成」が24%、「反対」が23%、「どちらともいえない」が46%に上った。…一方、政府が、東日本大震災の復興対策にかかる費用を確保するため、臨時の増税を検討していることへの賛否を尋ねたところ、「賛成」が31%、「反対」が30%、「どちらともいえない」が34%だった。≫(8/9)