≪孟子曰く、 命に非ざるは莫(な)し。其の正を順受(じゅんじゅ)すべし。 是の故に命を知る者は、巌牆(がんしょう=危ない巌や壊れかかったかき)の下に立たず。 其の道を尽して死する者は、正命なり。 桎梏(しっこく=罪を犯して刑を受けること)して死する者は、正命に非ざるなり、と。≫(尽心上篇)──孟子は云った。 人生において吉凶禍福などは、天命でないものはない。 人はその“命”を素直に受け入れねばならぬ。 故に本当に“命”を知る者は、決して巌牆の如き危険な場所には立たないのである。力を尽くして道を行なって死ぬ者は、「正命」を得たといえるが、罪を犯して刑に処せられて死ぬようなのは、正命を得たとはいえない。
≪自殺防止へ 政府の特命チーム発足──政府は、年間3万人を超える自殺者を減らすため、民間の有識者を加えた新たな特命チームを発足させ、自殺防止の対策強化に向けて議論を始めた。政府は4年前に、自殺する人の割合を大幅に減らす方針を打ち出したが、去年1年間の自殺者は13年連続で3万人を超え、自殺は減っていない。このため政府は、この問題を担当する蓮舫行政刷新担当大臣ら政務三役に、自殺防止に携わった経験を持つ民間の有識者を加えた、新たな特命チームを発足させた。29日の初会合で、蓮舫大臣は「国だけではなく、現場で頑張っている方たちの知恵や力を借りて、社会一体となって取り組み、少しでも自殺をなくす態勢を作っていきたい」と述べた。…会合では、来年の春に予定している「自殺総合対策大綱」の見直しに向けて、自殺の防止対策を強化するためには、医療の充実と社会全体で支えていく仕組み作りの双方が重要だという認識で一致し、今後、専門家からヒアリングを行うことになった。≫(11/29NHKニュース)
∇≪民間の有識者≫には、うつ病で3回の自殺未遂を図った妻を支えながら、企業の経営を続けてきた佐々木常夫氏や、作家で、去年3月まで小学校の教諭を務めていた乙武洋匡氏らが参加した。佐々木氏からは「年間の自殺者の半数は、うつ病が原因と言われているが、うつ病による自殺未遂は、その10倍いるのではないかと思う。」という指摘があった。乙武氏は、子どものいじめによる自殺に心を痛めており、彼らに「命の尊さを伝えたい」と語っていた。昨年の「政府白書 」によれば、自殺者の6割が無職 自殺者全体の約4 割が40~60歳代の男性だった。年代別の自殺者の比率を見ると、高齢者が減少し、20~ 40歳代前半の「働き盛り」で増えている。 自殺の原因では、動機が判明した2万3572人のうち約67%が「健康問題」で最多、3割が 「経済・生活問題」で続いた。(40~ 50歳代の男性では「経済・生活問題」が最多)。白書では、自殺対策を推進するためには≪実態の解明を進めることが重要≫としている。 尚、09年度の警視庁調べでは、自殺原因の約44%が「うつ病によるもの」としている。
∇かつて当コラムで述べたものに、労働災害における 経験則の一つである「ハインリッヒの法則 というのがあった。≪一つの重大な事故の裏には29の軽微な事故があり、さらにその裏には300の 事故寸前の「ヒヤリハット(ヒヤリとしたり、ハッとする危険な状態)」がある≫というものだった。それを単純に当て嵌めれば、13年連続3万人の自殺者の裏に、約90万人の自殺未遂者が存在し、900万人の自殺願望者がいたことになる。あながち的外れだとは言えない気がする。政府の特命チームにとっての焦眉の課題は、例えば、「うつ病が原因である」という表面的事象ではなく、その「うつ病」に至った原因、例えば「健康問題」「経済・生活問題」「いじめ」等を更に年齢別・生活環境別、兆候別、○○別、△△別…に層別化して、個々の実態に照らして深く抉り出すことだろう。≪自殺の防止対策を強化するためには、医療の充実と社会全体で支えていく仕組み作りの双方が重要だという認識で一致≫(NHKニュース)では表面的で短絡的過ぎる。それにしても、自殺者の数が、何故13年間も申し合わせたかの如く、年3万人前後なのだろうか。いつも不思議に思っている。──今日はひとまずこゝまで。
≪自殺防止へ 政府の特命チーム発足──政府は、年間3万人を超える自殺者を減らすため、民間の有識者を加えた新たな特命チームを発足させ、自殺防止の対策強化に向けて議論を始めた。政府は4年前に、自殺する人の割合を大幅に減らす方針を打ち出したが、去年1年間の自殺者は13年連続で3万人を超え、自殺は減っていない。このため政府は、この問題を担当する蓮舫行政刷新担当大臣ら政務三役に、自殺防止に携わった経験を持つ民間の有識者を加えた、新たな特命チームを発足させた。29日の初会合で、蓮舫大臣は「国だけではなく、現場で頑張っている方たちの知恵や力を借りて、社会一体となって取り組み、少しでも自殺をなくす態勢を作っていきたい」と述べた。…会合では、来年の春に予定している「自殺総合対策大綱」の見直しに向けて、自殺の防止対策を強化するためには、医療の充実と社会全体で支えていく仕組み作りの双方が重要だという認識で一致し、今後、専門家からヒアリングを行うことになった。≫(11/29NHKニュース)
∇≪民間の有識者≫には、うつ病で3回の自殺未遂を図った妻を支えながら、企業の経営を続けてきた佐々木常夫氏や、作家で、去年3月まで小学校の教諭を務めていた乙武洋匡氏らが参加した。佐々木氏からは「年間の自殺者の半数は、うつ病が原因と言われているが、うつ病による自殺未遂は、その10倍いるのではないかと思う。」という指摘があった。乙武氏は、子どものいじめによる自殺に心を痛めており、彼らに「命の尊さを伝えたい」と語っていた。昨年の「政府白書 」によれば、自殺者の6割が無職 自殺者全体の約4 割が40~60歳代の男性だった。年代別の自殺者の比率を見ると、高齢者が減少し、20~ 40歳代前半の「働き盛り」で増えている。 自殺の原因では、動機が判明した2万3572人のうち約67%が「健康問題」で最多、3割が 「経済・生活問題」で続いた。(40~ 50歳代の男性では「経済・生活問題」が最多)。白書では、自殺対策を推進するためには≪実態の解明を進めることが重要≫としている。 尚、09年度の警視庁調べでは、自殺原因の約44%が「うつ病によるもの」としている。
∇かつて当コラムで述べたものに、労働災害における 経験則の一つである「ハインリッヒの法則 というのがあった。≪一つの重大な事故の裏には29の軽微な事故があり、さらにその裏には300の 事故寸前の「ヒヤリハット(ヒヤリとしたり、ハッとする危険な状態)」がある≫というものだった。それを単純に当て嵌めれば、13年連続3万人の自殺者の裏に、約90万人の自殺未遂者が存在し、900万人の自殺願望者がいたことになる。あながち的外れだとは言えない気がする。政府の特命チームにとっての焦眉の課題は、例えば、「うつ病が原因である」という表面的事象ではなく、その「うつ病」に至った原因、例えば「健康問題」「経済・生活問題」「いじめ」等を更に年齢別・生活環境別、兆候別、○○別、△△別…に層別化して、個々の実態に照らして深く抉り出すことだろう。≪自殺の防止対策を強化するためには、医療の充実と社会全体で支えていく仕組み作りの双方が重要だという認識で一致≫(NHKニュース)では表面的で短絡的過ぎる。それにしても、自殺者の数が、何故13年間も申し合わせたかの如く、年3万人前後なのだろうか。いつも不思議に思っている。──今日はひとまずこゝまで。