【人々を騙すこと】
You can fool some of the people all the time and all the people some of the time, but you can't fool all the people all the time.(Abraham Lincoln 1809~1865)
≪すべての人々をしばらくの間愚弄するとか、少数の人々を常にいつまでも愚弄することはできます。しかしすべての人々をいつまでも愚弄することはできません。≫(「リンカーン演説集」岩波文庫)
∇リンカーンの上記演説文は、共和党対立候補のスティーブン・ダグラスに向けて発せられた言葉だった。リンカーンとダグラスの間で7回にわたって行われた「リンカーン─ダグラス論争」は、地方政治家に過ぎなかったリンカーンを一躍有名にした。社会的または政治的関係において黒人を白人とまったく平等にしようというのがリンカーンの意見であったが、ダグラスは強硬に反対した。その手段として、≪ダグラスは一万人に向かって嘘をつくことでしょう。たといその翌日には五千人に対して前日の虚言を否定しなければならないとわかっていても。≫ 上院議員ダグラスは当時の名士、近い将来合衆国大統領になる最有力人物として確実視されていた。選挙戦上、リンカーンがある意味でタブー視されていた「黒人奴隷解放」問題をスローガンに掲げるのは危険であったが、≪これは誰かが、この役目をやらなければならないから≫と、「猫鈴役」を買って出たものであった。当時直接真実を訴えるには「演説」で勝利するしかなかった。1860年、リンカーンは第16代アメリカ合衆国大統領に選出された。
∇今朝の朝日新聞「記者有論」は、「国民を欺ける時代ではない」と題して、中国浙江省温州で起きた高速鉄道事故の政府や鉄道省の「証拠隠滅」処理に対し、敢然と真実を追求する中国国民にエールを送った。≪事故から一週間、中国人記者は真実に近づこうと夜中までかけずり回り、異例の調査報道を続けた。国営の新華社も「国民は事故原因や対応に疑問を持っている」と提起。独自報道禁止令のあとも、新聞に載せられない記事を、ネット上で公表する大手記者もいる。事故をいち早く伝えたのは、インターネットだ。事故の4分後、乗客が「衝突」とミニブログに書き込み、3時間余りのうちに「尋ね人」「犠牲者名簿」などの関連情報は328万件まで増えた。政府といえども、一度真実へと近づいた意識を、消し去ることはできない。温州南駅でデモ行進した遺族は、こんな文章を手にしていた。「天を遮って真実を覆い隠そうとしても無駄だ。国民をやすやすとだませる時代ではない」≫と。現代も「猫に鈴をかける」のは容易なことではない。強権国家では下手をすれば命取りになる。そういう意味では、ツイッターやネットが政治を大きく変えようとしている。「ネズミの会議」の成功を期待する。
【ネズミの会議】(「イソップ寓話」より)
≪昔あるとき、ネズミが集って会議を開き、ネコの襲撃から身を守るよい方法がないかを相談し合った。知恵者で知られ、信頼されているネズミが立ち上がって発言した。「ネコの首に鈴をつけるというのはどうだろう。ネコが近づいてくれば鈴が鳴って、用心することができるだろう」と。この提案に皆な大賛成し、それでいこうと決まりかけたときに、一匹の年寄りネズミが問いかけた。「素晴らしい提案だと思うが、誰がネコに鈴をかけるのかね」と。誰もが黙り込んだ。【教訓】いくら素晴らしい案でも、実行できなければ無意味である。尚、辞典によれば、この寓話から、「猫の首に鈴をつける」を「bell the cat」と言い、≪(みんなのために)進んで危険[不愉快]なことを引き受ける ≫の意。(「研究社 新英和中辞典」)
You can fool some of the people all the time and all the people some of the time, but you can't fool all the people all the time.(Abraham Lincoln 1809~1865)
≪すべての人々をしばらくの間愚弄するとか、少数の人々を常にいつまでも愚弄することはできます。しかしすべての人々をいつまでも愚弄することはできません。≫(「リンカーン演説集」岩波文庫)
∇リンカーンの上記演説文は、共和党対立候補のスティーブン・ダグラスに向けて発せられた言葉だった。リンカーンとダグラスの間で7回にわたって行われた「リンカーン─ダグラス論争」は、地方政治家に過ぎなかったリンカーンを一躍有名にした。社会的または政治的関係において黒人を白人とまったく平等にしようというのがリンカーンの意見であったが、ダグラスは強硬に反対した。その手段として、≪ダグラスは一万人に向かって嘘をつくことでしょう。たといその翌日には五千人に対して前日の虚言を否定しなければならないとわかっていても。≫ 上院議員ダグラスは当時の名士、近い将来合衆国大統領になる最有力人物として確実視されていた。選挙戦上、リンカーンがある意味でタブー視されていた「黒人奴隷解放」問題をスローガンに掲げるのは危険であったが、≪これは誰かが、この役目をやらなければならないから≫と、「猫鈴役」を買って出たものであった。当時直接真実を訴えるには「演説」で勝利するしかなかった。1860年、リンカーンは第16代アメリカ合衆国大統領に選出された。
∇今朝の朝日新聞「記者有論」は、「国民を欺ける時代ではない」と題して、中国浙江省温州で起きた高速鉄道事故の政府や鉄道省の「証拠隠滅」処理に対し、敢然と真実を追求する中国国民にエールを送った。≪事故から一週間、中国人記者は真実に近づこうと夜中までかけずり回り、異例の調査報道を続けた。国営の新華社も「国民は事故原因や対応に疑問を持っている」と提起。独自報道禁止令のあとも、新聞に載せられない記事を、ネット上で公表する大手記者もいる。事故をいち早く伝えたのは、インターネットだ。事故の4分後、乗客が「衝突」とミニブログに書き込み、3時間余りのうちに「尋ね人」「犠牲者名簿」などの関連情報は328万件まで増えた。政府といえども、一度真実へと近づいた意識を、消し去ることはできない。温州南駅でデモ行進した遺族は、こんな文章を手にしていた。「天を遮って真実を覆い隠そうとしても無駄だ。国民をやすやすとだませる時代ではない」≫と。現代も「猫に鈴をかける」のは容易なことではない。強権国家では下手をすれば命取りになる。そういう意味では、ツイッターやネットが政治を大きく変えようとしている。「ネズミの会議」の成功を期待する。
【ネズミの会議】(「イソップ寓話」より)
≪昔あるとき、ネズミが集って会議を開き、ネコの襲撃から身を守るよい方法がないかを相談し合った。知恵者で知られ、信頼されているネズミが立ち上がって発言した。「ネコの首に鈴をつけるというのはどうだろう。ネコが近づいてくれば鈴が鳴って、用心することができるだろう」と。この提案に皆な大賛成し、それでいこうと決まりかけたときに、一匹の年寄りネズミが問いかけた。「素晴らしい提案だと思うが、誰がネコに鈴をかけるのかね」と。誰もが黙り込んだ。【教訓】いくら素晴らしい案でも、実行できなければ無意味である。尚、辞典によれば、この寓話から、「猫の首に鈴をつける」を「bell the cat」と言い、≪(みんなのために)進んで危険[不愉快]なことを引き受ける ≫の意。(「研究社 新英和中辞典」)