次善のやり方

2008-04-20 | literature
宮城谷 昌光 「子産」(上)(下) (講談社) 、2000年刊、を読む。
「BOOK」データベースによると(Amazon.com)

信義なき世をいかに生きるか―春秋時代中期、小国鄭は晋と楚の二大国間で向背をくりかえし、民は疲弊し国は誇りを失いつつあった。戦乱の鄭であざやかな武徳をしめす名将子国と、その嫡子で孔子に敬仰された最高の知識人子産。二代にわたる勇気と徳の生涯を謳いあげる歴史叙事詩。吉川英治文学賞受賞作

とある。紀元前6世紀晋、楚の覇権争いをバックに、孔子に敬仰されたといわれる鄭の執政「子産」が描かれる(子産は孔子の同時代人。子産が亡くなった紀元前522年、孔子は30歳か31歳だったといわれる)。孔子は周公旦と子産を尊敬したとのこと。宮城谷氏の小説は以前から愛読していたから、子産の名前も何度かあらわれ、気にはなっていた。そこで今回手にとってみた。物語そのものは複雑な晋、楚の争いの記述がかなりの部分を占めている。それはそれで興味深かった。私は晋の宰相趙武のファン。彼や晋の賢臣叔向が登場するのも面白かった。今回は子産が主人公だから、叔向の扱いがやや厳しくなるのもやむをえない。死期がせまり病床にある子産が、後継の執政となる子大叔に「わたしが死んだら、あなたがかならず政治をおこなうことになる。徳のある者だけが寛大なやり方で民を服従させることができる。次善のやり方は、猛しくすることである。・・・」と訓諭を与える場面が印象に残った。この言葉は別のところで読んで記憶に残っているが、子産のものであることを確認。現代中国もイスラエルも(チベットやガザで)次善の策をとっているな、と変に納得。

宮城谷氏の長編でこれまで読んだ中では、「太公望」、「晏子」、「楽毅」が記憶に残っている。読み物としての完成度では、「子産」よりそれらのほうが上かもしれない。

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