アメリカでビジネスをするためにはセブン・イレブンを知っておく必要があります。ここで言うセブン・イレブンはコンビニの事ではなく、会社が破産した場合の処置方法で、米国の改正破産法の第七章(チャプタ-・セブン)と第十一章(チャプタ-・イレブン)の事を指します。セブンは完全に会社が倒産して清算するための手続きで、イレブンは再建する見込みのある会社に対して、事業継続をする事を前提とした手続きを意味します。日本で言う会社更生手続きと民事再生手続きを混在したものだと思えば分かり易い。会社更生手続きは株式会社のみに適用され、経営再建をするために管財人(通常は弁護士)に経営権限が移行されて、破綻させた旧経営陣は退陣するのが通例です。民事再生は資本金が1億未満の中小企業の再生をはかるのもので、基本的には経営陣は残る場合が多い。アメリカのチャプタ-・セブンの場合は、管財人をおかず、旧経営陣も入れ替わらないで会社の再建をしていくのが日本の会社更生手続きとの大きな違いです。日本の会社の倒産のパタ-ンは売り掛け債権(物を買ってもお金を払っていない)を増やした状態で倒産させるのが常套手段で、ある意味裁判所も加担しているケ-スも見受けられます。倒産の結果、払うべき金は払わなくて済み、買ったものは財産として認められるます。その理由は会社再建のために必要な物だという事になります。この結果、倒産した会社の下請けである零細企業は、連鎖倒産する玉突き事故状態が発生します。今回の米国のハリケ-ン「カトリ-ナ」の被害による原油高で、経営破たんしたデルタ航空もチャプタ-・イレブンを申請した。セブンは完全倒産、イレブンならまだ生き残れますが、どちらにしても社員がダメ気分になることに変わりはありません。いつか日本で何か事業を起こしてアメリカでも認められたいと思う人は、セブンイレブン、ダメ気分は覚えておいてください。
生前の母が、若い頃は、少し小太りで芯が強い母親というイメ-ジがあった。年老いて父に先立たれてからは一人身で2年間ほど生活をしていた。夜になるとコタツを机代わりに書を書いて寂しさを紛らわしていた。秋が終わる頃に、体調に異変を訴え病院にいったら、即入院ということになってしまった。家族が呼ばれ、母がガンに侵されていて、そんなに長くは生きられないと宣告された。71歳という年齢に加え、ガンが進行していたために、手足は痩せて細くなって、寝巻きの着替えを手伝うときに初めて、小さな母に変わっていたことに気がついた。男の子6人を育てるために、夜も昼も子供のために働いてきた。自分が子供の頃は、母が風邪で寝込んでいても、女の子がいなかったので、食事の時間になっても子供たちは漫画の本を読んだり、熱を出して寝ている母親を見ているだけ、結局寝床から見かねて母がノロノロ起きてきて、七輪で火をおこして料理を作りはじめる。体調が良くなくても6人分の山のような洗濯物もこなさざるを得ない。洗濯と言っても手洗いの時代だったので冷たい水の中に洗濯板を入れて、涙ぐみながら洗濯していた横顔を思い出す。一人でも女の子が生まれていればも精神的に楽だったかもしれない。子供が何か悪いことをすると、自分が子供をうまく育てれなかった責任を感じて、生きているのがつらいと、台所の隅で座り込んで、声を押し殺して泣いていたことが何度もあった。入院してから、母の質問の受け答えが一番苦しかった。先生はがんじゃないと言うけど本当はガンだよね。お父さんを見ていたから同じ症状だと思うと母がつぶやく。ガンなら苦しむ前に死にたいという。その言葉に対して、先生が胃潰瘍というんだから間違いないよ!と作り笑顔で答えるしかない。”それなら来年も花見に行けるのね。嘘じゃないよね。こんな時に子供が母親に嘘をついたら恨むからね”って、か弱い腕で自分の両肩を掴んで疑いのまなざしを向けられた時は、もう1ケ月も生きられないという医者から言われた言葉が頭の中をよぎる。”大丈夫だよ。春になればまた行けるよ”と言い張るしかなかった。何もしてあげられないし、元気づける言葉を発すればすべて嘘になってしまう。結局繰り返し打つ痛み止めで少しづつ意識が薄れていき、最後は酸素吸入器をつけたままひっそりと息をとじた。その瞬間にこらえていた涙が出てきた。涙がとまらない。母の顔が涙で薄れて見えなくなってしまった。”嘘をついて本当にごめんね。痛かったよね。長いあいだ本当にありがとう、かあちゃん”と死んだ母の手を握って素直にあやまった。