※前回の福岡の記事はこちら(37節・新潟戦)
※前回の鹿児島の記事はこちら(41節・水戸戦)
今季途中から監督の座に就いた久藤清一氏の退任も決まり、苦しかった1年を終えようとしている福岡。
開幕前から「屈む年」となるのは予想の範囲内でしたが、残留争いに勤しむだけのシーズンとなるのまでは想定外。
前々監督・井原正巳氏(現柏コーチ)が4年間指揮を執り、その間の順位は3位・J1の18位・4位・7位と一定して上位をキープ。
ただ1年目(2015年)でJ1昇格という結果を出した故か、降格を経た3年目・4年目は明らかにクラブ全体「昇格を狙いにいく」側へ針が全振りになってしまっていた。
特に4年目となる昨年は、富安の海外移籍でそれに代わる・続く若手選手の存在が欲しかった所ですが、前線の補強ばかりが目立ち次第にチームは硬直化。
最終節でプレーオフ圏外に転落し、井原氏は辞意を表明する破目となりました。
その「昇格を狙いにいく」方策を取り、それが果たせなかった際の後始末に追われた、端的に言えばそんなシーズンであった今季。
ただ、井原氏が監督に就任する前の3年間の順位(2012~2014年)は、18位・14位・16位という低迷期真っ盛りであった福岡。
この時期に経営危機問題が表面化した事もあり、再びの低迷期に入るような事があれば、福岡の求心力は井原政権だけのものだったという評価が固まってしまいかねません。
それを打破すべく水面下で来季への動きを進めていた(後述)福岡、一足先に残留を決めたそんなクラブを見つめる対戦相手の鹿児島の思いはいかなるものだったか。
この試合を引き分け以上で締める事が出来れば、自力で残留決定となる大一番。
アウェイながら福岡という九州内であった事が幸いし、サポーター軍団も大挙して駆けつけていました。
右サイドハーフに五領と萱沼のどちらを起用するのか迷っている節が見られる、最近の鹿児島。
どちらもプレースキッカーが出来る選手ですが、酒本が務める事も多々。(たまに砂森も)
その酒本が1トップだった際、エリア内にFW不在のコーナーキックの姿は可笑しくもありましたが、現在の酒本は右サイドバック。
一方の福岡、守護神である助っ人GKセランテスは欠場(一足先にシーズン終了か?)。
実績はそこそこ豊富な杉山がスタメンGKに入りました。(前年は現セレッソ・圍と正GK争い)
前半は立ち上がりから福岡ペースに。
前半3分の初瀬のクロスに対しGK大西とDF水本が激突してしまうなど、残留争いの渦中であるチーム故の緊張が鹿児島に在ったのか、守備から入る福岡らしからぬ攻勢に出ます。
4分には再び初瀬がクロスを上げ、松田がヘディングシュートを放つもGK大西がセーブ。
対する鹿児島、この不利な時間帯の唯一のシュートが6分。
相手のクリアミスを右サイド奥で拾った韓勇太(ハンヨンテ)、そこから萱沼→中原秀人と渡り中央へ、そして中原秀がミドルシュート。
これはGK杉山がしっかりキャッチ、久々の出場でも不安は感じさせず。
一方の鹿児島GK大西、その直後に再び不安なプレーを披露。
7分の福岡の攻撃、鈴木のロビングがエリア内に上がると、これを飛び出して処理しようとして再び酒本と交錯してこぼしてしまいます。
これを城後にシュートされるも堤がブロック、こぼれ球をさらに城後がシュートしますが同じく堤が防ぎ冷や汗。
その後も福岡の時間が続きますが、アクシデントが発生したのが19分。
守備の要であるウォンドゥジェ(この日は右センターバック)が、鹿児島・ニウドとの交錯で倒れ込み、担架で運ばれプレー不能に陥る事態に。
そして山田が投入されましたが、ここから鹿児島がペースを握る展開となります。
直後に中原秀のクロスに対し、ファーサイドで韓がヘディングにいくも僅かに届かず。
しかし不利になったはずの福岡が先制するという、サッカーの神様の悪戯が降り注ぎます。
28分に松田が中盤で左→右へのサイドチェンジのパスを出し、石原が受けてキープ、追い越して彼のパスを受けた實藤が手前からクロス。
これを城後がヘディングで合わせ、すらすような軌道のシュートを見事ネットに突き刺しました。
一発で不利を打開する、これが「キング」と呼ばれ続けた男の力でしょうか。
先制された鹿児島、いつものようにボールポゼッションを高めつつ反撃に出ます。
エリア周囲でパスを回しつつ、ボランチのニウドの上がりを待って、彼のヘディングに合わせるという形は何度か見えました。
しかし福岡の守備は固くシュートには繋がらず。
パワーで駄目ならばスピード、そんな事を考えていたかは不明ですが、この状況を打破したのは抜け出すプレーでした。
38分の酒本のスルーパスに反応した韓が、右サイドで福岡・山田に倒された場面はノーファールでしたが、これが伏線となったか。
40分、左サイドでのパスワークから、枝本がギアを上げて牛之濱とのワンツーで一気にエリア内へ進入。
すると菊地の出した足に掛かり倒れ、今度は審判の笛が鳴り反則・PKをゲットします。
PKのキッカー・韓は物怖じせず中央に蹴り込み、GK杉山は足を残したものの触れずゴール。
前半のうちに試合を振り出しに。
残り時間はオープンな展開となり、ウォンドゥジェ故障の影響でアディショナルタイムも長くなり福岡1本・鹿児島2本とシュートが放たれましたが、同点のまま前半を終えます。
そして後半開始前、既に交代カードを使っていた福岡側に動きが。
實藤→輪湖へと交代し、4バックへとシフト。(SBは左が輪湖・右が石原、初瀬は左SHへ)
後半も流れがハッキリと別れた展開を描きます。
開始5分辺りまでは交代の効果もあり福岡優勢、後半2分に鈴木のスルーパスに走り込んだ城後、エリア内右からシュートを放ちますが枠を捉えられず。
しかしそこから鹿児島にペースが移り、5分に韓がシュート、ブロックされた後もボールを繋いでエリアすぐ手前で直接フリーキックを得ます。(枝本が後ろから鈴木に倒される)
ボールサイドには酒本・砂森・中原秀の3人が立ち、一旦蹴るトリックプレーから、酒本がシュート気味のクロスを入れるもののクリアされモノに出来ず。
11分には再びフリーキック、左サイド最奥という位置でクロス以外の選択肢は無さそうでしたが、ここもショートで変化を付けます。(酒本→枝本→酒本カットイン)
そしてクリアの後、牛之濱がシュートを放ちますがブロックに遭います。
ここで鹿児島のターンは終わり、12分を境に福岡のペースに。
それでも中々決定的なチャンスを作れないでいましたが、今度は鹿児島にアクシデント。
21分に酒本が足を抑えて倒れ込み、直後に藤澤と交代。(すぐに手が打たれたというのを見ると、前々から痛んでいたか)
その直後の24分から、今度は福岡がセットプレー攻勢。
右ハーフレーン・エリアからすぐ手前でのフリーキック、キッカーは鈴木。
この直接シュートは壁に当たり枠を外れますが、これで得た右コーナーキック。
キッカー・初瀬のクロスを中央で山田がヘディングシュート、均衡を破るゴールが生まれました。
再びリードを奪われた鹿児島。
この直前に21位の栃木は1点を先制したとの事(後半26分・千葉戦)で、このまま終わると入れ替わりで降格圏に落ちてしまう危機的状況です。
失点直後の28分、五領(萱沼と交代で出場)のクロスを牛之濱がヘディングシュートにいきますが浮いてしまい枠外。
34分には中盤でのパスカットからチャンス、枝本・韓・牛之濱がパスを繋いで前進し、最後は韓がシュートを放ったもののGK杉山がキャッチ。
この後35分に、奮闘してきた韓に代わり切り札・ルカオを投入します。
そして37分には左サイドで牛之濱と石原が交錯しルーズボールに、これにルカオがフリーで走り込むというチャンスが生まれましたが、GK杉山が判断良く飛び出してクリア。
40分はルカオのポストプレイからの好機、ニウドがミドルシュートを放ちますがこれもGK杉山に防がれるなど、後一歩が遠い鹿児島。
最終盤ではニウドをFWの位置に上げるパワープレイで勝負を賭け、その通りに2度ヘディングシュートの場面が。
44分には五領のクロスを合わせ、アディショナルタイムでは砂森のクロスを合わせたニウドでしたが、残留を決定付けるゴールが生まれる事はありませんでした。
そして試合終了の笛が鳴り、既に勝利で試合を終えていた栃木に抜かされ21位に落ちる事となってしまった鹿児島。
ここから助かる可能性は、J3で昇格枠に「J2ライセンスの無いクラブ」が入る事を祈るという、完全な他力本願によるものだけとなってしまいました。
現状、藤枝が2位争いに加わっていますが予断を許さない状況。
ホーム最終戦を何とか勝利で終える事が出来た福岡。(12勝のうちホームでは4勝のみ)
その2日後に、後任の監督には今季水戸の監督であった長谷部茂利氏が就任というニュースが飛び込んできました。
この手早い荒業(もし水戸がプレーオフ進出していたらどうなっていたのか)には驚かされましたが、水戸で一定の結果を出した長谷部氏、福岡の建て直しは果たして成せるでしょうか。