※前回の甲府の記事はこちら(30節・琉球戦、5-2)
※前回の金沢の記事はこちら(29節・秋田戦、0-3)
※前回の両クラブの対戦はこちら(10節、金沢 2-3 甲府)
<前節からの変更>
甲府=2人を変更。FWが三平→ウィリアン・リラ、ボランチの一角が松本凪生→石川と、途中出場→スタメンを交互に繰り返す妥当な選択か。
金沢=前節(長崎戦)が中止・順延となり2週間ぶりの試合。3名のサスペンド(豊田・藤村・嶋田)が絡むため前々節からは5人変更と多い。センターバックの片割れが黒木→庄司・右サイドバックが毛利→松田。藤村のボランチには松本大弥が左サイドハーフから回り、その穴には平松。嶋田の右SHには大石、豊田のFWには丹羽とそれぞれ穴埋め。ベンチの穴には杉浦恭平・力安が3試合ぶり、須藤が4試合ぶりにメンバー入り。
勝負の後半戦に向け、夏の補強で獲得した助っ人選手がメンバーに集結(ジェトゥリオ除く)した甲府。
その中には、Jリーグ黎明期に活躍したアルシンド氏の実子として騒がれた?イゴールの名前もあり。
3バックの一角として早々にレギュラーに定着したエドゥアルド・マンシャの存在もあり、チーム浮上に力を貸す。
そのはずでしたが、彼らの登録後3戦は引き分け続きと足踏みを強いられており、理想と現実の乖離は非情という事を思い知らされました。
しかし、そんな現実の厳しさを一層突き付けられている状況なのがこの日の相手の金沢。
目下5連敗中、しかもいずれも3失点以上を記録しての敗戦で、この5戦で17失点を数える有様であり。
守備組織だけでなく、クラブが貫いているサッカー自体の遅れぶりを憂慮しなければならない状態。
そんな中での前節の中止は、自身を見定めるべくの良い水入りとなったでしょうか。
試合開始の賽が振られ、早速左サイドでのスローインを得た金沢は、甲府選手が倒れている隙を突き長峰が長いボールを素早く奥へ投げ入れて好機を生み出し。(長峰がクロスを入れるも合わせた大石は撃ち切れず)
やや狂骨ともいえる好機の作り方でしたが、それがスマートな戦いをする甲府相手に脅威となったでしょうか。
その後も目の色を変えたかのように積極的な試合運びを見せる金沢、迎えた5分ここも左からのスローインが契機となり。
一旦はクリアされるも松本大弥がスライディングでこぼれ球を繋ぎ中央で継続、そこからの小野原の縦パスに対し、平松がレーンチェンジ(左ハーフレーン→中央)してのポストプレイで繋ぎ。
受けた松本大弥がエリア手前から果敢にシュートを放つと、甲府・須貝のブロックでコースが変わってゴール左へと突き刺さり。
半ばラッキーな得点でしたが、平松の相手の目線を変える動きが絶妙といった先制点となりました。
新たな金沢の引き出しが表れたかのようでしたが、その直後にキックオフからの攻撃で金沢の反則(詳細は映像に写っておらず不明)により甲府の左サイドからのフリーキックに。
そこからの二次攻撃で、再び左サイドからエリア内へ送られた浮き球を鳥海が走り込んで収め、切り返した後のシュートがゴールネットを揺らし。
あっという間に試合は振出しに戻されました。
前回対戦時は同点後一気に失点を続け逆転を許した金沢ですが、気を取り直し前線からの守備を頑張り流れを渡さず。
大ベテラン・豊田が欠場のためかその動きは格段に良くなったという印象で、相手ボランチの所で構えるスタイルを一新し、センターバックまで詰めにいく積極的な姿勢を取り。
甲府リベロ・浦上に対し林がプレスを掛け、そこから右に振られると須貝には平松・左だとマンシャに丹羽が詰めにいくという基本の形。
これを終始貫き甲府のビルドアップに制限を掛けていきましたが、11分にはトランジションで陣形が乱れたのもあり、林のみのプレッシングとなった事でマンシャのロングパスで一気に運ばれ。
このパスはクリアするも山田に繋がれ、左から長谷川がカットインでエリア内左を突いてスルーパス、走り込んだ荒木がグラウンダーでクロスを入れるピンチに。
ニアでリラが合わせにいった所をクリアするも、尚もエリア内で拾った石川がそのままボレーシュートにいき、GK白井が距離を詰めてセーブという際どいシーンを招きます。
試合前のインタビューで柳下正明監督が何度も強調していた「マンツーマンによる一対一」ですが、噛み合わない時が一気に危うくなるというスタイルなのは変わらず。
しかしこの日はそんな危機に気後れする事は無かった前線。
優位に立った金沢は、先制点のシーンに続き左からのスローインを数多得て押し込み。
その攻撃でも、今までは簡単にクロスを放り込む所を、ワイドからハーフレーンへの戻しを経てミドルシュートを放っていくなど変節を見せ。(13分には松本大弥のミドルシュートがGK岡西にセーブされる)
大連敗を受け、変わらなければいけないという強い思いをピッチ上で披露するに至りました。
そんな金沢の圧力を受けた甲府、22分には金沢が右サイド後方でボールを持った所、人数を集中させるもプレスを躊躇ってしまい。
そこから庄司にスルーパスを通されたものの、マンシャの(反則気味の)カバーで大石には何とか受けさせず。
この日は飲水タイムは無かったものの、時間が経つにつれて徐々に対策していき優位性を確保します。
ビルドアップの際は、金沢のプレッシングのボランチのパスコースに対しての甘さを突き始め、石川が巧に動いて脱出を見せるシーンを連発。
守備では前述のようなマンシャのディフェンスが冴え、読みが強いのか要所でのパスカットで金沢の攻撃を切る事が目立ちました。
そして28分にスルーパスをエリア内右で受けた鳥海がシュートする(GK白井セーブ)など、気が付けば甲府が攻勢を強めている展開に。
39分から立て続けにセットプレーでマンシャがヘディングシュートでゴールを脅かし、右サイドからのFKで荒木のクロスをドンピシャで合わせたものの、この強烈なシュートをGK白井がセーブ。
続く左コーナーキックからも、ショートコーナーを経ての長谷川のクロスを合わせたマンシャでしたが、これもGK白井がキャッチで防ぎ。
劣勢を強いられる金沢ですが、集中力を切らさずに右サイド(甲府から見て左サイド)で出されたスルーパスに対し、大石が必死に戻ってスライディングで防ぐなど粘り強さが戻り。
結局前半ではこれ以上スコアは動かず、1-1で折り返しとなりました。
共に交代は無く後半開始を迎えても、金沢の集中力はそのまま貫かれ。
甲府はリラのポストワークを絡めて攻撃を仕掛けるも、中央の堅さ故に結局サイドで展開するしかなく。
そのためリラもサイドに開かざるを得ないという状況を強いられます。
守備陣の奮起に応えたい前線も、後半7分に丹羽がプレスバックで敵陣でボール奪取、こぼれ球を小野原を繋いで平松がミドルシュート(枠外)と好機を作り始め。
そして迎えた10分クリアボールを丹羽が拾い、山田に反則チャージで倒されるも平松が拾ってアドバンテージ(後に山田に警告)、ドリブルで持ち運んだのち出されたパスを長峰がダイレクトでグラウンダーでのクロス。
アーリー気味に出された事でファーサイドを巧く突き、走り込んだ大石が合わせたものの惜しくも右ゴールポスト外側に終わります。
良い攻めを見せるも得点出来なかった金沢。
その後もリラへのチェックは緩めずも、甲府のビルドアップを許してしまい徐々に劣勢となっていき。
そんな中で甲府ベンチが先に動き、そのリラに代わって三平が投入されます。(17分)
以降は、GK岡西のキャッチミスで得たCKなどのセットプレーを絡めつつ押し込む金沢でしたが、決め手に欠きフィニッシュまで持ち込めず。
そして22分守備面がついに決壊し、甲府が最終ラインから左で繋がんとする中、ハーフレーンに降りてきた長谷川に対し松田のマークが曖昧に。(ワイドをチェックにいった松田だがそこに甲府の選手は居なかった)
その空いた隙を突き長谷川にパスを出し、リターンを受けて松田の裏を取った荒木のクロスを、ファーサイドで三平がジャンピングボレー。
華麗なゴールを齎した三平、その後のパフォーマンスとも相成って見事なジョーカーぶりとなりましたが、金沢にとって一瞬の対応ミスが悔やまれるシーンなのも事実であり。
そしてキックオフ前に、金沢ベンチは大胆に動き。
既に2枚替えの準備をしていたのに加え、失点の一因となった松田を含めて計4人の交代に踏み切ります。
その内訳は松田・平松・大石・丹羽→高安・須藤・毛利・杉浦恭で、フレッシュなメンバーを揃えて巻き返すべく試合再開。
早速CKに持ち込んだ金沢(26分)でしたが、そこから甲府がカウンターを仕掛けて須貝がドリブルで疾走する所を、金沢・孫大河がスライディングで止めてしまい反則。
しかしこれに警告が出なかった事で、甲府サイドは吉田達磨監督を含めて紛糾する事態となります。
不穏ながらも、金沢に運気はまだ残っていたというような一幕。
その通りに徐々に金沢の流れとなり、33分に林がエリア内右を突いてシュート(ブロック)、34分に左からのクロスをニアで収めた杉浦恭がシュート(枠外)とフィニッシュを放ち始め。
そして36分GK白井からショートパスでのビルドアップ、右サイドで縦パス攻勢で前進していき、奥で高安が受けるも戻して手前からのクロスを選択。
小野原のクロスがファーサイド・エリア内の浅い所を突くと、杉浦恭がマイナスに動いて折り返し、中央で裏を取った林が合わせボレーシュート。
目線をズラされて足が止まった甲府ディフェンスを尻目に放った、フリーのシュートが綺麗にゴールネットを揺らして同点に追い付きます。
今度は甲府が巻き直す事を強いられ、キックオフ直後に2枚替え、鳥海・山田→フォゲッチ・松本凪へと交代します。
そのフォゲッチがクリアボールに猛烈に走り込んで拾う(39分)姿に触発されたか、4試合ぶりの勝利目指して攻め上がる甲府。
40分には松本凪の縦パスを収めたフォゲッチ、エリア手前から反転シュートを狙いましたが大きくゴール右へと外し。
そして42分にカウンターから決定機、フォゲッチが右ハーフレーンをドリブルしエリア内中央へスルーパスを送ると、走り込んだ三平が合わせシュート。
GK白井がセーブしたこぼれ球をさらに自ら詰めましたが、これが左ゴールポストを直撃してしまいモノに出来ず。
時間も押し迫った事で疲労も隠せず、その直後に金沢のビルドアップに対し前線がプレスを掛けるも、それにより間延びしたスペースを突かれて危機を招き。(杉浦恭のスルーパスに毛利が走り込んでシュート、GK岡西がキャッチ)
そしてアディショナルタイム間際の45分、両ベンチとも最後の交代。
金沢が庄司→黒木、甲府は長谷川・荒木→イゴール・飯島。(フォゲッチが左ウイングバックに回る)
甲府はCKから混戦を作り、須貝の落としに反応した三平がシュートにいくも、GK白井のブロックに防がれます。
この日当っている白井の再三のセーブを見ては、思わず「2点取れれば上出来」とも言いたくなり。
初出場のイゴールもボールに絡んでチャンスメイクするも、その後押し込みながらもシュートは放てなかった甲府。
そして最後の最後に金沢のカウンターが炸裂し、杉浦恭が右サイドからドリブルで駆け上がり、エリア内右を突く絶好機。
しかしクロスを選択した結果、ファーサイドに大きく流れてしまい万事休す。
お互いに惜しい試合という印象を残す引き分けとなりました。