※前回の甲府の記事はこちら(26節・秋田戦、3-1)
※前回の琉球の記事はこちら(27節・大宮戦、1-1)
<前節からの変更>
甲府=5人が入れ替わり。GKが岡西→河田、3バックはレナト・ヴィスキと山本に代えて須貝・野澤陸が入り、右=須貝・中央=浦上・左・野澤陸という並び。ボランチは緊急的に務めた長谷川がシャドーに戻り、石川が鳥海と入れ替わって入る。さらにFWをブルーノ・パライバ→ウィリアン・リラへと代える。
琉球=前節の快勝を受け継がんと、11人とも変更無し。控えは微調整し、アレックス・バレラとブー・ホン・クアンが初のベンチ入りと、補強で過多となった助っ人勢の起用に苦心している感があり。
活動停止明けから2試合目の甲府。
昇格争いには絡めずながら、ちょくちょく(新井の件など)激震に苛まれるという微妙な立ち位置を維持しているのは幸なのか不幸なのか。
部外者の立場としては、この日の相手の琉球のように過酷な残留争いを強いられるよりは良いと感じますが。
とにかく試合をこなすという意味合いの前節から、レギュラーメンバーを多く復帰させて挑みました。
琉球は前節の勝利で、一気に上昇機運に乗りたい状況。
ディフェンスを建て直した末に、FWにサダム・スレイというピースが加わったという編成面からも明らかで、この日もサダムをフルに活かすべくのサッカーを貫き。
しかしそれでも結果が出るとは限らないのがサッカーというスポーツであります。
サダム狙いのロングボールによる攻勢を掛ける、立ち上がりの琉球。
中盤で甲府の反則によるフリーキックとなっても、かなり遠目から放り込みを選択するなど、その意思の硬さは一目瞭然でした。
そんな中心軸で甲府ディフェンスを揺さぶれば、他の選択肢も通りやすくなり。
前半9分にはグラウンダーのパスで攻め(それでもサダムのポストプレイ絡み)、左サイドでサダムが抜け出して奥からマイナスのクロス。
クリアされるも中野が拾い再び同サイドからクロスを入れ、ファーサイドで武沢が足で折り返した所に阿部が跳び込むも僅かに合わず。
一方受ける立場を強いられた甲府は、10分過ぎ辺りからビルドアップを微調整。
須貝が上がっての2センターバックへの変形を基本としていた所に、石川が降りて3枚での繋ぎをメインとするようになりました。
スムーズなパスワークの下地を確保できるようになると、マンマーク気味で守る琉球に対し穴を開けやすくもなり。
17分ボールを持った野澤陸がそのままドリブルで持ち上がるとともに、左ワイドでは小林が下がって琉球・上原牧人を引き付け、空いたスペースへ野澤陸がスルーパス。
走り込んだリラからのマイナスのクロスに宮崎が合わせにいく(琉球・大森を倒してしまい反則)という、意図的な崩しを見せ。
そうした甲府の攻勢により、いつの間にか振り回されていたのは琉球ディフェンスの方となり、迎えた22分の甲府の攻撃。
浦上がロングパスを送ると、琉球・上原牧のクリアが逆方向にこぼれ、エリア内右で拾った宮崎がシュート。(クロス?)
ゴール前で琉球・大森がブロックするも、詰めていた長谷川のシュートでゴールネットが揺れ。
試合の流れに従うかのように、甲府が先制点を奪いました。
掻きまわされていた末の(上原牧の)クリアミスといった感じで、先制点を与えてしまった琉球。
折りしも飲水タイムが挟まれた事で、気を取り直して攻め上がり。
これまで圧倒的に手前からのクロスが多かった攻撃ですが、25分にはスルーパスに走り込んだ左サイドバック・大本が奥からクロス、ブロックで軌道が変わるもニアサイドでサダムが合わせヘディングシュート。(枠外)
主に左サイドハーフの中野が中央に絞る事で、SBが上がり易い状況を作ったうえでの攻め込みを見せ始めます。
しかしその矢先の27分、甲府は左サイドのスローインから繋ぎ逆サイドへ、受けた荒木の手前からのクロスがエリア内でバウンド。
そこに戻りながらクリアにいった上原牧が、あろう事か腕にボールを当ててしまいます。
慌てて後ろ手にしたものの時既に遅し、ハンドを告げる主審の笛が鳴ってPKを与える事に。
一方ラッキーなPKを得た甲府、キッカーのリラがしっかりGKの逆を突いて左へと蹴り込み。
僅か5分そこそこで点差を広げました。
再び反撃せんと攻め上がる琉球、キックオフからの攻撃で2失点に絡んでしまった上原牧のドリブルから、阿部が半ば強引にエリア内へ切り込んでシュートするも枠外に。
早めに1点差にしたい所でしたが、齎されたのは更なる甲府の得点でした。
34分サイドチェンジを絡めながらパスを繋ぐ甲府、一転して中央から、山田の縦パスを受けた宮崎が切り込んでエリア内左を突き。
そして切り返した所、スライディングで止めにいった琉球・大森の開いた腕にボールが当たり、またもハンドを取られてPKに。
不可抗力として抗議する琉球サイドでしたが当然判定は覆らず、2本目のPKを蹴る事となった甲府のキッカーは宮崎。
GKダニー・カルバハルのダイブも届かないゴール右隅へと蹴り込み、ゴールネットを揺らして3点目を得た甲府。
たまらず流れを変えようと、琉球ベンチは動き。
上原牧・人見→田中・ケルヴィンへと2枚替えし、右サイドの選手を揃って代えたナチョ・フェルナンデス監督。
その後も甲府は琉球ゴールに迫り続け、39分には山田のミドルシュートがブロックに当たり惜しくもゴール左へ外れ。
直後の左コーナーキックからもその二次攻撃で、長谷川のエリア内左へのスルーパスに荒木が走り込んでマイナスのクロス、合わせたリラのシュートがゴールネットを揺らし。
しかし荒木の抜け出しがオフサイドで残念ながら無効となります。
甲府の前線の躍動が止まらないという流れでしたが、それを一変させたのが42分。
ロングボールを落としたサダムからの攻めで、左へと展開したのち大本が手前からクロスを入れると、中央ややファー寄りで合わせたのはサダム。
怪鳥の如き跳躍で放たれたヘディングシュートがゴール左に突き刺さり、1点を返した琉球。
直後の43分にもエリア内に迫り、ケルヴィンのパスを受けた阿部が混戦のなかシュート(ブロック)を放つなど押し込む琉球。
まさにサダムのゴールが希望の灯火となったようで、甲府は琉球・武沢の反則(警告)で何とかそれを堰き止めた末に、2点リードを保ち前半を終えました。
後半が始まると、早めに点差を詰めたい琉球の攻勢が展開され。
サダム狙いのロングボールを軸とするのは変わらずも、その攻撃は前半より一層組織立ったという印象を受けました。
サイドハーフが両者とも中央へ絞り、人数を多くする事でセカンドボールを拾い、そして空いたワイドにはSBが上がって埋め。
それにより両SHのみならず、後方から上がるボランチの武沢もフィニッシュに絡む分厚い攻めを展開していきます。
距離が近くなった分、SHのケルヴィンと中野が左右を入れ替える頻度も上がり、格段に掴まえづらくなった甲府ディフェンス。
早速結果に繋がったのが後半3分で、右サイド手前からの田中のクロスが跳ね返されるも、尚も繋いで武沢から再度同サイド手前でクロス。
クリアが小さくなった所をエリア内でケルヴィンが拾う好機となり、彼のシュートは甲府・荒木にブロックされるも、跳ね返りを中野が追撃しシュート。
ゴール右へと突き刺さり、1点差に詰め寄った琉球。
尚も琉球は一気呵成に攻め上がり、5分にはクリアボールをケルヴィンがフリックし、収めたサダムが浮かせながらボールを運んだ末に繋ぎ。
受けた中野がエリア内左を突いてシュートする決定機となるも、GK河田の脚でのセーブに阻まれ同点ならず。
13分にはロングパスを右サイドで阿部に収めさせたのち、田中のクロスの跳ね返りを武沢がヘッドでエリア内へ送り、受けた中野が再びシュート。
今度はゴールネットを揺らしたものの、オフサイドで無効となりまたも同点はお預けとなります。
一方的に攻撃を受け続ける甲府、マイボールの際はボールキープを優先して何とか落ち着く時間を作り。
上記のような決定機を招くも失点は寸での所で防いでいた所に、アクシデントを強いられる事となり。
14分琉球陣内深めまでプレスにいった小林が、ボールを蹴り出した琉球・大森を激しくチャージしてしまい反則。
警告の事象となっても、痛んで続行不能となったのは小林の方であり、ここで甲府ベンチが動く事となります。
小林と共にリラも交代させ、関口と三平が投入されます。(荒木が右ウイングバック→左WBへシフト)
その後冷静さを取り戻しつつあった甲府とは対照的に、琉球は判定絡みで不満を表すシーンが続き。
22分にはロングボールを受けにいった石川が、オフサイドとなるためスルーした所を関口が拾って甲府の好機となる事態に。(石川はボール際でスルーしたためプレー関与はあっただろうが笛は鳴らず)
直後には低いボールをヘッドにいった関口に対し、クリアにいった池田がハイキックの反則。(チャージは起こらずも、この判定は妥当ではある)
モヤモヤが溜まりつつあった所に、甲府は23分GK河田のロングフィードから好機を迎え。
右サイドで収めた鳥海(宮崎と交代で出場・22分)のキープから、逆サイドに展開されたボールを荒木がダイレクトでクロスを入れると、ファーサイドで三平が捉えヘディングシュート。
ゴール上部に突き刺さり、琉球の心を折るようなジョーカーぶりを見せた三平。
再び2点差となった所で、後半の飲水タイムとなります。
明ける際に琉球は武沢→富所へと交代。
甲府の方も、CBの位置で須貝を左へと置く微調整を行います。(野澤陸が中央・浦上が右)
その後ケルヴィンが右サイドから突破力を見せ、それを抑えにいく須貝というシーンが頻発するなど、甲府サイドの対策が嵌ったようであり。
30分にはケルヴィンの突破から、甲府・山田の反則で中央から直接FKを得たものの、キッカー・ケルヴィンの直接シュートは壁を直撃しモノに出来ません。
守備意識を高めた甲府により、琉球はサイド奥を取るシーンは影を潜めてしまい、手前からのクロスへと傾倒する攻撃。
それでも33分、左サイド手前から池田がクロス、中央でサダムが胸で落とした所をエリア手前から中野がシュート。
惜しくもゴール上へ外れと際どいシーンとなります。
残り10分を切り、最後の攻勢を掛けに行かんと、琉球は37分に阿部・中野→野田・バレラへと2枚替え。(池田がボランチ→左SHへシフト)
スタミナ切れという要素とも戦いながら、必死に攻め上がる琉球でしたがそれは実る事は無く。
サダム狙いのロングパスも効果が薄れ、42分には田中の手前からのクロスも精度を欠くなど、手詰まり感が露わとなりつつありました。
そして直後の43分左サイドで戻りながらのボールポゼッションから、石川のスルーパスがベクトルを前に向けた琉球の裏を取り、受けた鳥海がエリア内左を突き。
そして放たれたシュートがGKカルバハルの右を破り、決定的な5点目を告げるゴールとなりました。
その後45分に長谷川・山田→飯島・松本へと2枚替えを敢行した甲府。
無事逃げ切れる算段が立った事で、以降も続けられた琉球のロングボール攻勢をいなし続けます。
逆に琉球はパワープレイ色が濃くなったうえ、試合開始時からそれと類似するような攻撃を展開してきた事で違いも示せなくなり、文字通りの詰み状態に。
フィニッシュに繋がる事無く、試合終了の時を迎えました。
ゴールラッシュの果ての甲府の快勝も、道中はスリリングだった試合内容。
琉球の命綱であった守備力を崩壊させた事で、ウィルス禍からの立ち直りを示す一日となったでしょうか。