ものを作る仕事をしていると定期的に行きづまるものだ。何をどう創ろうかと思い悩む。
そんな時、なんとも衝撃的な本と出会った。エチオピアの奥地に生活する少数民族のファションを撮った写真集NATURAL FASHON 以下、本文を引用しながらご紹介しよう。
太古の昔から、このリフトと呼ばれる地域には15の部族がいたが、その中のスマル族とムシル族という仲の良い部族は、ボディペインティングと自然から借りた素晴らしい装飾物を身ににつけるという共通の嗜好を持っていた。
人々は母なる自然からたくさんのものをかき集め、身を飾ること楽しみとしだした。帽子のように草の束をかぶる。スカーフや襟巻を結ぶように、バナナの葉や枝や花を三つ編みにして首を飾る。
ほとんど丸裸で滑らかな肌をしているので、身を飾る自由度は大きく、その体は芸術的な手術をほどこすのにうってつけで、生の素材はどんな装飾ファンタジーをも受け入れることができる。自然の顔料によるボディペインティングは身体の美化に抽象的な要素を加える。正確さ、シンメトリーは彼らの目的ではない。彼らはもっと深い何かを表現しようとしている。正確に二つを分けることよりも、より微妙な何かを。
彼らは、谷に広がる火山土の層から、白色や黄色、赤色などの岩石を採ってきてそれを粉状につぶして絵具を作る。キャンバスは自分の体であっても、鏡というものがないから見せるのは他者なのだ。 それって、現代アートとどこが違うのだろうか。油絵にしても、私が常日頃器に試みている白化粧にしても、オブジェにしても。
太古の昔から行われてきたその術が、脈々と私たちの皮膚の奥深くにしみ込んでいるのだとしたら、何かを探すのは外ではなく、自分の中なのかもしれない。
もし誰の中にもアルカイックな失われたセンシュアリティがあるのなら。
(ナチュラル・ファション・ハンス・シルウェスター・DO BOOKS)
彼らに変化をもたらしたのは、イタリアからきたカメラマンとデザイナーだと言う。もともとは虫除けや日焼け防止に身体に土を塗っていた彼らに、ペイントを施し自然の衣装を纏わせて写真撮影したところ、反響を呼び、世界中の写真家がスルマ族を撮りに行くようになったと…。
それが刺激となり、彼らがさらなる独自の表現を広げていくなら、それはそれで素晴らしい。
世界は、ものすごい勢いで動き、交流している。かつて日本がそうだったように、エチオピアにも現代文明は押し寄せ、享受され、そしてそれがまた独自な変化をとげていく。
結局のところ、自分の内側から探す出せる一番素晴らしいものとは…好奇心だと私は思う。その好奇心こそが成長の源であり、推進力であり、その人らしさを支えるものだ。
だから行き詰まったら…好奇心の赴くまま…自分の外に出ていくことが何より大切だ!と思う。