目の前で、ミーンミーンとけたたましい蝉の声。
パソコンを打つ手を止めて窓の外を見ると木犀の木に大きなアブラゼミ。
真夏を謳歌している。
街中よりは幾分涼しいはずのここも、この猛暑には勝てない。外には出たくない。
ふと山に目をやると、咲き終わった紫陽花の横に白い花房をつけた低木がある。
どうやら最近ここに生えてきた「クサギ」のようだ。
クサギは「臭木」とも書いて、臭いから嫌われるのだと聞くが、
里山ではよく見かける植物で、花はなかなか立派である。
いつだったか、染色家の志村ふくみさんと石牟禮道子さんの対談をテレビで見た。
石牟禮さんの作品「沖宮」の能衣装を、志村さんが染めることになった。
天草四郎の着る能衣装の袴の青は、どうしてもクサギの青で染めたいという。
古代呉須をおもわせるアオ色は、クサギの実からとる青がいいのだと・・。
染色家のこだわりだ!
その時草木染の染料としてのクサギの役割を知った。
そして、昔の人の深い観察眼と知恵が生み出した古代草木染の世界も垣間見た。
*
秋になると白い花弁の真ん中に蒼黒い実が付く。
忘れずに採って青色の染め物を作ってみよう!