しばらく留守にしていましたら、家の蝋梅が満開になっていました。
蝋梅の馥郁とした香りは、なぜか心を優しく癒してくれます。
さっそく一枝手折って手桶に活け、初がまを点てました。
茶碗は、やや大ぶりの志野。
主菓子は、新年恒例の「花びらもち」。
「花びら餅」は、牛蒡をみそ味の餡で包み、それを餅で巻いて「花びら」のように見立てたものです。これは東京の老舗デパートでも、同じような風体のものを売っています。
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それで、思い出したのが、昨年12月、四国に行った時に丸亀市で求めた「福福餅」のことです。丸亀市は、丸亀うどんで有名ですが、行ってみるとどうしてどうして丸亀城のある立派な城下町でした。この町の老舗の「みどりや」さんというお菓子屋さんに立ち寄って買ったのが「福福餅」です。お値段は安いのですが、丁寧に保冷してくださり、静岡まで持ち帰り、翌日のお茶のお稽古に使いました。
その麩饅頭を包む葉っぱが、なんと「山帰来」(さんきらい)という植物の葉だったのです。山帰来は、別の名を「サルトリイバラ」と言って、赤い実をつける蔓性の植物で、静岡でも山ではよく見かけるものです。でも、この葉を塩漬けにして食べるというのは、初めてのことでした。
サルトリイバラ・松江の花図鑑より転載
この植物の名「山帰来」の由来は、その昔、重い病にかかった人が山にこもって「さるとりいばら」の実や葉を食べて養生し、病を治して山から帰ってきたことによるのだそうです。四国では「ガラダチの葉」と言って親しまれて、「柏餅」もこの山帰来で包むと聞きました。本当でしょうか? 静岡あたりでいただく「さくら餅」(桜の葉の塩漬けで餅をくるむ)のイメージなのでしょうか。
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四国では、もしかするとお正月にも、花びら餅とは違うものを使うのでしょうか?
新幹線で行けばわずか数時間の距離、
そこに異なる文化が育まれていることを、うれしく思ったのでした。