らいちょうのあし日記

山登りが大好きで今日も日本のどこかで歩いています

マッターホルンに挑戦

2012年08月07日 | 海外編

7/27~8/5までの10日間、マッターホルン登頂を目指してらいちょうチームは
スイス遠征に行ってきた。
この計画は一年前から具体的に考え始め、今夏実行へと至ったものだ。
今回のスイス遠征は、すべて個人手配で行い現地ガイドレスである。
遠征に関するすべてを自分たちで考えて決めていくというのは楽しい。
だが同時にいままでの山行の中で一番不安でもある。
でも、せっかく行くならとにかく楽しんで来よう!と、元気よく笑顔で出発する。


7/31 朝10時前、登山口となるシュバルツゼーに到着。
ここからヘルンリヒュッテまでは標高差約700m、2時間の行程である。
雲ひとつない青空の下にマッターホルンが輝いて見える。
これだけ晴れていても、空気が乾燥しているのでとても涼しく夏でも汗をかくことはない。


ヘルンリヒュッテまでは多数のハイキングコースがあり、
分かりやすい立派な標識がたっている。


最後の急登を行くとヘルンリヒュッテに着く。
ここまで来ると、今まで遠くに見えたマッターホルンが急に大きく目の前に聳え立つ。
ヒュッテ前のテラスは、超満員。日本の夏の山小屋と変わらない光景だ。
ここまでは、一般ハイカーも多く世界中からこのアルプスの景色を見るためにやって来る。


少し休憩した後、明日に備えて偵察に行く。登攀具を装着して空身で出発。
ヒュッテ裏から歩き始め、取付きまでは10分もかからない。


どこからでも登れてしまいそうなところがこの山の難しさだ。
ルートファインディング力必須である。
取付きから2時間程、時々迷いながらもルート確認をして下見を終える。


ヒュッテの夕食は19時からだった。スープにメイン、そしてデザートまであった。
隣席の、単独でここまで来られた日本人男性と話しが弾む。
明日は、現地ガイドと一緒にマッターホルン登頂を目指すとのことだ。
朝は起床3時半、3時50分までは出発禁止と受付け横に書いてある。
下見も一応してあるので、明朝は4時半出発と決めて21時に就寝。
この日のヘルンリヒュッテはどの部屋も満員だった。
普段テント生活に慣れているワタシは、こんなギュウギュウ状態では寝られないと心配。
ところが、グッスリ眠れた。もう、世界中どこでも眠れるかも・・・


8/1 朝3時に目が覚める。
もうすでにみんな起き出して準備に取り掛かっている。
予定通りに4時半に出発するつもりでいたら3時50分と同時にほぼ全員がスタートし始めた。
少し焦りつつも簡単な朝食を済ませ予定通り出発する。
日の出前の真っ暗の中、ヘッドランプの明かりを頼りに進んで行く。



出発から2時間、朝焼けに染まる山々が美しい。
現地ガイドの人たちは、かなりのスピードで登っているらしくまったく追いつけない。
もちろん、その先に姿も見えない。このことに、ワタシはまたもや焦りを感じる。


この辺りの岩稜地帯は硬くとても安定している。
しかし、ルートを見つけ出すことに苦労させられる。
高度をあげていくと頭上にソルベイ小屋が見えてきた。
小屋直下のクーロワールで初めてロープを出し、スタカットで登攀する。


ソルベイ小屋(4003m)到着は出発から3時間45分も経過。
ここまで3時間で登る予定だったため45分もオーバーしている。
だが、まだ体力・気力ともにまだ充分あり何とか山頂まで行けそうだ。
ここからはアイゼンを着けて、小屋横にある3級程度の壁から登り始める。


ソルベイ小屋から上部は、傾斜のある岩稜登りがひたすら続く。
登っても登っても、岩・岩・岩。いくら岩登りが大好きでも、こうなると楽しいばかりではない。
しかも、4千m超の登攀はいつもよりも身体が重く感じる。
また、この頃から下降してくるパーティとリッジ上で行き交い、
思うように先に進めず、またしても時間がどんどん過ぎてゆく・・・


山頂まであと300m地点まで来た時、もう体力的にこれ以上登り続けることが危険だと感じる。
登っても、今度は降りなければいけない。
しかし、せっかくここまで頑張って来たんだからと何度も頭上に見える山頂を見つめる。
迷っては少し登り、また迷っては・・・を3回ほど繰り返す。
もう、時間的にも余裕がなくなり下山することを決めた。このとき12時45分である。


時間がかかっても確実に安全に行かねば、と下降は登りよりも慎重になる。
結局ソルベイ小屋まで降りた時は、すでに15時15分にもなっていた。
この日初めての休憩を15分だけとって再び下り始める。

この後は、ひたすらヘルンリヒュッテを目指して降りる。
しかし、岩稜地帯の下りはルートファインディングが非常に困難で何度もルートを見失う。
降りては行きずまり、登り返してまた降りる。そんなことを何度も繰り返す。
もう今日中に無事に帰ることだけを考えよう、時間は気にするな・・・と。
幸い、スイスは緯度が高いので日没は21時過ぎだ。
何とか明るいうちにと思っていたが、陽が暮れてきた。そして、雷がアルプス中に響き始める。
もう少し、もう少し、とひたすら歩き続けやっと分かりやすい道まで来たところで大粒の雹!
雷は頭の上で鳴り響き、最後は小走りでヒュッテに駆け込んだ。
21時40分、ヘルンリヒュッテ到着。行動開始から17時間も経っていた。


8/2 翌朝、昨夜の激しい雷と雹がウソのように青空が広がる。
でも、気温はグッと低くなってヒュッテの前は雹で白くなっていた。
マッターホルンを見上げ、あそこまで登ってきたんだなぁと昨日のことを思い出す。
同時に、ここまで無事に戻ってこられて良かったと実感する。


登頂には至らなかったが、意外に残念だという気持ちはあまりない。
初めての山で、よく頑張ってあそこまで登ったなぁという充実感の方が強い。
そして、絶対にこの次は山頂まで登ってみせるぞ!と決意して下山する。

いままで登った山とは、まったく違う経験が出来た。
もちろん、4千m級の山なのだから気象・環境条件が異なるのは分かっている。
だが、今回私たち二人だけでこの山に挑戦したことで、登頂出来なかった要因が
よく分かった。
そして、そのことが今後の山登りを続けていく中で次なるステップにつなげられる。
マッターホルン、ありがとう!また、挑戦するぞ。