浅井久仁臣 『今日の中東』

1971年のパレスチナ初取材から、30有余年中近東を見続けてきたジャーナリストが独自の視点をお届けします。

密入国

2005年12月03日 | Weblog
 イスラエル軍(以下イ軍)が撤退したガザ地区で2日、3人のパレスチナ人が国境のフェンスを越えようとしてイスラエル兵に銃撃され、1人が死亡、2人が負傷しました。
 イ軍の発表によりますと、国境警備隊がフェンスを登る3人を発見、「テロリストの侵入」と判断して銃撃したとのことです。今回イ軍は、3人を拘束しようとはせず、パレスチナ治安当局に連絡しました。救助に駆けつけた救急隊の発表では、3人は武装しておらず、イスラエルに職探しに行こうとしていたとその理由を語っているようです。
 3人が、職探しが目的で密入国しようとしたか、ゲリラ活動をしようとしたのか、現段階では私にも判断がつきません。ただ、3人が武装していれば、双眼鏡や銃のスコープで見ている兵士には容易に確認できたはずで、イ軍はそう発表するはずです。発表がないところを見ると、武装はしていなかったのでしょう。では、はたしてそんな命を懸けてまでして仕事を見つけに行くかという疑問に行き着くでしょうが、私の答えは、「行くでしょう」です。パレスチナ自治区、特にガザ地区の失業率は6割を越えていると言われており、住民は危機的状況に置かれています。餓死者が出ても不思議ではない悲惨な現状です。ですから、貧困に押し出される形で、命を賭してイスラエルに密入国するパレスチナ人が後を絶たないのです。

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