浅井久仁臣 『今日の中東』

1971年のパレスチナ初取材から、30有余年中近東を見続けてきたジャーナリストが独自の視点をお届けします。

旗を掲げたら逮捕!

2005年06月17日 | Weblog
 エルサレムにあるイスラエル最高裁の前で16日、パレスチナの旗を掲げていたイギリス人がイスラエル警察に連行されたとの情報が入ってきました。その英国人は、イスラエルに「隔離壁」を作るための土地を奪われたパレスチナ農民を支援する平和活動家達のひとりで、この日行なわれた裁判の支援に現場に駆けつけていたものです。幸い、英国人は数時間後に釈放されたとのことです。
 イスラエルはまだこんなことをやっているのですね。かつて、自治政府が出来る前、エルサレムに住む私の知人で看板屋を営む男が、仕事場でPLO(パレスチナ解放機構)の旗の色を揃えていたからとイスラエル警察に逮捕された事がありました。私事で言うと、80年代の終わりのことですが、ヘブロンという町で私の車に誰かがイタズラでPLOの旗を掲げた事があります。私が撮影から戻ると、車を止めた道路は、イスラエル軍によって「軍事封鎖」され、私の車は兵士達に包囲されていました。そして、私はその場で「逮捕」を宣告されました。まあ、こういう性格ですから黙っているはずはなく、「これ以上私の自由を奪えば、この模様を報道するぞ!」と逆に脅すと、解放されました。軍事占領下での出来事とはいえ実に不愉快な思いをしました。ただ、私のようにジャーナリズムの持つ影響力を使える訪問者は、「不愉快な出来事」で済ませられますが、パレスチナ人にとっては逮捕と長期拘留が待っています。軍事占領の恐ろしい一面を見た思いがしました。
 1993年のオスロ合意でパレスチナ自治区ができ、軍事占領がいまだ続けられているものの「旗を掲げる自由」くらいはあると思っていました。これは、パレスチナ人が大げさに言っているのではありません。イスラエルのハーレツ紙もこの事件をインターネット版で伝えています。

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