浅井久仁臣 『今日の中東』

1971年のパレスチナ初取材から、30有余年中近東を見続けてきたジャーナリストが独自の視点をお届けします。

エジプト同時多発テロの背景

2005年07月24日 | Weblog
 23日未明にエジプトの保養地シャルム・エル・シェイクで起きた「同時多発テロ」は、時間の経過とともに被害の実態が明らかになり、死者は89人、負傷者は200人に達しています。
 この爆破事件の手口から「アル・カーイダ」の名が取り沙汰され、マスコミによる“犯人探し”が行なわれていますが、それは捜査当局に任せ、同じ「犯人探し」でも事件の背景をもっと詳しく報道すべきです。
 この保養地は、1967年の中東戦争でイスラエルに占領された後に、イスラエルの業者によって開発が進められ人気スポットとなりました。82年に「キャンプ・デイヴィッド合意」に基づく占領地の返還が行なわれた際、この地もイスラエルからエジプトの手に戻されました。返還後も、イスラエルや欧米からの観光客で賑わい、事件当時も約1万人のイスラエル人が休暇を楽しんでいたとの事です。
 ですから、パレスチナ急進派によるイスラエル人観光客を狙ったテロ事件との見方も出てくるわけですが、爆発が起きた3ヶ所は何れもイスラエル人はあまりいない場所で、その辺りを考えると、他の要因が浮かび上がってきます。
 次に考えられるのは、エジプト内に吹き荒れるイスラーム急進派による犯行です。これまでにも、ルクソールなどの人気スポットで外国人観光客を襲撃しています。一部のグループはその可能性を否定していますが、これまでの活動内容を見ていますと、その可能性を直ちに消し去ることはできません。
 そして世界が一番可能性の高いグループと見ているのが、アル・カーイダもしくは、それに同調する国内組織です。
 エジプトは「アラブの盟主」を自認しており、このような作戦によるダメージは相当大きいものと思われます。それだけに、「でっち上げ逮捕」をしてでも表面を取り繕おうとするかもしれません。

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