浅井久仁臣 『今日の中東』

1971年のパレスチナ初取材から、30有余年中近東を見続けてきたジャーナリストが独自の視点をお届けします。

アッバース大統領に辞任要求

2006年03月18日 | Weblog
 1月の議会選挙の結果が出たものの内外からの様々な動きに影響されて依然として組閣できずにいる状態のパレスチナ政界ですが、今度はアッバース大統領のお膝元である「アル・ファタハ」から辞任要求が出されました。

 スワ、内輪もめと思う向きもありますが、そうではなくてアッバース氏の“身内”である幹部から出た発言で、これは、これまで何度も漏れ出てくるアッバース氏の「辞めたい発言」の一環ととらえて良いでしょう。

 アッバース氏は、自分の支持政党であるアル・ファタハが選挙で敗北してからというもの、議会で多数派となったハマースと欧米諸国の支持を取り付けたイスラエルの間で板挟み状態にあるといえます。ハマースはこれまで国家運営どころか行政に関わった経験もありませんからファタハに協力を求めています。しかし、選挙後もイスラエルに対しての対決姿勢は崩しておらず、これまで自治政府がイスラエルと結んできた約束事も反故にしろと主張しています。そうなれば、ファタハとしてはハマースと連立を組むことはできません。

 こんな状態では、いくら最高権力者であろうともアッバース大統領の手に負えるはずなく、パレスチナを前に進めさせるための舵取りがほぼ不可能な状態に陥っています。辞任話はその延長線上で出てきた話なので、アッバース陣営の作戦の一つとみていいでしょう。

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