浅井久仁臣 『今日の中東』

1971年のパレスチナ初取材から、30有余年中近東を見続けてきたジャーナリストが独自の視点をお届けします。

イ軍兵士 銃乱射事件 

2005年08月05日 | Weblog
 イスラエル北部のシャファラムの近くを走行中のバスの中で4日、アラブ系イスラエル地元住民と口論になった19歳のイスラエル兵が持っていた自動小銃を乱射、3人を殺害しました。
 イスラエル兵は、弾を撃ち尽くした直後、バスの乗客と救助に駆けつけた地元住民に袋叩きに遭い、殴り殺されたとのことです。
 銃を乱射したイスラエル兵は、イスラエルのガザからの撤退に反対の立場を取っていたようで、ガザへの移動命令を拒否、10日位前から行方をくらましていたとのことです。イスラエルの一部報道機関の情報では、兵士はカッハに属していたとされています。カッハは、イスラエルの中でも際立って急進的なグループで、これまでにも再三、パレスチナ住民を襲撃しています。「当然」のことながら、入植地からの撤退に強く反対する立場です。
 それにしても、凄惨な現場だったと思われます。欧米の報道には、銃を乱射したことよりも、犯人を撲殺した地元住民の「残忍性」を問題とする向きもあります。しかし、これまでのパレスチナの歴史を考えると、起きては欲しくない事件ですが、簡単に住民達を批判することは出来ません。
 この事件は今後、やがて始まるガザからの撤退の動きやパレスチナの急進派の活動に大きな影響を与えるものと思われます。「パレスチナの暑い夏」の始まりにならないことを強く願っていますが、政治的解決する道が見えないだけにその恐れは十分にあります。

(註)われわれからすると武装した兵士が民間バスに乗ることは考えられないことですが、イスラエルでは兵士の移動手段は様々で、急ぎでなければバスや乗り合いタクシーに乗ることは通常のことです。それよりも兵士が移動手段として“愛用”するのはヒッチハイクで、皆兵制ということもありその手段が国民から理解されているせいか、優先して兵士を乗せています。

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