昼過ぎに身内が老衰で静かに息を引き取ったと、知らせが入る。死への痛みも、苦しみもなく、静かに眠りについたと云ふ。さいごまで、幸せ者だと羨ましく思ふ。逢へばいろいろ樂しませてくれたのだから、當り前か。ただただ、 ありがたう。合掌 . . . 本文を読む
ラジオ放送で觀世流「戀重荷」を聴く。上流女性に戀をした下流老爺が、叶はぬ想ひと諦めさせられるために嬲られ憤死する筋立で、先行曲の「綾の鼓」を改作したのが本曲云々、老体で巌を持ち上げ歩いてみせやうと本氣になるところに、何人をも愚かにさせる戀の魔力を見る。果てに亡靈となって再び現れた老爺は、片想ひの相手を散々に責めた挙げ句、貴女の守り神になると云ひ出す心の脆さこそ戀の魔力のダメ押しにて、 . . . 本文を読む
東京都千代田區神田錦町の一角で、門松づくりの様子を見かける。時代の流れで、需要もつくり手も減少してゐると云ふ門松づくり。考へたら、私自身も正月に備へた諸々を、ほとんどやってゐない。年賀状など、どこで購入するのかすらも忘れた。縁起担ぎが好きなくせに、さういふ作法を面倒くさがってゐる。一月朔日に能州で發生した大地震で、崩れた家屋に正月飾りが揺れてゐる様子を映像で見て、とてつもない虚無感を . . . 本文を読む
dmenuニュースよりhttp://topics.smt.docomo.ne.jp/article/kyodo_nor/world/kyodo_nor-2024121801000183?fm=d『北朝鮮兵を巡っては、ロシア兵との「言葉の壁」が障害となり、指揮命令系統が十分に機能していないとの見方がある。』──鎌倉時代に日本を二度攻めてきた元軍(元寇)は、これまでに征服したクニの人々も動員した混成部 . . . 本文を読む
近ごろ鐵道運行情報で氣になるのが、「走行中に線路の“異音”を感知云々」により、列車が遅延する事例が頻發してゐることだ。原因などは一切公表されないので實際の状況は分からないが、線路の異音と聞いてまず思い浮かぶのは、“置石”である。忘年忘月、まだまだ線路の異音が珍しかった頃、JR忘線に乗ってゐたらいきなりガリともゴリもつかぬ異常な大きい音がしたので、運転手が列車を緊急停車させてすぐに線路へ降りて様子を . . . 本文を読む
大正十三年(1924年)に川崎町、大師町、御幸村が合併して川崎市となって今年で百年云々、その記念展「爆誕!! かわさき100年物語」を、前期と後期通して觀る。前期は川崎區の東海道かわさき宿交流館が會場で、沿岸を埋め立て、重工業を誘致することで人口増加を図るなか、京濱急行大師線の驛名にもある“鈴木町”の語源となった鈴木商店が、大正時代に現在の場所に味の素工場を建てたのは、多摩川の舟運を最大限に活用す . . . 本文を読む
その流派の大事な戰力であった能樂師が、まだ五十代になったばかりの若さで今秋に急逝してゐたことを知り、息が詰まりさうになるほど驚く。年齢よりずっと若く見える男前な方で、演能會では後見や地謠方で、その名前と優れた容姿を認識してゐた。その方がいよいよ「道成寺」を披くにあたっては、一觀客として電話で切符を申し込んだところ、本人が電話口へ出て、とても丁寧な應對をして下さった。その後、私が舞薹に立って仕舞をつ . . . 本文を読む
行く予定のなかった神田神保町へ、なにやら氣になったので昼頃に出掛けて、比較する物が遠くに仕舞はれてゐるためとりあへず自分の記憶に恃んで對比するほかに無い古い古い資料が、手に入る。たとへそれが、自分の記憶違ひであったとしても、それでよい。私は今日、この古い古い資料に御縁があって、呼ばれて、出掛けたのだ。私はさういふものを、信じる。 . . . 本文を読む
久しぶりに池上本門寺を参詣す。本堂で、七五三のお参りで頒布した千歳飴の余りを分けてゐた。製造は老舗の榮太樓本舗、材料は全て國産、着色は野菜由来と云ふのが氣に入り、いくらかの“お氣持ち”を置いて、一本いただいて行く。この國では當たり前であるところの、なんでもかんでも異國産を使った飴であったなら、私は情けなくてそっと元に戻していただらう。 . . . 本文を読む
“後期高齢者”の女性が、老齢の愛犬を連れて散歩中に道で知り合ひに會ふたび、「この犬(コ)を殘して先に死ねないわ……」とばかり話してゐたところ、それまでとても元氣さうに見えた老犬が、急に亡くなった云々。周辺曰く、「犬が氣を遣ったのではないか……?」犬はヒトのコトバを理解する頭の良い動物であり、また体調に異變を感じても、極限まで我慢する習性があると聞く。その老犬も元氣に振る舞ってゐたが、 . . . 本文を読む
ラジオ放送で、関西方の喜多流による「龍田」を聴く。川面に散り敷かれた紅葉のごとく古歌を散りばめた清廉な女神の舞曲にて、かうした物語性より風情に重きをおいた曲は、謠ひ手の人選にも重きをおかないと、せっかくの紅葉も全て川流れになってしまふ。洋樂は門外漢ゆゑ知らぬが、“純邦樂”について云へば、ラジオ放送だからと云って演者も卓越した技藝者たちを揃へたかと云ふと、明らかにさうでもない場合がある . . . 本文を読む
店頭で見かけた正月飾り。まだ十二月になったばかり……、と思ひかけて、さうかあと一ヶ月もしないで新年か、と時間の速度(はやさ)に氣が付かされる。師走は、急ぐと云ふより、急がされてゐるやうな……。用事帰りの夜道で逢ったイチョウ。この姿に逢ふと、草木には魂が宿ってゐると人が畏れたわけを、とても深く理解する。 . . . 本文を読む
ラジオ放送で寶生流「葛城」を聴く。恵まれない容貌を恥じて夜にしか行動しない女神がシテ(主役)の曲だが、實際の舞薹では秀麗な女面をかけて登場するので、謠ひの文言を知らないとただ雪で白っぽい曲といふ印象しか殘らない。曲中、後シテに“天の扇”といふものがある。開いた扇を手にした右手と、輕く握った左手を顔の前で合はせてから、扉のやうに前へ開きつつ三つ下がる型のことだが、この曲を仕舞で稽古中に . . . 本文を読む
ラジオ放送で觀世流の「通小町」と、「楊貴妃」の一部を聴く。シテ(主役)は流派の重鎮らしいが、だいぶ年季の入った粗い聲で聴く者をギョッとさせる。「通小町」における深草少将のやうな、未練と無念と執念に凝り固まって怒ってゐる男ならば丁度よく聴いてもゐられやうが、「楊貴妃」のやうな冥界で独り寂しがってゐる美女があまりに荒れた聲では、せっかく假死して會ひに行っても、「……人違ひでした」スミマセン、と現世へ帰 . . . 本文を読む
いつも買ふ缶詰が、隣町のスーパーマーケットにまずまずのお値段で出てゐたので手に取ったら、どうも缶の寸法がいつもと違ふやうな。イヤな予感を覺えつつそれを購入し、棲家に蓄へてある同じ物とを比べたら、やはり少し小さくなってゐる!内容量も、今までの115gから、100gに減ってゐて、「なのに、アノお値段かぁ……」。實質的な、タダの値上げ。いま食品製造業界では、値段を上げたぶん容量は維持するこ . . . 本文を読む