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迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

知るも知らぬも萩の庭。

2024-11-25 16:20:00 | 浮世見聞記
ラジオ放送の大藏流狂言「萩大名」を聴く。訴訟のため在京が長引いてゐる田舎大名(領主)が、憂さ晴らしに太郎冠者に伴はれて訪れた庭の美事な宅で、無知無學をさらけ出して恥をかく噺で、今日でもよく上演される。學生時代に銀座能樂堂で觀た故人和泉元秀と元彌の父子による舞薹が初見以来、私がもっとも多く觀た狂言ではないだらうか。別にこの曲が好きなのではなく、觀たい能があって出かけた演能會で、しょっちゅう出てゐただ . . . 本文を読む

逢菊笑輪。

2024-11-24 19:54:00 | 浮世見聞記
今年は恒例の菊花大會にも行けず、 とんだ損失を犯してしまったと悔やんでゐたら、たまたま通りかかった隣町の軒先で、大輪の笑顔に逢ふ。かういふ出逢ひは、自分の目と足でなければ、結べぬ御縁。よかった、よかった。これで今年も、正しく季節を過ごせる。 . . . 本文を読む

牛歩爆騰。

2024-11-22 17:40:00 | 浮世見聞記
小刻みなちゃっかり値上げが續く自販機飲料、この頃ではつひに¥170なんてものが現れ、ちょこっと何か飲みたくて自販機の前に立った私だが、さすがに「これは……」と財布が引っ込む。かつてのやうに手輕な物が手輕に買へなくなってきてゐるニッポン人がゐる一方で、異人たちは手輕なクニとしてニッポンに續々闖入して来る。精米も、やっと出回った頃に比べて、微妙に値が上がってゐるやうに見える。……いったいこのクニは、誰 . . . 本文を読む

乞祈猛火滅惡。

2024-11-14 20:01:00 | 浮世見聞記
ラジオ放送の觀世流「小鍛冶」を聴く。前半の聴かせ処は、“草薙の剣”の靈威が火攻めの危機に陥った日本武尊を救ふ件りで、おかげで人々は戸締まりをしなくてもよいほどに國土が平和になったと語る。カネも知力(アタマ)も無い亂暴な輩による、高齢者宅を狙った手荒な強盗事件が續發してゐる現今、再び剣の靈威を見たいものと願ふ。 . . . 本文を読む

癇氣換氣。

2024-11-08 20:05:00 | 浮世見聞記
この時期はどこへ行っても見事に「ゲホッゲホッ!」のバイ菌だらけ、浮世にはこんなのしかゐないのかと、あまりの數に恐怖すら覺える。しかしあれらの平然とした様子(かお)を眺めてゐると、『ばかは風邪をひかない』は、もともと、『ばかは風邪をひいてゐることに気が付かない』が本来のコトバであったことを、ナルホドと納得する。かつて人災疫病禍元年には、これらもにわかに命が惜しくなってマス . . . 本文を読む

沖縄心念碑。

2024-11-06 23:50:00 | 浮世見聞記
JR川崎驛の東口廣場を通るたびに氣になってゐた「石敢當」と彫られた石碑、昭和四十一年九月の薹風で甚大な被害を受けた宮古島を超党派で復興支援した當時の川崎市へ、返禮として宮古島が贈った沖縄傳統の魔除け石云々。この時代の沖縄は米夷の占領下にあり、しかもニッポン本土から精神的に切り離さうと、「守礼の光」誌に象徴されるプロパガンダ活動が盛んな頃でもあった。戰後に重工業地帯として再興した川崎に . . . 本文を読む

迷闇戀彈。

2024-11-05 19:37:00 | 浮世見聞記
ラジオ放送の寶生流「小督」を聴く。平清盛の權勢に圧されて散った、高倉院と小督局の悲戀譚の一篇(ひとつ)。高倉院の御書を携へた源仲國が、清盛を恐れて姿をくらました小督局を馬で嵯峨野に探し訪ねる場面は、特に“駒の段”と云って、謠ひの聴かせどころとされてゐる。つまりそれなりの技量(うで)のある人に許される件りだと思ふのだが、忘年忘月、忘謠曲愛好者が發表會でこの“駒の段”を謠ふと云ふので、すごいぢゃないで . . . 本文を読む

本の秋、秋の紙魚。

2024-10-30 19:56:00 | 浮世見聞記
季節遅れな薹風の影響とかで、ここ數日嬉しくない天氣が續いてイマイチ足が向かなかった神保町の恒例古本まつりへ、午後からの晴天を幸ひ覗きに出かける。すでに手許にあるはずだが記憶が定かでないもの、創造の参考資料になるであらうもの、手に入れておいてまず損はないであらうもの、ジンとくる所縁のもの、その全てを手に入れて、さっと引き揚げる。──何事も興醒めは、ムダな混雑と騒音なのである。 . . . 本文を読む

駑馬殘景。

2024-10-29 17:16:00 | 浮世見聞記
ラジオ放送で、惡七兵衞景清をシテとする謠曲二番を、觀世流銕仙會の出演で聴く。平家方の武将であった惡七兵衞景清は、平家滅亡後も生き延び、落ちぶれてもなほ源氏打倒の闘志を燃やす忠将で、初めの「大佛供養」では奈良東大寺の大佛再建法會に臨席する源頼朝を狙ふが果せず、手にした刀の靈威を借りてひとまず姿をくらます壮年期の有様、續く「景清」では、つひに日向國へ流罪となり盲目の老人と成り果てたかつての忠将の、娘と . . . 本文を読む

選別真理。

2024-10-28 20:40:00 | 浮世見聞記
久しぶりに、橫濱元町を歩く。ここに来ると、洋服と云ふものがいかに着るヒトを選ぶかが、よくわかる。衣服は、その人の外面より、その人の内面を飾るものである、と。こちらが選ぶのではなく、向かふに選ばれてゐる。よって私は、分相應な生き方に徹すべしと自戒する。 . . . 本文を読む

衆院選自民敗退。

2024-10-28 09:36:00 | 浮世見聞記
dmenuニュースよりhttp://topics.smt.docomo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20241028-567-OYT1T50058?fm=d與党の自民党が過半数割れして191議席、野党の立憲民主党が躍進して148議席──ほかに選択肢の無い現状では、まぁさうもなるでせう。浮世で橫行する便乗値上げに無為無策、そのウラでセンセイたちがキタナイおカネのやり . . . 本文を読む

“國民審判”の權利。

2024-10-27 20:15:00 | 浮世見聞記
衆議院議員選挙の投票權と、最高裁判所裁判官の審査權を行使する。衆院選立候補者たちの公約を廣報で眺めたが、與野党ともに、ナニを云ってゐるのか、よくわからない。が、それで腹を立ててはいけない。尤もらしいことを、なんとなく、それらしく聞こへるやうに宣ふが、選挙公約である。いかにもアヤシイ商品の宣傳文句と同じで、あんなシロモノに欺されるはうが惡いくらゐなものだ。……と云ふことで、ふだん町内のあちこちにポス . . . 本文を読む

嫌暑拂天。

2024-10-23 19:30:00 | 浮世見聞記
今日は暦では「霜降」──冬の寒さがやって来る日とされてゐるが、なかなかどうして湿り氣を帯びた暑さ漂ふ一日。 曇天では日が暮れるまで時間の推移も分からず、腹時計でやっと時刻を察する。秋がもう消滅したならば、それでも構はぬ。だがその代はりとして、すぐに寒くなってもらひたい。 . . . 本文を読む