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『心理試験』
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2016年01月31日 12時52分43秒
録画してあった『心理試験』をさっき観た。
『
シリーズ・江戸川乱歩短編集 1925年の明智小五郎
』
の第2話だ。
第1話は『D坂の殺人事件』だった。
演出がちょっと面白い。
「面白いね。これ。」と、感心して観ていた。
満島の明智小五郎も、それなりに良かった。
そして、『心理試験』だ。
これ、
「ばっ、バカなんじゃないのぉ~~~~~~!!」
と、悲鳴を上げながら観ていた。
大絶賛だ。
正直、第1話の明智は、「満島ひかりが明智小五郎役」という設定(?)に、縛られていた感がある。
いったい、どこまでやって良いのか。
満島に男役を演らせるとしたら、どうしたら良いのか?
普通に男が演じるのを真似るだけでは、全く意味がない。
かと言って、女優が演じることによる演出効果を求めるだけでは、不十分だ。
『満島ひかり』が演じるのであるからには、それなりの演出をしなければならない。
「満島ひかりが明智小五郎役」というのが出発点になり、その束縛から逃れられていない。
だか、『心理試験』は違う。
出だしから、第1話とは趣が違う。
第1話のテイストで3話続くものと思っていたのだが、どうやら「同じお題で各話ごとに監督色を出して」といった企画のシリーズようだ。
実は、この企画の真のお題は満島云々ではなく、「ほぼ原作通り」にあったと思う。
「江戸川乱歩の原作を題材にする」だけでは、シリーズとしての統一感が生まれない。
そしてなりよりも、全く縛りのない状況であると、全てがその監督の感性のままに作られてしまい、結局はどかこで見たことがあるようなものに、落ち着いてしまいかねない。
そして、今回のお題で最も重要なのは『ほぼ』という言葉だ。
原作を忠実に伝えたいのであれば、誰かが朗読するだけで良い。
原作を忠実に再現したいがために、時代考証などにも忠実にした結果、ストーリーを追うだけの作品になってしまっては、各話を別々の監督に委ねる必要がない。
企画者も「縛りのある中での創意工夫からこそ、時として、全く新しいものが生まれる。」ことを期待して、「原作通り」を指定している。
だが、なにか面白いことを思い付いた時に「原作通り」との縛りがキツ過ぎると、せっかくのアイデアが十分に生かされない危惧もある。
「『原作通り』と、『監督の感性』がぶつかった時には、崩してもらって構わない。」
いや、もっと言うと
「ちゃんと『ほぼ』と言ってるんだから、各自、鋭く切り込んで来いよ。」
との挑戦が、ヒシヒシと感じられる。
『心理試験』
もうね。バカなんじゃないのっ!!と、叫びたくなるほどの出来栄えだ。
この場合の『バカ』とは「程度が並はずれているさま。度はずれているさま。」の意味の「バカ」だ。
「女優が明智小五郎役」とか、「満島ひかりが男役」とか、そう言った固定概念を全て振り払い、はたまた「満島ひかり」という肩書すら捨て去って、一人の奇特な逸材をどう料理するか?
監督の頭の中に出来上がっているイメージを映像化するにあたり、「老婆に嶋田久作」を思いついた途端に、もう他のものが考えられなくなるように、「この明智小五郎なら、満島ひかりじゃね?」と、そう思いついたら、もう他の誰も考えられなくなるような、そんなベストのキャスティングだ。
それでいながら、やはり、このドラマは「満島ひかり」なくしては、ここまで「バカ」になれなかったであろう。
満島が生き生きとしている。
恐らくは、満島のセリフ回しや所作には、かなり彼女の即興があると思われる。
「アドリブ」ではない。「即興」だ。
彼女の主義を主張するのではなく、監督のイメージを理解し、自分の求められているイメージを理解し、それに応え、そして監督のイメージすらも凌駕してしまうものを、ぱっ!と、演じてしまう。
とは言え、ぶっつけ本番でやる訳ではなく、「こんな感じでどーすか?」と生まれた即興の演技が、実は最終的には綿密に組み立て直されている。
最近の、いや、いままでの満島の中で、一番彼女の魅力が際立っている。
そしてまた凄いことに、そんな彼女が、作品の中で決して浮き立っていない。
原作を、朗読と演者のセリフに切り替えるという原則を一歩進め、同じ場面で同じ登場人物のセリフを、役者のモノローグからセリフに切り替えたり、原作の字幕表記を入れたり入れなかったり。
様々な工夫がテンポを生み出し、後半の満島の畳みかけるような演技が生き生きとして来る。
そして30分というドラマでありなが、
ロケもちゃんとした所でしている
し、衣装や小道具なども、イチイチ手が込んでいる。
「嶋田久作」の茶を勧める所作なども非常に芸が細かいし、エンディングの曲までもが、ジャストでハマっている。
こんなバカなドラマでありながら、いやそうであるからこそ、様々な才能を持ったスタッフが集結し、細部に至る綿密な配慮が施された結果、「程度が並はずれて」てまったのであろう。
また一つ、奇跡を起こしてしまったNHKに、今後も期待したい。
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