「 ああ あの日の朝もこんなんだったなぁ たしか ・・ 」
昨夜からの雨が夜半には大荒れとなり
季節外れの暴風雨は きっとみんなの安眠を妨げてるんだろう
あたしはそれどころじゃないけどね
夜が明けたらしい あいかわらずの豪雨はまったく衰える様子がない
「 12月だぞ ・・ それにしても これ なんとかならんモンかなぁ ・・ 」
何が大変って 痛いとか怖いとかじゃなく 『 我慢せよ 』 だ
そっちを頑張るとは思わんかったぜ ・・ ふぅ まだ?
今 何時? 時計が掛かってる壁の方に目をやった
一晩中見上げては 何度となくため息ついていたあの時計だ
9時半を回ってる
『 そろそろどうぞ 』 「 ・・ え? 」
その時って突然やってくるんだな あ・・ 雨音が消えてる
風はまだ吹き荒れてるけど おかげで重たい雲を丸めて押しやって
洗い流したかのような ピカピカの冬の青空が広がり始めていた
「 いいんすか?! マジでいいんっすか?! 」
『 今でしょ です 』
ふう・・・・・・・ ・・ あれ ・・ ? 泣かない ・・
こういう時って ドラマで見たみたく
足首持って逆さにして背中バンバン叩くのかな? 可愛そうに ・・
とかぼんやり思ってたら想像とまるで違う低い声で 「 ええーーん 」
「 もちっと可愛い声ならいいのに ・・ 」
こういう時ってつまんない事を考えるもんだ
病室に戻ると バイクでひっくり返って 二か月前から同じ病院に入院している
友人のW君がにやけ顔でやって来た
「 安倍さんじゃん 」 第一声がそれかよ
物心ついた頃から 娘が絶対に言われたくない一言は ここから始まってた
「 さっきさ でっかい虹が出てたんだぜ それも二つ 」
虹 ・・ そう・・ 見たかったな
あれから24年か ・・ 早 ・・ 人生ふた回りだ
あの日 雨が止んだのは 娘がポンッと出てくるほんの少し前
それからしばらくして ・・
窓を開け虹を探した 我が家からは空の一部しか見えない
そこまでは・・ ね ・・
出掛けていたふた回り目の娘が 戻ってくるなり言った
「 さっき虹が出てたんだよ すごく大きいのが ・・ 長い時間 」
・・・ あははは ・・ 来たじゃん そこまで ・・
思い出させてくれてありがとよ 素敵な奇跡ってことにしよう
そっと誰かに感謝した