新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

東北医学部新設問題:どちらの意見もわかるが・・・どっちもどっちかな

2013-11-10 09:27:29 | 医療

おはようございます

 

最近、だんだん寒くなってきましたね。昨日うちの妻と池袋で買い物などをしていたのですが、寒かったですね。風邪をひくかと思いました。

若干南の方なのでもう少し暖かいといいなぁと思っていますが、大島で作業している方々が体調を崩されないように祈念しています。

 

さて、大島の話ではありませんが東北の医学部新設話です。

医師不足の東北で医学部新設をめぐり、医療界が対立しています。

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20131107-00000351-fnn-soci

フジテレビ系(FNN) 11月7日(木)1時19分配信

三十数年ぶりとなる大学医学部の新設計画が進んでいます。その理由は、医師不足です。都道府県別の医師の数を表すグラフを見ると、関東から東北は、平均を下回る赤色が目立ち、医師不足が、東日本に集中していることがわかります。しかし今、東北では、医学部の新設をめぐって、医療界が対立を深めています。

仙台厚生病院の宮坂政紀医師は「1時間半ぐらいかけて、救急車でこの病院に紹介になるというのは、本当、ざらにあって。医者の数が、ほかの地域と比べて少ないんですね」と話した。
深刻な東北の医師不足は、医学部の新設で解決できるのか、議論の行方を追った。
2011年3月11日、津波によって尊い命が失われた宮城・石巻市。
復興に向けて歩みを進めるこの地域にとって、医療機関は、重要な役割を担っている。
宮城・東松島市のみやぎ東部循環器科は、急性心筋梗塞など、心臓分野の救急搬送に、3人の常勤医師だけで24時間対応している。
心臓の血管の中を映すモニター画面を見ながら、狭くなった血管部分を「ステント」と呼ばれるメッシュ状の筒で広げる「冠動脈インターベンション手術」。
ここでは、最先端の心臓治療を、日常的に行っている。
9年前に開設されたのは、仙台までの救急搬送におよそ1時間かかる、地理的な事情だった。
みやぎ東部循環器科の菊地雄一院長は「心筋梗塞の急性期治療で1時間ずれると、ダメージの程度が全然違いますから、それはすごく大きいですし、その1時間で失われる命もあります。心臓の病気が疑われた(救急搬送の)人は、絶対に断りませんよって約束をして、それを貫くことを、一生懸命、頑張ってやっています」と語った。
リハビリ中の70代の男性は、2013年6月、ここに救急搬送されて、九死に一生を得た。
男性は「心筋梗塞で、まあ気絶したというか。5~6分ぐらい意識なくなった。(仙台まで救急車で行くとなると?)大変ですね。ちょっと、もたないでしょうね」と話した。
まさに、「命のとりで」とも言える3人1組の医師チームは、気仙沼など、東北の5地域で活動している。
この医師チームを派遣しているのが、心臓カテーテル治療で全国有数の実績を上げる、仙台厚生病院。
今回、仙台厚生病院は、医師不足を解消するため、大学医学部の新設計画を打ち出した。
仙台厚生病院の目黒 泰一郎理事長は「お産もみられる、子どももみられる、脳卒中も、いろいろみられる総合臨床医を育ててですね、そして、それを3人1チームで送ると。永続性のある制度で、医師派遣ができる大学医学部、そういうのが必要だと」と語った。
10月、宮城県の村井嘉浩知事から、医学部新設を要請された安倍首相は、文科省に検討を指示した。
政府の動きを受けて、新たに、70年の歴史を持つ東北薬科大学が、仙台厚生病院とは別の医学部新設計画を公表した。
東北薬科大学の高柳元明学長は、「東北地方の医師不足、これは十分感じておりましたので、やはり機会があればですね、医学部を新設したいと」と語った。
しかし、宮城県医師会は、医学部新設に反対を表明した。
理由の1つが、東北の医師が、教員として引き抜かれる可能性だという。
宮城県医師会の嘉数研二会長は、「地域医療のスタッフの数がですよ、またそこでドンと引き抜かれてしまうということは、もう想像するに難くない。地域医療が崩壊する」と語った。
これに対して、仙台厚生病院の目黒 泰一郎理事長は「われわれは、東北以外から、臨床系教員(医師)は採用するし、人材(医師)が多いのが西なので、宮城にもし(医学部を)作ったとすれば、宮城に、急に医師が増えるという現象も作りたいと思っています」としている。
都会に医師が集中している地域偏在の状況についても、双方の意見は対立する。
宮城県医師会の嘉数研二会長は「医学部新設でもって解決されません、これは。卒業したって、(地方に)行かないんですから。へき地には行かないし、東北には残らないし」と話した。
一方、仙台厚生病院の目黒 泰一郎理事長は「奨学金の返還の代わりに、(医師不足の)地方に赴くっていう制度ですね。医師が足りないところに、はりつかないんじゃないかという問題は、解消できると思います」と話した。
政府は、東北の復興にとって、医学部の新設は必要と考え、申請手続きに向けた準備を進めている。

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自治医大の東北版みたいな感じの制度を作るんでしょうね。

さて、医学部新設問題でどちらの言い分もわかりますが、基本的には日本全国医師数は足りてないと思っています。3分間診療で仕方がないという日本の状況がおかしいとは思わないのかな~と僕は思っています。

 

先週の金曜日に埼玉県や東京などの血液内科医が集まって研究会をしていましたが、某先生が「一日に新患10名+予約60名」とおっしゃっていたそうです。僕も今は新患中心でやっているので良いのですが、昔は40~50人に新患という感じで、新患の患者さんに時間を割り振れば予約の患者さんは3分診療にならざるを得ない感じでした。

ひどいことを言うと、予約の患者さんにも軽重があって、外来治療している人は有害事象が出ていないか5分くらい話しますが、経過観察だけの人は再発していないかが中心なので1~2分にせざるを得ない。新患の患者さんを10分では終わらせられないので(20~30分はかかる。癌の可能性を秘めてきているわけで。しかも、物によってはすぐに治療に入らないと死亡率が増加する疾患)。

 

現在、新患中心でおそらく一人の患者さんに30分~1時間は使っていると思います。それ以外に治療開始後、もしくは状況が落ち着くまでの治療を僕がやっていますが、この時間の割り振りでようやく「一人一人にすごく納得のいく治療」ができるような気がします。

先日、紹介されてきた患者さんも「血液疾患」で紹介されてきましたが、その診断途中で「胸部大動脈瘤」が存在することが判明し、両方の対応をしております。たまたま胸部単純写真で分かっただけですが。

他にもそれまで見過ごされてきた様々な疾患が見つかって、うちにかかったがために3つの診療科を受診するようになった患者さんもいます。いくら軽症だからといって3分間診療が良いのかどうか・・・といわれるとよくはないような気もするのですが・・・。

現実的には僕は集約化と病院までの時間的距離の短縮、そして定員増の後に医学部の新設が必要な状況であれば医学部新設という考えでしたが・・・医学部を新設するのが本当に悪いかといわれれば悪くはないと思います。

ただ、地域医療の崩壊というのは可能性は0ではなくて…例えば埼玉県で700万人人口がいて、血液専門医は数十人。その人口からは一定ペースで患者が発生しますので、埼玉県の血液内科医的には「医師が不足」(あと看護師不足)という思いがあります。自分たちでいうのもなんですが、ほぼギリギリの状態で成り立っていて、そこから引き抜かれたらどこかが崩れていって、それで他の病院が割を食って、ドミノ倒し的に崩れていくのだろうと思っています。

 

西の方は人口当たりの医師数は多いわけですが、診療科によっては少ないところもありますし、地域によってもそうだと思います。そういう場所の先生ってたぶん能力的にも少ない人数でやっているから高いのではないかと思いますが、引き抜かれたらいきなり崩れていくかもしれないですね。

 

あと、懸念は「お産も小児も脳卒中も診られる総合臨床医」は厳しいと思います。産科はある程度の知識があるだけではやりきれると思いませんし、子供については小児の軽症を軽症と判断し薬を出すくらいまでで、専門診療を行うにはたったの3名では荷が重すぎます。

 

それに関しては申し訳ありませんが、焼け石に水のような発想である気がします(患者数にもよりますが3名で何でも診るのを回す病院なんて行きたいとは思いませんね。僕でも)

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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それでは、また。

 

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