新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

HPVワクチンの話:Natureで安全性検証を評価

2017-12-02 08:03:59 | 報道関係の方々への期待

先ほど水痘の患者が5年間で3分の1まで減ったというワクチンの効果を示す記事を紹介しました(ワクチンの効果:水痘減少)。

その時に追加で紹介したいと思ったのがこちらの記事です。 

 

HPVワクチンの問題は僕の知人の医師の間でも考え方が分かれていましたが、僕は娘には摂取させたいと思っていました。妻が何かいうかしらとは思っていましたが・・・。

 

そんな時にこんな記事が出ました。Buzzfeedさんの記事です。

海外の一流科学誌「ネイチャー」 HPVワクチンの安全性を検証してきた医師・ジャーナリストの村中璃子さんを表彰

https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/rikomuranakajohnmaddoxprize?utm_term=.kh25K595E#.llVWjWdWe

ネイチャーは日本の状況を、「このワクチンの信頼性を貶める誤った情報キャンペーンが全国的に繰り広げられた」と厳しく批判。

2017/12/1 10:30

HPVワクチンの安全性を検証する発信を続けてきた医師でジャーナリストの村中璃子さんが11月30日(ロンドン時間)、イギリスの一流科学誌「ネイチャー」元編集長の功績を記念したジョン・マドックス賞を受賞した。

同賞は公共の利益のために科学や科学的根拠を広めることに貢献した人に贈られている。

 

ネイチャーは、HPVワクチンについて、「子宮頸がんやその他のがんを防ぐ鍵として、科学界や医療界で認められ、WHO(世界保健機関)に支持されている」と評価。

その上で、

In Japan the vaccine has been subject to a national misinformation campaign to discredit its benefits,resulting in vaccination rates falling from 70% to less than 1%(日本においては、このワクチンの信頼性を貶める誤った情報キャンペーンが全国的に繰り広げられた。その結果、接種率は70%から1%未満に落ち込んだ)と指摘し、日本の状況を厳しく批判した。

そして、村中さんの言論活動を「困難や敵意に直面しながらも、公共の利益のために科学や科学的根拠を広めた」と評価し、25か国、100の候補者の中から選んだとしている。

村中さんは、「人の命を脅かす言説を放置できないし、真実を伝えることが役割だと思って書いてきた。今回の受賞が、日本では止まってしまったHPVワクチンについての議論を外から動かす“黒船”になれば嬉しい」とBuzzFeed Japan Medicalの取材に話している。

(中略)

村中さんも2014年頃、テレビでけいれんする女の子を見て、「これは薬害なのか?」と疑いを持って取材を始めたという。

ところが、小児科医や小児精神科医を取材したところ、ワクチンを打っていなくても、思春期特有の症状として同様の症状を訴える子供が多いことに気づく。

1年ほど取材を重ね、2015年10月から、雑誌「ウェッジ」などに、HPVワクチン接種後の多彩な症状は薬害ではないのではないかと科学的に検証する記事を次々に発表していった。

「多くの医師からよくぞ言ってくれたという声が届き、書いた後に皆が心配していたテーマだったのだと気づきました。みんな声を上げようとしても、薬害を訴える人たちから攻撃を受けるのを恐れています。実際に、記事が出た後、『村中はワクチンメーカーから金をもらって書いている』という根も葉もない噂が流され、抗議の電話が厚生労働省にも殺到したと聞きました」

訴訟を起こされ、仕事も激減

(中略)

「訴訟以降は、HPVワクチンについては書かないという空気がメディアに広がり、当時持っていた3つの連載は全て切られてしまいました。私は、『薬害を薬害でないと言っている悪者』と位置付けられ、ほとんどメディアで記事を発信することができなくなりました」

これについても、ネイチャーは、「訴訟で彼女の口を封じようとし、彼女の専門家としての地位を貶めようとする動きに直面しながらも、このワクチンの安全性について科学的根拠を明らかにし続けた。これにより、科学的根拠を重視することが日本人だけでなく世界の公衆衛生に対しても役立つということを保証してきた」と論評している。

(中略)

日本小児科学会や日本産科婦人科学会など17の関連学術学会は2016年4月に、積極的な接種を推奨する見解を発表。ワクチンの有効性は国内の研究でも徐々に明らかにされていっている

一方、ワクチン接種の機会が与えられないことが長引く中、子宮頸がんの発症リスクはワクチン導入前のレベルに戻っているという研究報告も出始めている。

(中略)

村中さんは、「これだけ書いてきたのに、何も状況が変わっていないのを見ると無力だなと思います」と語り、「どんな判断材料があったら再開するのか、国が判断を示せないでいるのが一番の問題です。国は国民の命に責任を持たなくてはいけないはずです」と訴える。

また、メディアの責任についても、「被害を訴えている人の側から書くのが楽だし、売れるのでしょうが、真実は何であるのかという判断を放棄しています。サイエンスを一般にわかりやすく伝えるのはメディアの役割で、正しく伝えることがもっとも大切です」と批判する。

今回の賞に村中さんを推薦した日本産婦人科医会会長の木下勝之さんは、「この受賞が、HPVワクチンを日本社会で使うことを推進していくために、厚労省に強いインパクトを与えると信じている。さらに、このワクチンがもたらす多大な公共の利益に疑念を抱く医療の専門家やジャーナリストに対し、この表彰が考えを改めさせるのに役立つよう願う」とコメントしている。


HPVワクチンが世界では推奨されているのに、日本では否定されている。これは多くの医師がおかしいと言っていましたし、また・・・かなりの医師が「実際に患者がいるのだから」と言っていました。

 

僕は「ワクチンの効果はあるだろう。ただ、アジア人と白人ではSNP(遺伝子多型)が違うので、変な反応を起こさないとはいえない」とも思っていました。まぁ、日本での安全性は検証していますし、副作用報告の範囲でほとんどは収まると思っていました。一番うるさい国ですからね・・日本。

ちなみに白人とアジア人で違う・・・というSNPというのは・・・例えば・・・僕も遺伝子多型を持っていますが、ある遺伝子があると炎症を強く起こしたりします。論文ではアジア人(日本人)の20〜30%にその遺伝子多型はあるそうなので、白人とは違う反応を起こしてもおかしくないかもしれない。他にも遺伝子多型とは言わないかもしれませんが、お酒に強いとか弱いというアルデヒド脱水素酵素とかも日本人と欧米人では違いますよね。色々違うんです。人種によって。

ただ・・・まぁ、少し様子を見ていたら日本のデータが揃うだろう・・・と思っていました(市販後調査も問題ないと書いてあるのに、こんな感じですから・・メディアの影響は大きいとは思いましたが)。

 

実際には、メディアの影響でそこまでワクチンをうつ人が減っていたとは・・・ちょっとビックリです。

 

メディアの影響力の大きさがわかります。こういうのを印象操作というのでしょうか?

 

今後、HPVワクチン接種が増えてきたら、おそらく子宮頸癌の死亡率の変化がわかると思います。ワクチン接種を行なった年齢層と行わなかった年齢層での比較。特に若い時期の影響ですね。

 

その影響がわかった時にマスメディアがどれだけ多くの人に害を与えたかがはっきりします。 

この記事を読んで思うことは「国の罪」「メディアの罪」の2つでしょうか。

 

国も世論に飲まれて科学的検証を怠ったまま(もしくは手元にある安全性を保証するデータを無視して)、うやむやにしてしまった織田信長だったら突き進んだでしょうね(たら、ればはありませんが)。 

メディアは偏った記事を書いてはいけない。同じ記事が各新聞同じように並ぶのであれば、新聞社は1社で良いし、HPVワクチンに関係した記事を書かないという風潮になったのであれば、どこかは書き続けて欲しいとは思いました。

 

人間ですからいつでも失敗はあると思いますし、 失敗から学ぶことは多いと思うのです(僕もよく失敗した・・・と思うことはあります)。マスメディアの方々には独創的な、周りとは異なる情報の発信、特に感情が加わるとそこには力が出てきますので、できれば科学的な情報主体の情報発信をしていただければなぁと思います。

 

マスメディアが日本の健全性に寄与すると思うのですが、マスメディアが「長いものに巻かれる」体質だと、何を信用して良いのやらと思ったりします。

ちなみにこの頃って国立感染症研究所はこんな評価でした

https://www.niid.go.jp/niid/ja/vaccine-j/1685-idsc/iasr-out/4023-fr4041.html

ヒトパピローマウイルスワクチン:GACVSは2009年6月にHPVワクチンの評価を行っており、今回はそれ以来のものである。これまで1億7,500万ドースが出荷され、概ね副反応状況に変化はないが、失神や静脈血栓が新たに報告されるようになった。ギラン・バレー症候群や脳梗塞との関連については、接種を受ける年齢や関連する行動(経口ピルの服用など)といった交絡因子を考慮すれば積極的に考えるものではなく、またアナフィラキシーは認められなかった。

日本では800万以上が頒布されているが、複合性局所疼痛症候群 (CRPS) が報告され、広く報道されている。24件の報告があったが、通常の市販後調査では7件の報告だけだった。診断の不確実さおよび症例情報の不十分さのため専門家会合はワクチンとの因果関係を確認することはできなかった。日本政府はHPVを提供し続けているが、積極的な勧奨は中断している状況であり、GACVSはHPVの安全性評価を変更しないこととした。


また、当時の産婦人科学会もこんな発表をしています

http://www.jsog.or.jp/news/pdf/HPVannounce_20110119.pdf

 
これを読むと安全性は高いという結論になっています。
 

僕はまだ「HPVが絶対に安全」とは言わなくて良いと思います(安全性は高いはず・・・と思っていますが)。とりあえず、再度日本人で検証しても良いかもね・・・と思いますし、この記事を読む限りでは「ワクチンを打つ、打たないに関わらず、一定の割合で副作用と思われるものと同じ症状の子供が出ている」ということですので、数がわかるのではないかと思います。

まぁ、計算ができなくなったとか・・・よくわからないもの以外は、産婦人科学会の報告書にある副作用報告の範囲内で収まりそうな気もするのですが・・・(急にメディアが大きく取り上げたから、うちの子も副作用だ、副作用だと大きくなっただけのように思います)

 

今の時点では親御さんは「ワクチンうちたい」「ワクチンうちたくない」に分かれるかもしれませんので、その場合は検証しても良いかなと。ただ、ワクチンうちたいという方は「大丈夫」と思っている方だと思いますので、それによるバイアスもあるかもしれません・・・。

 

まぁ、いちばんのバイアスはマスメディアの報道でしょうけど。

 

マスメディアの影響力はこんなに大きい・・・ということで、是非ともマスメディアの自浄作用に期待したいとは思います。

 

・・・・最近のテレビとかを見ますと(あまりニュース以外は見ませんが)、自浄作用がなさそうな番組が多いですが(昔、そんなことをやらせて人が死んだのに、またやっている・・と思う番組とかですね。そのうち人が死ぬかもしれないと)・・・

 

マスコミの自浄作用、独創性などに期待して・・・この記事の紹介を終わります。

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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それでは、また

 

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