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新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

「がん」と「がんもどき」を分けるデータがないことが根拠かな?

2013-04-04 23:16:41 | 医療

こんばんは

 

今日は少し早く帰って来れました。おかげでいつもは木曜日はパソコンは絶対に開かない(0時近くなので独身時代と違いパソコンを開くよりは、夫婦の会話をと・・・)のですが、今日は開いてしまっております。

 

さて、昨日より鳥インフルエンザ話が再燃してきていますね。今のところは大丈夫だと思いますが、人に感染するような形になれば大流行します(過去に誰も感染していないので)ので対策は練らないとダメですね。

 中国で鳥インフルエンザ(H7N9型)の感染者が相次いでいる問題で、国立感染症研究所は4日、中国疾病対策予防センター(中国CDC)から培養したウイルス株を入手する方針を明らかにした。ワクチン製造が可能になるほか、動物実験や薬剤の効果の確認に役立てる。

 中国CDCへウイルスの分配を要望し、既に承諾を得たという。最初に感染が判明した上海市の2人と安徽省の1人のうち、いずれかのウイルス株になる見込み。今後、感染の拡大や継続性が判明した場合、ワクチンの製造に着手する。

 感染研によると、中国CDCの分析で、今回のウイルスにはインフルエンザ治療薬のタミフルとリレンザの効果が期待できるという。【渡辺諒、藤野基文】

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さて、実は今日のメインはこの話ではなく、先ほど書いたコメントからです。

 

近藤誠医師の関係記事(出版するのは良いのだけど・・・:近藤誠医師へお願い)のコメントで「なぜ、近藤誠医師の考えに反論するのか、素人にわかるように理由を書いてほしい」といただきました。僕はそこで次のようにコメントをお返ししました。

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これまでのコメントでも同じように読んでから反論しろと言われましたので、読みました。ただ、本屋で立ち読み(医師としては2回も3回も繰り返して読む内容ではなかったので)ですませてしまいました。

なので細かい内容を覚えていないのですが、基本的にはデータがあまり出てきていないのはメジャーな悪性腫瘍では膵臓癌くらいです。
マイナーなものは根拠はほとんどありません。根拠を出せるような検討ができませんので

ただ、医師は「この患者さんがこの治験・臨床研究のグループに当てはまるか」というのを考え、患者さんにメリットがあるという評価をした時に「毒」である抗癌剤治療を行います。

現在の医療に関しては「個別化」の方向に進んでいます。昔ほど適当ではないです(昔はむしろそういった情報はなかったのですが、最近はがん細胞の特徴に合わせて抗癌剤を使用したりします)。

それ故に腫瘍内科医の調べる範囲、把握すること、治療の個々の患者さんへのあてはめや・・当然ながら知識も多くなってきました。

全ての患者さんに抗癌剤治療が有効なわけではありません。有効な人と有効でない人を分けることがまだできていない…というのが現実です。

例えば、僕の専門である悪性リンパ腫の中の最も多い「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」は放置すれば数か月で命に係わる「中等度悪性度リンパ腫(aggressive lymphoma)」です。これのあるリスク分類(R-IPI)でぉlow riskはR-CHOP療法で90%の5年生存率があります。予後がいいですね…と言いながら、10%の人は亡くなっています。10%の人を別に見極めるための知識がまだ不足しており、そういう人たちにはやるべきではないと言える(後で修正しましたが、延命効果があるのでやらなくてはだめです)と思います。

今、これを分けるためのデータを僕も探していまして、論文を作成しようとしているところです。

同じようなことがすべての腫瘍で起きています。現時点ではすべての人には当てはまらないが、多くの人で有益に出るものを「標準治療」としているものが多いです。

一方でがんもどきなどもあるのかもしれませんが、放置すれば死んでしまう「がん」と放置してもなくならない「がんもどき(近藤先生の言葉で言うと)」を区別する手段もないのです。

それがあれば、僕らは治療をしなくてよくなります。治療が必要でない人と、必要な人を見分けられれば治療が必要な患者さんのために時間を集中することができます。

基本的に「悪性腫瘍」か「良性腫瘍」かは分けられても、病理医(顕微鏡で診断を付ける)が悪性腫瘍といったものを「がんもどきだから治療しない」などと言える医師はいないと思います。根拠がないのですから。

僕のできる説明はこの程度ですが、よろしいでしょうか。あとは個々のケースで異なると思います。

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こんなコメントです。

 

一番のポイントは「がん」と「がんもどき」をどこで区別するのか。

例えばですね、ここでは書きませんでしたが関節リウマチなどで使用するメソトレキサート(MTX)という薬があります。これで希にMTX関連リンパ腫と言われるような「EBV」というウイルスが関連したリンパ腫があります。

これはMTXという免疫抑制剤のために起きているので、やめて放置すると治ることがあります。それ故、こういうものでは様子を見たりします。

 

しかし、一般的には「悪性腫瘍」と病理医の先生が診断した場合は「がん」であって、「がんもどき」ではないです。「がんもどき」と言えるようなマーカー(例えば、発生したけどこれ以上は大きくならない。絶対に転移しない)があればよいのですが、絶対を言えるようなものはないです。

それ故に抗癌剤の効きにくい腫瘍は「早期発見」の手段を開発したりしています。手術も放射線治療も局所療法ですので、それは重要なことです。転移していたらこれらの出番はないですので。

 

転移してしまってから「あぁ、これはがんもどきではなく、がんだったのか」といっても話にならない

 

ですので、近藤先生の話を確実にするのであれば、大きさの割に転移しなかったものと転移したもので何が違うのかは調べていくべきです(ただ、転移した人の場合は無駄な手術になるか、剖検かになりますね)。そのうえで前向き(患者を治療せずに放置するという治験)にやってみるしか根拠はできないと思いますが・・・(しかし、人体実験のようなことになってしまうのでできないと思いますが)

 

仮にです・・・遠い将来に次のようなことができるとしましょう(今は、全くそんな情報はないと思ってください)

転移の少ない『がんもどき』の可能性がありますが、可能性として20%程度の人は早期治療ができずに死んでしまいます。80%のひとは早期に治療をしようとしまいと、腫瘤による圧迫などの症状が出始めたら治療する・・・で間に合います

できたとしても、こんな話になると思います

100%ができるのであれば、苦労はしませんので。まぁ、それが確立されることは僕も祈っていますが。

 

逆に標準治療とされている抗癌剤も効果は限定的です。

よく抗癌剤が効く我々の血液領域などは少なくとも延命(腫瘍の増大速度が速いですからね)、よければ完治に持ち込めます。

この治療の効果を100%予測する因子もないです

 

コメントでは悪性リンパ腫を題にしましたが、今回は慢性骨髄性白血病です。

慢性骨髄性白血病でこの1,2年の報告で「治療開始後3か月の治療効果」がその後の状況を予測すると言われています(まぁ、昔も言われていたのが薬がよくなり、検査もよくなりで情報が増えた)。本当に様々な報告が出てきておりますが、これらの結果を受けて欧米も日本もガイドラインを切り替える方向に動いています。

それでも100%ではないです。

 

この薬で100%治りますと治療効果を予測できる因子、逆にこれでは効かないという治療効果を悪いほうに予測する因子、様々なものが報告されていっています

 

これが現在の医療ですが、神様ではないので、すべてを予測することはできません

 

他の癌種に関してはもっとシビアで「抗癌剤の治療効果を予測する因子」というものを解析するのが大変です。白血病などは腫瘍細胞が簡単に取れますが、他の腫瘍では手術で取らなくてはいけません。

それだけ解析は遅れています。

 

個々人に関してできるだけ当てはめるように動いていますが、血液腫瘍ほど進んではいないです。

 

それゆえに多くの人が書かれているような「治療しなければよかった」という状況も発生しています。血液領域とは異なり「延命 or ・・・」ということが多いので。しかし、治療効果がある程度認められているものが標準治療となっています。ただし、QOLの低下と治療効果の兼ね合いを予測することも難しい…ということでしょうか。

 

ただ、治療をしないほうがよいという根拠も全くないのですよね。あとは患者さんの選択だと思います。そこから先は医師と患者さんとがはあしあって決めることで、一般論になるはずがないです

 

だって、どちらにせよ根拠がないのだから。

 

明日は後輩から頼まれて、また当直しま~す

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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それでは、また

コメント (6)
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