新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

西洋医学と東洋医学:そしてがんと免疫

2013-03-24 11:55:39 | 医学系

こんにちは

 

先程コメントにも書きましたが、桜が満開になりましたね。家のベランダからも花見ができる感じです。まぁ、花より団子というのが本音ですが。

 

さて、本日はちょっと僕の医学的なものの見方を少し書いてみようと思っています。

 

よく、西洋医学と東洋医学といいますが、西洋医学は一般には「原因」に対して「原因をつぶす」という考え方をしています。あることが起きていることにより患者さんの症状が出ていたり、つらく思われているのであればそれを解消しようという考え方です。

がんがあるなら取り除く、抗癌剤でつぶす。出血しているのであれば、止血する。

 

そんな簡単な話です。

 

東洋医学のほうは「体が最も良い状況から、ずれてしまってるので、最も良い状態に戻す」という考え方です。

すなわち原因はいろいろあると思いますが、体がよい状況になっていない。

 

例えば何らかの病気のため「体力が衰え」「血流が弱っていて」などということがあれば、それをもとの状況に戻すような薬をチョイスしていきます。

 

この2つの考え方で患者さんを診ていると、いろいろな診療手段が出てきたりします。

ただ、基本となるのは僕の中ではやはり「西洋医学」です

 

この患者さんを苦しめている原因は何か

 

そこに目を向けなくては、完治するというのが難しいです。もちろん、自然に回復するような疾患(風邪などのウイルス性疾患など)は原因がわかることよりも、体調管理ということになりますし、医師としてもできることが対症療法(症状に合わせて、患者さんの辛い症状を取る)ですので、実は東洋医学を中心に組立てたりすることもあります(というか、組み立てます)

 

患者さんを苦しめる原因がある。それに対して有効な治療法があるのであれば、それを行うことが患者さんに対してメリットがあります。

原因に対して有効な方法がないのであれば、どちらかというと東洋医学的な「患者の今の状態」を中心に考えます(緩和ケアも同じような考え方でやります。まぁ、西洋医学的な考えも併用してますが)。

 

簡単に書くとそれだけです。

 

僕は先程、コメントに書きました(西洋医学の限界?:パラダイムシフトは重要だが、その段階ではまだないと思う)が、学生時代から「腫瘍を撲滅したい。そのためには免疫を勉強しなくてはならない。がんの生物学を勉強しなくてはならない」と考え、血液内科を希望しました。それは今でも変わりません。

 

がんにかんしても「腫瘍の存在」により「患者さんが生命の危機にある」ことですから、腫瘍に対してよい攻略法があるならそれが一番です。

 

しかし、なぜ「がん」が発生するのかを考えると次のような結論にいたいました。

「がん細胞が宿主の免疫を回避するシステムは何か?」

「がんの発生母地は幹細胞のはずであり、がん幹細胞を抑え込む方法はなにか?」

です。

 

個々のがん細胞を考えると、現在の医学が進んでいる「オーダーメイド治療」になってしまいます。それは素晴らしいことなんですが、どうしても個々の患者さんごとの対応になります。

Aさんの腫瘍の特徴はBとCという物質を持ち、これが腫瘍化に関連しているのでBとCをつぶすという考え方です。これは西洋医学的な「腫瘍が発生する原因」である「遺伝子」に目を向けたものだと思います。

 

これはこれで本当に素晴らしいし、満足のいく結果が出ています。血液領域で・・・慢性骨髄性白血病という疾患は以前は2~3年でほとんどの方が亡くなっていたにもかかわらず、現在は5年生存率は9割という疾患です。他にも様々な癌種で「分子標的薬」が活躍しています。

 

しかし、どうしても幹細胞を根本的につぶさないと「その薬」に耐性を持ったがん細胞が発生してきてしまいます。「がん」は1種類ではなく、複数の性質をもった細胞のあつまりです。私たちが一個の受精卵から誕生したように、一個のがん幹細胞から様々ながん細胞が発生してきます。

 

がん領域で「がん」という原因に目を向けた後に「宿主」である患者さんに目を向けると、免疫はどうなのかという考えになります。通常、毎日発生しているがん細胞を私たちの免疫は確実につぶしていってくれています

 

それをどういうシステムでがんは回避しているのか。

僕は本当は「がんが免疫から逃げるシステム」を解明する研究をしたいと思っています。それを確実に抑え込めるようになればがんというのは発生しなくなりますので。

もしくは、がん幹細胞を確実につぶす方法は何かです。もし、白血病幹細胞だろうが肺癌の幹細胞だろうが共通して持っていて、なおかつ人間の正常な幹細胞にないものがあればそれをつぶすという話になります(これは西洋医学的な発想ですが)。僕の中ではそういうものが見つかれば、それこそワクチン接種してやりたいと思っています。

 

がん幹細胞共通抗原の予防接種

 

これが僕の将来の目標です。

もし、永久にがん細胞共通抗原を発現した細胞をつぶし続けることができれば、がんは発生しなくなるはずです

 

まぁ、今の段階では夢物語です。

僕自身医師としては中堅くらい(もうすぐ10年目の医師になります)で、研究者としてはひよこであります。ただ、この目標を持って医師として活動し続ければ、目標を達成することもあるだろうと思っています。

 

誰かが達成してくれて「がん」という疾患を世界中から駆逐してくれれば、僕の医師としての目標は達成されて、あとはのんびりできればなぁ・・・と思ったりもしています。

 

これが医師としての目標ですが、今の時点では腫瘍免疫に関しては発展途上であり、それ故に僕は目の前の患者さんと目の前にいない患者さんに対していろいろできればねと・・思っています

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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それでは、また

 

 

P.S

ちなみに、がん共通抗原のワクチン接種…と書きましたが、すごく難しいです。有益性に関しては数十年スパンの多くの治験参加者が必要になります(評価できないでしょうw)し、有害事象はそういったことにより自己免疫・アレルギーの発生する可能性を考えなくてはなりませんしね。

そういうことも含めて、将来やれたら面白いなぁと思っています。

コメント (9)
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