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長いお別れ

 近くに巣を作っているアシナガバチが、山椒の木のまわりを飛びはじめた。追い払っても追い払っても寄って来て、だんだんとアゲハチョウの幼虫のいる枝のそばへ近づいてくる。正確な場所はわからないまでも、なんとなくそこに幼虫がいることを感じ取っているようである。いったい何を手がかりに探知しているのだろう。はじめは漠然と木の周りを飛んでいたハチと幼虫との距離が、ついに10センチにまで縮まった。
 ハチにはハチの生活があるし、子育てのために、たくさん獲物を狩らなければならないのだろう。しかし、すっかり顔馴染みになった幼虫が、緑色の肉団子にされてしまうのはあまりに忍びなくて、山椒の枝ごと、家の中に入れてやった。
 冷蔵庫の横の、みゆちゃんが登ってこられないと思われる棚の上に、枝を差した瓶を置いた。
 こうして、アゲハの幼虫と一つ屋根の下で暮らすことになったのだけれど、いつ見ても、幼虫は何を考えているのだか、姿勢を正してただじっとしていた。枝の先からきれいに葉っぱがなくなっていっており、どうも食事はこちらが見ていないときにしているらしかった。
 そんなふうにして二日ばかりたった夕方、幼虫が、台所の床の上に降りているのを発見した。なにやら、困っているようであった。山椒の枝に戻してやっても、そわそわとすぐ降りたがって、うろうろ何かを探している。ぴんと来た。蛹になる場所を探しているのであろう。以前、野菜について来たのを育てた蛾の幼虫も、蛹になる前に、潜るべき土を求めてそわそわしていたものである。その様子によく似ていた。期間も、終齢幼虫になってからちょうど六日。ネットで調べた日数と同じである。
 アゲハチョウの幼虫は、普通、食草の上では蛹にはならない。では、こんなものはどうですかと、割り箸などを勧めてみると、一応登って少し考え、気に入らないとまた降りてきた。
 いろいろ考えてみたけれど、幼虫の好みはわからない。結局、外へ出してやった。
 無事に蛹になれただろうか、心配である。蛹の期間は約二週間。羽化して飛び立っていく前に、一目、その見違えるような姿を見せて欲しい。
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