カザーレの別荘
シチリア島のほぼ中央にあるピアッツァ・アルメリーナに入ると小高い丘の中心にカテドラルが見えてくる。15世紀に建てられた教会をバロック様式に改築しており、そこに寄り添うようにグレーの民家が固まって見える。そこから6ｋｍほど離れた場所にあるのが3～4世紀ごろ古代ローマの貴族が住んでいた別荘「ヴィッラ・ロマーナ・デル・カザーレ」。マンゴーネ山とジェラ川の水源の間の谷間にあるローマ時代の別荘で、帝政時代のローマ化されたシチリアの最も卓越した考古学的遺跡。プールのような噴水を囲むこの壮大な建物には約40室の部屋が設置されている。入り口の近くには浴室が設けられており、冷浴室、中温浴室、そして高温浴室と、それぞれ温度設定が異なる３つ浴室が、絶妙な配置で用意されていた。更に驚くべきことに、今で言うセントラルヒーティングのような設備があり、湯を沸かしたその蒸気を各浴室に送り届けていたという。遠く離れたシチリアの丘陵地でローマのカラカラ浴場より更に進化した施設が造られていたことに驚かされた。その他にも驚くべき施設がいくつもあった。そうした建物群が巧妙につながれ、あらゆる部分にモザイク装飾が施されていた。その題材は神話から狩猟、スポーツ、日常世活の衣食住に関するものまで多岐にわたる。【写真 入り口近くの浴室跡】
10人の少女の間 ビキニ姿の少女がゲームをしている姿を描いたモザイク画。3世紀にこんな水着姿の女性をはつらつと描いている古代ローマの人たちに吃驚した
大食堂の間 此れは神話から題材をとっている。ヘラクレスの難業の図
客間
狩の間 男性の服装に古代ローマを感じさせる
