北九州市にある到津の森公園には、福岡市動物園にはない面白さがある。
規模的にはこじんまりとしているが、800円というやや高めのチケットを買って園内に一歩足を踏み入れると違いが分かる。
木立に囲まれた森の中に動物たちがいるので、熱帯の森に足を踏み入れた感覚にとらわれる。
更に気分を盛り上げてくれるのは、甲高い声で鳴くフクロテナガザルである。
目を瞑るとあたかもねっとりした、汗ばむ熱帯のジャングルに迷い込んだような錯覚にとらわれる。
フクロテナガザルは大型のサルで、その長い手で檻の鉄棒やロープなどを伝って織の中を忙し気に移動する。
喉の下にある袋を風船のように膨らませて、バリトンからソプラノと様々な音色で吠える。
30分程檻の中で彼らを見ていた。
そのうち子ザルが目の前の止まり木に座り、親指を口に入れこちらをじーっと見つめてくれた。
時間的にはほんの一瞬なのだが目が合った。
そちらに行きたいけど、それともこちらに来ると誘っているような目で見つめられた。
キリンが背を向けて何かを覗いている。目線の先にはライオン達が昼寝している。
ライオン舎の前で見ていると、キリンの方を眺めている時がある。その時はお互いに、野生の血が騒ぐのかもしれない。
今日も甲高いフクロテナガザルの歌声がいとうずの森に響き、初夏のこもった暑さも相まって野生の血をたぎらせる。