弁護士早瀬のネットで知財・法律あれこれ 

理系で特許事務所出身という経歴を持つ名古屋の弁護士があれこれ綴る雑記帳です。

職務発明の帰属について

2014-08-18 21:51:58 | 特許

お盆休み終わりましたね。

事務所は13日~17日までお休みにしてましたが,結局,ちょこちょこ事務所に出て仕事してました(笑

お休みした日は,実家の両親や,兄弟の家族とともに,こちらの店へ。

(写真は,天ぷら入り味噌煮込み+ご飯)

我が家族では,お盆やお正月といった時に味噌煮込みうどんを食べに行くのが定番。

正直なところ,結構お高いのですが,たまにお店で食べるのも美味しい(^^)

 

ところで,今日の日経新聞の法務面に,職務発明の帰属に関する記事が大きく載ってましたね。

 

現在,職務発明は発明者に帰属する形になっていますが,これを会社に帰属させる形に法改正することについて,特許庁の委員会で議論をしています。

議論するとはいえ,結局は改正する方向での出来レースなんだろうなと思ってましたが,発明者(労働者)側と会社側とで議論が対立し,議論が難航しているそうです。

 

記事の中では,法改正を必要とする会社側の主張として,次の4つが指摘されていました。

①対価が予測不能(対価に不満がある発明者は会社を提訴でき,対価が裁判所で決められるとすると,会社としては対価をどれくらい支払ったらいいのか予測できない)

②チームワークを乱す(同じ開発チームでありながら対価をもらえる人ともらえない人が生じる)

③対価の支払方法に柔軟性がない(今は現金での支払いだけだが,昇進に考慮するとか発明への報奨にはいろんな形がある)

④秘密が漏れる(発明者がオレのものだと言って,自分の会社ではなく,他の会社に譲渡してしまう)

でも,正直どれもピンとこないですね。

①は平成16年の特許法改正で問題は解消されたように思いますし,②~④は法改正とは関係ないように思います。それに,④に至っては,会社帰属に改正した方が,会社へ見切りをつけた発明者によってかえって秘密が漏れやすくなるんではないかと思ってしまいます。

 

「過去の実績への見返りではなく,将来の発明に報いたい。」って知財協会の理事のコメントも載っていましたが,これもよくわからない。

発明への報奨を将来の投資に回したいということかもしれませんが,それによって企業の開発資金がそんなに大きく増えるのかなぁと。億や数千万という対価が裁判所で認められたこともあって(青色LED訴訟やフラッシュメモリ訴訟),とてもインパクトがありましたが,それらは非常にまれな事案で,平成16年の法改正を受けて,おそらく今後はそういう判断が裁判でなされることはほとんどないように思います。

 

なので,記事に載っていた理由は??な感じですが,それでも,発明者も営業部員や総務部員等と同じように会社の一社員であり,開発を仕事としていてそれに対する給料をもらっているわけで,研究開発費も,開発失敗のリスクも全部会社持ちなのだから,という言われれば,職務発明を会社に帰属させるべきという考えも一理あるよなと思います。

例えば,特許権の侵害訴訟で何億と損害賠償請求されたけど,知財部員ががんばって先行技術を探してきた結果,特許権が無効になって請求が棄却されたという場合,その知財部員のおかげで会社は何億もの支払いをする必要がなくなり,利益を会社にもたらしているわけです。

それなのに,発明者が何億もの利益を生み出す発明をしたら対価がもらえ,知財部員はもらえないというのは不公平だと考えれば,確かにそうです。

 

逆にメーカーというのは,その企業活動において,発明者が技術開発によって生み出した発明(成果)が根本なので,それに報いるべきだし,多少の特別扱いしてもいいんだというのも一理ある気がします。

 

そう考えると,職務発明の帰属をどうするかは,どっちの考えにもそれなりの理由があって,どっちが優れているという話ではないですね。現に,会社帰属とする法体系の国もあるわけですし。

政策判断として,こっちにすると多数決でエイヤッと決めるしかないんだと思います。

そうすると,やっぱり結論としては会社帰属とする方向になるような気がしないでもない。

会社帰属にするけど,一応発明者の利益も考慮してバランスをとり,労使で協議した社内規定によって発明者への報奨制度を定めよ,規定がなければ裁判所が決める,というのがなんとなくの落ち着きどころではないかなぁと思う次第。

でも,それでは,現行の職務発明の規定と,実質的にはあんまり変わらない気もするし。

ん~,どうなるんでしょ。

 

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