弁護士早瀬のネットで知財・法律あれこれ 

理系で特許事務所出身という経歴を持つ名古屋の弁護士があれこれ綴る雑記帳です。

東京地裁平成26年(ワ)第18199号(平成26年12月18日判決)

2015-01-07 23:07:37 | 法律一般

特許に関して、昨日から話題になっていると言えば、このニュースでしょうか。

 トヨタが燃料電池車の特許を無償開放へ

トヨタが所有している燃料電池や水素ステーションに関する特許を無償開放するというものです。

無償開放というと、勝手に使っちゃっていいんだ?と思ってしまいがちですが、ニュースリリースを読むとそうじゃありません。

きちんと利用申し込みをして、契約により、2020年末くらいまでの間(水素ステーション関係は期限なしです。)、無償の実施権が得られるということのようです。

一部を除いて期間限定だし、特許権を一般に開放するというのはあまり例がないので、どこまでの効果が見込めるのか、わかりませんが、トヨタさんの目論見通りに行くといいですね。

 

さて、今日は、判例検討したいと思います。

表題にある通り、東京地裁平成26年(ワ)第18199号(平成26年12月18日判決)です。

本件は、発信者情報開示請求事件。

原告が、あるウェブサイトのデータを記憶するサーバの管理者に対し、当該サイト運営者の情報(住所とか名前・名称など)を開示せよと求めました。

 

なぜ、こういうことをするか。

 ウェブサイトで原告の権利が侵害されているので、その侵害者に対して差止めや損害賠償を求めたい

 でも、サイトを見ただけでは侵害者が誰なのかわからない

というのが理由です。

 

本件では、原告は、「ケノン」という家庭用脱毛器を販売している会社です(よく売れているらしい…)。

一方、問題となったサイトは、他社が販売する家庭用脱毛器「ラヴィ」を、原告商品と比較しつつ宣伝するページ。

具体的には、

 ・他社商品の宣伝ページでありながら、ドメイン名が「ケノン.asia」となっていて、原告商品の名前を使っている

とか、

 ・商品スペックや機能等を比較する比較サイトを装いながら、結局、他社商品が優れていることを示して他社商品購入ページへ誘導する

  比較において、原告商品の出力は52ジュールだが、他社商品は78ジュールで業界ナンバー1と記載 (実際に測定してみると、原告商品の方が1.4倍も出力が高い)

といった内容でした。

 

そんなわけで、原告は、上記サイトの内容は、

 ・ドメインの不正目的使用(不正競争防止法2条1項12号)

 ・商品の品質誤認表示(不正競争防止法2条1項13号)

という不正競争行為であり、それにより自身の権利を侵害していると主張したのでした。

 

結論として、原告の主張が認められて、サイト運営者の情報を開示せよ、という判決になっています。

サイトの内容からすれば、そのサイトの運営者は、他社商品を販売する会社かその関連会社なんだろうと、たいだい想像つきますよね。

また、原告がいろいろ調べてみたら、他社商品の販売会社に関連する情報も出てきていたようです。

でも、確実な資料がなかったみたいなので、発信者情報開示請求をする必要があったのでしょう。

 

本件訴訟は、あくまで発信者情報開示請求です。

本件での勝訴によってサイト運営者の情報が開示され、それは、おそらく他社商品を販売する会社かその関連会社でしょう。

今度は、その会社に対して、不正競争行為によるサイトの差止めや損害賠償請求していくことになります。

侵害者が不明だと、いろいろ大変ですね。

 

ところで、本件で問題となった家庭用脱毛器のように、あるヒット商品が出ると、後発商品が出てくるというのはよくあることです。

そういう場合に備えた対策としてもっとも有効なのは、基礎となる技術について特許権を取得しておくことですね。

 

では、特許が取れなかった場合はどうするか?

技術では難しいとなると、考えられるのは、意匠権の取得ですね。

 

ただ、商品によっては意匠権でも対処が難しい場合がありますので、特許取れない、意匠でも難しいとなると、相手が不正競争行為をやってきた場合くらいしか、法的な対処はできない。

 

 

アイデアやデザインの利用は、特許や意匠が取られていない限り自由です。

だから、後発商品といえども、その方が優れていればそっちが売れる、というのが自由競争。

そうすると、特許や意匠での対策が難しければ、

 ・後発商品に負けないよりよい商品、価格、宣伝、これをしっかりやる

 ・商標権を取得し、名前までパクられないようにした上で、ブランド価値を高める

 ・客観的かつ根拠のある比較はいいけど、本件のように、ウソの宣伝広告するのはやりすぎなので、そういう場合はきっちり法的対処をする

と、こういうことなんだろうと思います。

 

※なお、不正競争行為が許されないのは、特許や意匠の取得とは関係ないので、特許や意匠を取っていても、不正競争行為への法的対処は可能です。

 

 

ポチッと,クリックお願いします!
   ↓↓↓↓↓↓↓   
    にほんブログ村 経営ブログ 法務・  知財へ

法律事務所と特許事務所が、AIGIグループとしてタッグを組んでます。
それぞれのページをぜひご覧ください!

 ★あいぎ法律事務所(名古屋)による知財・企業法務サポート


最新の画像もっと見る