今回も、知財勉強会で扱った判例を題材にします。
面白い案件だったので(^^)
商標の審決取消訴訟に関する案件です。
問題となった商標は「ターザン(標準文字)」(商標登録第5338568号)というもの。
その指定商品は、プラスチック加工機械器具、プラスチック成型器用自動取り出しロボット、チャック(機械部品)です。
初めに少しだけ基礎知識を。
・商標にはいろんな種類があります。
単純な文字だけの「文字商標」、図形・記号からなる図形・記号商標、立体商標、これらの組み合わせなどです。
ちなみに、今年の法改正で音(サロンパスの久光製薬のCMで流れる「ヒ・サ・ミ・ツ♪」など)、色彩、ホログラムなども商標の対象となりましたね(施行はもう少し先)。
・いったん登録された商標でも、それは本来登録されるべきではないものだとして、誰でも特許庁に対して審判を求めることができます(無効審判)。
その審判の結果、登録が維持されたとしても、その結果に不服があれば、裁判所に審決(審判の判断)を取り消すよう訴えることができます。
・商標は、その商標を使用する「商品」や「役務(サービス)」を指定して登録されます。
商標法によって保護される登録商標というのは、登録商標が付された商品や役務に対する信用を保護するものなので、商品や役務との関係は切っても切れないのです。
例えば、Dell社のパソコンにはユーザーからの信用が得られていますが、Dellというお菓子はパソコンのDell社とは全く関係ありません。
それを前提に、本件商標は「ターザン」という、カタカナからなる単純な文字の商標が問題となりました。
この商標について、無効審判が請求され、特許庁は請求不成立として登録を維持したのですが、それを不服として審判請求人が訴訟提起しました。
で、審判を請求し、訴訟まで提起したのは誰かと言いますと、小説「ターザン」の作者であるアメリカの小説家(エドガー・ライス・バローズ)が設立した法人で、著作権等を管理する会社です。
そう、あの「あ~あ~あ~」って叫びながら、つたを使ってジャングルを飛び回る、ジャングルの王者ターザンですね。
これって、もとはアメリカの小説だったんですねー。
そして、このターザンさん、実は、イギリス貴族の血をひくお方だったというのも、判決文を読んでみて初めて知りました。
一方、商標権を持っていた被告は、機械の製造・販売を行う日本の会社です。
自社製品であるロボットが変わった動きをするので、なんとなくのイメージで「ターザン」という名前を付け、商標登録もしたということみたいです。
そしたら、勝手に商標登録するな!、そんな商標無効だ!ってわけで、無効の審判を請求されてしまったわけなのです。
ただ、特許庁での判断では、無効にはなりませんでした。
でも、知的財産高等裁判所は、特許庁の判断は誤りであって、「ターザン」商標は無効なんだと判断したんですね。
と、結論まで指摘しておいて、知財高裁がこのように判断した理由はまた明日にしま~す。
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