spin out

チラシの裏

不老不死の血

2013年02月24日 | SF
創元SF文庫では珍しく絶版の作品で、
古本屋でもめちゃ高くはないですがそれなりの値段がついているようです。
何度も書いていますが、光文社カッパコミックス版鉄腕アトムの解説で、
科学技術とそれにまつわるSFがよく紹介されていて、
たしか「不老不死の血」も原書のカバーと一緒に内容が紹介されていました。
どの巻に掲載されていたのかもう覚えていませんが、このHPをながめていると思いだせるのか?

光文社カッパコミックス版鉄腕アトム
※しかし、すごいですね、これ。たしかにこんな巻末記事がありましたよ。
科学技術とSFにかんする記事は福島正実が書いていたのか。


で、鉄腕アトムの解説にはこの原書の写真が掲載されていました。



なんか面白そうなカバー絵ですよね。
そういう刷り込みが小学生低学年のころにあったため、
10代終わりのころに古本屋の均一本コーナーにあった「不老不死の血」を、
明日買いに来ればいいやと見逃したために30ん年探すハメになったわけで。


不老不死の血は、
1新しい血 New Blood
2供血者 Donor
3医学生 Medic
4不死 The Immortals
の4つの長めの短編で構成されています。

実際に発表された順番は1-3-4-2の順番で、1955年から1958年の間に発表されています。
物語内部の時間は1-2-3-4と進み、それぞれが独立した話になっており、
1と4の間は約200年経っていると思われます。

発端はカートライトという男の血に不死性のあることが判明し、
その血を持つ子どもが時の為政者たちから狙われます。
カートライト自身はほとんど登場せず(ほぼカメオ出演)、
※とはいえカートライトは市井の一人だったり、超人風だったり設定が曖昧です。

それぞれの物語は不死と医療とのはざまで揺れる若き男性医師が主人公となります。
※2話のみ調査員が主人公です。

ま、SFですから、荒廃した未来の医療組織がヘゲモニーを握った社会体制を背景にして、
スラムと化したかつての都市に住む虐げられた一般市民の姿、
またどうしてそうなったのか説明されていない怪しげなミュータントの一団など、
パルプSFの香りがぷんぷんする中で、「不死とはなにか?」を直截に問いかけています。

ネタバレしてしまうと、一番最初に出てきた登場人物が最後にも出てくるんですが、
「ブラックジャック」に登場する鍼師琵琶丸にそっくりで。言ってることもほぼ同じ。

傑作というにはちょっと遠く、忘れてしまうには惜しい、という微妙な位置の作品でした。

ところで、翻訳出版されてすぐ絶版になったとか言われているようですが、
奥付を見ると1967年6版(1964年初版)でした。
3年のあいだに6版も重ねているんですから、すぐに絶版になったわけではないようです。

絶版になった理由はネットで調べるといろいろあるみたいですが、
実際に読んでみるとミュータントの描写に規制でひっかかるところがあるかも。
しかし、そこを訳し直す手間をかけるほどの作品ではないかもしれません。

原書の表紙イラストは、4章「不死」の冒頭部分ですね。

なお、2004年には著者のジェイムズ・ガンが書き直したうえで短編「Elixir」を加えた新版が出版されている模様。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 爆乳アニメ | トップ | なんてたんぽぽな娘 »

コメントを投稿

SF」カテゴリの最新記事