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辺境の輝き

2013年11月15日 | ノンフィクション
「辺境の輝き」は五木寛之と沖浦和光との対談集ですが、
当然ながらサンカや三角寛の話題が出ています。
沖浦和光の三角寛に対する評価は、ウソばっかりじゃない、
というところまで優しくなってます。

五木寛之は、三角寛を一種の異能作家、
八切止夫の系列につながる人じゃないかと言っております。
ついで、隆慶一郎もその流れに入るなんてことも。
隆慶一郎はもう亡くなっていますが、その評価を喜ぶのかどうか。
たしかによく似た素材を扱ってはいますが、小説家としての力量は、
八切止夫と隆慶一郎とではずいぶん差があるのでは。
取りあげるテーマが同じというくくりならば、ご本人も同じ流れに入ってしまいます。

そういえば、八切止夫の「徳川家康は二人いた」などが電子書籍で出始めています。
紙の本では無理でも、電子書籍ならば読む人がいるのではと発行元が判断したのでしょうか。
いい値段がついているけれど、あれ? 八切止夫は著作権を全部放棄していたのでは・・・。

八切止夫の「徳川家康は二人いた」はノンフィクションかと思って読みはじめたら、
なんと小説でした。それもあまり上手くない。この肩すかし具合が印象を悪くしているのかも。
(いまちょっと読んでみたら、小説仕立ての部分と自説の開陳部分、
自分の体験談が混じっている不思議な本ですね)



昔、中学生のころ「徳川家康は二人いた」を読もうとして
最初の数ページで投げたことを思い出しました。
隆慶一郎には「影武者徳川家康」がありましたね。
「吉原御免状」ほどじゃないけど、それなりに面白かったなあ。
隆慶一郎では「鬼麿斬人剣」が一番好きです。
白土三平の「カムイ伝」も同じように、家康影武者設定だったような曖昧な記憶。
厨房で八切止夫はハードルが高すぎか。
本当は意外に面白いのかもと思う人はぜひ電子書籍にチャレンジ。

八切止夫についてはこちらのHPがすごく参考になります(と思うのは私だけか)。

“耶止説夫時代の八切止夫”をめぐって


戦前ミステリマニアには悪名高い伴大矩(ばん・だいく)の下訳を
八切止夫がやっていたという驚愕の事実もここで知りました。
カーの戦前の邦訳出版「魔棺殺人事件(三つの棺)」の下訳をやっていたかも?
東西の異能作家がここに集う奇縁というか。
そして、満州で零細出版をおこし、大阪圭吉の本を出していたということも。
大阪圭吉は愛知県新城市出身、八切止夫は名古屋出身(という説も)だからでしょうか。

戦前には「南洋もの」といわれる小説のジャンルが存在し(中島敦も書いていたという)、
八切止夫にも「赤道青春祭」という作品があります。
怖いもの見たさでいちど読んでみたいですね。
「青春祭」って言うくらいだから、
かつて春陽堂文庫でいっぱい出ていた「お嬢さんもの」「なんとか三四郎もの」みたいなんですかねえ。
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