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チラシの裏

密室殺人

2019年07月18日 | ミステリ
バカバカしくも一応の機械的トリックで行われる「密室殺人」、
その密室殺人がプロットと相矛盾する、一読呆然としてしまう作品。

その1
密室殺人の現場は、
「被害者は南京錠と差し金錠のかかった部屋で後ろから刺殺されていた。
他の部屋にいた家族は睡眠薬を盛られておりそれぞれの部屋には南京錠がかけられ錠は紐で縛られていた。
語り手は殴られたうえに地下室で恋人と一緒に縛られていた」
という盛り過ぎとも思える場面。
その2
全体の半分過ぎにおきる殺人までは、延々と家族内の軋轢を語り手の一人称で読まされる辛さ。
社会を斜めに見ているような若者(語り手)がウィットと少しブラックなユーモアで語る、
というスタイルらしいですが、その恋物語もふくめ残念ながらまったく面白くない。
翻訳者のせいというより、たぶん原文のせいですね。
「密室殺人」(1941年)と同じ年に発表されたディクスン・カーの作品は「連続殺人事件」と「殺人者と恐喝者」。
トリックのバカバカしさに差はないかもしれませんが、
キャラクターの描き方や筋の運び方は月とスッポンではないでしょうか。
その3
殺人がおきてからは、話にドライブがかかりテンポ良くすすみます。
それから本当の探偵役が登場しますが、現場へ来た段階ですでに謎を解いている(ような雰囲気)。
語り手も、いくらか謎を解いているようにも描かれているので、
読者が馬鹿にされているような気になる。
手がかりは、殺人がおきるまでの中にある、ということなんでしょう。
これを拡大解釈すれば、もしかするとクリスティ「ゼロ時間へ」の先ぶれになった作品かも?
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