Activated Sludge ブログ ~日々読学~

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●長崎県対馬市長、《文献調査…「市民の合意形成が不十分だ」…処分場について「将来的な想定外の要因による危険性が排除できない」とも語った》

2023年10月20日 00時00分33秒 | Weblog

[※ 「3.11から12 脱原発の約束はどこに」(週刊金曜日 1415号、2023年03月10日) ↑]


(2023年09月29日[金])
本当に良かった! 正しい判断だと思う。ただ、まだ、予断を許さないようだ。
 長崎県対馬市比田勝尚喜対馬市長、(東京新聞)《文献調査応募しない意向を表明…「市民の合意形成が不十分だ」…処分場について「将来的な想定外の要因による危険性が排除できない」とも語った》。

   『●《脱原発へ政策のかじを切り、際限のない健康被害の脅威に歯止めを
      かける。それが最終処分場問題の解決に向けた国民議論の最低条件》
    《高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定に手を挙げそうな北海道
     寿都町。町内に不安が広がり道や隣接自治体との亀裂も深まって
     いる巨額の交付金で誘致を促す手法。このままでいいのだろうか》
    《原発から出る核のごみを最終的にどこで処分するのか。国民に
     突き付けられた課題であることは間違いない。とはいえ町の判断は
     地域の行く末を委ねる手段としては余りに安易ではないか》。

   『●空虚な《地域振興》…《核のごみ問題で過疎の町に「最大20億円」
     財源の魅力 識者「札束で頬を叩くのはやめるべき」》(野村昌二氏)
   『●【NNNドキュメント‛20/核のごみは問いかける 「尊重」の先には…】
        …空虚な《地域振興》なことは立候補しなくたって《学》べます
   『●《(文献調査後の)概要調査前に住民投票で意見を聴いて判断させて
     いただきたい》…足抜けできるのか? NUMOにからめとられて…
   『●《原発を動かせばごみが出る…なすべきことは明白。原発を止め、ごみ
     増を防ぎ…しかし国は稼働ありき。ごみが増えるほど後始末に困るのに》
   『●マンションからたれ流しにしておいて、トイレをどうするのかとか、放
     先どこにするのかなんてナンセンス…しかも、《被爆地の長崎》で…
    「「防人の島」の《町民の皆さんがその道を選んだ》のですか?
     足抜けできるのか? NUMOにからめとられて、泥沼に足を
     突っ込み、抜け出られなくなるのではないか。しかも、被爆地の
     ナガサキで。《改めて誘致が浮上した背景には「深刻化する人口減少、
     最近までの日韓関係の悪化、観光需要の落ち込み」があるという》
     …意味が分からない? そんな理由で死の灰を受け入れるの?」

   『●はぁ? 東京新聞【「原発マネー」で生まれた奇策 使用済み核燃料の
      中間貯蔵施設を上関町に 中国電力と関西電力で苦肉の共同開発案】
   『●山口県上関町…《さんざん町民を分断してきた挙げ句に郷土を核のゴミ
     捨て場…正真正銘の原発の墓場にするという動きに反発が高まっている》
   『●《「まるで反社以下の関電」…今も経済産業省と岸田政権に守られてぬく
      ぬくと生き延びている》《関電と経産省、岸田総理は「亡国トリオ」》

 《そもそも選定基準の議論が十分と思えない》って、廃炉終了の定義が無いのと同じでは? ブログ主の主張は、まずは、核発電を止めませんか?、ということ。核のごみをたれ流しながら、選定基準も無い中で、最終処分場をどこにするのかなんていう議論は馬鹿げている。使用済み核燃料プールも限界に近付いている。(東京新聞)《使用済み核燃料は各原発のプールにたまり続け、2023年3月時点で原発を保有する電力10社のプール容量の74%が埋まっているプールが満杯になると、核燃料の交換ができず原発は動かせなくなる》。まずは核発電を止め、廃炉作業に着手。議論はそれから。
 東京新聞の記事【長崎対馬、核ごみ調査応募せず 市長「合意形成が不十分」】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/280025)。《原発から出る高レベル放射性廃棄物核のごみ)の最終処分場選定に向けた第1段階の文献調査に関し、長崎県対馬市の比田勝尚喜市長は27日、国側に応募しない意向を表明した。市議会の議場で「市民の合意形成が不十分だ」と述べた。1次産業や観光業に風評被害をもたらすとの懸念が強く、市民の分断が深まるのを回避した。対馬市議会は12日、地元の建設業団体が提出した調査受け入れを促進する請願を賛成10人、反対8人の僅差で採択。漁協の一部や市民団体が出した反対請願6件は一括して不採択とした。議会と市長の判断が割れた形となった。比田勝氏は処分場について将来的な想定外の要因による危険性が排除できない」とも語った。27日午後に記者会見し、自身の決断理由を詳しく説明する。松野博一官房長官は27日の記者会見で、対馬市の方針を受け「文献調査の実施地域拡大を目指し、全国で必要な情報提供に取り組む」と述べた。文献調査に応募した自治体には最大20億円の交付金が支給される》。

 鎌田慧さん「隠された公害」、たしか読んでいたはずだが、完全に内容を失念している。《「核のごみ」拒否した対馬》…かつて、《イタイイタイ病の発生も疑われた》そうだ。そして、《被爆地の長崎》という背景も忘れてはいけない。
 木原育子西田直晃両記者による、東京新聞の記事【こちら特報部/「核のごみ」拒否した対馬 実はカドミウム鉱害に苦しんだ歴史 それでも廃棄物の苦労をかけるのか】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/280161?rct=tokuhou)。《原発から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分の受け入れを巡って揺れる長崎県対馬市。27日、比田勝(ひたかつ)尚喜市長は調査に応募しない意向を表明した。ただ市議会は推進派が多数を占めるほか、来春に市長選があり、予断を許さない。その対馬は昭和の時代、鉱山が操業され、カドミウム汚染に翻弄(ほんろう)された。イタイイタイ病の発生も疑われた。過去に苦労した地に「核のごみ」を委ねていいものか。(木原育子西田直晃)》


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https://www.tokyo-np.co.jp/article/280161?rct=tokuhou

こちら特報部
「核のごみ」拒否した対馬 実はカドミウム鉱害に苦しんだ歴史 それでも廃棄物の苦労をかけるのか
2023年9月28日 12時00分

 原発から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分の受け入れを巡って揺れる長崎県対馬市。27日、比田勝(ひたかつ)尚喜市長は調査に応募しない意向を表明した。ただ市議会は推進派が多数を占めるほか、来春に市長選があり、予断を許さない。その対馬は昭和の時代、鉱山が操業され、カドミウム汚染に翻弄(ほんろう)された。イタイイタイ病の発生も疑われた。過去に苦労した地に「核のごみ」を委ねていいものか。(木原育子西田直晃


◆大きな組織に依存する構図

     (鎌田慧さん(資料写真))

 対馬市長の方針が示された27日。安堵(あんど)せず、嘆息交じりで話す人がいた。

 「(受け入れに伴う交付金に)群がらざるを得ない自治体は対馬だけでなく、もっと出てくるはずだ」

 「本音のコラム」でおなじみのルポライター、鎌田慧さん(85)。1969年にジャーナリストとして初めて踏んだ現場が対馬だった。カドミウム汚染が取り沙汰された状況を取材し、初の著書「隠された公害」を70年に上梓(じょうし)した。

 あれから半世紀以上。同じ地が「核のごみ」に揺れる。先行きが不透明な状況も残る。

 「歴史が繰り返されている鉱山会社から、国や電力会社へ変わっただけ。生活が行き詰まると、どこか大きな組織に依存してしまう構図は変わっていない」


◆高度成長期には亜鉛や鉛を採掘

 過去に汚染をもたらしたのが対州鉱山だ。所在するのが旧厳原(いづはら)町。同町は、2004年に6町合併で誕生した対馬市の中でも、中心的な存在になる。市の玄関口のフェリー乗り場から西に数キロに位置する。

 市観光商工課の糸瀬富喜主任は「対州鉱山は厳原町の佐須という地域にあったので、地元の人は『佐須鉱山』と呼んだ」と話す。

 「同じ旧厳原でも市庁舎がある島の東側と違って、西側の佐須は農村地域。トンネルを抜けると、ぱっと日本の田舎の原風景が広がる感じだ」と続ける一方、「コロナ前までは韓国の観光客でにぎわったこともあったが、今は…」とも。

 対馬と鉱山は縁深い。古代からを産出し、地域を繁栄させた。1939年には日本亜鉛が買収。流れをくむ東邦亜鉛は高度成長期にかけ、対州鉱業所を置いて亜鉛や鉛を掘り出した。

     (東邦亜鉛の2017年環境報告書。
      対州鉱山の管理状況を伝える)

 その一方、地元はカドミウム汚染に見舞われた。亜鉛族元素に区分されるカドミウムが原因で骨がもろくなる「イタイイタイ病を疑う報道もあり、69年に要観察地域に指定された。

 鎌田さんが取材を始めたのがこのころだ。「ほとんどの住民は無言を貫き、逃げるばかり。町にとって大切な産業。住民は企業に完全に支配されていた

 先の著書を出版した3年後の73年、「この資料は正確で聊(いささか)の誇張もない真実の記録です」との書き出しで企業内部から告発文が届いた。会社が組織ぐるみでごまかした資料を厚生省(現厚生労働省)に提出したと裏付ける文書だった。

 鎌田さんは「1人の人間が勇気を奮い、苦難を覚悟し、いわば身をていして訴え出てくれた。対馬は国境の島、要塞(ようさい)の島だが、企業に牛耳られた島でもあった。そんな三重苦を背負っていた」と回想する。


◆坑廃水処理水の調査、今も続く

     (カドミウムの汚染調査で偽装工作があった
      ことを報じた当時の東京新聞)

 対州鉱山は73年に閉山。翌年、告発文にあった不正の記事が世に出て騒動に。東京新聞も、汚染調査で偽装工作があったと報じた

 現地では長崎大が約30年にわたり、住民の健康被害の追跡調査を続けた。イタイイタイ病と同じ症状の住民が確認されていたが、原因は断定できなかった。

 一方で余波は今も続く。

 東邦亜鉛は鉱山保安法などに基づき、発生源対策や坑廃水処理を実施する。対州鉱山管理事務所の杉村智律所長代理は「処理水に重金属が含まれていないか調査を続け、毎月経済産業省に報告している」と語る。

 閉山後、一度も基準値を超えていないという。市環境政策課の阿比留正臣課長は「問題の値は出ていないが、負担が続く面もある。国と県、市で毎年補助金も出している」と話す。

 環境問題に見舞われた対馬。「核のごみ」の最終処分とも長い関わりを持つ。

 80年代には動力炉・核燃料開発事業団の地質調査で島の一部地域が「処分地として良好」と評価された。最終処分事業を担う原子力発電環境整備機構NUMO)は2006年ごろから説明会を複数回開いた。

 なぜ対馬で説明会を開いたのか。過去の環境汚染に思いを巡らせたのか

 NUMO広報部の副部長は「(動燃の調査は)参考にしていない。説明会をいつから何度開いたか、どちらが働きかけたかは、個別のケースはお答えしていない」と繰り返した。


◆24年春に市長選、予断許さず

 対馬は揺れてきた。07年に市議会は受け入れ反対を決議した一方、今月には調査受け入れを促す請願を採択。市長は反対を表明したが、来春には市長選を控えており、不透明さが残る。

 万一、調査の応募に動いた場合、NUMOは対馬の過去に配慮するのか

 手を挙げた場合、3段階ある調査のうち、第1段階の文献調査が始まる。先の副部長は「不適地を除くための調査。次の段階の調査でさまざまな要件が設けられ、そこで判断する可能性はある」とした。

 とはいえ、最終処分場の選定基準は曖昧さが残る

     (経済産業省が入る庁舎=東京・霞が関で)

 文献調査を踏まえた選定基準については、経産省資源エネルギー庁が7月に案を公表した。景観や文化財、国土防災を考慮し、土地の利用規制が起きるというが、それ以上の記載はなく、地域事情が深く考慮されるかは不明瞭だ。担当者は「対馬で文献調査を開始しておらず、予断を持って答えられない」と話す。

 選定基準はどうあるべきか。過去の苦労を無視して構わないのか

 信州大の茅野恒秀准教授(環境社会学)は「地域の歴史的経験に正面から向き合うべきだ。住民は長い時間軸の中で暮らす。その経験に寄り添わずに信頼は得られない」と訴える。


◆対馬市、寿都町、神恵内村…共通するのは

 対馬市のほか、既に文献調査を受け入れた北海道寿都町神恵内村にも共通するのは、高齢化や過疎化で疲弊した地元の活性化が叫ばれる点だ。

 明治学院大の藤川賢教授(地域環境論)は「困窮地域ほど新たな苦労を迎えやすい」と語る。「調査を受け入れると、観光業などにデメリットがあり、賛否の対立が疲弊を招く。小規模自治体の財政に貢献するというが、予算を長期にわたって執行できるわけではない。交付金が終了すれば困窮はより厳しくなる

 そもそも選定基準の議論が十分と思えない。現状は文献調査の基準をまとめただけ。候補地を先に募り、基準は調査と並行して決められる

 先の茅野氏は「『後出しじゃんけんのように判断基準を決める進め方。最終処分場の選定は手順を含めたゼロベースでの見直しが必要だ」と話す。


◆デスクメモ

 対馬の過去を知るほど、対馬に迷惑施設を委ねていいかと感じた。ただ万一、応募に傾いたら「善意」に甘えていいか。苦労に苦労を重ねる危惧。善意というより、交付金を頼らざるを得ない「苦渋」の面も。各地に通じる問題。公平な最適解をどう考える。その議論こそ必要では。 (榊)

【関連記事】原子力政策さらに迷走…最終処分場選定に対馬市長が応募否定 それでも原発推進を譲らない岸田政権
【関連記事】原発「60年超運転」法が成立 自公維国などが賛成 電力業界の主張丸のみ 福島事故の反省と教訓どこへ
【関連記事】核のごみ最終処分場「南鳥島を候補に」 川勝・静岡県知事が提案 小池都知事は「まず国で対応」
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●《今なお続く福島の「不条理」》: 東電の初期の主張は「無主物」…裁判所は《放射性物質…農家が所有》と言い放った

2019年10月24日 00時00分35秒 | Weblog

[※ 『原発に挑んだ裁判官』(磯村健太郎・山口栄二) 朝日新聞出版(https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=21028)↑] 



昔(2017年4月25日)の東京新聞の記事【「田を原状に戻せ」却下 大玉村・米農家らの怒り】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/tohokujisin/fukushima_report/list/CK2017042502000199.html)。
昔(2019年1月11日)の全国農業新聞の記事【福島の農地現状回復裁判 差し戻し審 「スピードある審議を」】(https://www.nca.or.jp/shinbun/agricultural-administration/4131/)。
NHKの記事【原発事故 “土から放射性物質 取り除いて” 農家の訴え】(https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2019/10/1017.html)。

 《「私の住んでる農地は、日本でも美味しいお米がとれる土壌だったんです。それが壊されたからね、土壌汚染によって。だから、東電に原状回復してもらう。」》

   『●東電旧経営陣に無罪判決…《誰も事故の責任を
     取らなければ企業に無責任体質がはびこり、また同じことが起きる》
   『●JOC臨界事故で何が起きたでしょうか?…《人が制御
     できないなんて恐ろしい。政府は…本当のことを言っていない》

   『●永渕健一裁判長、東電旧経営陣の刑事裁判で「無罪」《判決の
      中身もさることながら、その理由があまりにもひどすぎる》

   『●東京新聞の小野沢健太記者によるシリーズ記事【<原発事故
      「無罪」>】…《判決に表情変えず 遺族ら「うそー」悲鳴》
   『●裁判所も歪む…《国が開発の政策的な枠組みを決め、その下で
       電力会社に》核発電所を…《そして裁判所も一体となり…》

 《闘う相手は東電だと思っていたが、その前に裁判所という大きな壁があるとわかった》。デタラメ判決ばかり。裁判所も歪んでいる。
 2019年10月15日の地裁判決はまだアップされていないのか? 誰が裁判官だったのだろう…。
 記事では《2017年4月、福島地裁郡山支部はこれを不適法と却下》とあるが、判決文が見つからない…。2年前の10月のことか? 【平成25(ワ)38  原状回復等請求事件 平成29年10月10日  福島地方裁判所】(http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/223/087223_hanrei.pdf)。福島地方裁判所第一民事部の金澤秀樹裁判長・西村康夫裁判官・田屋茂樹裁判官。

 《だから土地を元に戻してほしい人の物を汚したら、謝罪して、きれいにして返すのが当たり前じゃないですか》…《だが、要求は無視され続けた》。
 今回の判決は《土と同化しているため、東京電力の管理下にはなく、むしろ、農家が所有している》という驚くべきもの。あまりに酷い言い草。
 《今なお続く福島の不条理》。東電の初期の主張は「無主物」でした。主(ヌシ)・東電が責任をもって《原状回復》するのが筋だと思うのですが、「無主物」どころか、今回の裁判長は東電がまき散らした《放射性物質…農家が所有》と言い放ったのです。あぁ~あ…。

   『●東京電力、「お前のモノだろう!」
    「政治の無能、企業倫理の欠如、それに加えて司法のあまりの無責任さ
     原発問題に関してまともに司法が機能した例はごくわずかで、
     政治や(公・私)企業の行いへの追随ばかりだ。市民サイドに立て
     とは言わない、でも、せめて公正・中立であってくれ」
    《放射能を「無主物」と言い放つ東電と裁判所の責任
    《東電側は放射性物質は誰の所有にも属さない「無主物」であって、
     飛んでいる虫のようなものだから除去する責任を負わないと主張した。》

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/tohokujisin/fukushima_report/list/CK2017042502000199.html

【ふくしま便り】
「田を原状に戻せ」却下 大玉村・米農家らの怒り
2017年4月25日

     (放射能に汚染された農地に立つ鈴木さん。
      「清い空気と水が私たちの宝物だったんだ」=福島県大玉村で)

 「原発事故で汚染された農地を元に戻してほしい」と福島県の米農家が東京電力を訴えた裁判で、福島地裁郡山支部は今月十四日、「却下」という判決を下した。門前払いに等しい判決の理由は「原状回復は難しく、方法が特定できない」「被告(東電)が放射能を除去するに至るとは考えがたく、紛争解決にならない」など。先祖伝来の土地を汚された農家には、到底、受け入れがたい理屈だろう。事故から六年が経過して、今なお続く福島の不条理の一端を報告したい。

 「判決を聞いた瞬間は言葉も出なかった。まさか却下とは。十五回も期日を重ねたのは何のためだったのか。怒りが込み上げてきて体が震えた」

 原告団長の鈴木博之さん(68)は、裁判を振り返って、そう話した。

 ほかの七人の仲間と共に提訴に踏み切ったのは二〇一五年十月十四日だった。鈴木さんは福島第一原発から西へ約六十キロの福島県大玉村で、米作りの会社を経営している。約三十ヘクタールの田で水稲を栽培し、自前で販売。さらに米を串だんごや餅に加工して売る。米農家の六代目だったが、将来を見据え、六次化と呼ばれる農業の自立経営の道を開いた。原発事故が起きたのは、そんな経営が軌道にのりかけたときだった。

 事故後に、米が土壌の放射性セシウムを吸収しない工夫を重ね、現在は米からセシウムが検出されることは、ほぼなくなった。しかし顧客は戻って来ず、売り上げは約二割にまで下がった。 

 「消費者は田が汚染されたのを知っている。この状態で他県の産地と競争ができますか。だから土地を元に戻してほしい人の物を汚したら、謝罪して、きれいにして返すのが当たり前じゃないですか

 だが、要求は無視され続けた。事故後、県内では生活空間の放射線量を下げたり、農地の表土を入れ替える除染が実施された。しかし、あくまでもセシウムを移動させる移染が実態であり、セシウムそのものを取り除く試みはない

 完全にセシウムを取り除くには、巨額の費用と手間が必要になる。鈴木さんたちは、イタイイタイ病公害の富山県の例などを参考に、セシウム除去の方法を自分たちで探した。三百万円をかけて土壌を分析。そうした準備で臨んだ訴訟だった。

 結果が「却下」だ。

 判決文を読むと、原告団ならずとも腰が砕ける。

 「原告らが本件各土地の所有権が放射性物質により違法に妨害されている旨を確認する判決を得たとしても、被告(東電)が任意に本件各土地の土壌内における放射性物質を除去するに至るものとはにわかに考えがたい。(略)紛争が有効かつ抜本的に解決されるものとはいえず」

 よって不適法であるという。判決後、東京電力は、コメントを控えた。

 原告側代理人の花沢俊之弁護士は「判断を避けたに等しい。裁判を受ける権利の侵害だ」。原告団は全員一致で控訴を決めた。

 鈴木さんは、こうも話している。「闘う相手は東電だと思っていたが、その前に裁判所という大きな壁があるとわかった。巨象に挑むアリのようなものだが、かじりついてやりたい」 (福島特別支局長・坂本充孝)
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https://www.nca.or.jp/shinbun/agricultural-administration/4131/

福島の農地現状回復裁判 差し戻し審 「スピードある審議を」
2019年1月11日

 福島県の6軒(5市町村)の米農家が東京電力に農地の原状回復を求める裁判の差し戻し審第1回口頭弁論が、昨年12月25日、福島地裁で開かれた。

 2014年10月に始まった第1審で、原告団は「30センチ以上の土壌を取り除き、10センチ以上の耕盤層を造成し、20センチ以上の客土を」と請求してきた。2017年4月、福島地裁郡山支部はこれを不適法と却下。2018年3月22日、仙台高裁は「客土工は実務上確立されている一般的な工法」と1審判決を地裁に差し戻す判断を下した。東電はこれを不服として最高裁に上告したが認められず、差し戻し審が行われることになった。

 二本松市の渡邊栄治さん(69)は、原発事故から7年がたっても全袋検査が続き、新米出荷が他産地より2週間遅れてしまう悔しさ、事故前に取引していた東京の小売店といまだ取引再開できない実情を吐露。

 大玉村の鈴木博之さん(68)は、提訴から4年が経過したことを踏まえ、「国民の恐怖と疑心を取り除くには、農地から放射性物質を取り除くしかない。スピードある審議を」と訴えた。次回の答弁は3月6日。今後の展開に注目したい。

     (写真説明=提訴から4年。「スピードある審議を」と鈴木博之さん)
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https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2019/10/1017.html

NHKニュース

おはよう日本
2019年10月17日(木)
原発事故 “土から放射性物質 取り除いて” 農家の訴え

福島県の農家8人が、原発事故前の農業を取り戻したいと、5年前(2014年)、東京電力を訴えた裁判に、おととい(15日)、判決が言い渡されました。
農家たちは、金銭的な補償は一切求めず、農地から事故で飛散した放射性物質を取り除いて欲しいという、その一点だけを求めてきました。


“放射性物質 取り除いて” 福島 ある農家の8年

原告のひとり、鈴木博之さん、69歳。
江戸時代から続く農家の6代目で、原発事故後も、およそ20ヘクタールの農地でコメ作りを続けてきました。

鈴木さんが暮らす、福島県・大玉村。
原発からおよそ60キロ離れたこの村にも、8年前、放射性物質が降り注ぎました
大玉村を始め、線量の高い市町村は、国のガイドラインに従い、農地の除染を行いました。

その主な方法は、汚染された表面の土とその下の土を反転させる「反転耕」や、土を深く耕して放射性物質を薄める「深耕」。
放射性物質を取り除くものではありませんでした

この4年間、福島の米から基準値を超える放射性物質は検出されていません。

それでも鈴木さんは、土を入れ替えてでも放射性物質をなくさない限り、事故前の農業を取り戻すことは出来ないと考えています。


鈴木博之さん
「私の住んでる農地は、日本でも美味しいお米がとれる土壌だったんです。
それが壊されたからね、土壌汚染によって。
だから、東電に原状回復してもらう。」



鈴木さんは、20代で農業を継いで以来、次々と新たなことに挑戦し続けてきました
34歳の時には、妻と妹夫婦とともに農業法人を設立。


農協に頼らずに米を売っていこうと、独自のブランドをつくり、消費者に届ける直接販売に乗り出しました。
さらに原発事故の4年前には、米の加工品を販売する店もオープンし、国が推進する「6次産業化」にいち早く取り組み、事業は軌道に乗り始めていました。

その矢先に起きた原発事故。
鈴木さんの農業は一変しました。
米を直接販売していた全国の顧客は、その8割が離れていきました。

今は、他の福島県の多くの農家と同様、米の多くを、名前のつかない業務用米として出荷せざるを得なくなりました。
加工品を販売する店の売り上げも伸びず、鈴木さんは何度も、倒産の危機に直面しました。
その度、つきつけられたのは、土に放射性物質があるかぎり、いくら頑張っても、原発事故の前には戻れない、という現実でした。


鈴木博之さん
「いいときを思い出すのはつらい。
マイナスの仕事はいやですわ。
なんぼ頑張っても、プラマイゼロやもん。
やっぱり夢と希望っていうのはプラスの話だからね。」


8月。
お盆にあわせて、東京に住む娘と孫が帰省しました。

農地を守りつないできた先祖の位牌を前に、鈴木さんは汚染された農地を、次の世代に引継がせるわけにはいかないと、思いを新たにしていました。


鈴木博之さん
「俺、ちゃんとした土、先祖からもらって、俺の代では汚したけども、これ元に戻して次代の人に渡す。
それが最大の我々の世代の仕事と思ってる。」



そしておととい。

裁判長は、鈴木さんたち原告の訴えを退けました。
主な理由は、原発から飛散した放射性物質はすでに土と同化しているため、東京電力の管理下にはなく、むしろ、農家が所有しているといえる。
故に、東京電力に放射性物質を取り除くよう請求することはできない、というものでした。
土を入れ替えてでも、放射性物質をなくして欲しいと求めてきた鈴木さんの主張は認められませんでした。
鈴木さんは控訴して、これからも訴え続けようと決意しています。


鈴木博之さん
「我々土を利用して生きているし、生かしてもらってるんだから、もう一回ファイトっていうしかないかなって今、思ってます。」



取材:松原恭子ディレクター
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●この世から放射性物質は消えない

2012年01月05日 00時00分47秒 | Weblog


いつも辛口のgendai.netから二つの記事(
http://gendai.net/articles/view/syakai/134072http://gendai.net/articles/view/syakai/134106)。

 処理して無害化できる訳が無いし、完全には除去できないだろう。元々ストロンチウムは取れないのか? 〝除去〟装置は、この記事を読む限り、やはり機能していないと判断せざるを得ない。フランスといった世界の原子力ムラの親戚を儲けさせているだけだろう。それは良い(良くはないけれど)として、それよりもはるかに、東京電力界隈の原子力ムラ住人がFUKUSIMAの住民や、周辺海域の漁師、世界の人々を「問題は解決した」と騙そうとしてばかりいることの方が、大きな問題だろう。詐欺的行為だ。
 生物学的処理も含めて、水処理は基本的には固形物に変えて汚染物を固液分離することである。ナウシカの世界ではないのだから、放射性物質は(微)生物による分解・無害化など期待できない。自己崩壊以外で放射性物質はこの世から消えないし、除去できない。したがって、半減期の長い放射性物質では、固形物に変わるか固形物に吸着されたとしても、この世から消えた訳でもなく、無害化された訳ではない。膜処理で淡水化(100%淡水化は無理だと思われる)しても、濃縮排水が出てくる。淡水化処理でこの世から放射性物質が無くなったかのようにミスリードしてはいないか? その固形物や濃縮排水の処分(処理でない)という問題が依然残されている。3.11から約10カ月で、「問題は解決した」などという幻想はあり得ないし、それをまき散らされてはたまらない。原発再稼働や原発輸出などといった愚かな行為で、原子力ムラ住人を蘇らせてはならない

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http://gendai.net/articles/view/syakai/134072

「浄化水」から猛毒ストロンチウム基準値100万倍超えなんて
2011126 掲載

どうなってんだ! 福島原発の汚染水

 またまた不安材料が飛び出した。福島原発の高濃度汚染水の処理施設から、ストロンチウムなどを含んだ45トンもの大量の水が漏れ出した問題だ。うち約300リットルは海に漏出した可能性があるというから深刻である。
 東電は「汚染水を浄化後、淡水化するための濃縮装置の配管のつなぎ目から漏れたと推定している」(広報担当者)と言っている。しかし、いつも汚染水の処理については断片情報ばかりでサッパリわからない。「1日約470トンの汚染水を浄化して冷却に使っている」と説明するが、具体的にどこの汚染水がどれだけ浄化され、どうして漏れたのか。原子炉建屋の地下にたまった8万トン超の高濃度汚染水が依然として減らないのはなぜか。仕組みはチンプンカンプンなのだ。
 今回のトラブルの舞台は、汚染水処理の最終工程である淡水化装置だ。逆浸透膜(RO)方式と蒸発濃縮方式の2系統を併用していて、水漏れは、蒸発濃縮方式の建屋から見つかった。
 濃縮方式のうち60億円かけて導入された仏アレバ社製のポンコツ装置は、9月に稼働休止となった。それに続いて、今回の水漏れで稼働していた東芝製も全面ストップだ。先が思いやられるし、さらなる疑問も湧いてくる。
 漏れた水のセシウムは、法で定められた海水濃度基準の約300倍。ストロンチウムは、濃度基準の約100万倍とみられる。最終工程であるはずの淡水化装置の中に、これだけ高濃度の汚染水が含まれていたのだ。ちっとも、「浄化」できていないではないか。

<東電は「100%除去できるわけではない」と言い訳するが>

 東電は「浄化システムを通しても、放射性物質を100%除去できるわけではありません」(広報担当者)と言い訳するが、それにしたって「100万倍」では説得力ゼロだ。
 今回のようなヒビ割れが見つかれば、再び海水が侵されていく。環境ジャーナリストの天笠啓祐氏がこう言う。
「海に流れた放射性物質は薄まることなく海底の土に残り、放射線を放ちながら海底のプランクトンや魚介類に取りこまれます。小さい魚から最終的にマグロ、鯨など大きな魚に濃縮される。政府の除染作業もそうですが、最終的に海に流れても仕方ないという発想は危険です。食べ物になって自分たちにハネ返ってくるのです」
 そういえば、内閣府の園田政務官は「安全は確認されている」と、浄化した汚染水をコップ1杯飲み干していた。本当に大丈夫なのか……
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http://gendai.net/articles/view/syakai/134106

 

【田中康夫 にっぽん改国】

除染はもとより「除洗」も不要だ

2011127 掲載

 

 メルトダウンを超えてメルトスルーに陥った東京電力福島第1原子力発電所の周囲は「放射能に占領された領土」と冷徹に捉えるべき。その放射能は、「人間の五官が察知し得ぬ無色・無臭・透明」で、極めて厄介な存在なのです。
 とするなら、原発から少なくとも30km圏内は居住禁止区域に設定し、愛着を抱く郷里から離れる当該住民には、国家が新たな住居と職業を提供すべき。それが、「国民の生命と財産を護(まも)る」政治の責務です。にも拘(かかわ)らず、「今の所は大丈夫」会見を続けた枝野幸男氏にも、「今は既に大丈夫」発言を続ける細野豪志氏にも、身を挺して有言実行する哲学や覚悟は窺えません。チェルノブイリ原発周辺の住民に、更には生まれ来る生命に勃発した身体の異変・異常が「フクシマ」に限っては起こり得ない、と断言出来る訳もないのに。
 放射能に汚染された土壌を30年間保管する中間処分場を福島県内の国有林等に設置するが、その後の最終処分場は県外に、と「約束」する細野氏も30年後は70歳。大半の政治家は引退しているのです。無責任な問題先送りです。国有林内の「保管物」が雨水に混じって河川に流れ出たら、イタイイタイ病どころの話ではありません。
 映画「100、000年後の安全」に登場したフィンランドオンカロ以外に現在建設中の放射性廃棄物最終処分場は地球に存在しない事を鑑(かんが)みれば、住民が移住後の「フクシマ」を最終処分場とし、この瞬間も世界中で排出される廃棄物を受け入れたなら、これぞ最大最強の安全保障政策の確立です。
 「除洗」も、再考すべきです。語弊を恐れず申し上げれば、桜島の噴火が終息していないのに鹿児島市内で愛車を水洗いしている滑稽さと同一です。人海戦術で駆り出された住民が内部被曝を起こさぬ保証は何処にも無いのです。トンネルじん肺やアスベストの悲劇から何も学ばぬとは。
 更には、除洗の際の水は如何に処理しているのか、杳(よう)として語られません。ここでも、水俣病どころの話では無いのです。
 が、渡部恒三氏の秘書から参議院議員を経て福島県知事に転身した佐藤雄平氏は、人口が減少すると交付税も減少するので疎開や移転には反対、と高言する始末。笑い話では済まされない日本の政治の機能不全です。
【田中康夫】

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コメント
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