「子どもを安全に育てること」の困難な時代
名古屋市の小学一年生女児監禁事件、広島での小学6年生の旅行かばんでの連れ去り事件など、新学期に入り、私達を不安に陥れる事件が立て続けに起きています。
「絶対に一人きりにしてはいけない」「町の危ないところをさがしておこう」など、色々な意見が言われています。
しかし、子どもに接する私たちの不安感をあざ笑うように、犯罪の被害に遭う子どもの事件が後を絶ちません。
「まさかうちの子が、まさかここで、さっきまで一緒にいたのに」。一瞬の「隙間」で子どもたちが事件に巻き込まれている、この現実に、怒りとなぜ防げなかったかという悔しさ無念さに包まれます。
このように、「子どもを安全に育てる」ことを困難に感じる時代ですが、常に子どもを守らねばという義務と不安を感じ、しかしどう守り育てればよいのかと迷いながら毎日を過ごしてばかりいるのではなく、大人も子どもも一緒に幼児期から安全を学ぶ時代に突入したのではないでしょうか。
「子供を犯罪被害に遭わせない自信」
将来も現在も「子どもを犯罪被害に遭わせない自信」があるか、を全国で調べたところ、例えば幼稚園で見ると、「ある」という幼稚園が44%、「自信がない」園は43%となりました。自信はあるという層がある一方、自信がない層が4割もあるということは、いつ自分たちの近くで子どもが被害に遭う事件が起こるかわからない、という漠然とした不安感があり、対策、教育方法に悩まれている先生方が多くいらっしゃるということがわかります。
実際には、学校現場でもいくつかの標語を覚えたり、大声をだすなどの指導を行なっているものの、いざというときに自分で自分を守る力をつけているかというと、自信がない、このままではいけないと思っている方々が多いのです。
「安全教育とは」
では、安全教育とは何か。自信と勇気を持って子どもが一人で歩くためには、遅くとも幼稚園・保育園の時期から発達段階に沿った、体験的な安全教育が必要なのです。
頭と体と心をつなぎ、自分を守る力を付けていくには、0歳から少なくとも15歳までの発達に合ったカリキュラムをもとに体験的な学習が行われることが重要です。
最初に大切なのは、愛情のサインをたくさん意識的に与えること。ギュッと抱きしめる、大好きよということ。それを子どもがしっかりと受け止め、愛されていることを感じられれば、自分を大事にします。自分を大切にしない子にいくら対処法を教えても安全にはなりません。安全のための力の第一歩がこの愛情です。
安全教育は「安全基礎体力」をつけることです。自分の大切さをしっかり染み込ませることからこの安全基礎体力づくりは始まります。これがあって初めて自分で自分を守る力はついてきます。
「安全基礎体力」とは「体の力」と「社会的な力」を合わせたもので、「危機への知恵・知識」「体力」「コミュニケーション力」「大人力」の4つの力のことを言います。
例えば周囲に注意しながら歩くと言っても、どのくらい先を見ればよいのか、それは20mなのです。(「犯罪からの子どもの安全を科学する」ミネルヴァ書房)。そういった科学的な知識を持ち、かつ実際に体が動くこと。
それには、この4つの力を、幼いころから身につけ、そしていざという時に「自分で自分を守る」そして中学年以上になれば「お友達を助ける」、高学年は「困っている知らない人も助けることができる」力をつけるべきだと私達は思っています。
犯罪は隙間から起こります。その隙間を埋めて犯罪を防ぐには、子どもに安全基礎体力をつけなければいつまでたっても防ぐことはできません。また悲劇は繰り返されます。
今からすぐ始められます。難しいことではありません。
歩く、すれ違う、声を出す、走る、など普段の生活でできることばかりです。
(詳しいトレーニング方法は
此方をご覧ください。)ご家庭でも、学校でも簡単に取り組めます。
遠回りに見えるようでも子ども自身に安全基礎体力をつけていくこと、これが大切です。