Ⅰ.アメリカの医療通訳士の職業状況(現状と将来性)
米国、労働局の統計による、一番最新の統計(2012年)で、医療通訳士の(この場合、医療翻訳士も含まれています)、職業報告は以下の様に述べられています。
アメリカの医療通訳士(医療翻訳士も兼ねる)の現状:
給料は2012年(一番最新の発表されたデータ)で、医療通訳、医療翻訳士の平均年収は$45、430 となっており、時給では$21.84となっています。
この医療通訳士、医療翻訳士は、資格として最低学士の課程を終了しており、現場にて自身の仕事に適したトレーニングを受ける必要があります。
医療通訳士の将来性:
この職種の将来性は2012年から2022年までを予想して、46%の伸び率であり、全ての職種を合わせた平均より、かなり早い成長率が見込まれています。
この将来性の急速な伸び率は、近年の医療界に於いての急速なグローバル化に加え、益々増えているアメリカの移民率によりもたらされるものです。
しかし、この職種の急成長は、医療通訳、翻訳の専門資格を持つものに限られ、加えて最低、学士の課程を終了し、通訳士資格を持つ者に最適な将来性があり、通訳、翻訳の修士課程を終えた者は一層有利と言えます。
医療通訳、翻訳の需要は特にフランス語、ドイツ語、ポルトガル語、ロシア語それにスペイン語が要求され、それにアラビア語、中東語、アジアの言葉:中国語、日本語、ヒンズー語、そして韓国語が活発に求められると期待しています。
地域的に、ニューヨーク、ワシントン、サンフランシスコ、ロスアンゼルス地域では通訳士の大きな需要が伸びているのが特徴です。
又、此処で特記すべきことは、アメリカの手話医療通訳士が急速に必要とされている事です。
例えば、大統領や市長等の大事なスピーチには、脇に必ず手話士をたずさえて現れますが、手話者達への人権的配慮が一段と取り上げられている為です。
これを受け、人命にかかわる医療の分野でのビデオ通訳の普及が著しいのに見合い、益々手話医療通訳士の需要が大きく伸びてきているようです。
現在、コンピューターでの通訳が試みられていますが、まだまだその能力は限られ、特に医療の世界では人間の通訳に頼るしかないのが現実です。
この職種のトータルな将来性として、時代の流れである、国際交易の活発化とグローバルな連帯が活発になり、医療だけではなく、通訳士の需要は益々高まっていくのは必然であると米国労働統計局の報告には記されています。
これらが、米国労働統計局による報告でした。
Ⅱ.米国、公認医療通訳士の資格取得
米国の医療通訳士の資格は、米国、医療通訳士協会の独立機関である、米国・医療通訳士委員会により実施される資格試験を受けなければいけません。
この機関が厳しい規制を作り上げている目的は、各外国語の医療通訳士の資格プログラムを海外において組織的に展開し、推進・奨励し、海外市場をも開拓・開発する事を大きな目的に挙げている為です。
加えて、正確で安全な通訳が出来る、信任できる医療通訳士を提供し、患者をプロモートする事、米国医療通訳士資格証書の信頼性を保つべく、医療通訳士についての認定の基準を高め順守する事を上げています。
公認医療通訳士、取得条件
受験資格者
1)年齢:18歳以上、高卒以上、40時間以上の医療通訳の教育をうけ、医療通訳士の証書を受けた者。
2)一般教育
一般教育で、高校卒業の証明書を持つ者。
3)医療通訳関連の教育
40時間を超える、認定された医療通訳士の教育を受けた者
4)口頭による英語理解力の評価
英語の適正には以下のどれか1点を備えている事:
・アメリカの教育機関により、学士・修士・博士号又は他の課程の証明を持っている事。
・アメリカ外の国において、アメリカン・スクール、又は英語国での高校を卒業している事。
以下の英語のテストで、どれか1点をを備えている事:
・トイフルのペーパーテストで570点以上、コンピューターテストで230点以上、IiBT テストで90点以上の成績を持つ者。
◦ELPT で、 950+点以上
◦MELAB で、80点以上
◦ECPE の受験証書
◦FCE で、 A
◦CAE で、 B
◦CPE で、 B
◦IELTS で、 7.0 ・・・これらは、いずれも英語認定試験。
5)口頭での通訳語での資格
以下の1つを有する事。
・通訳語を話す国にて、学士、修士、博士号、又は他の課程の証明を持っている。
・通訳国にて、高校を卒業している事。
・通訳語にてACTFL 口頭試験、終了。
・通訳語にて、高等医療用語を習得。
これらの条件を満たし、尚、公認医療通訳士、資格試験の筆記と口頭の試験に合格しなければならない。
この試験に合格後、例えばスペイン語・公認医療通訳士、或は日本語・公認医療通訳士と認められる。
その他:
医療通訳士としてすでに1年以上、会社につとめている者は、過去2年の経験を添え、雇用会社のレターヘッドに会社雇用・年月日を記入し、サインをもらい提出すると、ロシア語・マンダリン・広東語・韓国語、それにベトナム語につき、筆記と口頭の公認医療通訳士テストを受ける資格が与えられる。
その他の言語(日本語等)の受験者は筆記試験を受けた後、3年以内に口頭試験の実施日の連絡がある。
尚、その 雇用証明書は英語に翻訳されたものである事。雇用は、正規・パートタイム、或はボランティアでの労働でも受け付けられる。
以上、米国、公認医療通訳士(CMI)の資格試験を受ける為には、この様な規約が設けられています。
Ⅲ.米国での近年の医療通訳士、医療通訳業界の状況
米国では病院・クリニック等、どの医療機関も、英語の不自由な患者の為に通訳士を準備しなければいけないのがルールです。
しかも、このルールが徹底してきているのを最近の自分の体験で身をもって知りました。
最近、私は、ニューヨーク大学付属の医療施設へ、検査の為に伺いました。
受付を通り、患者の情報収集の為、アシスタントとの面接になりました。
担当のアシスタントは、私と一言二言話した後に「どの言葉を話しますか?」と聞いてきました。
“英語で会話しているはずなのに何を言ってるのかしら?”と思いながらも、母国語は日本語だと伝えると、すぐに受話器を取り“電話通訳サービス”に日本語の通訳をオーダーしました。
”通訳が必要ですか?“と聞くわけでもなく、即です。
ところで、我が家の近くに有る、Lenox Hill 病院はかなり有名なセレブ達もよく入院し、カメラマン達がよく詰めかけている様な有名な大病院です。そこでも私が看護学生でインターンをしていた2007年位までは医療通訳士の配置はこれ程にまでは、徹底してませんでした。
例えば、私がアテンドした我が儘なロシア語しか話さない患者に対しては、あわててロシア人の医師が呼ばれて通訳をしていた程度でしたから。
この電話通訳サービスを使う医療機関は最近益々増えてきています。
それに加え、ビデオ医療通訳を使っている医療機関も多いです。
但し、この場合は、少し込み入った複雑な医療が必要な状況の場合に限定するというように、使い分けているようです。
日本でもこの種のサービスが有るのかどうかは知りませんが、米国では、最近このシステムを使用する医療施設を頻繁に目にします。
その状況も体験できると思いますので電話、ビデオ医療通訳の会社で代表的な2社を次に挙げておきます。
1. CyraCom, language solutions
2. CIRTIFIED LANGUAGE INTERNATIONAL (CLI)
サービスは2社共、電話通訳・ビデオ通訳、及び現場に通訳士を派遣することも出来、加えて医療翻訳も手がけています。
通訳出来る言語は日本語も含め、200以上の言語に対処しており、平均16秒で、通訳士を電話口に呼び出す事が出来ます。
私自身の体験から、”これは便利だな“と言う感想と共に、マニュアル化された医療・介護から起こりうる、その隙間での見落としの可能性が気になりました。
以上、アメリカの医療通訳の、現場の一部を報告します。
著者:スミ A. カンター
制作:協同組合クラブ・メディカル・ツーリズム・ジャパン 理事長 岡村寛三郎
携帯電話:090-9097-7613、イ・メール: okamura3@oksemi.co.jp
註:統計資料:
SOURCE: U.S. Bureau of Labor Statistics, Employment Projections program
The National Board of Certification for Medical Interpreters
米国、労働局の統計による、一番最新の統計(2012年)で、医療通訳士の(この場合、医療翻訳士も含まれています)、職業報告は以下の様に述べられています。
アメリカの医療通訳士(医療翻訳士も兼ねる)の現状:
給料は2012年(一番最新の発表されたデータ)で、医療通訳、医療翻訳士の平均年収は$45、430 となっており、時給では$21.84となっています。
この医療通訳士、医療翻訳士は、資格として最低学士の課程を終了しており、現場にて自身の仕事に適したトレーニングを受ける必要があります。
医療通訳士の将来性:
この職種の将来性は2012年から2022年までを予想して、46%の伸び率であり、全ての職種を合わせた平均より、かなり早い成長率が見込まれています。
この将来性の急速な伸び率は、近年の医療界に於いての急速なグローバル化に加え、益々増えているアメリカの移民率によりもたらされるものです。
しかし、この職種の急成長は、医療通訳、翻訳の専門資格を持つものに限られ、加えて最低、学士の課程を終了し、通訳士資格を持つ者に最適な将来性があり、通訳、翻訳の修士課程を終えた者は一層有利と言えます。
医療通訳、翻訳の需要は特にフランス語、ドイツ語、ポルトガル語、ロシア語それにスペイン語が要求され、それにアラビア語、中東語、アジアの言葉:中国語、日本語、ヒンズー語、そして韓国語が活発に求められると期待しています。
地域的に、ニューヨーク、ワシントン、サンフランシスコ、ロスアンゼルス地域では通訳士の大きな需要が伸びているのが特徴です。
又、此処で特記すべきことは、アメリカの手話医療通訳士が急速に必要とされている事です。
例えば、大統領や市長等の大事なスピーチには、脇に必ず手話士をたずさえて現れますが、手話者達への人権的配慮が一段と取り上げられている為です。
これを受け、人命にかかわる医療の分野でのビデオ通訳の普及が著しいのに見合い、益々手話医療通訳士の需要が大きく伸びてきているようです。
現在、コンピューターでの通訳が試みられていますが、まだまだその能力は限られ、特に医療の世界では人間の通訳に頼るしかないのが現実です。
この職種のトータルな将来性として、時代の流れである、国際交易の活発化とグローバルな連帯が活発になり、医療だけではなく、通訳士の需要は益々高まっていくのは必然であると米国労働統計局の報告には記されています。
これらが、米国労働統計局による報告でした。
Ⅱ.米国、公認医療通訳士の資格取得
米国の医療通訳士の資格は、米国、医療通訳士協会の独立機関である、米国・医療通訳士委員会により実施される資格試験を受けなければいけません。
この機関が厳しい規制を作り上げている目的は、各外国語の医療通訳士の資格プログラムを海外において組織的に展開し、推進・奨励し、海外市場をも開拓・開発する事を大きな目的に挙げている為です。
加えて、正確で安全な通訳が出来る、信任できる医療通訳士を提供し、患者をプロモートする事、米国医療通訳士資格証書の信頼性を保つべく、医療通訳士についての認定の基準を高め順守する事を上げています。
公認医療通訳士、取得条件
受験資格者
1)年齢:18歳以上、高卒以上、40時間以上の医療通訳の教育をうけ、医療通訳士の証書を受けた者。
2)一般教育
一般教育で、高校卒業の証明書を持つ者。
3)医療通訳関連の教育
40時間を超える、認定された医療通訳士の教育を受けた者
4)口頭による英語理解力の評価
英語の適正には以下のどれか1点を備えている事:
・アメリカの教育機関により、学士・修士・博士号又は他の課程の証明を持っている事。
・アメリカ外の国において、アメリカン・スクール、又は英語国での高校を卒業している事。
以下の英語のテストで、どれか1点をを備えている事:
・トイフルのペーパーテストで570点以上、コンピューターテストで230点以上、IiBT テストで90点以上の成績を持つ者。
◦ELPT で、 950+点以上
◦MELAB で、80点以上
◦ECPE の受験証書
◦FCE で、 A
◦CAE で、 B
◦CPE で、 B
◦IELTS で、 7.0 ・・・これらは、いずれも英語認定試験。
5)口頭での通訳語での資格
以下の1つを有する事。
・通訳語を話す国にて、学士、修士、博士号、又は他の課程の証明を持っている。
・通訳国にて、高校を卒業している事。
・通訳語にてACTFL 口頭試験、終了。
・通訳語にて、高等医療用語を習得。
これらの条件を満たし、尚、公認医療通訳士、資格試験の筆記と口頭の試験に合格しなければならない。
この試験に合格後、例えばスペイン語・公認医療通訳士、或は日本語・公認医療通訳士と認められる。
その他:
医療通訳士としてすでに1年以上、会社につとめている者は、過去2年の経験を添え、雇用会社のレターヘッドに会社雇用・年月日を記入し、サインをもらい提出すると、ロシア語・マンダリン・広東語・韓国語、それにベトナム語につき、筆記と口頭の公認医療通訳士テストを受ける資格が与えられる。
その他の言語(日本語等)の受験者は筆記試験を受けた後、3年以内に口頭試験の実施日の連絡がある。
尚、その 雇用証明書は英語に翻訳されたものである事。雇用は、正規・パートタイム、或はボランティアでの労働でも受け付けられる。
以上、米国、公認医療通訳士(CMI)の資格試験を受ける為には、この様な規約が設けられています。
Ⅲ.米国での近年の医療通訳士、医療通訳業界の状況
米国では病院・クリニック等、どの医療機関も、英語の不自由な患者の為に通訳士を準備しなければいけないのがルールです。
しかも、このルールが徹底してきているのを最近の自分の体験で身をもって知りました。
最近、私は、ニューヨーク大学付属の医療施設へ、検査の為に伺いました。
受付を通り、患者の情報収集の為、アシスタントとの面接になりました。
担当のアシスタントは、私と一言二言話した後に「どの言葉を話しますか?」と聞いてきました。
“英語で会話しているはずなのに何を言ってるのかしら?”と思いながらも、母国語は日本語だと伝えると、すぐに受話器を取り“電話通訳サービス”に日本語の通訳をオーダーしました。
”通訳が必要ですか?“と聞くわけでもなく、即です。
ところで、我が家の近くに有る、Lenox Hill 病院はかなり有名なセレブ達もよく入院し、カメラマン達がよく詰めかけている様な有名な大病院です。そこでも私が看護学生でインターンをしていた2007年位までは医療通訳士の配置はこれ程にまでは、徹底してませんでした。
例えば、私がアテンドした我が儘なロシア語しか話さない患者に対しては、あわててロシア人の医師が呼ばれて通訳をしていた程度でしたから。
この電話通訳サービスを使う医療機関は最近益々増えてきています。
それに加え、ビデオ医療通訳を使っている医療機関も多いです。
但し、この場合は、少し込み入った複雑な医療が必要な状況の場合に限定するというように、使い分けているようです。
日本でもこの種のサービスが有るのかどうかは知りませんが、米国では、最近このシステムを使用する医療施設を頻繁に目にします。
その状況も体験できると思いますので電話、ビデオ医療通訳の会社で代表的な2社を次に挙げておきます。
1. CyraCom, language solutions
2. CIRTIFIED LANGUAGE INTERNATIONAL (CLI)
サービスは2社共、電話通訳・ビデオ通訳、及び現場に通訳士を派遣することも出来、加えて医療翻訳も手がけています。
通訳出来る言語は日本語も含め、200以上の言語に対処しており、平均16秒で、通訳士を電話口に呼び出す事が出来ます。
私自身の体験から、”これは便利だな“と言う感想と共に、マニュアル化された医療・介護から起こりうる、その隙間での見落としの可能性が気になりました。
以上、アメリカの医療通訳の、現場の一部を報告します。
著者:スミ A. カンター
制作:協同組合クラブ・メディカル・ツーリズム・ジャパン 理事長 岡村寛三郎
携帯電話:090-9097-7613、イ・メール: okamura3@oksemi.co.jp
註:統計資料:
SOURCE: U.S. Bureau of Labor Statistics, Employment Projections program
The National Board of Certification for Medical Interpreters