Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

マギオ・ムジーク

2020-09-27 09:45:26 | 読書
仁木 英之,フレーベル館 (2020/7).
著者は何千何万年も生き続ける美少女仙人を主人公とする「僕僕先生」で2006年に第18回日本ファンタジーノベル大賞.音楽を題材とする連作「奏弾室」も書いている.

Amazon の CM
*****著者が満を持して子どもに届けたいと書き下ろしたファンタジー。ドゥシャン・カーライの薫陶を受けた新星福井さとこの手がける銅版画の挿絵が物語を彩る。
父の転職のため、家族とシンガポールに引っ越すことになった小学5年生の沖田翔馬。突然、飛行機が姿を変え、たどりついたのはムジーク=音楽が大きな魔法=マギオの力を持つ異世界ガル・パ・コーサだった… *****

異世界の登場人物の名前,コロー,ヒムカ,ルビオ,ホレンズ (208ページのホロンズは誤植かな?) など,覚えられない.一覧表が欲しいところ.
主人公翔馬は異世界の争いに巻き込まれる.そこでは楽器は術器とよばれ,武器であって,グランドピアノが最強である.なまじピアノの歴史などを思い出すと変な気になる.異世界の音楽=ムジークのしくみ,十二礎と七基調がページを割いて解説されているが,西洋音楽の楽典と似すぎている.ストーリーは重く,解決もすっきりしない

じつは銅版画の挿画に惹かれて図書館で借用.
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仁木 英之「奏弾室」

2018-07-23 06:34:52 | 読書
徳間書店 (2018/3).
図書館で借用.

Amazon の内容紹介*****
郊外の林の中にある洋館は、音楽教室になっていた。そこには、ちょっとワケありな生徒たちばかりが通っている。
ある日、そこに音の善し悪しが解らなくなってしまった学生が、音に惹かれて、迷い込んだ。
「僕僕先生」シリーズなどのファンタジーから、歴史小説など、様々なジャンルで活躍する著者が挑む意欲作!
小誌「読楽」で連載したものに短篇1本を書き下ろしで収録。*****

奏弾室は相談室.主人公も厳しかったピアノの練習がトラウマになっている.
7話の連作だが,徐々に作風が変化する.ちゃんとした設計図なしに成り行き任せで書いた感がある.
各話に「主よ,人の望みの喜びよ」「どんなときも」「ホーダウン」...と,楽曲の名前がついているが,ここに登場する音楽教室の先生はジャンルを問わずなんでも来いである.正確無比だが心がない演奏って,ハイフェッツのピアノ版?

主人公の匂いフェチの草食学生と,この神秘的な先生との関係もモヤモヤしたまま.学生は姉とふたり暮らしだが,この姉にもレズがほのめかされる.

著者の「僕僕先生」「海遊記」はよかったが,この路線はどうかな? と思いながらも,最後まで読まされてしまった.純文学風に書けば,現代の雨月物語になったかも.

☆☆☆
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海遊記 ― 義浄西征伝

2014-03-19 08:27:19 | 読書
仁木英之,文春文庫(2014/03).

「BOOK」データベースより*****
唐代、三蔵法師の経典に飽き足らず、海路インドを目指した僧がいた。頑固一徹の変わり者・義浄とお調子者の弟子・善行が乗り込んだのは、勇敢な海の男たちが操るペルシャ船。間抜けな海賊に追われつつ、数々の不思議な事件を乗り越えて、一行が旅の果てに見るものとは!?『僕僕先生』の仁木英之が描くもうひとつの西遊記。*****

中身の濃い解説は蝉丸P,この方は高野山真言宗住職兼ライターだそうです.

義浄の名は高校の世界史で出てきたような気がする.上記解説によれば,法顕・玄奘・義浄は仏教史上,天竺取経の三大スターなんだそうだ.ではなぜ義浄には西遊記みたいな物語が伴わなかったのかも,詳しく書いてある.

こどものとき読んだきりだが,西遊記の玄奘は悟空の足手まといになるばかりで,ほとんど個性が感じられなかった.それに対してここでの義浄は自立しているし,生き生きとしている.1/3 を過ぎたあたり,SF っぽい海洋冒険小説になってからがおもしろい.

義浄の幼い日のガールフレンドが再登場してすぐ消えてしまったのを不満に思っていたら,おまけの「書き下ろし短編」にまたまた登場した.「続きは次回の講釈で」で終わったところを見ると,作者はまだまだこのネタで稼ぐつもりらしい.

南伸坊によるカバーは義浄のイメージそのもので笑えるが,伸坊さん扮装の「そっくり写真」も見たい.
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僕僕先生

2009-04-09 10:04:49 | 読書
仁木 英之著 新潮文庫 (2009/03)

*****内容 (「BOOK」データベースより)*****
舞台は中国唐代。元エリート県令である父親の財に寄りかかり、ぐうたら息子の王弁は安逸を貪っていた。ある日地元の黄土山へ出かけた王弁は、ひとりの美少女と出会う。自らを僕僕と名乗るその少女、実は何千何万年も生き続ける仙人で…不老不死にも飽きた辛辣な美少女仙人と、まだ生きる意味を知らない弱気な道楽青年が、天地陰陽を旅する大ヒット僕僕シリーズ第一弾!「日本ファンタジーノベル大賞」受賞作。
***********

2006/11刊行の単行本を面白そうと思いながら読みそびれていたので,文庫化を機会に購読.
芥川龍之介の杜子春は,親を見捨てることが出来ないので仙人になれなかったのだが (この小説では芥川のタネ本がちゃんと引用されている),こちらの王弁くんは仙人になりたいなどという高望みはしない.この小説での主人公と父親との距離感は,主人公と美少女仙人との距離感に負けずに面白い.

杜子春の仙人よりもっと,美少女仙人は人間好きらしい.それとも,主人公をからかっているうちに,次第に人間好きになったのかもしれない.芥川のはどことなく説教臭いが,こちらは軽くて,期待したとおり恋愛小説みたいに展開する.

蝗大発生に出向いて,蝗退治をしてやろうとして仙人は出ばなをくじかれる.人間の科学の進歩のためである.この仙人は時流に逆らって人間にちょっかいが出したいらしい.しかし時代とともに仙人の出番はなくなり,天界・仙界と人界の交渉が完全に切れたのが現代ということか.

このシリーズはすでにこれを含めて3冊出ていて,解説によれば著者のライフワークになるらしい.
でもこの第一作を超えるのは難しそう.
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