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Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

ねこはい

2019-12-10 09:49:28 | 読書
南伸坊 角川文庫(2019/11).
「わがはいはビールのすきなねこである」

帯とカバーの惹句
*****世界初!猫が作った、俳句絵本。『ねこはいに』も入った豪華な文庫版!
「わがはいは ビールのすきなねこである」
これは猫を詠んだ俳句ではなく、猫が作った、世界初の俳句絵本です。ほんとうは、南伸坊さんが作りました。「でも、自分が猫だったらどんなかな、と思って作ったので、ほぼ『ねこはい』」だと南さんは言っています。もっと猫になりきって作った、続編の『ねこはいに』もおさめて、贅沢な文庫版になりました。しかも、描き下ろしの「おまけ」もついている! 猫好きの方、必読です。*****

『ねこはいに』は『ねこはい2』のこと.『ねこはいさん』すなわち『ねこはい3』はまだだが,そのうち出るらしい.本編を図書館で借りたことがあったが,文庫化されたので購入.「猫を詠んだ」ではなく,「猫が詠んだ」がみそ.

俳句「絵本」だから半分以上は絵がものを言っている.猫の表情が人間的で,これも学生を見ているような,あるいは,若いときの自分を見ているような感じだが,絵がなかったら「こんなの」がなんのことかわからない.「猫の恋」は初春の季語だそうだ.



怪獣生物学入門

2019-12-09 07:13:07 | 読書
倉谷 滋,集英社インターナショナル新書 (2019/10).

出版社のCM*****ゴジラ、ガメラ、マタンゴ、ドゴラ、『寄生獣』のパラサイト……、
怪獣たちを最新の生物科学で分析し、徹底的に考察する!
怪獣とはどのような生物なのか? その形態や劇中の設定、登場人物たちの台詞などを手がかりに、劇中では語られることのない出自や生態などを考え抜く。実在しない怪獣を生物固体として追究していくと、SFと科学が繋がる新しい境地に到達する。*****

ゴジラ第1作封切り時に16トンは中学生だった.学校でゴジラのうんこについて,まじめなディスカッションをくりひろげた覚えがある.あれの延長,と言いたいがもっと高級.怪獣たちにかこつけた著者の専門的・非専門的ウンチク集と言っても良い.ちなみに,著者は理化学研究所倉谷形態進化研究室主任研究員.

16トンのようなゴジラ,ラドンのぬるいファンにも面白かった.マタンゴ,ドゴラ以下のマイナーな?怪獣たちとなると,カラーグラビアで姿を見せて欲しいところだが,著作権でそうもいかないのだろう.でも,見せないで読ませてしまうところがすごい.

進化形態学的怪獣学概論の,シン・ゴジラの歯並びとか,怪獣のスケール問題の議論には精彩があるが,ゴジラの棲息環境としての地球空洞説と地底世界あたりになると,専門外らしく文献羅列的.マタンゴ,ドゴラを対象とする,進化形態学的怪獣論 -不定形モンスターの生物学的考察- に力が入っていると感じた.

最後は怪獣が登場しない,ウルトラQ17話の1/8計画. 人間のサイズを1/8に縮小し資源を512倍に活用しようという陰謀?が取り上げられる.この本の内容は別として,この計画,人類崩壊の打開策としては名?迷?案かも.

ビブラフォンの新星 ジョエル・ロス

2019-12-07 09:51:06 | ジャズ
Joel Ross が先月東京ブルーノートに現れたそうだ.24 歳の初リーダー作 Kingmaker は既に発売済みである.Youtube に 16 歳のときの Eric Reed とのデュオによる Round Midnight の動画があった.

こちらは2017年の Ulysses Owens Jr. の vib, b, ds のトリオで,bass は Rueben Rogers.
ヴァイブが 4 本マレットでピアノトリオみたいに行くのかと思ったら,さにあらず.2 本マレットでパーカッシヴ.ビブラートは使わない.ヴァイブのコンピングの上に ds がメロディアスに乗ったりする.入念にアレンジされているところだけは MJQ みたい.Poinciana, In a sentimental mood などの有名曲も演奏される.
途中ボーカルが登場し ds とのデュオが挟まれる.

カメラが定点観測.ライブ開始時には背景に見えたセントラルパーク越しのニューヨーク (だと思う) が,次第に夕陽に黄昏れ,最後には真っ暗になる


五行でわかる日本文学

2019-12-05 10:04:05 | 読書
サブタイトル 「英日狂演滑稽五行詩」 (最後の5文字にはリメリックのルビ).
英語のタイトルらしきものもあり
There was an Old Pond with a Frog and other literary limericks
ロジャー・パルバース 著, 喜多村 紀 イラスト, 柴田 元幸 訳,研究社 (2004/5).

リメリックは諧謔的な5行詩で,訳者は川柳に似ているというが,狂歌すなわち,ふざけた和歌に似ていると思う.1・2・5行に韻を踏み,短い3・4行も別な韻を踏む.研究社らしく絵文に対する註が充実している.

この本に取り上げられているのは日本文学者は宮沢賢治から井上ひさしまで,古今の27人.リメリックとその和訳,右ページにイラスト.

下に松尾芭蕉のページを勝手に引用させていただいた.本のタイトルにもなっているが,素人には単なる語呂(韻)合わせに思える (もっと良い詩がたくさんあると思う).和訳もお付き合いで韻を踏んでいる.むしろ舞台を原詩に無関係なトイレに設定したイラストが素晴らしい.水しぶきも良い!!

15年前の本だが,文庫化されないかな.


屋根裏の仏さま

2019-12-04 09:19:01 | 読書
ジュリー オオツカ,岩本 正恵・小竹由美子訳,新潮クレスト・ブックス (2016).

「あの頃,天皇は神だった」に続いてぼくには2冊目のジュリー・オオツカ.この「屋根裏...」のアメリカでの出版は2011年,「あの頃..」は2002年だが,日本での出版は順序が逆になった.
訳者が2人だが,岩本さんが翻訳途上で急逝され,小竹さんが引き継いだのだそうだ.その後「あの頃...」を小竹さんが翻訳されることになった.

題材は2作とも似ている...文壇に認められるには同じようなテーマで書かなければならないのかもしれない.
ヒロインは「写真花嫁」たち,20世紀初めに写真交換だけの「見合い」で渡米した女性たちである.はなしと違って結婚相手は下級労働者たちだったが,苦労の末,子供たちも成長して生活はなんとか軌道に乗ったところに,戦争が起こる.彼女らが収容所に連れ去られたところで終わる.

最初のほうの主語は「わたしたち」で,センテンスが変わるごとに違う女性のことが語られたりする.新聞の見出しを続けさまに読むような感じでもあるが,半面 改行がない詩を読んでいるようでもある.こんな小説が過去にあったのだろうか...浅学のぼくにはわからない.
熟読玩味しなければもったいない文章.原語では韻を踏んでいる...なんてことはないかな.
特定のヒロインがいないにもかかわらず,引き込まれて読んでしまったのが,不思議である.

全8章の第7章「最後の日」は日本版12ページにわたって全部がひと続きの段落で,改行がない.本のタイトルは,この章の「ハルコは,小さな真鍮の,笑っている仏さまを屋根裏の片隅に置いてきたが,仏さまは今でも,まだそこで笑っている」から取られている.

最後の第8章「いなくなった」では視点がわたしたち=アメリカ人になり,かれら=いなくなった日本人たち  に入れ替わる.彼らがいなくなった後,わたしたちはしばらくは空虚に感じるが,それも時間の問題である.

「あとがき」の表現を借りれば,正史には登場しない女たちの人生を拾い上げた,スリムだが重い歴史小説,ということになるのだろう.
つぎはもっと楽しい本を読みたい.

Clora Bryant

2019-12-03 08:59:06 | お絵かき
1927-2019. パーカー,ガレスピーと共演した伝説のひと.

CDケースに内側からアクリル絵具.
セピアという絵具を買ったので,バックを描いてみた.LPのジャケは1960年代の,ぼくが知っているニューヨークに近い.顔がうまく描けなくて,結局塗りつぶした.

展覧会を観たせいか,どことなく安西水丸に影響されたようでもある.

動画では,後半に tp が現れる.


長調と短調 わらべうたと寮歌

2019-12-02 08:47:23 | 新音律
「わらべうたは死なず」という本には「ずいずいずっころばし」を例に,テレビで流れた旋律とこどもたちの旋律との違いが示してある.図右側は「比較総譜」と呼ばれるもので,いちばん上がテレビ版,その下の A1,A2,B1,...,B4 の6段がこどもたちから採譜した版である.総譜の左に,採譜年,歌い出しのキー(総譜はすべてCで書かれている),テンポ,こどもたちの学年が表になっている.総譜は初めの4小節だけなので,同じに見える部分が多いが,歌のうしろの方では版による違いがあらわれる...興味をお持ちの方は本に当たってください.

「わらべうたは...」本ではここで使われる音階をテトラコルドを用いて分析している.きちんと分析するとこの歌には数回の転調があることになる.詳細は本をお読みいただくことにして,ここではこの4小節だけから受ける印象を話題にしたい.

A1,...,B4 のうち,テレビ版と一致するのはB1,B3のふたつだけである.そして歌ったり弾いたりしてみると, B1・B3 は短調的で,残るA1・A2・B2・B4 のグループは長調的に,明るく感じられる.学術的?には前者は都節音階,後者は民謡音階をベースにしている.都節=短調的,民謡=長調的と短絡するのは抵抗があるが,都節の方が民謡より洗練された感じはすると思う.

テレビ版のザ・ピーナッツのほうは1962年に放映され,宮川泰編曲,ボニージャックスのほうは1968年 岩代浩一編曲である.編曲者には都節の方が音楽的に思えたのかもしれない.しかし.1990年代以降のこどもたちがテレビ版を耳にした可能性はないだろう.

ここで思い出すのは一高寮歌「嗚呼玉杯」のこと.楽譜では長調だが,歌うのは短調ときまっているらしい.Youtube を探したら,ボニージャックスが長調で歌っていた


こちらは短調版.伊藤久男は「イヨマンテ」の人である.


日本人は短調が好き,だからヒット曲には短調が多いというのは定説だが,わらべうたでは
短調よりの都節音階より長調よりの民謡音階が好まれるらしい.大人になって世の中の苦労を知ると長調よりになる... ?
あるいは,日本人が本当に好きなのは都節で,ヒット曲の短調はその代用... ?

以上,無責任な妄想でした.
  


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